連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第24回「映画のあとはゲームで追体験せよ! ディズニー×ピクサーのメディアミックス・ゲーム再遊記(2)」
“ディズニー×ピクサー”の作品は,今でこそ映画もゲームも仲睦まじい感じで数多くのメディアミックスが展開されているが,それらの起源は1995年に全米で公開された(日本では1996年公開)「トイ・ストーリー」にさかのぼる。
まず,ディズニー×ピクサーのシネゲーを語るならば,現在Walt Disney Animation StudiosとPixar Animation Studiosのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任しているジョン・ラセター氏と,Pixarの創始者であり,米Appleの顔でもあるスティーブ・ジョブズ氏に着目しなくてはならない。
というわけで,トイ・ストーリーがゲーム化されるまでの,つらく険しい道のりを,ラセター氏とPixarの歴史を紐解きながら説明していこう。
なんでも,高校時代から独学でイラストを描きながらディズニー関係の仕事に就きたいという夢を語っていたという。彼の母親が美術教師だったこともあり,幼少期に絵を描くことを自然に身につけており,絵にかけては自信を持っていたようだ。
そんなラセター氏のマスターピースは,ディズニーアニメの「ダンボ」である。この作品に感動したことから,生前のウォルト・ディズニー氏が1961年に創立したCalifornia Institute of the Arts(カルアーツと呼ばれている大学)に興味を持ち,1979年,映像学部・アニメ課程に一期生として入学。在学中に2本の短編アニメ「Lady and the Lamp」「Nightmare」でStudent Academy Awardを受賞し,美術学士号を取得した。
そのためラセター氏の才能は,早くから大学側やディズニー側の注目を集め,在学中に「きつねと猟犬」「ミッキーのクリスマスキャロル」の作画担当を経験することになる。そして卒業後,エスカレーター式にWalt Disney Animation Studiosに入社した。
そこでジョージ・ルーカス氏が経営するILMがコンピュータ・グラフィックスに力を入れ始めた1984年,ILMに転職。その頃のILMは,社内に三つのコンピュータ関連部署を抱えていたのだが,ラセター氏は主にCGアニメーションを扱う部署へ希望どおりに配属された。
ルーカス氏はラセター氏の才能を感じていたため,入社早々実験的に2分間の短編CGアニメで,キャラクターデザインとアニメーションを担当させる。それが「アンドレとウォーリーB.の冒険」である。
ラセター氏が生み出したキャラクターの,見事なアニメーションに魅了されたILMのスタッフ達は,ラセター氏をスティーブン・スピルバーグ製作,バリー・レビンソン監督作の「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」における“ステンドグラス・ナイト”のCGアニメーションを任せることにしたのだ。
この作品のCGアニメーションパートは映画界で大きな話題を呼んだ。その後,Apple Computer(現Apple)を追い出されたばかりのスティーブ・ジョブズ氏が,コンピュータやCG時代の到来を予見し,ラセター氏が所属している部署のみを44名のスタッフごと1000万ドルで買収したのである。
ちなみにそこには,ILMに務めていたコンピュータ科学者のエド・キャットムル氏(3DCGのレンダリングツール「RenderMan」の開発者としてCG業界に一石を投じた人物。Walt Disney Animation StudiosとPixar Animation Studiosの社長でもある)も含まれていた。
これが,1986年のこと。こうしてPixar Animation Studiosが生まれたのだ。
なお,ジョブズ氏は買収後,「あの映画に出てきたステンドグラス・ナイトのCGアニメは,実写とコンピュータグラフィックスが融合する未来を予見させた。アニメーションの世界でもセルアニメではなく,CGアニメの時代が必ず訪れるだろう。さらにビデオゲームの世界でも,CPU性能が上がればCGは必要不可欠となり,今よりもさらに活躍する場が増えるはずだ」と,米国の映画専門誌へコメントしている。
これをきっかけに「レッズ・ドリーム」やトイ・ストーリーの前身となる「ティン・トイ」,そして「ニックナック」と毎年SIGGRAPHにワールドプレミアとして出品を続け,アカデミー賞を含む,数多くの賞を受賞した。
素晴らしいクリエイター達が多数在籍しているとして,世界中から脚光を浴び始めたPixarは,1991年にラセター氏の古巣であるWalt Disney Animation Studiosへ映画制作の売り込みを行なう。
ラセター氏と同じ大学を卒業した旧友を通じて始まったこの売り込みは,最終的に制作費をPixarが持ち,Walt Disney Picturesが世界配給を行うという約束(だったらしい)で,3本の劇場用長編CGアニメを作るという契約が結ばれた。
その中の一本が「トイ・ストーリー」である。ティン・トイの評価が高かったことから,オモチャの世界を舞台にした本作が最初に制作されることになったのである。
完成までに4年もの歳月を費やし,総制作費は5000万ドル以上になったことから,PixarのCEOであったジョブズ氏は,長編映画への進出にたいそう懲りたそうだ。
「ティン・トイ」 |
「ニックナック」 |
Pixarやジョブズ氏は,トロンがビデオゲームとのタイアップなども行っていたことから,そうしたことをトイ・ストーリーでも期待していたのだが,その話はなかなか進展しなかった。このあたりを裏付けるエピソードについては,次回にお届けする。
■ドブ漬けゲームスープレックス(24)
Xbox360
「シヴィライゼーション・レボリューション」(サイバーフロント)
前回の続き。
「シヴィライゼーション・レボリューション」は,紀元前4000年からスタートして未来まで時を進めていき,勝利を勝ち取る……と説明すると普通のシミュレーションゲームと思われるのだが,このゲーム最大の魅力は,勝利の方法が一つではないことにある。筆者もご多分に漏れず,このあたりがお気に入りなのだ。
“軍事力を最大限に使ってすべての国を征服して勝利する”“テクノロジーをどこよりも誰よりも早く研究し,宇宙船を建造したら,スペースコロニーを作って宇宙を植民地化する”“文化遺産を建設したり偉人を自国へ獲得したりして,文化を極める”“2万ゴールド以上を貯め込み,世界銀行を建設して経済を掌握する”といった具合に,大きく分けて四つのゴールがあり,プレイヤーはそのいずれかを目指すことになる。
軍事力を増やしていくうちに,偉人が自国へ数多く出現してきたので途中から方向性を変える……といった具合に,臨機応変なプレイも可能で,中毒性も高い。
筆者のようにマニュアルを読まないダメ人間でも,ゲーム内百科辞典“シヴィロペディア”を活用すれば,プレイに困ることはない。
ただ,文明の発見&発展をテーマにしているため,世界史を知らないと微妙にキャラクターなどが分からないこともあり,こうした部分に抵抗を感じてしまう人もいるかも。でも,プレイしていくうちに細かいことは気にならなくなるので,世界史に興味のない人も遊んでほしいと思う。各国の指導者達が同じ時間軸にいること自体が“if”の世界なんだし。
個人的には,戦車vs.長弓兵とか,映画「戦国自衛隊」みたいな光景が繰り広げられるだけでも嬉しくてたまらない。
2009年1月29日に発売されるニンテンドーDS版も楽しみだ。
「シヴィライゼーション レボリューション」公式サイト
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