連載
【ヒャダイン】そういやクリボーって何なんだ? って考えてみた
ヒャダイン/前山田健一 / 歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第7回「そういやクリボーって何なんだ? って考えてみた」
全世界に衝撃を与えた横スクロールの金字塔。ゲーム内容はもちろんのこと,3和音とノイズに制限された中でのオシャレ満載なBGM。日本のゲームの原点ここにあり! 全世界で4000万本以上もの売り上げを記録した作品ですが,データ容量は約40KB……。いまや電機屋さんに行ったら,HDDなんてほとんどテラですよ。メガ・ギガ・テラ。40KBて……。感動。
さて。そんな任天堂のスーパーマリオブラザーズで,初めて出会う敵。これがクリボーです。常に画面を見ている僕らにとっての正面を向いて,カニ歩きでただただ歩いてくるだけの最弱敵キャラ。が。慣れないうちや慣れても慌てているときなんかだと,ただただ歩いてくるクリボーにぶつかって,さっそく一機失う,なんてことも多かったとか。
で,ですよ。クリボーって,一体何なの? ほかの敵キャラは何となくモチーフが分かるじゃないですか。ノコノコとかは亀っぽいし,ゲッソーはイカっぽいでしょう。キラーは弾丸っぽいしパックンフラワーは花の化け物。でも。クリボー。茶色くて,三角で,腕はなくて。で,踏んづけたら簡単に倒せるほどの強度。
ほかの敵はネーミングからもモチーフが想像できるけど,クリボー……。栗? 栗と棒? 下ネタ? げふんげふん。さて。調べてみました。
クリボー。英語名Goomba。グーンバと発音すればいいのかな。群馬みたいですね。グーンマ。スーパーマリオブラザーズの説明書には「キノコ王国をうらぎったわるいきのこ」との記述があるようです。……。きのこ!? え!? クリボー,きのこだったの?
まあ確かに,茶色い部分が「傘」,クリーム色の部分が「柄」だと考えたら,説明はつく。よし。それでは色合いからして,しいたけ的なモンスターだと考えよう。それだと触感も想像がつきますね。ぶにって踏める感じ。
……てことは,何だ? クリボーはもともとキノコ王国にいてキノピオと同僚だった,ってわけですかい。
うわお。キノピオはスーパーデフォルメ人間がキノコの被り物をしているだけのような可愛らしさ。極めて人間に近いフォルム。それに反してクリボーは,傘の部分に眉,眼,口,牙まであり,腕は無く,横方向にカニ歩きしかできない構造。あまりにスペックが違いすぎる。
そんなクリボーがキノコ王国を裏切ってクッパ側についたのはなぜか……? キノコ王国に関する記述で「人間並みの高度な文化を持つ」と書かれてあります。その中でただカニ歩きしか出来ないクリボー……。そう考えると,キノコ王国における社会的な地位は想像に難くありません。きっと何かしらの不平不満があったのでしょう。
そこでクッパによるあま〜いヘッドハンティング。弱い部分をこしょこしょこしょってされたのかもしれませんね。平和なキノコ王国を後にして,マリオやルイージという敵がいる殺伐としたフィールドに身を投じるクリボー……。少し切ない。
そんなキノコ界の異端児クリボー。敵としてのスペックですが,非常に低い。まず上から踏んづけるだけで撃破可能。ファイアボールや,踏んづけたノコノコを当てることでも撃破可能。体力や守備力はさほど高くないようです。あと,クリボーの特徴として,基本一方通行。カニ歩きで横にひたすら歩いて,その先に穴があったとしても猪突猛進。ただひたすらに歩き続け,穴に落ちて,絶命……。知能もそこまで発達していない生物だということが推測できますね。
で,肝心の攻撃力です。いかんせん,腕が無い。したがってハンマーブロスのように武器を装備するわけにもいかない。火を吐くとかいったアビリティも備わっていない。ただひたすら歩いて,ターゲットにぶつかるのみ。いわば“肉体派野郎”。
しかし。しかしですよ。マリオとルイージにポンってぶつかるだけで,相手を撃破するその体当たりの強さ。これはえげつないですよね。おすもうさんに全速力で体当たりされるみたいな感じ? 普通の人間はやられちゃうよね。しかしです。クリボーは敵を発見してから猛スピードで突進してくるタイプの敵ではなく,自分のペースでただひたすらカニ歩き。そんなクリボーに触れるだけで,マリオ達は撃破されてしまう。
ひょっとしたら,僕は大きな勘違いをしていたのかもしれない。クリボーに当たってやられるのは,その衝撃からではないのではないか。こちらに向かってくるクリボーを飛び越えてから,追いかけて当たりにいっても,やっぱりやられちまうじゃないか。ということは,「クリボーに触れるとやられる」ってことですね。
こう考えてみると……,「クリボー=毒キノコ説」が浮上してくるわけですよ。クリボーの体の表面は猛毒で覆われていて,少しでも触れると即死。でも,それならなぜ,マリオやルイージは猛毒クリボーを踏み潰すことで撃退できるのか,って話にもなります。
うーーーーーーん。
靴を履いてるから?
どーーーーーーん。
毒に耐性のある靴を履いているんだよ,きっと。
いやあ,マジで靴って大事ですよね。読者のみんな,どこにクリボーがいるか分からないから,外に出るときは靴を履こうねっ☆
さて,そんな猛毒クリボー(仮説)。そもそもキノコ王国にいたときからそこまでの毒性を持っていたのだろうか,と考えてみましょう。きわめて人間に近い文化を持った国で,キノピオたちと共存していたクリボー。もしかしたらキノコ王国の住人全員,クリボーの毒に耐性があって,それゆえ一緒に住んでいても毒の被害に遭わなかったかもしれません。
しかし,Wiiの「New スーパーマリオブラザーズ Wii」においては,マリオ,ルイージのほかに,キノピオをキャラクターとして選択できます。その際,キノピオはクリボーに触れたら,やられますよね。ということは,前述の可能性は否定されることになります。もしくは,クリボーはキノコ王国において猛毒を持っていたことにより隔離生活を余儀なくされていた。そのことに加え,能力の低さからマイノリティとなり,クッパ側に寝返った,という風にも考えられます。
そうでなければ,猛毒クリボー(仮説)の猛毒はクッパによって与えられた力であるという説も,考えられます。カニ歩きしかできず,穴があったら落ちてしまうほどの知能で悶々と生きていたクリボー。そこにクッパが「こちらに来れば,お前にこの大きな力を授けてやろう。いひひひひ」と言って与えたのが猛毒。
そういえば! マリオやルイージって,クッパ一味(要するに敵キャラ)に触れた瞬間にやられちゃいますよね。例え相手がノコノコでもパタパタでもメットでも。ってことは,敵キャラはクッパと契約を交わすことによって,一瞬で相手を撃破できる毒を発動することが可能となる,とも考えられるのではないでしょうか。
その後,羽根の生えたパタクリボーやマメクリボー,クツクリボーや巨大クリボーなど亜種がたくさん登場しますが,基本的な攻撃手段はうろちょろしているだけ。マメクリボーにまとわりつかれて動きが鈍くなるのは,マメクリボーが放つ微量の毒素がマリオの神経を麻痺させている,とも解釈できますね。ええ。
完全なる仮説ですが,クリボーがもし,猛毒を手に入れることと引き換えに安寧の地キノコ王国を去ることになったとしたならば,切ないお話じゃないですか。もしくは,猛毒のせいで忌み嫌われていたクリボーが,今まで虐げられてきた社会への復讐のためにクッパ軍に身を置くことになった,ということならば,これまた切ないお話じゃないですか。一つの映画が作れますよ。
どこか作ってくれませんかね,この映画。僕,観に行くよ。
とまあ,3DSの「New スーパーマリオブラザーズ 2」も出たばっかりのタイミングで,最弱キャラといわれて久しいクリボーについて色々と思いをめぐらせてみました。クリボー一つをとっても色んなことを考えさせてくれるスーパーマリオブラザーズ。やっぱり深いなあ。名作は,深いなあ。
こんな風に何十年後も人に色々考えさせる作品を,僕も作れたらいいなあ,って,オチが強引!!
■■ヒャダイン/前山田健一(歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー)■■ たびたびお伝えしてきたとおり,8月8日(水)にTVアニメ「トリコ」の新エンディングテーマ,「サンバ de トリコ!!!」が発売されます。なお,プロモーションビデオはすでに公開中。南 流石さんの振り付けで踊りまくってらっしゃいます。 |
- 関連タイトル:
New スーパーマリオブラザーズ 2
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