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YNK GAMES運営管理責任理事Ji-Won Suh氏にインタビュー:日本での再起をかけた「R.O.H.A.N」フリーテスト。その真の意味と重要性は?
■なぜ「R.O.H.A.N」は,日本のプレイヤーに
■受け入れられなかったのだろうか?
4月26日に開始された「フリーテスト」をきっかけとして,大幅にリファインされることになる「R.O.H.A.N」ですが,そこに至るまでの経緯や理由などを,あらためて聞かせてください。
Ji-Won Suh氏(以下,Suh氏):
ご存じの通りR.O.H.A.Nは,韓国で開発されたMMORPGです。現在は台湾でもサービスを開始していますが,海外での展開は日本が初めてでした。韓国はもちろん,正式サービスがスタートしたばかりの台湾でも,プレイヤーからは高い評価を得ています。
4Gamer: 韓国では,最新アップデート「Epic4」をきっかけにプレイヤー数が増加し,新規サーバーを追加したとか。また台湾でのサービスに関しては,初月収益が1億NT$(ニュー台湾ドル)を突破したそうですね。
Suh氏:
はい。しかし残念ながら,日本市場でのR.O.H.A.Nは,率直に言わせてもらうなら,顧客に受け入れられたとは言いがたい状況が続いています。日本版の大幅なリファインは,日本市場での不振が理由だと言えます。
新生R.O.H.A.Nの構想を固めるにあたっては,そもそも開発スタッフの視点が悪かったのか,あるいはパブリッシングの方法が日本市場に合っていなかったのか,そういった根本的なところから原因を究明しなければなりませんでした。
4Gamer:
安易にグラフィックスを日本人好みのものに描き変え,短期的な成功を目指すのではなく,プレイヤーに長年愛されるようなゲームにするための,抜本的な対策ということですね。
Suh氏:
まさにそのとおりです。韓国と台湾ではほぼ同じクライアントでサービスを提供しており,ゲーム世界に流れるストーリーも完結していません。オリジナルバージョンのR.O.H.A.Nも,今後のアップデートで拡張されていくわけです。そういった状況のもと,日本のR.O.H.A.Nは完全に独自路線を貫くべきか,あるいはオリジナルのシナリオと接点を持たせるべきか。これについてはかなりの議論を重ねました。
4Gamer: その論議の結果,日本でのR.O.H.A.N不振の原因はどこにあったと判断しましたか? ぜひ教えてください。
Suh氏:
オンラインゲームはコンシューマゲームと違い,生き物のような存在です。常に変化し続けますから,「これが答えだ!」と一言で表現することはできません。ユーザーのプレイスタイルやプレイ時間,ゲームバランスなどを見ながら,常に探し続けるものでしょう。
誤解してほしくないのですが,フリーテストという形で新生R.O.H.A.Nを皆様のもとにお届けしますが,これは従来の問題点を完全に克服し,日本のプレイヤーが求めているものが何かという答えを出したということではありません。むしろフリーテストを通じて,プレイヤーからより多くの意見/要望をいただきたいと考えているのです。
4Gamer:
確かにMMORPGは,プレイヤーがその時々で求めているものを敏感にキャッチし,世界観を損なわない形でそれを取り入れていく必要のあるジャンルですね。タイトルを成功に導くための唯一の答えはない,という考え方には同意します。
しかし,再出発を図るにあたって,現時点でクリアすべき問題は何なのかという点に関しては,ある程度具体的な答えが出ていると思います。そこをお聞きしたいのですが,いかがでしょうか。
Suh氏:
韓国と日本のプレイヤーでは,プレイする時間帯や接続時間,プレイスタイルなどが大きく違っています。それらを考慮したうえで,接続時間が短くてもゲームを楽しめる成長バランスの調整を行いました。また日本人プレイヤーの,ゲーム内での行動の多様性に合わせて,コレクション可能なアイテムや衣装の追加。そして元からあるR.O.H.A.Nの世界観を壊さないように注意したうえでの,グラフィックスの変更。以上の三つが,新生R.O.H.A.Nの主要な修正ポイントです。
■今努力しなければ,日本版R.O.H.A.Nの未来はない
■フリーテストにかける想い
なるほど。確かに三つとも重要な要素だと思います。しかしながら,Suh氏が述べたポイントは,ここ数年,どこのデベロッパも口にしていることではないでしょうか?
日韓プレイヤーのプレイスタイルや目的の違い,とくに日本のプレイヤーはコレクター気質が強く,衣装やアイテムの収集を楽しむ傾向が強いといった話は,韓国産のMMORPGに興味を抱く人間なら,何度も耳にしている情報でしょう。問題点としてそれらを取り上げるのは,失礼ながら,いささか見通しが甘かったのではないでしょうか。
Suh氏:
最初に申し上げたとおり,R.O.H.A.Nの海外進出は,日本が第一弾ということもありましたが,仰るとおり私達の勉強不足であり,お恥ずかしい話です。
日本語版にしても,韓国版とまったく同じクライアントを日本に持ち込んだわけではありません。日本市場向けに成長バランスやシステムを細かく調整したつもりでいましたが,今となっては,それでもリサーチ不足だったと認めるしかないでしょう。
繰り返しになりますが,新生R.O.H.A.Nには大幅に修正を加えていますが,これで完璧だ,必ず成功できるとは私達も考えてはいません。足りないところがきっと出てくるはずです。随時修正が可能というオンラインゲームの長所を最大限に生かし,日本のプレイヤーが本当に求めているものを,必ずや見つけ出したいと考えています。
韓国に限らず,海外のメーカーの中にはブランド力だけに頼ってローカライズを怠り,失敗してきたケースも多々あります。動き出すのが少々遅かったという後悔もありますが,今努力しなければ,日本版R.O.H.A.Nを立て直す機会は,永遠にやってこないでしょう。そのために,日本をよく知るYNK JAPANのスタッフからも,日本のプレイヤーの動向についてアドバイスをお願いしました。
4Gamer:
ちなみに,YNK JAPANからはどんなアドバイスが出たのですか?
Suh氏:
YNK JAPANからは,「韓国と日本とでは,ゲームに対する姿勢や情緒面に大きな違いがある。その違いを把握するために,一度日本にきて,日本を実感してみてほしい」とのアドバイスをもらいました。また,主にアイテムやゲームバランスに関する要望を事細かに調査/分析しました。
意外だったのは,日本におけるコミュニティの形成は,韓国や台湾と比べてかなり時間がかかる,という点でした。日本では,ギルドに入るだけでも,チャットで面接を行ったり,体験期間を設けたりすることがあるそうですね。
4Gamer:
そういったギルドばかりではないでしょうが,確かに,ゲーム内コミュニティの加入/脱退に関しては,慎重な人が多いかもしれませんね。
Suh氏:
ネットカフェでのプレイが中心の韓国や台湾では,隣の席に座ったR.O.H.A.Nプレイヤーと気軽に声を掛け合って,その日,その場限りのコミュニティを形成したりする人が少なくありません。韓国や台湾では,ギルドに入るために面接が必要などといわれたら,「面倒だから結構です」となってしまうでしょう。
4Gamer:
なるほど。単に国民性の違いというわけではなく,プレイ環境にも大きな違いがあるわけですね。ゲーム内コミュニティの活性化をゲームシステム/運営面からサポートするのは,なかなか困難だとは思いますが……,そのアドバイスが新生R.O.H.A.Nにどう反映されていくのか,楽しみにしています。
■日本プレイヤーの動向をゲームバランスに反映
■フリーテストを通じてさらなるチューニングを
ところで,先日発表されたアップデート内容は,すべてフリーテスト開始時点で確認できるのですか?
Suh氏:
いえ,フリーテストの終了日程は今のところ未定ですが,新生R.O.H.A.Nのコンテンツは,3段階程度に分けて実装していくつもりです。
4Gamer:
韓国版クライアントでは「EPIC4」が実装済みですよね。新種族「ダークエルフ」,および「タウン」をめぐるPvPシステムなどは,日本版にはどのタイミングで導入されるのでしょうか?
Suh氏:
EPIC4については,フリーテストの結果を元に,バランス調整をしなおしてから実装する予定です。慎重にバランシングをしたいので,具体的な時期については,はっきりとお答えできません。当面は,日本独自のアップデートとなる新生R.O.H.A.Nを成功させることに,全力を尽くしたいところです。
4Gamer:
それでは最後に,新生R.O.H.A.Nの魅力と,プレイヤーへのメッセージをお願いします。
Suh氏:
フリーテストで体験できる新生R.O.H.A.Nの魅力としては,なんといっても「スピード感」が挙げられます。ゲームプレイのテンポが飛躍的に良くなっている点ですね。レベルが上がりやすいというだけでなく,アクション性とインタフェースの改良,クエストの分かりやすさなど,ストレスなくスムースにプレイする工夫を随所に施しました。
また,日本のプレイヤーのために作ったメイド型ペット,衣装,アイテムなどにも,ぜひ注目してほしいです。
フリーテストは4月26日からスタートしましたが,これで日本向けの新生R.O.H.A.Nが完成した,というわけではありません。これは,プレイヤーの皆さんから得られた意見/要望をさらにくみ取り,よりよいR.O.H.A.Nを生み出すためのテストです。R.O.H.A.Nをさらに楽しいゲームにするためにも,皆さん,ぜひ参加してみてください。
日本版R.O.H.A.Nのオープンβサービスが開始されたのは,2006年8月だった。当時は,美しいグラフィックスや過不足のない各種システムに,多くのプレイヤーが注目したものだ。しかし現在,韓国や台湾でのサービスと比べると,日本版R.O.H.A.Nは「顧客に受け入れられたとは言いがたい状況」が続いているという。
韓国や台湾での成功を挙げるまでもなく,R.O.H.A.NというMMORPGには,十分なコンテンツと魅力が詰まっている。しかし,それを楽しむ環境やプレイのペースによって,作品本来のうまみが十分引き出されないというケースは,ほかのオンラインゲームでもよくあることだ。
YNK GAMESおよびYNK JAPANは,日本での不振を真正面から受け止め,現状を把握し,激しいディスカッションの末にフリーテストを実施する。この結果,R.O.H.A.Nは日本のプレイヤーに受け入れられ,再起を果たすのだろうか。答えはいずれ見えてくるだろうが,まずはフリーテストの行方を慎重に見守っていきたい。(ライター:麻生ちはや)
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