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  • ユービーアイソフト
  • 発売日:2020/11/10
  • 価格:通常版:8400円(税別)
    ゴールドエディション:1万2000円(税別)
    アルティメットエディション:1万4400円(税別)
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「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条
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印刷2020/11/26 11:00

レビュー

「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 Ubisoftの人気シリーズ最新作で,ヴァイキング時代を舞台にした「アサシン クリード ヴァルハラ」PC / PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One)が2020年11月10日にリリースされた。オリジンズから続く,新たなアサシンクリードの系譜を紡ぐ3作目にあたる本作のレビューをお届けしたい。なお,今回はPS4版でのプレイとなり,スクリーンショット,表記もそれに準じることをご了承いただきたい。

「アサシン クリード ヴァルハラ」公式サイト



アサシンクリードへの失望


 正直に言おう。私はこのゲームに全く期待していなかった。多くのファンが期待する,Ubisoftの人気シリーズ「アサシンクリード」に,私は全く期待していなかったのだ。

 誤解しないでいただきたいが,私は「アサシンクリード」を心から愛している。まだ粗削りだった頃のイェルサレムからヴェネツィア,ローマ,イスタンブール,ボストン,そしてカリブの海や近代のパリ,ロンドンまで。私は各時代のアサシンたちの精神に乗り移り,文化を味わい,風景に見惚れ,そしてテンプル騎士団への戦いに身を投じてきた。どれも素晴らしい作品だったことを覚えている。

画像集#001のサムネイル/「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 ところが,舞台が古代エジプトに移った前々作「アサシン クリード オリジンズ」PC / PS4 / Xbox One)から,私の「アサシンクリード」への期待は失われた。細かなステータスを各NPCに割り振り,暗殺にこだわらない戦闘を拡張するなど,いわゆるRPG的な要素を大きく増やしたのである。とりわけ「アサシンクリード」自慢の広大なマップに「推奨レベル」という名の境界線が張り巡らされ,序盤からそれを超えようものならそこらの盗賊に瞬殺される「検問」には,閉口してしまった。

 なぜなら,私は「アサシン」になりたくてこのゲームを遊んでいたからだ。確かにロマンのある歴史的ストーリーも面白いが,何より,私はゲームを始めるや否やオープンワールドを走り回り,虚構の遺跡に映える紺碧を尖塔から見届けるのが,たまらなく好きだった。そして気まぐれに衛兵を空から暗殺して宝物を拝借したり,露店のおっちゃんから役に立つのかどうかもわからない布を買うのが,やはり好きだったのである。

 「推奨レベル」を導入して境界線を張り巡らせた新しいアサシンクリード(本稿では便宜上,「新アサシンクリード」とする)が,このような設計になった理由に,Ubisoftが掲げる「ビデオゲームのサービス化(Game as a Service, GaaS)」が考えられる。

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 これは,ゲーム開発費が高騰&長期化する中で,一本のゲームが持続的に遊ばれるように設計する発想であり,「新アサシンクリード」にも,レベルシステム,武器のランダム化,マイクロトランザクションの導入など,「GaaS」的な取り組みが多数見られる。「アサシン クリード オリジンズ」であれば40〜50時間たっぷり遊べるのでボリュームの欲しいファンにとっては嬉しいだろう。

 ただいくら長く遊べるゲームといっても,それまでの体験を薄めたり,狭めてしまっては元も子もない。だから私は「新アサシンクリード」の“アサシンブレードを振るっても一撃で仕留められない”ゲーム性を良しとする哲学には納得できなかったし,古いアサシンクリードを懐古せずにはいられなかった。


遥かイングランドにみた希望


 結論から言えば,「アサシン クリード ヴァルハラ」は私の絶望に対する希望になった。境界線は大幅に緩和され,オプションを変更すればすべての敵を一撃で暗殺することができ,マップのほとんどを自由に観光することができる。古き良き,アサシンとして虚構の遺跡を冒険する喜びが,このゲームには詰まっているのだ。

画像集#004のサムネイル/「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 「ヴァルハラ」の舞台は9世紀。ヴァイキングと呼ばれた北欧の戦士たちがヨーロッパ大陸を闊歩していた時代,美髪王ハーラル1世がノルウェーを統一する世で,その統治に抗って北欧からイングランドに渡り,新たな王国を築こうとする一族の長「エイヴォル」の視点で物語は描かれる。

 エイヴォルは勇猛にして理性ある人物として描かれるが,その性別(男/女)を選べるうえに,ゲーム途中からも変更できる。一見して奇妙なシステムだが,実際に男性だと考えられていたヴァイキングの遺骨がDNAの鑑定によって女性のものだったとする説から影響を受けたものだろう。

 いずれにせよ,エイヴォルは自分たち以外敵だらけの異国イングランドで,数少ない同盟相手(デーン人)を探しながら,共にノルウェーから逃れてきた同胞たちの集落を拡張していく。実際,エイヴォルたちが集めた物資で,集落に住居を建てたり,店を開業していくことで少しずつ大きく便利になっていくのは,見ていて楽しい。この,アウトローたちの疑似家族形成はどことなく「Red Dead Redemption 2」を思わせる。

画像集#005のサムネイル/「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 そしてなんといっても,ゲームの醍醐味はロングシップによる海賊活動である。史実でもヴァイキングたちが愛したロングシップは,帆とマストが備え付けられてはいるものの,狭い場所でも櫂で動かせる細長い舟艇で,大変に頑丈に作られている。「ヴァルハラ」では,このロングシップに精鋭の戦士たちを乗せて,イングランドに張り巡らされた河川を縦横断し,要塞や教会を襲撃して財産を奪えるだけ奪っていく。

 男女が野太い声で歌いながら櫂を漕ぎ,略奪する場所を見つけては,エイヴォルが角笛を「ブォオーン」と鳴らし,戦士たちが雄たけびと共に突撃していく姿は実に壮観で,もうこのシーンを見るためだけに「ヴァルハラ」はプレイする価値があるとさえ思う。斧を振り回し,兵士たちを全滅させたら即クリアではなく,ちゃんと自力で宝物庫をこじ開けて戦利品を漁れるシーケンスまで用意されているのを知って,心から開発陣と握手したくなった。

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 それにしても,今のUbisoftがこの「略奪」を中核に添えた「アンモラルなゲームデザイン」を導入したのは興味深い。

 「新アサシンクリード」は「メジャイ」や「傭兵」としてオープンワールド化した祖国を防衛するという,暴力をわかりやすく正当化するモラルが組み込まれていた。つまり,自分たちの“領土”がのっぴきならぬ侵略者に襲われたのだから取り返すためには暴力も仕方なしという,報復の哲学だった。この哲学は同社の「ファークライ」シリーズ,またSucker Punch Productionsの「Ghost of Tsushima」にも根付いている。

 「ヴァルハラ」においてエイヴォルとプレイヤーの行う侵略,略奪,虐殺に,そうしたモラルの正当化は見られない。確かにエイヴォルたちは祖国を追われた身といえ,サクソン人たちが汗水たらして築いた物資を奪い,それらを護る兵士たちを殺す正当な理由はないし,事実エイヴォルたちは少なからずその倫理観で揺れ,対立することもある。

 私はこのヴァイキングの(現代的な価値観における)非倫理性を受け入れたUbisoftが大変に潔く感じる。それと同時に,ロングシップと斧で異国の地を襲撃するという史実の荒くれたちの「倫理観」と,オープンワールドに点在する各拠点を自由に襲撃できるという「『アサシンクリード』的ゲームデザイン」のあいだに,ほとんど隙間なくかみ合った「体験」で得られる,「まさに私は10世紀のヴァイキングとして,信奉するオーディンのために斧を振るっているのだという一体感」が,実に美しいと感じた。

 ここまでもし熟達のアサシンの方が読まれていたら,すぐに「アサシンクリード4 ブラックフラッグ」を思いだすことだろう。その通り,実は「ヴァルハラ」は特にファンの間で評価の高い「4」に近い。海賊として大船でカリブ海を蹂躙したエドワードのように,ヴァイキングとしてロングシップでテムズ川を制覇するゲームなのだ。

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今までの「アサクリらしさ」もブリテン風に味付けされて大きく強化


 ここまで,いかにもヴァイキングらしい大胆なゲームプレイを中心に紹介したが,もちろん「アサシンクリード」らしいプレイも可能だ。

 何よりうれしいのは,オプションを変更すれば暗殺ですべての敵を一撃で屠れるようになったことだろう。レベルによって敵味方のステータスで差がついた「新アサシンクリード」では,敵のレベルが高すぎると心臓を刺してもピンピンしてるという有様で,もうタイトルからアサシンを外すべきでないかと思っていたのだが,今回からステルスを維持すれば全エリアで暗殺が可能になった。

 だがそもそも,どうして北欧のヴァイキングが中東伝来のアサシンブレードを使えるのか? その理由は実際に遊んで確かめてほしいのだが,,実は最初から暗殺ができるわけではなく,ある特定の人物とイベントをこなしてやっとアサシンブレードが使えるようになる。これが初代からプレイしているファンにとっては大変感慨深い(当世風に言うと“エモい”)ので,まずはここまでプレイしてみてほしい。

画像集#009のサムネイル/「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 「アサシンクリード」の目玉といえば,やはり精巧な歴史調査に基づいて丁寧に再現された偉大な遺構群の観光だが,こちらも「ヴァルハラ」はすばらしい。

 主な舞台となるイングランドは,現地人にケルト人が技術を伝え,ローマ帝国の一部となり,ゲルマン系民族(アングロ・サクソン)が国家を次々に立ち上げ,そして「ヴァルハラ」の時代にデーン人たちの侵略を受ける。つまりイングランドは,永い歴史の中で絶えずあらゆる民族の流入と混血を繰り返して築かれた国なのである。

 故に「ヴァルハラ」で描かれるのは,時代ごとに築かれ,そして滅んでいった文明たちの夢の跡だ。マーシアの肥沃な大地を駆け抜けると,サクソン人たちの教会が見上げるように建てられていて,一方でそうした文明から見放された無法者たちは,ローマ時代に建てられたであろう12の神々の巨像が今も残っているのをエイヴォルと共に見る。その姿に私は思わず諸行無常に胸を打たれた。何故なら,私たちは知っているから。今こうしてサクソン人を襲うヴァイキングたちのロングハウスも,こうした遺構の一部となってしまうことを。

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 少ししんみりしてしまったが,サクソン人たちの集落に混ざって余興,つまりミニゲームに興じるのもいい。「アサシンクリード」のミニゲームは毎回現地の遊びを追体験するこだわりで楽しみにしていたが,今作の「オーログ」「口論詩」はシリーズの中でも特に長く楽しめるだろう。

 「オーログ」は特殊なダイスを使ったゲームで,攻撃,防御,奪取が彫られた目を組み合わせて戦い,相手の点数を0にすれば勝ちというシンプルなもの。ただダイスによってトークンを得られ,これらを消費して「神の恩恵」という強力なスキルを使えるのが面白い。

 「口論詩」は要するにMCバトル(ラップバトル)で,相手の挑発に,韻やフローを合わせた挑発で返していく。これが想像以上にシビアで,相手が伝えんとする挑発をちゃんと解釈しないといけないし,仮に韻を踏んでいても「殺す」などの言葉を選ぶと「あまり強い言葉を使うなよ 弱く見えるぞ」的なケチをつけられて減点になったりする。何より驚くべきは,日本語に翻訳されているのにちゃんとラップとして成立している点で,これはローカライズチームのセンスに驚かされた。



新ハードのアサシンクリードに期待


 さまざまな挑戦を見せてくれた「ヴァルハラ」だが,ハードの世代交代の最中に生まれたためか,いくつか看過しがたい不具合が散見された。

 今回,筆者はレビュー用にPS4版をプレイしたが,パフォーマンス面はかなり厳しかったと言わざるを得ない。特に数十人のNPCが入り乱れる略奪ではフレームレートが10〜20fps程度しか出ないカクカク具合で,快適なゲームプレイには程遠かった。コンシューマでプレイする場合,PS5やXbox Series S/Xの新世代機でプレイした方がよさそうだ。また略奪時にはNPCを呼んでも来ない(=進行不能になる)バグが散見されたが,パッチで改善されることに期待したい。

画像集#012のサムネイル/「アサシン クリード ヴァルハラ」レビュー。ロングシップでの略奪に蘇った「アサシン」の信条

 またレベル制は大幅に緩和され,自由に移動・戦闘がしやすくなったとはいえ,未だに攻略ルートはレベルに準じていくつか制限されている。いっそ,レベル制そのものをなくして,スキルツリーだけでいいと思う。

 総じて「アサシン クリード ヴァルハラ」は「GaaS」という呪いから解き放たれ,アサシンクリード本来が持つ自由な冒険,一撃の暗殺,美しい景観を存分に楽しみながら,新たにヴァイキングとしての略奪という新しい基軸を取り込み,シリーズの中でも特に完成度の高い作品となった。

 (PS4版の)パフォーマンス面や日本ならではの規制といった不満はあれど,根底から見直し,不要なものを切り捨て,必要なものだけを選んだ本作の革新は,これからも含めた「アサシンクリード」シリーズの永い歴史においても,偉大なものとなるように思う。

 最後に,もし「ヴァルハラ」をプレイするなら,合わせて幸村 誠氏の「ヴィンランド・サガ」も強くオススメしたい。「ヴァルハラ」とほぼ同じ時代,ヴァイキングたちのイングランド侵攻を描いた漫画で,彼らの暴力,文明,絆が極めて公平に,そして冷徹に描かれている。血も臓物も余すことなく描かれていて,ヴァイキングたちがこの土地に何をもたらしたか,より詳しく知ることもできるだろう。最高の参考文献になるはずだ。

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