プレイレポート
「ストレス圧迫……かーらーのー,解放感!」が気持ちいい「Darkest Dungeon」プレイレポート
冒険における「ストレス」が最大の特徴で,公式サイトにも「ストレスなく平穏に暮らしたいという方は決してお手に取らないようお願いいたします」という注意書きがある本作は,どのようなゲームに仕上がっているのか。本稿でプレイレポートをお届けしよう。
なお,今回試遊したのはPS4版で,記事中で使用しているスクリーンショットはPS4のSHARE機能を使用したものとなっている。
一癖も二癖もあるヒーローたちのパーティでダンジョンへ挑む
プレイヤーの目的は,地下から魔物が出現し,荒廃してしまった領地を再建すること。そのために「ヒーロー」を雇ってダンジョンに派遣し,そこで得たお金や物資を使って村の施設を拡充して,さらに手強い敵が待つダンジョンに挑む……というのがゲームの基本的な流れになる。
村ではダンジョンに派遣するパーティの編成や,ヒーローが受ける負荷や恐怖といった「ストレス」の回復,装備の強化などを行える。パーティは最大4人で,ヒーローは「クルセイダー」「追いはぎ」「没落者」「ペスト医師」といった個性的な15種類だ。
ヒーローは駅馬車に乗って毎日入れ替わりで村に来るのだが,どのヒーローがやって来るのかはランダムなうえ,雇わなかったメンバーは村から去ってしまう。ゲーム開始直後は3人ずつしかやってこないので,最初から理想通りのメンバーでスタートできると思わないほうがいいだろう。
●ヒーロー紹介
クルセイダー
近接攻撃を得意とするが,単体攻撃,範囲攻撃に加えて,デバフ,回復,たいまつやストレスの管理までこなせる万能型。不死の敵にも優位に戦える
重騎兵
攻撃力は低いが,高いHPと防御力を持ち,味方の代わりにダメージを受けるスキルを持つなど,盾役に適している
没落者
非常に高い攻撃力と防御力を誇り,HPとストレスの自己回復も持つ近距離特化型ヒーロー。後衛に攻撃できないのが難点
忌まわしい者
獣への変身能力を持つヒーロー。強力な攻撃スキルを持つが,特定のヒーローからは嫌悪されており,パーティを組めなくなっている
荒らくれ者
攻撃力が高く,敵の前衛と後衛両方に攻撃できる。ただし,スキルによっては複数ターンの消費や自身の弱体化が必要になるなど,一癖あるヒーローだ
古物収集家
戦闘で目立つスキルはないが,所持金の上限や戦闘終了後に入手できるアイテムが増える探索向けのヒーロー
石弓射手
後衛からの遠距離攻撃を得意とするヒーロー。パーティメンバーの治療など,サポート能力にも長けている
墓荒らし
前衛・後衛を移動して戦う独特な戦闘スタイルを持つ。全ヒーロー中で最も罠の解除が得意なので,ダンジョンを安全に探索したいならパーティに加えたい
賞金稼ぎ
敵を動かして,前衛・後衛の位置取りを変えてしまうというユニークなスキルを持つ。墓荒らしに次いで罠の解除が得意でもある
追いはぎ
最も素早いヒーローで,後衛にいれば銃,前衛ならナイフで攻撃と,どのポジションにいても戦える器用なヒーロー
犬使い
その名前の通り,猟犬に指示を出して戦う。噛みつきで流血させるDoT攻撃(時間経過とともにダメージを与える攻撃)や,犬に癒されてのHP回復といったことが可能だ
ジェスター
攻撃や回復能力は乏しいが,敵を弱体化させたり,味方のストレスを大幅に回復したりといったスキルを持つので,長丁場のバトルになるほど心強い
神秘主義者
敵の攻撃力を大幅に下げるスキルと,HP回復スキルを駆使する。ただし,HP回復スキルは,大幅に回復できるときもあれば,0のときもあるという厄介なもの
ペスト医師
毒と出血によるDoT攻撃とスタンによる妨害で敵のHPジワジワと削るヒーローで,ジェスターと同様に長期戦になるほど強い。味方の状態異常回復も得意とする
修道女
強力な単体・範囲回復でパーティーを支えるヒーラー。聖なる力を持つため,不死の敵にも優位に攻撃できる
ダンジョン探索で受けたHPのダメージは村に戻れば自動で全回復するが,ストレスの回復は「酒場」か「修道院」で行う必要がある。ヒーローによってはどちらか一方でしか行えないので,注意が必要だ。酒場と修道院にはそれぞれ3種類ずつの癒しコースがあり,その中に「ムチ打ち」や「売春」という項目があるのは,ダークファンタジーならではだろう。
ストレスが溜まりすぎたヒーローは「奇癖」や「病気」といったバッドステータスを発生させてしまい,プレイヤーの指示を聞かなくなったり,ほかのパーティメンバーにストレスを与えたりするようになる。
奇癖や病気を治すには「療養所」に預けなくてはならないが,当然その間はパーティに入れられないし,療養所から逃げ出して行方不明になってしまう場合もある。奇癖や病気にさせないストレス管理が重要なのだ。
パーティの隊列が大きく影響する戦闘
本作のダンジョンは「部屋」と「通路」から構成されており,入るたびに自動生成されるので,同じダンジョンでも構造が変わる。
また,ゲーム進行はリアルタイムではなく,操作した分だけ時間が経過するシステム。じっとしてる間は時間が過ぎないので,慌てずに進行していい。ダンジョンにはレベルがあり,下位のほうから順に挑戦していくことになる。ダンジョンごとに設定されたクエストを達成すればクリアだ。
クエストには,領地管理人から提示されるものと,ダンジョンごとに設定されるものの2種類がある。
村にいる領地管理人が提示するクエストは「特定のモンスターを倒せ」といった類のものだ。これは冒険を進める中で達成すればよく,クリアするとメインシナリオが進んでいく。ただ,領地管理人はクエストを提示するものの,どのダンジョンに行けばいいのかといった情報までは教えてくれない。
ダンジョンごとに設定されるクエストは,「部屋にいる敵を全部倒せ」や「マップを90%踏破しろ」といった内容のもの。クエスト内容はダンジョン探索時,常に左上に表示されているので,いつでも確認できる。
ダンジョンごとのクエストを達成すれば「その回のダンジョン探索は」クリアとなる。クリアした時点で村に引き返すこともできるし,そのまま探索を続けることも可能だ。達成せずにダンジョンから引き上げてしまうと「逃げ戻ってきた」という負い目からか,パーティメンバー全員が大幅なストレス増となってしまう。
ダンジョン探索中の基本画面は,上部,下部(左右)の3ペイン表示だ。
上部には現在のパーティの様子やダンジョン内部の様子が描かれる。マップの進行方向に関わらず,画面上では常に「パーティが左から右」に進んでいるように表示される。
右下にはマップと所持品が表示される。前述したように,画面上部ではパーティが常に右へと進むので,どの部屋に進むかは,ここを見ながら右アナログスティックで決めるシステムだ。前述したように,ダンジョン構造は入る度に変わるのだが,突入時からマップ全域が表示されているので,道に迷うことはないだろう。
左下にはヒーローのステータスやスキル,装備品が表示される。戦闘時は操作ターンが来たヒーローの情報が自動的に表示される仕組みだ。
ランダムエンカウントで始まる戦闘は,ターン制で進行する。一般的なRPGのような「攻撃」や「魔法」といったコマンドはなく,ヒーロー固有のスキルを選んで戦うシステムだ。スキルはどのヒーローとも多数習得するが,ダンジョン突入時に使えるのは,事前に登録した4種類なので,ダンジョンやクエストの内容に合ったものを選ぼう。
スキルには攻撃可能な距離や範囲が定められており,こちらが一方的に攻撃できる場合もあれば,逆にモンスターから一方的に攻撃される場合もある。攻撃を受けてHPが0になると「デスドア」状態になり,そこからさらにダメージを受けると,確率でそのヒーローが死んでしまうのだが,本作でHPと同様に注意したいのはストレス。
敵の特殊攻撃やクリティカルヒットを食らったり,ターンで行動しなかったりと,さまざまな要因(詳細は後述)で溜まるストレスが200を超えても,ヒーローは死んでしまうのだ。
攻撃距離や範囲について,もう少し詳しく紹介しよう。各ヒーローは,装備中のスキルによって「得意なポジション」(パーティ内の位置)と「得意なターゲット」(敵パーティメンバーの位置)が変化し,いずれもパーティメンバーの配置位置を模した4つの丸いアイコンで表される。
得意ボジションは「左側が後衛,右側が前衛」,得意ターゲットは「左側が敵の前衛,右側が敵の後衛」で,それぞれの適正度が丸の大きさ(3段階)だ。
モンスター側も明示化こそされていないが,固有スキルによる得意ポジションやターゲットがある。前衛タイプの敵は近接攻撃が得意だが,ヒーローがスキルを使って敵モンスターを後ろに移動させれば,それを封じられる。また,後衛には攻撃が届かないので,ピンチのヒーローがいればそちらに移動させてもいいだろう。
では,プレイ中に遭遇した敵パーティとの戦闘を紹介してみたい。
一番後ろにいる小さい豚のようなモンスターは「嘔吐」で味方のストレスを上昇させる厄介な奴だ。速攻で片付けたいが,そのままではこちらの前衛による強力な攻撃が届かない。
そこでまず,神秘主義者のスキル「悪霊の引手」で,豚モンスターを2番目のポジション引っ張りだす。
次に,敵をノックバックさせる重騎兵のスキル「防御」を使い,先頭にいた盾役のモンスターを後ろに吹っ飛ばす。最後方にいたはずの豚モンスターが,あっという間に先頭だ。
そこに満を持して前衛ヒーローが攻撃。強力な打撃で難敵の豚モンスターを素早く撃破し,その勢いで残りの敵も倒すことができた。
このように,装備スキルによる得意ポジションの把握や,ポジション変更攻撃による攪乱は,本作の戦闘では非常に重要となるのだ,
ヒーローとはいえ人間,ストレスも溜まる
ここまでに何度か触れている「ストレス」は,戦闘以外でも溜まっていく。初めて探索するダンジョンは不安,ダンジョンの中で見つけたものが気持ち悪い,たいまつの灯りが暗くなると怖い,パーティメンバーの行動が気に食わない……等々,要因はさまざまで,挙げるとキリがない。
ヒーローたちは冒険者だが勇者ではなく,名声や報酬のためにやってきた単なる人間でしかない。最初は意気揚々としていても,人知を超えた得体の知れない魔物と対峙するうち,精神が病んでしまうのだ。
だが,ストレスは溜まる一方ではない。ストレス低減スキルを使えるヒーローがいるし,敵を倒したりクリティカルヒットを与えたりといった「希望が持てる」行動でも減らせる。また,前述したように,村に戻れば施設で回復できる(ただし,奇癖があると村での回復も一筋縄でいかない)。
パーティ編成や行動を工夫して,ストレスを溜め込まずにダンジョンを探索できるどうかが,クエスト成功のポイントとなるのだ。
明かりを灯す「たいまつ」も,ダンジョン探索とストレス管理に大きく影響する。たいまつが明るいとストレスが溜まらず,モンスターの奇襲も受けないので安全に探索できる。暗いとそれだけでストレスが溜まるのだが,戦闘の戦利品がグレードアップするという効果もあるので,メンバーのストレスを把握しつつ,あえて暗くして探索するのもいいだろう。
筆者は初めてのダンジョン探索で,クルセイダー(前衛),追いはぎ(前衛),ペスト医師(回復と支援),修道女(回復)という,なかなかバランスのいい編成が組めたので,「この最初の4人をメインに進めるぞ」という気分でいた。
だが,いざダンジョンに入ってみると,恐るべき状況を目の当たりにすることに。とにかく「あらゆる行動でヒーローのストレスが溜まる」のだ。
ダンジョンをただ歩くだけでストレス。
戦闘では全体攻撃でストレス。
物に触れればストレス。
事前にあまり情報を入れずにプレイしたという事情はあるのだが,こんなにも簡単にストレスが溜まるとは思っていなかった。まるで息をするようにザックザック溜まる。気を抜いてると,デッドラインの200などあっという間だ。
慌ててストレスを減らそうとしたが,パーティにはストレス回復スキルを持つヒーローがおらず,たまに出るクリティカルヒット頼み。これではまともな探索などできないと,途中で村に帰ることにした。
散々な結果に終わってしまったが,何回かチャレンジするうちに「ストレスをあまり溜めずに進める方法」が分かってきた。具体的には,
- ストレス低減か,敵をスタンできるパーティを組む
- 敵を一撃で倒せるほどまで強くしてから進む
- 疲弊したまま出撃しないように,ヒーローのローテーションを組む
といったものだ。ほかにも,所持金稼ぎやヒーロー集めがなかなかうまくいかない,どうしても奇癖や病気が発生してしまうといった困難があるのだが,こうした問題をうまくマネジメントできたときが最高に気持ちいい。ダンジョンを攻略してシナリオが進んでいったり,レアアイテムを見つけたりといった楽しさもあるが,本作ならではの面白さは,こうした「困難から抜け出したときの気持ちよさ」にあると感じた。
恐怖しかなかったダンジョンが,思い通りに探索できる快感
本作では,「物事が思い通りにスッキリ進む」ということがほとんどない。プレイ開始直後は,ゲームの仕様に開発者の悪意しか感じなかったほどだ。「入るたびにダンジョンの配置が異なる」「奇癖を回復中のヒーロがどこかに逃げてしまった」「嘔吐で攻撃する味方のスキルで,パーティ全員のストレスが溜まる」「村を訪れるヒーローが偏っている」「相性が悪くて雑魚モンスターに勝てない」といったことに遭遇するたび,筆者のストレスも溜まっていった。
では,理不尽なつまらない作品なのかと問われれば,そんなことはない。ストレスが簡単に溜まるシステムや,ストレスが溜まった先にある絶望的な状況が,本作のホラーテイストや充実感を高めているのだ。
正直に言えば,序盤はかなりキツイので,なんとなくプレイしていると詰んでしまうだろうが,それは「何かを見落としている」のだ。例えば,キャラクターに感情移入して“主人公”を作ったり,誰一人として死なせないようにしたりといったプレイスタイルだと,本作を進めるのは難しいかもしれない。
プレイヤーはいかに効率よく,安定して強いキャラクターをダンジョンに送り込めるかを考えなければいけないのだ。
本作では,レベル上げや装備強化といったRPG的なものに加えて,パーティの状態やダンジョンに合わせてパーティ構成を変化させたり,イレギュラーな状態に備えてメンバー育成やローテーションを組んだりといった,シミュレーションゲーム的なアプローチも必要となる。
そうすることでダンジョン攻略が安定し,ストレスで苦労することが減ってくる。理不尽な恐怖に支配されていたゲームが,だんだんと自分の思い通り動くようになるのだ。
この感覚が非常に面白く,同時に気持ちよい。
考えてみれば,どんなゲームにも,何かしらの制限はあるわけだが,本作はそれを非常にうまく際立たせていると言えるだろう。ストレスというマイナス要素が,極上のスパイスとなっているのだ。「ストレス圧迫……かーらーのー,解放感!」を,ぜひ味わってほしい。
「Darkest Dungeon」公式サイト
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(C)2015 Red Hook Studios. All Rights Reserved.
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