レビュー
“2ピース構成”のGeForce 8800対応GPUクーラーセット,その実力は?
VF1000 LED
ZM-RHS88
» GeForce 8800シリーズの発熱は大きく,単体GPU側にもそれなりの対応が求められるが,GeForce 8800にフォーカスしすぎるとクーラーのサイズが大型化し,汎用性が損なわれてしまう。その問題への答えとしてZalman Techが用意してきたのが,汎用性の高い単体クーラーと,GeForce 8800専用のオプションを別売りにするという発想だった。Jo_Kubota氏が,その意義を検証する。
GeForce 8800シリーズの場合,カードメーカーが違っても,GPUクーラーは同じである場合が多い。搭載する大型のGPUクーラーでは,動作音に高域成分が少ないため,聴くからに耳障りというほどではないものの,中低域の音量が大きい。電源ユニットやCPUクーラーの静音化を進めるに従って,騒音が目立つようになってくる。
そんな状況に対し,冷却デバイスの雄であるZalman Tech(以下,Zalman)が用意してきたのが,セパレートタイプのGPUクーラー「VF1000 LED」&「ZM-RHS80」のセットだ。今回4Gamerでは,Zalman Techから両製品を借用する機会を得たので,この“2ピースGPUクーラー”が,GeForce 8800シリーズをどれだけ黙らせられるのか検証してみたいと思う。
なお,あらかじめお断りしておくと,GPUクーラーの換装はメーカー保証外の行為となる。グラフィックスカードに取り付けられていたクーラーを取り外した段階でメーカーや販売店の保証はなくなるため,作業ミスでグラフィックスカードが損傷した場合でも自己責任となってしまう。筆者,4Gamer編集部ともいっさいの責任を負わないので,この点は十分に注意してほしい。
汎用性だけでなく取り付けやすさも高レベル
ZM-RHS88はほぼ“載せるだけ”で取り付け可能
VF1000 LEDは,4本のヒートパイプと多数のフィンからなる銅製のクーラーだ。下に示すとおり汎用性の高さがウリになっていて,ここ数年に登場したGPUのうち,GeForce 8800を除くほぼすべてに対応する格好だ。NVIDIAやAMDのリファレンスデザインを採用したグラフィックスカードであれば,ほぼ問題なく取り付けられるだろう。
●VF1000 LEDの対応GPU(※Zalmanによる)
- GeForce 8600
- GeForce 79x0
- GeForce 7800
- GeForce 7600
- GeForce 7300
- GeForce 6800
- GeForce 6600
- GeForce FX/PCX
- GeForce 4 Ti/MX
- ATI Radeon HD 2600
- ATI Radeon HD 2400
- ATI Radeon X19x0
- ATI Radeon X1800
- ATI Radeon X300〜X1650
- ATI Radeon 9000
VF1000 LEDが「GeForce 8800を除くほぼすべてのGPUに対応する」という説明を聞いて首をかしげた人もいるだろうが,ある意味,それがVF1000 LEDのキモである。
VF1000 LEDのサイズは実測で160(W)×80(D)×30(H)mm。重量は380gで,小型ではないものの,決して大型でもない。少なくともカードを大きくはみ出すような形状にはなっておらず,2スロット仕様のGPUクーラーとしてはごくごくありふれたサイズだ。おそらくVF1000 LEDは,単体でのGeForce 8800シリーズ対応をあえて取りやめることで,小型化し,汎用性(=互換性)を高めている。なお,念のため付記しておくと,VF1000 LED単体がGeForce 8800を冷却しきれないことは実際にテストして確認済みだ。
ZM-RHS88は,GeForce 8800シリーズのGPUを搭載したグラフィックスカードにある,GPU以外のコンポーネントを冷却するアルミ製のヒートシンクで,重量は80g。グラフィックスメモリや,DVI端子付近のチップを冷却するユニットと,VRD(Voltage Regulator-Down)冷却用ユニットを組み合わせて使うようになっており,後者はGeForce 8800 GTX/Ultra用とGeForce 8800 GTS用の2種類が用意されている。
GPU接触面の形状からして,VF1000 LED以外のGPUクーラーと組み合わせるのは難しいだろう。
取り付け方法は非常に簡単で,マニュアルの図を参考に進めていけば,まず迷うことはない。作業は
- グラフィックスカードに取りつけられていたGPUクーラーを外して
- サーマルグリスの残りを拭き取って
- VF1000 LEDに付属の“支柱”を取り付けて
- GPUとの接触面にグリスを塗ってGPUに取り付けて
- カードの背面から付属のネジで締める
だけだからだ。
GeForce 8800シリーズの場合,VF1000 LEDを取り付ける前にZM-RHS88を取り付けねばならないが,これも取り付けは簡単。背面に貼ってある熱伝導シートの剥離紙を剥がしてペタッと貼り,カードを裏返して,やはり付属のネジで締めるだけである。その後,VF1000 LEDを取り付ければいい。念のため,大まかな流れを以下に示しておこう。
GeForce 8800 GTXを前に十分な冷却能力を持つが
静音を狙うなら手動管理が必要かも
今回は,GeForce 8800シリーズ用クーラーとしての性能と,汎用性の高いGPUクーラーとしての性能を見るため,グラフィックスカードは「GeForce 8800 GTX」搭載製品と「GeForce 7900 GS」搭載製品の2枚を用意。そのほかハードウェア構成は表のとおりだ。ファンによるアクティブクーリングということもあり,テスト環境はケースに組み込まず,バラック状態で検証する。テスト時の室温は27.0〜27.5℃だ。
温度測定に当たって,GPU温度はNVIDIA製ユーティリティ「nTune」を利用。グラフィックスメモリとVRD温度も計測することにし,カード背面に温度センサーを貼り付けた。測定方法が異なるため,テスト結果の温度はnTuneが整数,温度センサーによるものは小数点以下一桁までの表記となる。
VF1000 LEDのファン回転数は,最高の2500rpmと最低の1400rpmを採用することにし,以後前者を「HIGH」,後者を「LOW」と呼ぶ。
では,結果を見ていこう。
●GeForce 8800 GTX
また,メモリ温度やVRD温度に目を向けても,同じような傾向となっている。HIGH動作時は,とくにGPUに近く,ファンのエアフローを受けるメモリチップを中心に優位性を示しており,VRD部分でもリファレンスクーラーと互角以上に渡り合っている。
ただ,LOWでは高負荷時にリファレンスクーラーよりも高い温度になってしまった。LOWだと根本的に風量が足りず,ZM-RHS88にまで風が届いていないことに起因しているようで,ケース内エアフローで解決できるような話ではなさそうだ。付属するファンコントローラのケーブルは幸いにして長いので,リモコンをケース外に出し,「デスクトップ操作時はLOW,ゲームプレイ時はHIGH」といった運用がベターだろう。
●GeForce 7900 GS
価格の高さがハードルになるのはマイナスだが
機能&性能面で不満はない
一方,最高回転にするとそれなりに音がする。Core 2 Duo E6700の製品ボックスに付属するCPUクーラーや,GeForce 8800 GTXのリファレンスクーラーと比べると確実に音量は小さいが,「リファレンスクーラーに迫る音量になる」のも確かなので,性能評価の段で触れたように,ある程度は手動での管理が求められるだろう。GeForce 8800 GTSクラスなら,中回転と高回転の間で,絶妙なポイントを見つけられるかもしれないが……。
もっとも,VF1000 LED単体に目を向けると,(若干の割高感は残るものの)現行製品どころか旧製品も含めて幅広く対応する汎用性の高さと,絶対的な冷却能力の高さは間違いなく魅力的。長く使える静音GPUクーラーを探しているなら,Zalman Tech製という安心感も含め,十分納得できる製品ではなかろうか。
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