プレイレポート
「ENDER LILIES: Quietus of the Knights」アーリーアクセス版プレイレポート。幻想的なビジュアルとエモーショナルな演出のメトロイドヴァニア系アクションゲーム
2D横スクロール型で探索を行う,メトロイドヴァニアと呼ばれるスタイルとなっており,絵本を思わせる幻想的なアートワークと,「攻殻機動隊」や「ゴブリンスレイヤー」の楽曲に携わった音楽集団「Mili」による音楽が大きな特徴となっている。
コンシューマ機版のリリースも予定(時期は未定)されている本作だが,1月21日にPC版のアーリーリーアクセス版が配信されたので,そのプレイレポートをお届けしよう。
「ENDER LILIES: Quietus of the Knights」公式サイト
本作の主人公はか弱い少女のLilyで,記憶を失った彼女が,荒れ果てた「果ての国」で目覚めたところから物語がスタートする。旅の舞台ともなるこの地には,止むことのない「死の雨」が降っており,人を含む生き物はみな,凶暴な不死者“穢者(けもの)”へと変えられてしまっている。
無数の穢者が徘徊する地獄のような世界に戸惑うリリィだが,その前に突如,亡霊のような黒衣の騎士が現れる。彼は,リリィは「白巫女」であり,穢者を浄化する力を持つと語り,さらに,彼が肉体を失ったいきさつには,リリィが関係しているのだという。
果たして過去には何があったのか。失われた記憶を求め,リリィの旅が始まる。
白巫女であるか弱い少女・リリィ(写真左)。亡霊のような黒衣の騎士(写真右)はリリィを守るために戦う |
ゲーム中のアートワークは美しく,荒れ果てた城,雨が降り続く廃村,水に沈んだ建物,燐光を放つキノコが群生する地下世界など,背景美術は重苦しくも幻想的だ。そこに火の粉のようなエフェクトが飛び散ったり,透明な水が流れるといった“動きのある表現”が加わり,その世界の様子を深く感じることができる。
また,リリィの行く手を阻む蠢く穢者はどれも不気味で,攻撃を受けると血を吹きだして倒れる様などはホラーゲームを思わせる。なお,リリィ自身は白を基調とした色合いでデザインされているのだが,暗く陰鬱な世界を,真っ白な彼女が駆け回るというコントラストは非常に印象的で,ダークなおとぎ話を語る,不思議な仕掛け絵本といった雰囲気にもなっている。
プレイヤーが操作するのはリリィだが,穢者と戦う際に攻撃するのは,彼女が呼び出した亡霊の魂だ。ゲームシステムとしては“様々な攻撃を使い分けつつ戦う”というシンプルなアクションゲームだが,絵的には“騎士や魔物が怯えるリリィをかばって攻撃する”表現となっており,彼女や亡霊といったキャラクターに対する感情を刺激される。
キャラクターの細かな動きと演出によって,黒衣の騎士がリリィを守って戦うという,エモーショナルなシーンがシステムに組み込まれた形で表現されている |
ゲーム性としては,いわゆるメトロイドヴァニアの基本に忠実である。果ての国は無数のエリアが繋がった構造になっており,通常のジャンプでは登れないガケや,潜れないほどに深い湖など,様々な障害がリリィの行く手を阻んでいる。しかし,探索を進め,中ボスや大ボス的な穢者を倒すと2段ジャンプや水中行動といった特殊能力が手に入り,行動範囲が広がっていく。
探索する時のドキドキ。そして,新たな特殊能力を手に入れた際に「これがあれば,行き止まりだったあの場所が突破できるんじゃないか」とマップを見返す時のワクワクがメトロイドヴァニアの醍醐味だが,本作でもそうした面白さはキッチリ味わえるのである。
穢者との戦闘は,俗にいう“死にゲー”に近く,シビアで緊張感あるものになっている。敵の一撃で体力ゲージの約3分の1が吹っ飛ぶことも珍しくなく,攻撃を食らった際の無敵時間も極めて短い。また,リリィのレベルアップに応じて穢者も強くなっていくようだ。
穢者の配置も良い意味でいやらしく,タフな巨漢の後ろからカラスが弾を撃ってきたり,キノコの穢者が狭い足場に毒ガスを吹き出させるなど,危険なシチュエーションも多い。中でもボスは手ごわく,様々な攻撃を繰り出してくるので,パターンをしっかり見切り,適切に対応することで受けるダメージを抑え,じっくりと戦っていく必要があるのだ。なお,体力回復や強力なスキルを使えるものの,回数は限られているため,ゴリ押しで進むことは難しい。
手強いボス穢者を倒して浄化すると,その魂がリリィに力を貸してくれるようになる。具体的には,ボス穢者の攻撃を「スキル」として繰り出せるようになるのだ。
スキルは直接攻撃や飛び道具,防御からのカウンターなどがあり,発動時にはスキルの持ち主である穢者も登場するので,テンションが上がる。手に入れたスキルはスロットにそれぞれ装備でき,3スロット×2セット,合計6種類を切り替えて戦える。
鉄球を振り回す「守り人シーグリッド」を設置してから穢者の後ろに回り込み,剣で斬りつける「黒衣の騎士」で挟み撃ちにするといった戦い方や,自動で飛び道具を放つ「西の商人」と,誘導弾を放つ「黒の魔女イレイェン」で遠距離攻撃に徹するといった立ち回りなど,色々な組み合わせを試してみたくなる。
スキルの付け替えは特定ポイントでのみで行える。攻略したいステージに合わせて,所持しているスキルから6種を選んでセットしよう。スキルは専用のアイテムを集めて強化することも可能 |
アイテムに付与されたテキストや,ボスを倒した際に垣間見える記憶から過去の出来事を探るというストーリーテリングは想像力を刺激するものだ。また,テキストのテイストからは「DARK SOULS」シリーズの影響を受けていることがうかがえる。
そこに絵本のようなアートワークや,か弱いリリィと醜怪な穢者の対比,リリィに浄化された魂が彼女を守るバトル描写,ハミングやピアノの音が効果的に使われたBGMなどの要素が加わり,感情に強く訴えかける作品となっている。
配信されているアーリーアクセス版は,ステージ3までプレイが可能だ。全体としては,かなり序盤までと思われるが,深い世界観と謎めいた物語の片鱗,そして様々なスキルを使い分ける2Dアクションとしての面白さなどは十分に体験できる。
PC版の正式リリースは2021年春(コンシューマ機版は未定)と少し先だが,メトロイドヴァニアや“死にゲー”が好きな人,そして本作の雰囲気が気になる人は,ぜひアーリーアクセス版をプレイしてみてほしい。
「ENDER LILIES: Quietus of the Knights」公式サイト
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ENDER LILIES: Quietus of the Knights
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