レビュー
コイン100万枚への長い道のりを飽きることなく突き進める良作。「New スーパーマリオブラザーズ 2」レビュー
さらに,11月15日(木)には,ニンテンドー3DS LL本体と同作のダウンロード版をセットにした「New スーパーマリオブラザーズ 2 パック」の発売も予定されており,その勢いはとどまることを知らない(関連記事)。
そんな本作は,2Dアクションのスーパーマリオシリーズとしては,2009年発売の「New スーパーマリオブラザーズ Wii」以来となる作品だ。「クッパ大王にさらわれたピーチ姫を助けに向かう」というお約束を踏襲しつつも,「コイン100万枚獲得を目指す」というこれまでにない目的も設定されており,新たな楽しみが加わっている。
4Gamerの読者に向けて,スーパーマリオシリーズについて一から説明する必要など本来はないのだろうが,シリーズにおける本作の位置付けを明らかにするため,簡単に説明しておこう。
スーパーマリオシリーズの歴史は,2Dアクションゲームの代名詞といえるファミリーコンピュータ向けソフト「スーパーマリオブラザーズ」(1985年)から始まったが,NINTENDO 64用ソフト「スーパーマリオ64」(1996年)を境に,以降のシリーズは3Dアクションが中心となっていく。
その後,移植作やリメイク作を除いて2Dアクションの新作がリリースされない時期がしばらく続くが,2006年にニンテンドーDS用ソフトとして,久しぶりの2Dアクション新作「New スーパーマリオブラザーズ」が登場。キャラクターのグラフィックスこそ3DCGで描かれているものの,ゲーム自体は2Dアクションとしてのシリーズの伝統を踏襲した内容で,幅広い層からの支持を獲得した。
そして2009年には,続編としてWii用に「New スーパーマリオブラザーズ Wii」も発売され,シリーズ初となる4人同時プレイが話題を呼んだ。
そして今年(2012年),前作以来3年ぶりの新作New スーパーマリオブラザーズ 2の登場となるわけだが――実は,今年中にもう1本,2Dアクションとしてのスーパーマリオの新作の発売が控えている。
新ハード,Wii U(2012年12月8日発売予定)のローンチタイトルとして発表されている,「New スーパーマリオブラザーズ U」がそれだ。
これまでのシリーズの歴史をみても,これほど短い期間で複数の新作タイトルがリリースされるのは初めてのこと。しかも,ニンテンドー3DS用のスーパーマリオシリーズとしては,昨年(2011年)に「スーパーマリオ 3Dランド」もリリースされている。
3Dランドは3Dアクションでこそあるものの,ステージ構成やゲームシステムは2Dアクションのシリーズ(とくに「スーパーマリオブラザーズ3」)の流れを大きく汲んだ内容であった。
それでは,3DランドとUの2タイトルに挟まれる形でリリースされた本作は,どのようにして独自の特色を出しているのだろうか。結論めいたことを先に述べてしまうと,そのカギを握っているのは,スーパーマリオシリーズには欠かせない要素である「コイン」なのだ。
コインを集める快感が存分に味わえる
ソフトのパッケージや公式サイトなどを見ても分かるように,本作は黄色(=コインの色)を強く押し出したデザインとなっている。初代スーパーマリオブラザーズのカセットやNew スーパーマリオブラザーズのパッケージも真っ黄色で印象的だったが,本作ではそれ以上に黄色が強調されているのは明らかだ。
その理由は,本作に「コイン100万枚」という大きな目標が設定されていることにあるだろう。
コイン100枚でマリオが1UPするから,コイン100万枚といえば,マリオ1万UP分。数字を見れば見るほど途方もない目標に思えるが,その分,本作ではあらゆる場面でコインが大盤振る舞いされている。
例えば,シリーズおなじみの「10コインブロック」(連続で叩くとコインが10枚以上でてくるブロック)。本作ではこれをたくさん叩くと金色の「ゴールドブロック」に変化し,マリオの頭にすっぽりとかぶさってしまう。この状態でマリオが走ったりジャンプすると次々にコインが飛び出して,一気に何十枚ものコインを稼げるのだ。
また,「ゴールドフラワー」を取るとパワーアップする「ゴールドマリオ」や,一定時間敵が金色に変化するゴールドリングなど,数十〜数百枚単位のコインをあっという間に稼げるようなギミックが数多く用意されている。
稼げるコインの枚数はコースによっても異なるが,例えば最初のコース「1ー1」の場合,ゴールドブロックがいくつも出現するため,コイン稼ぎを意識していれば難なく500〜600枚ほど獲得できる。大抵のコースでは,普通にゴールを目指してプレイしているだけでも無理なく数百枚単位のコインを獲得できるはずだ。
これまでのシリーズの常識からすればありえないコインの獲得数だが,これが非常に気持ち良い。
ニンテンドー3DSの場合,携帯機ということで,電車の中などではサウンドをオフにしてソフトを遊んでいる人も多いだろう。しかし,本作の場合はぜひイヤホンをして遊んでみてほしい。なぜなら,サウンドがとても効果的にプレイを盛り上げてくれるからだ。
コインを取ったときのおなじみの効果音が立て続けに「チャリリリリリリリリリン」と鳴るだけで非常にリッチな気分が味わえるうえ,ゴールドブロックでコインを稼ぎきったときや,あかコインをすべて集めたときなどには,どこからともなくパチパチと拍手が鳴り響いて,プレイヤーのことを賞賛してくれる。
ちょっと器用にプレイすれば,コインと拍手の音を終始鳴り響かせたままゴールまで一気に駆け抜けることも夢ではない。筆者の体感では,サウンドが加わることで爽快感が何倍にも跳ね上がる印象だ。
もちろん,これまでのシリーズと同様,コインを100枚集めるごとにマリオの残り数が1UPする。つまり,コインが集まりやすい分,これまで以上にマリオの残り数もどんどん増えていくのだ。
筆者の場合,クッパを倒した時点でマリオの残り数が軽く100人を超えており,いわゆる連続1UPを一度もしていないにも関わらず,現在は400をオーバーしている。最近のスーパーマリオシリーズでは(2D/3D問わず)頻繁に1UPしやすく,リトライしやすいゲームバランスとなっているが,それでもこの増殖っぷりはシリーズの中でも突出している。
そのため,ある程度ゲームに慣れた人であれば,一度もゲームオーバーすることなくエンディングを迎えられるのではないだろうか。
各コースごとに獲得コイン枚数のハイスコアが記録されるので,自己ベストに挑戦するのも面白いだろう |
ちなみに,シリーズおなじみの連続1UPは本作でも健在だ。本作のゲームバランスでは連続1UPをする意味はほとんどないのだが,いざやってみると,これはこれでやはり得した気分を味わえる |
ただ,その反動というべきか,本作では1UPキノコのありがたみが薄れてしまっている。筆者も以前の作品では,少し危ない橋を渡ってでも1UPキノコを取りに奔走したものだが,本作では「コインを集めていればすぐ1UPするから別にいいや」と,目の前の1UPキノコをスルーしてしまうことも少なくなかった。
まさか,長年マリオを遊んできながら,ここまで価値観が変わってしまう日が訪れようとは……。
2Dアクションとしての楽しさも健在
コイン100万枚という大きな目標が掲げられている一方で,前述のとおり「クッパ大王にさらわれたピーチ姫を助けに行く」というストーリーは健在。クッパを倒しさえすれば,その時点でゲームクリアとなってエンドロールが見られるが,各コースに3枚ずつ隠されているスターコインを集めたり,隠しゴールや隠しワールドを見つける楽しみもたっぷり用意されているので,クリア後もたっぷりと遊べるはずだ。
なお,単純にクリアだけを目的にするなら,難度はそこまで高くないという印象を受けた。高くないというか,マリオの数が非常に増えやすいという特徴も相まって,シリーズの中でも比較的易しい部類のバランスだと感じられた。これまでのシリーズでクリアできずに挫折していた人も,今回はピーチ姫を助けられる可能性が高いのではないだろうか。
ただし,これはあくまでクリアだけを目的にした場合に限った話で,スターコイン集めや隠しゴールを目指そうとすると,難度が数段アップする。とくに今回は隠しゴールを探し出すのが難しいステージも多く,遊び方によってはかなりの手応えが味わえるだろう。
スターコインは,意外な隠し通路や,少し危ない橋を渡らないと手に入らないような位置に置かれていることが多い。腕に自信がないうちは無視してしまっても良いだろう |
本編クリア後には,高難度の隠しワールドも出現する |
アクションが苦手なプレイヤー向けのアシスト機能も,3Dランドに引き続き用意されている。今回は,同じコースで5回ミスした場合,スタート地点に特殊なアイテムブロックが出現。ここでパワーアップできる「しろしっぽマリオ」は,通常のしっぽマリオよりも短い助走で飛ぶことができるほか,マメマリオのように水上ダッシュも可能。そして何より,常に無敵状態となっている。もはや反則的な強さと言って良いだろう。
そのため,しろしっぽマリオに変身したら,落下とタイムオーバーにさえ気をつけていれば,まったく苦労せずにコースをクリアできるのだ。
また,ニンテンドー3DSで遊べる2D横スクロールアクションということで,3D立体視の扱いについて気になる人もいるだろう。本当は実機で3Dボリュームを調整しながら見てもらうのが一番分かりやすいのだが,以下のスクリーンショットを見ていただきたい。
これらのスクリーンショットは,3DボリュームをOFF,中くらい,最大,の3段階に調整して撮影したものだ。マリオの見た目自体は変わらないが,背景に違いがあることがおわかりいただけるだろう。3DボリュームがOFFの状態では背景のピーチ城や山などがクッキリと見えるが,3Dボリュームを上げた状態では遠くの景色がぼやけている。
これこそが,本作の3D立体視の仕掛けなのだ。3Dボリュームを上下すると,カメラの絞りを調整しているかのように,背景のぼけ方が変化する。これがなかなか面白い仕掛けとなっており,筆者はプレイ中にいろいろな場面で3Dボリュームを上下してみて,背景の変化を楽しんでいた。
また,背景がぼけるということは,言い換えれば,手前にいるマリオやクリボーなどの姿はクッキリと浮かび上がって見えるということ。そのため,本作の立体視演出には,キャラクターと背景の見分けが付きやすいというメリットもあるわけだ。
シリーズ随一のやり込み度を誇るコインラッシュ
本作の最大の目標が「コイン100万枚」であることは,これまでにも再三述べてきた。しかし,いくらコインが大量に手に入るとはいえ,クッパを倒してピーチ姫を助けるところまで遊んだとしても,その時点でのコイン獲得数は100万枚にはほど遠いはず。それどころか,隠しコースを含む全コースを一通りクリアしても,せいぜい10万枚程度しか集まらないだろう。
では,コイン100万枚を達成するにはひたすら何周も遊び続ける必要があるのか? というと,そんなことはない。そこで登場するのが,このコインラッシュなのである。
コインラッシュはゲーム本編とは別にタイトル画面から選択できるモードで,クリア済みのワールドの中からランダムで選ばれた3コースを続けて攻略し,クリア時点でのコイン獲得枚数がスコアとして記録される。いわばスコアアタック的な内容だ。
ところがこのモードが一筋縄でいかない。理由は,通常よりも制限時間が短く設定されており,しかも1回でもミスしたら終了,という点にある。そのため,コインを欲張って拾い集めていたら,いつの間にか制限時間が無くなってしまい,チャレンジ失敗に……ということにもなりやすい。というか,筆者は何度もそういった目に遭った。
ハイリスクなルールだが,その一方で,リターンも非常に大きい。コインラッシュモードでは,ゴールポールの一番上に触れてゴールした場合,なんと獲得コインが2倍に増えるのだ。
つまり,コイン500枚を獲得した状態でゴールすれば,コイン枚数はいきなり1000枚になる。しかも,前のコースで獲得したコインの枚数もそのまま持ち越しになるため,最初のコースで500枚を獲得して,3コースすべてのゴールで獲得コインが2倍になれば,500枚が1000枚,1000枚が2000枚,2000枚が4000枚に,と増えていく。要するに,一度のコインラッシュで数千枚単位のコインを簡単に稼げるというわけだ。
さらに,このコインラッシュはすれちがい通信にも対応している。すれちがい通信ではプレイヤー同士がハイスコアを交換し,他人が記録を残したチャレンジにも挑戦できる。この相手のデータに挑戦してコインラッシュをクリアした場合,自分が獲得したコインに加え,相手のハイスコア分のコインもそのまま獲得となる。つまり,たとえば自分の記録が7000枚で相手のハイスコアが8000枚ならば,合わせて一度に15000枚もコインが手に入ってしまうわけだ。しかも,自分の記録がもし相手のハイスコアを上回っていれば,「Winコイン」としてコイン1000枚がさらに加算される。
1度でもミスをしたらやり直しになる(ただしそこまでに集めた分のコインは得られる)ため,3コースめともなると緊張のあまり思わぬところで操作をミスしてしまうこともしばしば。また,ハイスコアを目指すためには,3コースすべてのゴールでコイン2倍を狙うべきなのだが,良い感じにコインを集めているときに限ってゴールポールへのジャンプに失敗してしまう。
面白いことに,このようにして「悔しい! もう1回!」と何度も再挑戦していると,まるでレースゲームのタイムアタックのように,だんだん各コースごとの「最も稼げるルート」が見えてくる。入れる土管や隠しブロックなどの配置を頭に入れて,効率良く,鮮やかにコインを稼ぐ。スーパーマリオシリーズにおいて,このプレイフィールはとても新鮮だ。
……と,非常に楽しませてもらっているのだが,惜しいと感じた部分もある。コインラッシュでは「レベル1パック」「レベル2パック」「レベル3パック」と3段階の難度を選択できるのだが,レベル2パックやレベル3パックに挑戦するメリットがほとんど無いのだ。
難度の高いコースだからといってコインが大量に獲得できるとは限らず,しかも「1回のミスでゲームオーバー」というルールのため,リスクに対するリターンが割に合わない。そのためか,すれちがい通信で受信する他人のデータも,9割以上がレベル1パックでのスコアとなっている。
先にも述べたように,コインラッシュでは,ゴールポールのてっぺんに掴まるとそれまでの獲得コイン枚数が2倍に増える仕掛けがある。これがもし,レベル2パックで3倍,レベル3パックで4倍になるようなバランスになっていれば,よりハイリスク・ハイリターンなチャレンジが楽しめたのではないだろうか?
また,コインラッシュで他人のハイスコアを見たときに「どうやってこんなにたくさんの枚数を稼いだんだ!?」と驚くことがあるが,具体的に「どのコースでどれだけコインを稼いだか」の内訳を知ることができないのも少々残念だ。
今後のシリーズでコインラッシュやそれに類するモードが登場するときには,こうしたより細かいニーズにも対応してもらえると個人的には嬉しい。
なお,本作では発売後に追加コースの配信も行われている。10月2日から配信されているのは,初心者でも気軽にコインラッシュモードを楽しめるという「ゴールドマリオでGo!Go!パック」,すれちがい通信やランキングに適しているという「きろくにチャレンジ! Aパック」,そして高難度コースを収録した「いっぱつしょうぶでドキドキパック」の3種類。どれも1パックあたり3コースが収録されていて,200円(税込)という価格になっている(関連記事)。
「ゴールドマリオでGo!Go!パック」 | |
「きろくにチャレンジ! Aパック」 | |
「いっぱつしょうぶでドキドキパック」 |
考えてみれば,これまでのスーパーマリオシリーズでは,一通りクリアしてしまったあとは,ほとんど再プレイするきっかけがなかったように思う。もちろん,それだけでも充分に楽しめるのだが,物足りなさを感じたことのある人もいるはず。何を隠そう,筆者もその一人である。その点,こうしたオールクリア後のお楽しみが増えたことについては,素直に喜びたい。
このように本作は,スーパーマリオシリーズとしての基本をしっかり踏まえつつ,シリーズのファンが新鮮に感じられるような楽しみ方がたっぷりと用意されている。これだけシリーズを重ねてもなお,正当な進化を遂げ,新鮮さを味わわせてくれる点には驚かされるばかりだ。
「New スーパーマリオブラザーズ 2」公式サイト
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New スーパーマリオブラザーズ 2
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