プレイレポート
「北斗が如く」発売直前インプレッション。龍が如くスタジオの「北斗の拳」へのリスペクトが伝わってくる意欲作だ
不朽の名作「北斗の拳」が龍が如くスタジオの手にかかると,どのように描かれるのか。昨夏の発表では誰もが驚いた衝撃のコラボタイトルをひと足早くプレイしてみた。
「北斗が如く」公式サイト
「199X年 世界は核の炎につつまれた!」
おなじみのフレーズから始まるオープニングを経て,主人公・ケンシロウは南斗聖拳の使い手・シンとの一騎打ちに挑む。原作と同じく,婚約者・ユリアを奪ったシンに対する復讐の戦いだ。
この戦いに勝利したケンシロウだったが,シンから「ユリアは死んだ」と告げられる。失意の中,荒野を彷徨うケンシロウは,やがて「ユリア」と呼ばれる女性の存在を知り,わずかな希望を求めて奇跡の街・エデンにたどりつくが……。
ここまでが序章,ストーリーの導入にあたる部分だ。
随所に感じる「北斗の拳」へのリスペクト
「北斗が如く」をプレイしていると,あらゆる場面で「原作に対するリスペクト」が感じられる。劇中にはケンシロウやシンをはじめ,トキ,レイ,バットら原作のキャラクターが登場するが,その一人ひとりに「制作陣の愛」が込められているのだ。
オリジナルストーリーなので,原作とは異なるセリフやアクション,立ち居振る舞いであり,そこにはゲームらしいアレンジが施されている。それでも原作の雰囲気は損なわれることなく,細かい部分まで“キャラクターの個性”が再現されている。原作に強い思い入れがある人も,「北斗が如く」の登場人物として違和感を覚えることはないだろう。
それに加えて,エデンの統治者・キサナやエデン衛兵隊の隊長・ジャグレ,「凶王軍」を率いる凶王といったオリジナルキャラクターが物語を彩る。
最初は「イヤな奴だな」と思っていたジャグレは,その心情を知るにつれ,徐々に印象が変わっていった。何だか秘密を抱えているようなキサナも気になるが,一切の素性が不明な凶王の動向も目が離せない。
原作が存在しないオリジナルストーリーだからこそ,物語がどのように動くのか,いかなる結末を迎えるのか,先の展開が知りたくて仕方がない。中断するタイミングを見つけるのに苦労するはずだ。
エデンの統治者・キサナ |
エデン衛兵隊の隊長・ジャグレ |
もちろん,スキンヘッドやモヒカンがトレードマークの悪漢達もしっかりと登場する。非力な子供や老人をいたぶり,無法の限りを尽くす,その“ヒャッハー感”溢れる姿は「北斗の拳」を象徴する存在だろう。
それと同時に奴らがケンシロウに因縁をつけ,逆に返り討ちにされる,痛快かつお約束の流れも健在。年齢性別を問わず,広く知られる「北斗の拳」の再現度はファンのツボをしっかりと押さえているので,原作ファンであるほど楽しめるはずだ。
龍が如くスタジオらしい遊び心
物語の舞台となるエデンには,ブラックジャックやポーカーを楽しめるカジノ,ケンシロウがバーテンダーに扮してカクテルを振る舞うミニゲーム,白衣を着て人々を癒やす「ケンシロウ・クリニック」などのプレイスポットが用意されている。
絶望に瀕した世紀末において,“歓楽街”という側面を持つエデンの特色を表現している要素だが,こうしたプレイスポットやサイドミッションにも,龍が如くスタジオらしい遊び心が存分に発揮されている。
スクリーンショットを見ると,ケンシロウのバーテンダー姿はシュールに感じられるかもしれない。しかし,ゲーム内では「なぜケンシロウがバーテンダーになるのか」という過程が,彼の性格をきちんと踏まえつつ描かれているため,事前に抱いていたイメージより自然な流れに感じられる。
「北斗が如く」は「面白ければ何でもあり」ではなく,「北斗の拳」の原作が持つ約束事を守ったうえで,龍が如くスタジオらしく“調理”していることが分かるのだ。
また,「種モミじいさん」や北斗四兄弟の三男・ジャギのエピソードなど,原作の印象的なエピソードは“回想”として盛り込まれている。これらは往年のファンへのサービスであると同時に,原作を知らない人も置いてきぼりにしないための配慮となっている。
北斗神拳の真骨頂――爽快な秘孔アクションバトル
バトルシステムは「龍が如く」シリーズの操作性やアクションをベースにしつつ,「北斗が如く」ならではの「秘孔アクション」が特徴となっている。
敵を連続して攻撃すると「秘孔チャンス状態」が到来し,さらに[○]ボタンを押して秘孔を突くと,相手を動けなくして「奥義チャンス状態」に移行。ここから北斗神拳の奥義を繰り出せる。
北斗神拳の奥義は“見せ場”であり,演出もなかなか凝っている。体の内部から破壊する奥義の数々は“痛み”を感じられるほどでで,おなじみの「北斗百裂拳」や「北斗残悔拳」をはじめ,オリジナルのものも含まれている。
キャラクターの成長要素もあり,「宿命珠」を使うことでケンシロウに秘められた伝承者としての能力が解放される。解放できる能力は「心」「技」「体」「導」という4種類。生命力や攻撃力を上昇させたり,奥義やバトルアクションを解放したりと,その効果はさまざまだ。成長のタイミングはプレイヤー次第なので,自分なりのケンシロウを育てる楽しさもあるのだ。
また,敵を倒すことで北斗七星を象った「七星ゲージ」が溜まり,ケンシロウの能力が上がる「バースト」が発動できる。このあたりは「龍が如く」シリーズの“血”を感じられる部分だろう。
そのほか,さまざまなキャラクターの力が使えるようになる「宿星護符」の使い方も戦いの鍵を握る。例えば,リンの護符はケンシロウの生命力が尽きても復活できたり,シンの護符は通常攻撃で得られる七星ゲージが一定時間,増えたりする。その効果も千差万別なので,戦いにバリエーションが生まれるというわけだ。
「龍」と「北斗」,どちらのファンにもオススメしたい
今回,筆者は第5章までプレイしたが,「北斗が如く」には「北斗の拳」の原作に対するリスペクト,そして「龍が如く」のエッセンスがしっかりと感じ取れた。歓楽街のプレイスポットやシンプルかつ奥深いバトル,そして何よりプレイヤーの心を熱くするドラマは,長年にわたり「龍が如く」が貫いてきたものだ。
「北斗の拳」と「龍が如く」。どちらも非常に強い個性を持っているがゆえ,コラボレーションによってどんな作品が生まれるのか,期待も不安もあった。だが,「北斗が如く」は互いの持ち味を活かし,それぞれの魅力が存分に伝わるゲームになっている。
とくに「北斗の拳」ファンには,掛け値なしにおすすめしたい。“かつてないケンシロウ”の漢っぷりを堪能してほしい。
「北斗が如く」公式サイト
- 関連タイトル:
北斗が如く
- この記事のURL:
(C)SEGA (C)武論尊・原哲夫/NSP 1983 版権許諾証 GA-217