インタビュー
デスナイトまでたった2週間!?「リネージュ」アップデート「激突の風」の見どころと狙いについて開発者にインタビュー
2月20日に行われた前編アップデート「狂乱の風」では,リネージュ史上最強クラスのモンスター,風竜 リンドビオルが登場した(関連記事)。そして4月16日には,後編アップデート「激突の風」が実施される予定となっている(関連記事)。
激突の風のメイントピックは,韓国での実装直後,リネージュの同時接続者数を22万人まで押し上げた一因とも言われている「ハイパス」。それがついに日本にも上陸するわけだ。
今回,激突の風のローカライズ作業に対応するため来日していた,NCsoftのリネージュ開発室海外デザインチーム チーム長Kim Dong Yong氏と,同チーム日本担当Kwon Sewoong氏にインタビューする機会を得た。激突の風アップデートの見どころや狙い,韓国内での評判や今後の展開などについて話を聞いたので,プレイヤーはぜひチェックしてほしい。
「リネージュ 〜Eternal Life〜」公式サイト
韓国「リネージュ」の同時接続者数を22万人に押し上げた
高速育成システム「ハイパス」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて,お二人の「リネージュ」における役割について教えてください。
「リネージュ」チームで開発の総括や,サービス地域ごとの現地化/コーディネイトなどを担当しているKim Dong Yongと申します。リネージュには,だいたい9年前くらいから関わっていて,「Lineage Tournament」や,ネットカフェ専用コンテンツ「最果ての神殿」なども私が開発しました。
Kwon Sewoong氏:
私は海外開発室で,日本での展開を担当しているKwon Sewoongと言います。主に海外のアップデート内容を日本用にローカライズしたり,事業チームやマーケティングチームとイベントを開催したりしています。リネージュに関わるようになってから,大体3年くらいになります。
4Gamer:
分かりました。ではさっそくアップデートについてお聞きしたいのですが,日本では「激動のアデン」が前後編に分かれて実装されますよね。前編「狂乱の風」は2月20日,後編「激突の風」は4月16日に実施予定となっています。狂乱の風はすでに実装済みなので,今回は激突の風について教えてください。
Kim Dong Yong氏:
激突の風の見どころは,なんといっても「ハイパス」ですね。これは,敵からの取得経験値量や狩り場の配置,クエストへの導線などを見直し,キャラクターのレベリング速度を劇的にアップさせる施策です。
4Gamer:
韓国情報によると,普通にプレイしていても2週間でデスナイトになれる(キャラをレベル52まで成長させられる)という話ですが……。
Kim Dong Yong氏:
はい。毎日1,2時間普通にプレイしていれば,2週間程度でレベル52に到達できます。「リネージュはレベルが上がりにくい」という印象を持っているMMORPGファンも多いでしょうが,激突の風の導入後は,その印象がガラッと変わるでしょう。
4Gamer:
レベリングが比較的難しいリネージュとしては,ずいぶんと大胆なバランス調整のように思えます。主な狙いはどのあたりにあったのでしょうか。
Kim Dong Yong氏:
おっしゃるように,リネージュはレベルがなかなか上がりにくいMMORPGでした。そのバランスは,プレイヤーに大きな目標やステータスを付与したり,ゲーム内コミュニティの形成に役立ったりと,さまざまなメリットを生んでいたのですが,一方で,ライトプレイヤーが離脱する一因にもなっていました。ハイペースなレベルアップを可能にするハイパスは,そういったプレイヤーさんの復帰を促し,ゲーム内世界の停滞したレベル分布を変化させるために開発したものです。
Kwon Sewoong氏:
リネージュは10年以上もサービスが続いているMMORPGですので,熱心なプレイヤーさん達も共に成長していますし,ゲームを取り巻く環境も大きく変化しています。
これまで,レベリングの難しさに関するご意見は多数いただいていますし,開発者側も「変えなくちゃいけない」という危機感を抱き続けてきました。そういったさまざまな要因が絡み合い,ハイパスの導入が決定されたんです。
4Gamer:
韓国のプレイヤーからも,「もっとレベルをサクサクと上げたい」という意見は多かったんですか?
ええ。レベル49,50あたりの辛い時期に離脱するプレイヤーは少なくありませんでしたし,昨年,ちょうど「Diablo III」が登場した時期には,韓国内のアクティブプレイヤー数がガクンと減ってしまったんです。
そこで,「これは最後のチャンスかもしれない」という想いを込めて,激突の風アップデートを実施したところ,離脱したプレイヤーも帰ってきてくれましたし,コアプレイヤー達からも好評を得ることができました。
当初,レベリングのバランスを緩和することに懐疑的なスタッフも多かったんですが,思い切ってアップデートして良かったと思います。
4Gamer:
まさに英断だった,ということですね。聞いた話によると,激突の風実施後の2012年末は,リネージュにおける過去最高の同時接続者数を記録したとか。
Kim Dong Yong氏:
同時接続者数で22万人ですね。今現在も19〜20万人くらいをキープしています。
4Gamer:
日本のMMORPGでは,ちょっとお目にかかれない数字ですよね……。他社のMMORPGも含めて,そのレベルの同時接続者数を記録したMMORPGはほかにも存在するんでしょうか。
Kim Dong Yong氏:
やはり「Diablo III」は別格の強さで,一時期は韓国内で40万人前後の同時接続者数を記録していたと聞きます。NCsoftでは,「Blade & Soul」がローンチ時に22万人を記録して話題になったんですが,今ではリネージュのほうが上ですね(笑)。
先ほども言いましたが,「Diablo III」が登場したときが本当にピンチだったんですよ。その時に,リネージュの同時接続者数が15万人くらいまで落ち込んだのですが,何とかピンチをチャンスに変えることができました。
4Gamer:
本当にピンチの状態で15万人というのもすごい数字ですが……。ところでハイパスは,韓国版と同様の内容で日本版に適用されるんですか?
Kwon Sewoong氏:
はい。当初は,日本の水準に合わせなければならない部分もあるだろうと悩んでいたんですが,日本も韓国のように,49〜50くらいのレベル帯で苦しんでいるプレイヤーが多いという話を聞き,韓国と同条件の内容を盛り込むことにしたんです。
Kim Dong Yong氏:
リネージュって,レベル52以降にも楽しめるコンテンツが沢山あるのに,レベルの上げにくさがネックとなり,多くの人に楽しんでもらえていない状況が生じていました。今回の激突の風は,そういった状況を打破するためのアップデートといえるでしょう。
4Gamer:
ちなみに韓国では,簡単にレベルが上がるようになったことに対して,コアプレイヤーからの不満の声が目立ったりはしましたか?
Kim Dong Yong氏:
もちろんそういうプレイヤー達もいました。でも皆さん,活性化したゲームを楽しむのに急がしなったのか,すぐにネガティブな意見は目立たなくなりました。
誤解のないように付け加えておくと,今回のアップデートはただの「近道」として作られたのではなく,「従来なら3年かかったものを,2週間に圧縮して進められるような形にした」というものです。
これまで,上級者と初心者/中級者との間には,大きな溝がありました。ハイパスによるゲーム内コミュニティの活性化/レベル帯の底上げは,その溝を見事に埋めてくれたんです。今後はMMORPGらしい助け合いや熱い対人戦が,どんどん生まれていくんじゃないかと思いますね。
4Gamer:
日本には,10年も運営が続いていて同時接続者数20万人を越えるMMORPGなどないので,ちょっと気になったんですが,韓国におけるリネージュというMMORPGは,感覚的にどれくらいの人気や知名度があるものなんでしょうか。
Kwon Sewoong氏:
たとえば,普段ゲームをよく遊ぶ10代ではなく,ゲームにあまり興味がない,50代以上の大人だと,NCsoftという会社を知らないかもしれません。しかし,リネージュという名前はほとんどの人が聞いたことがある……くらいの国民的知名度はあると思います。韓国の人口が5000万人くらいなんですけど,リネージュの会員登録者数はその1/4くらいですね。少なくともゲームファンであれば,一度くらいはプレイしたことがあるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。NCsoftのスタッフは,リネージュがこれほど大きな作品になるって予想してたんですかね。
Kim Dong Yong氏:
少なくとも私は予想できませんでした(笑)。リネージュの父と呼ばれているJake Song氏がリネージュを作ったときは,小規模なチームで開発費もなかったため,NCsoftのキム・テクジン氏に権利を売却したのですが,ここまで大きくなるのが分かってたら,絶対に売らなかったでしょうね(笑)。でも,キム・テクジン氏の先見の明のおかげで,ここまで大きくなれたというのも事実だと思います。
今後はモバイル対応やPvP要素に注力
4Gamer:
激突の風アップデートによって,日本版のリネージュも大きく盛り上がると思うのですが,その後の展開について,何か考えていることはありますか?
ゲーム内世界が活性化し,プレイヤーの平均レベルも上昇しますし,やはりPvPを盛り上げていきたいですね。攻城戦など,人と人との戦いの部分に力を入れていければと考えています。
あとは,モバイル端末で簡単にコネクションできるような施策も考えています。すべてのプレイヤーが,もっと気軽にゲームへ接続できるような環境を作っていきたいですね。
4Gamer:
モバイル対応についてもう少し聞かせてください。それは単純に,モバイルでリネージュがプレイできるようになるというわけではありませんよね?
Kim Dong Yong氏:
そうですね。ゲームをそのまま移植するというよりは,ミニゲームと連動させるイメージでしょうか。ミニゲームで得た経験値などを,ゲームに反映させられるようなものを考えています。
4Gamer:
なるほど。最近はタブレット端末でもMMORPGが遊べるようになってきているので,リネージュはいずれも……などと密かに期待しているんですが。
Kim Dong Yong氏:
もちろん,そういった研究も開発チーム内では進めています。ですが操作性や安定性などを考えると,まだまだ実用レベルには至っていないというのが実情ですね。将来的には,スマートフォンやタブレット端末でリネージュを遊べるようにしたいと考えていますが,まずはミニゲーム的な連動を実現させるべく,研究を進めています。
4Gamer:
分かりました。ところで先ほど,PvP要素についてもテコ入れするつもりだとおっしゃっていましたよね。難しいとは思うんですけど,可能な範囲で,どのようなテコ入れを考えているのか,教えてもらえませんか。
Kim Dong Yong氏:
うーん……今はPvPに関する新システムを検討しているのですが,まだ公開できる段階ではないですね。具体的なお話はできないのですが,「大規模な何か」を考えている……とだけ申し上げておきます。
4Gamer:
攻城戦以上に大規模な対人戦闘システム?
Kim Dong Yong氏:
10年以上運営しているMMORPGなので,やはりPvPにもトレンドの変化があるんですよね。現在のトレンドを考えると,もっと楽しく,簡単に,たくさん楽しめるような形がベターなんじゃないかと。
4Gamer:
気になるなぁ……。
Kim Dong Yong氏:
公開可能になったら,すぐにお知らせしますので(笑)。
比較的近い時期の話としては,ほかのサービス地域でアップデートしたコンテンツの中から,日本にマッチしたものを選んでローカライズする計画があります。これまで,韓国での開発作業で精一杯で,他国のサポートを万全に行えていなかったのが実情です。しかし今は人員も追加できたので,質の高いサポートを迅速に行える環境が整いました。
たとえば,台湾地域の特色に合わせて開発された,魔族の実験室(高レベル向け)と,個人戦/団体戦がある闘技場などの対応も順次行っていく予定です。
4Gamer:
分かりました。それでは最後に,日本のリネージュプレイヤーに向けてコメントをお願いします。
Kim Dong Yong氏:
いつも変わらずリネージュを楽しんで下さっている皆さんには,本当に感謝しています。今年はエヌ・シー・ジャパンのスタッフと共に,昨年の2倍近いボリュームのアップデートをお届けする予定ですので,言語ともリネージュをよろしくお願いします。
Kwon Sewoong氏:
私は,作ったコンテンツを各国に届ける仕事をしているんですが,アップデートを実施すると,各国からさまざまな意見が送られてきます。そんな中日本のプレイヤーさんは,他国と比べて優しいのか,基本的に不満の声が少ない印象を受けるんです。スタッフ一同,より楽しいゲーム体験を提供したいと強く思っているので,厳しいご意見も遠慮なくおっしゃってください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
そんなリネージュも,今では基本プレイ無料のMMORPGとして運営され,ある意味大きな特徴でもあった“レベリングの難しさ”を大幅に緩和。古参プレイヤーを満足させるだけでなく,新規/復帰プレイヤーの獲得にも意欲的だったからこそ,リネージュは競争の激しいオンラインゲーム市場において,一定以上の成功を収められているのかもしれない。
韓国リネージュの同時接続者数を22万人に押し上げたという「ハイパス」の威力は,4月16日の「激突の風」アップデートによって,日本でも確認できるようになる。既存プレイヤーにとっても興味深い内容だが,(当時)憧れのデスナイトに変身する前に引退してしまったという元プレイヤーも,一度試してみてはいかがだろうか。
「リネージュ 〜Eternal Life〜」公式サイト
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