インタビュー
「モンスターハンタークロス」発売直前インタビュー。“MH的アクションの進化”や“獰猛化モンスター”について小嶋慎太郎氏と一瀬泰範氏に聞いた
「モンスターハンタークロス」のハンティングアクションは,従来の“モンハン”とは何が違うのか。そして,どのように進化を遂げているのか。本作の開発に至るまでの経緯や新要素の意図について,プロデューサーを務める小嶋慎太郎氏とディレクターの一瀬泰範氏に聞いてみた。
「モンスターハンタークロス」公式サイト
ナンバリングにはない一歩踏み込んだ新システムを導入
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
まずは「モンスターハンタークロス」(以下,MHX)が,従来のナンバリング作品とは異なる位置付けの新作として開発されることになった経緯からお聞かせください。
小嶋慎太郎氏(以下,小嶋氏):
昨年,モンスターハンター(以下,MH)シリーズが10周年を迎え,「10年経ったからこその,何か一歩踏み込んだ新しいことができないか」と,一瀬に相談したのが発端ですね。
一瀬泰範氏(以下,一瀬氏):
これまのでナンバリング作品とは別の形,それでいて「お祭り感」のある新作というのが,辻本(良三氏。MHシリーズプロデューサー)と小嶋からの話でした。MHとして最低限のお約束的なところは残しつつ,この作品でしかできない面白そうなことに手を伸ばそうと思ったんです。
4Gamer:
ちなみに「クロス」というタイトルは,シリーズ10周年の「X」(ローマ数字の10)にかかっているのでしょうか。
小嶋氏:
いえ,そんなことはないです。もう今年で11年目になりましたので(笑)。
タイトルに関しては,結構ギリギリまで調整していたんですよ。今回のゲーム性の要素も入れつつ,力強くパンチのあるタイトルにしたくて,いくつかの候補の中から決まったのが「X(クロス)」でした。ロゴのビジュアルもカッコいいものになりますからね。
一瀬氏:
4大メインモンスターだったり,4つの村を行き来したりといった「4つのものをかけ合わせる」という意味合いも結果的に生まれたので,このタイトルで本当に良かったと思っています。
4Gamer:
従来のシリーズ作品と同じく,ストーリーとしては完全に独立したものになっていますか。
一瀬氏:
ええ。ストーリーに関しては,前後の整合性にこだわりすぎるとゲームの辻褄が合わなくなってしまいますので,MHXでも独立した内容になっています。今回,初めてモンスターハンターをプレイする人もいらっしゃいますから。
ただ,これまでにプレイしていた人がストーリー的なつながりを想像できる余地は残しておきたいので,NPCのセリフなどのちょっとした要素は盛り込んでいます。
武器の可能性を広げる「狩猟スタイル」,狩りにアクセントをつける「狩技」
4Gamer:
従来のシリーズ作品にはなかった要素として,「狩猟スタイル」と「狩技」を導入した意図を教えてください。
最初に考えていたのは,これまで以上にアクションを強化したい。あるいは,アクションの幅を広げたいというものでした。従来のシリーズ作品では,武器の種類を変えたり,アイテムを駆使したりと,「知恵とアイテムの工夫と武器のやりとり」でクエストを攻略するのが遊びの根幹にありました。
ただ,最近では以前よりファン層の幅がかなり広くなっていて,「俺はずっとハンマーを使う」みたいな同じ武器にこだわりたいという人も増えています。そのようなさまざまなニーズに応えるべく,4つの狩猟スタイル,そして狩技の導入に至ったんです。
小嶋氏:
武器の可能性を広げる狩猟スタイル,狩りにアクセントをつける狩技。この2つの要素によって,遊びの「バリエーション」と「アクセント」というものをしっかりと表現できました。
一瀬氏:
とくに狩猟スタイルに関しては,「従来のプレイヤーがスムーズに遊べる」というのが前提だったので「ギルドスタイル」を導入しました。もちろんそれだけでは大きな変化にはなりませんから,狩技に焦点を当てた「ストライカースタイル」,ジャンプを能動的に起こせる気持ちよさを重視した「エリアルスタイル」を用意しています。誰かのプレイを見たり,自分で触ったりすれば,すぐにゲームが変わったと感じられるはずです。
4Gamer:
そして,4つめの「ブシドースタイル」はさらに趣が違いますね。
一瀬氏:
ブシドースタイルは,モンスターの動きに対してカウンターを狙っていくという,これまでのMHシリーズをやり込んでいる熟練ハンター向けのスタイルです。モンスターの動きを熟知していないと,意図的に「ジャスト回避」「ジャストガード」を発動することは難しいでしょう。
関連記事:「モンスターハンタークロス」の最新プレイアブルバージョンで,新モンスター「ディノバルド」に「ブシドースタイル」で挑戦してみた
4Gamer:
武器と狩猟スタイルと狩技。これらを組み合わせることで,プレイヤーには多くの選択肢が与えられました。
一瀬氏:
こちらで具材は豊富に用意しましたので,あとは好きなように選び,遊んでもらいたいと思っています。モンスターとの相性で,狩猟スタイルの組み合わせを変えるのも1つの手だと思います。もちろん,1つの武器や狩猟スタイルを突き詰めていく遊び方もできます。MHXをやり込むことで,自分なりの「狩りのスタイル」を見つけてほしいですね。
4Gamer:
ちなみに,狩猟スタイルや狩技はゲーム中に変更できますか。
一瀬氏:
はい。装備と同じく,自宅のアイテムボックスで変えられるようになっていますので,気軽にさまざまな組み合わせを試してください。
最も苦労したのは,武器と狩猟スタイルの相性におけるバランス調整
4Gamer:
狩猟スタイルを導入するにあたり,とくに注意したところを教えてください。
一瀬氏:
MHシリーズはファンタジー作品ではありますが,その中でも「リアルさの部分」にこだわってきました。それはハンターの新アクションも同様です。
4Gamer:
ファンタジーではあるものの,現実から完全にかけ離れた世界ではないという設定ですね。
一瀬氏:
それは,MHXでも気をつけて制作を行った部分になります。
例えば,ブシドースタイルの「ジャストアクション」は無敵ですり抜けるという要素がありますが,リアルな動きとして納得できそうなものに落とし込んでいます。エリアルスタイルのジャンプも,人の姿をしたハンターが数メートルも飛び上がるのは不自然ですが,ほかのハンターやモンスターを踏み台にすることで,なんとなくできそうな感じに思えるように設定を行っています。
「アクションを変える」というお題はありつつも,MHシリーズの作品として成り立たせる。ここに最も気をつかったかもしれません。
4Gamer:
確かに,MHシリーズの最新作として違和感はありませんでした。
一瀬氏:
「新しいアクションがしたい」とファンの方に思っていただいても,MHではない作品になってしまっては意味がありませんから。幸い,体験会に来られた皆さんから「これはモンハンだ」という声を聞けたので,安心しました。
狩猟スタイルや狩技の情報を単体で見てしまうと,「派手なアクションができるMH」といった捉え方をされるかもしれませんが,すべてをかけ合わせたアクションがMHXの特徴です。実際に触れば,MHシリーズでありながら新しいアプローチができていることが分かってもらえると思います。
そのあたりの絶妙なバランス感覚は,「モンスターハンターポータブル」シリーズをずっと手掛けてきた一瀬だからこそ実現できたことなんです。
4Gamer:
なるほど。
それでは,開発時に苦労されたところがあれば教えてください。
一瀬氏:
最も苦労したのは,武器と狩猟スタイルの相性でしょうか。
例えば,エリアルスタイルはモンスターを踏みつけてジャンプする狩猟スタイルですが,ガンナーの場合はそもそもモンスターに近づかない立ち回りが基本。そこで,ジャンプするメリットをいかに設定するか,という難題がありました。一方でメリットが大きすぎると,ジャンプするだけのゲームになってしまいますので,そのバランス調整にはかなり注意を払いました。
「オトモ(アイルー)で遊びたい」から「ニャンター」誕生
4Gamer:
先日,「モンスターハンター3(トライ)G」以来となる体験版の配信が始まりました(関連記事)。その経緯をお聞かせください。
小嶋氏:
東京ゲームショウや体験ツアーなど,プレイヤーの皆さんに遊んでいただける機会は作りましたが,新しくなったアクションと新モンスター,その両方を盛り込んだ仕様だったので,なかにはしっかりと体験できないうちに終わってしまった人もいると思います。
もちろん全国津々浦々を回れたわけではありません。そこで,なんとかできないかと思いまして,一瀬に頑張ってもらいました。
一瀬氏:
体験版に収録している新モンスターは2種類ですが,すべての武器種と狩猟スタイル,そして「ニャンターモード」を体験できます。発売直前の予習代わりに楽しんでもらえるのではないでしょうか。
4Gamer:
今のお話に出たニャンターモードについてお聞きしたいのですが,導入のきっかけはどういうものだったのでしょうか。
小嶋氏:
MHXのベースとなる部分がだいぶ固まってきたくらいのタイミングで,初めてオトモアイルーが登場したときのようなインパクトが欲しいと考えました。それで毎度のことなんですが,一瀬に相談したんです。
リリースまでのスケジュールが決まりかけていた頃に,突然「オトモ(アイルー)で遊びたい」と言い出したので,少し寝かせていましたね(笑)。
実は,家族でMHを遊びたいけど奥さんはアクションが苦手なのでプレイしていないとか,うまくない人はキャンプで待っていて,ほかの仲間がモンスターを倒したら合流して素材を取るとか,そういう話を聞いていたので,なんとか改善できないかと考えていたんです。そんなとき,小嶋の発言を思い出して,じゃあガッツリ作り込んでみようかと。
小嶋氏:
一瀬から返ってきた提案は,私が考えていたものとは比べられないくらいに遊び込める内容に練り込まれていました。プロデューサーの立場としては,MHXではなく次回作のウリとしてとっておきたいと思ったほどです(笑)。
しかし,ナンバリングではない作品だからこその挑戦だろうと考えた結果,「15番めの武器」とでも呼べるような完成度に仕上がりました。アクションの幅を広げるというコンセプトにもマッチしています。
4Gamer:
スタミナの概念がなかったり,ドングリがあればその場で復活できたりと,かなり特殊なシステムになっています。
一瀬氏:
アクションゲームが苦手な人でも楽しめるという要素は重視していますが,ある程度はハンターと共通していると思います。初心者のプレイヤーがニャンターを選ぶことで,ハンターの操作にも慣れるようにしたかったんです。
また,初心者と熟練者が少しでも近い立場で遊べるように,「サポート行動」や「地面潜り」を用意しました。同じエリアで笛を吹くだけでも仲間を助けられますし,地面に潜っていればうまい人の立ち回りを目の前で見ることもできます。コミュニケーションの促進につながると考えています。
関連記事:「モンスターハンタークロス」メディア先行体験会をレポート。オトモアイルーを操作できる「ニャンターモード」を一足早く体験してきた
小嶋氏:
CMに出演していただいた松岡茉優さんも「私のような,ほかの人の後ろに付いていくタイプでも,ニャンターならすごく活躍した気分になれます!」と喜んでくれました。
一瀬氏:
ニャンターはアイテムを使えませんが,持ち帰ることはできます。ハンターと使い分けてもらえれば,攻略もスムーズになると思いますよ。
「二つ名」と「獰猛化」,そして謎のモンスター
CM完成発表会で披露された最新PVでは,終盤に謎のモンスターの姿が確認できましたが……(関連記事)。
小嶋氏:
皆さんが想像されているとおり,ゲームの後半に登場する“それらしき存在”です(笑)。
4Gamer:
やはり,そうですか(笑)。
さらに「二つ名持ちモンスター」の存在も明らかになりましたが,いわゆる特殊個体モンスターという位置付けでしょうか。
一瀬氏:
ええ,それで間違いありません。これまでの「亜種」や「希少種」とは異なり,特別な名を冠する手強い個体です。特徴的な部位があったり,通常種とは違う攻撃パターンを持っていたりと,ある意味では新モンスターと捉えてもらえればと思います。
通常種とはまた違ったモンスターになっていますが,倒したときに手に入る素材から新しい装備が作れますので,ぜひ挑戦してください。
4Gamer:
MHXでは新たに「獰猛化」と呼ばれるモンスターの状態が登場します。いったいどんな状態なのでしょうか。
一瀬氏:
従来の「狂竜化」や「極限化」が存在しない代わりに,新たに提案したのが獰猛化です。獰猛化したモンスターは細胞が活性化し,体の一部から黒い蒸気が吹き出します。ハンターがその部分を攻撃すると,狩技ゲージが溜まりやすいので,必然的に大技同士が派手にぶつかり合う展開になるという要素です。
4Gamer:
突然,通常種が獰猛化するのでしょうか。
一瀬氏:
いいえ,もともと獰猛化している個体が存在しています。大型のモンスターの中に獰猛化状態のものがいると思っていただければよいかと。
4Gamer:
分かりました。
それでは,最後にひと言ずつメッセージをいただけますか。
今回,アクションの可能性を広げるべく,狩猟スタイルや狩技,ニャンターモードなどの新要素に力を入れて作りました。いろいろな組み合わせをじっくりと試して,「自分流スタイル」を見つけていただければと思います。
小嶋氏:
狩猟スタイルや狩技の組み合わせによって,新たな面白さが湧いてくるという部分に自信を持っています。体験版も配信していますので,ぜひ触っていただけると嬉しいです。
また,来年1月に開幕する「モンスターハンターフェスタ’16」では,MHXによる恒例の公式大会「狩王決定戦」などを予定しています(関連記事)。こちらも楽しみにお待ちください。
4Gamer:
ますます発売日が楽しみになってきました。本日はありがとうございました。
「モンスターハンタークロス」公式サイト
- 関連タイトル:
モンスターハンタークロス
- この記事のURL:
(C)CAPCOM CO., LTD. 2015 ALL RIGHTS RESERVED.
- モンスターハンタークロス (【数量限定特典】「ニンテンドー3DSオリジナルテーマ(2種)ダウンロード番号」 同梱)
- ビデオゲーム
- 発売日:2015/11/28
- 価格:¥450円(Amazon) / 770円(Yahoo)