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ジークレストの新たなゲームポータルは遊び心が満載! 「アットゲームズ」プロデューサーインタビュー
ゲームポータルというと,国内ではすでに「ハンゲーム」「ネットマーブル」などが絶大な勢力を誇っており,後発となる「アットゲームズ」がどのような戦術で切り込んでいくのか,非常に気になるところだ。
話によれば,アットゲームズはこれまでにないゲームポータルを目指すとのことで,既存のポータルを超えるためのアイデアを,いくつも盛り込んでいるようだ。
このたび4Gamerでは渋谷の本社ビルを訪れ,プロデューサーの末光晴人氏に,「アットゲームズ」の気になるコンセプトや,ゲームポータルとしての勝算について話を聞いてきた。
■ポータル内を歩き回れるFlashアバター「セルフィー」
先日,ゲームポータル「アットゲームズ」がスタートしましたが,そもそもジークレストでは,どういった経緯でポータルをやることになったのですか?
末光氏:
話が出たのは2005年の9月か10月くらいのことですね。今後オンラインゲームマーケットが広がっていく中で,結局,業界を牽引していくのは多くのライト層で,そこを取り込む必要があるんじゃないかと考えたんです。
4Gamer:
やはり「バルビレッジ」などのコンテンツで,ライト層の手応えを感じたことから,そうなったのですか?
末光氏:
ですね。実際いろいろなタイトルを運営してみて,手応えを感じた部分もあります。やはりライト層は,ゲーム業界のキーになるんじゃないかと。またジークレストとしては,業界内に大きな箱が欲しかったということもありますね。
4Gamer:
ブランドイメージの確立ということもあるんですね。先ほどライト層との話が出ましたが,ゲーム市場におけるシェアで考えると,ライト層が多いことは分かりますが,ヘビー層のほうがお金を落としてくれると思うのですが,そのあたりはどう考えてますか?
末光氏:
たしかに,そういう状況であることは認めています。が,市場やコミュニティの育成を考えた場合,やはりライト層だと思うんですよね。そうした育成を考えるのも,僕らの役目だと。
4Gamer:
業界の育成というのは,ありがたいですね。しかしゲームポータルというと,すでに「ハンゲーム」や「ネットマーブル」などの大手が日本にも存在しています。「アットゲームズ」は後発となりますが,既存の大手に対抗する大きなウリの要素として,アバターシステムに注力していると聞きました。
末光氏:
はい。「アットゲームズ」のアバターは,一般的なアバターとはひと味違います。すでにご覧になったかもしれませんが,弊社のバルビレッジなどで培ったノウハウを生かした「Flashアバター」を用意しました。
4Gamer:
Flashアバターについて,一言で説明すると,どんなものでしょうか?
末光氏:
「セルフィー」というアットゲームズのアバターは,自分のプロフィール欄に顔写真代わりに表示させるだけではありません。用意された仮想空間の中に大勢のセルフィーが集い,プレイヤーは自分のセルフィーを実際に動かして,アクティブなコミュニケーションが図れます。しかもこれは,専用アプリケーションのインストールや起動などを必要とせず,ブラウザのトップページ上で普通に楽しめるのです。
4Gamer:
なるほど,まさにバルビレッジのようなコミュニケーション空間が一つ,ポータルのイチ機能として用意されているのですね。
末光氏:
そうですね。ログイン中のプレイヤーのアバターは,必ずその世界のどこかにいることになります。大勢のアバターが住まう世界で,その一員として歩き回れるんです。この世界では,チャットやアクションによるコミュニケーションを楽しんだり,その中からゲームの起動を行ったりもできるようになる予定です。
ゲームポータルと聞いて,ズラリとゲームタイトルが並んだカタログ的なものを想像していたのですが,予想を全然裏切ってきましたね。一般的なアバターとしての機能は備わっているんですか?
末光氏:
もちろん,衣装などのアイテムを大量に用意しますので,着せ替えなどが楽しめます。アバターのカスタマイズは「上着」「ズボン/スカート」「アクセサリー」「髪型」「整形」(顔のデザイン)などが用意されていますね。一応,最初に性別を選びますが,男性で始めても女性の髪型や服を着せるといったことができます。
4Gamer:
大量のアイテムですか。オンライン上に仮想世界が構築されていると聞くと,家なども持ったりできるのかなと期待してしまいます。
末光氏:
もちろん家も持てます。プレイヤーハウスでは,家具などを配置して見た目をカスタマイズできます。βテストの段階ではアバター用の衣装も家具も数種類ずつしかありませんが,正式サービス時までには合計2000点くらいのアイテムを導入予定です。とにかく,「動き回れるアバターを作ろう」と決めてから,どうせ作るならしっかり作り込もうということになり,こうなりました。
4Gamer:
2000点! なるほど,それは種類が少なくて不満ということはなさそうだ。
末光氏:
さらに構築される世界は,今あるマップのままで終わりというわけではなく,エリアの拡張も考えています。ちなみに秋以降には学校が開設され,そこではクイズゲームが楽しめるようになる予定です。
4Gamer:
なるほど,「アバター達が自由に歩き回れるゲームポータル」といった感じなんですね。肝心のアバターですが,見た目が独特のタッチで可愛らしいですね。
末光氏:
このアバターは,「ディスガイア2」でキャラクターデザインを担当した,原田たけひとさんにイラストをお願いしています。
4Gamer:
かなりの人気イラストレーターを起用しましたね。あいさつしたり,泣いたり笑ったりといったアニメーションも,このイラストに合っているというか,非常に愛らしい感じに仕上がっていますが,このアニメーションやインタフェースなどは,どこかバルビレッジを感じさせるモノがありますね。
末光氏:
はい,バルビレッジのように,ボタン一つで「こんにちは」「ありがとう」「喜ぶ」「おめでとう」「怒る」「泣く」「びっくり」「OK」「NG」「さよなら」といった感情表現が行えます。さらに汗を垂らしたり,頭上に「!」「?」「ハート」「♪」といったマークを表示させることもできるので,これらを組み合わせることで,多種多様な表現が可能です。
4Gamer:
キーボードを使わずとも,簡単なコミュニケーションぐらいなら図れるわけですね。「かんぱい」はできないんですか?(笑)
末光氏:
面倒なコマンド入力などもないので,初心者でも十分にコミュニケーションの楽しさを体験できると思いますよ。さすがに「かんぱい」はないですけど,同じような機能として「リング」があります。お互いに「リング」を掲げて挨拶することで,「プチフレンド」になれるという機能です。
4Gamer:
ほほう,プチフレンドとはどういったものですか? オンラインゲームでよくある「フレンド」とは別のものでしょうか。
末光氏:
プチフレンドというのは,ちょっとしたお知りあいという感じでしょうか。プチフレンドは初めて出会った人とでも,挨拶代わりに気軽にリングを掲げて,どんどん増やしていってもらいたいですね。プチフレンドとは別に,誕生日を知らせたり,フレンドの分類などができる本格的なフレンド機能も搭載されていますよ。
■オリジナルのアバター衣装をデザインして販売も
末光氏:
プチフレンドを増やす行為には別の意味もありまして,一人プチフレンドが増えるごとに「プチコイン」がもらえるんです。
4Gamer:
「プチコイン」とはどんなものですか?
末光氏:
プチコインは,ゲーム内の行動によって稼げるポイントだと思ってもらえば理解しやすいですね。先ほどの挨拶機能もそうですが,毎日ログインするだけでもポイントがもらえたりします。
4Gamer:
バルビレッジの「ピヨパワー」みたいなものですね。挨拶することでプチコイン(ポイントの一種)が溜まるというのは,コミュニケーションを促す材料としてもいいですね。
末光氏:
ほかにもフラッシュゲームのランキングや,週末だけチャレンジできるルーレットなどでも,プチコインが手に入る仕組みなどを考えています。ただし,Flashによるランキングは,スコア改ざんの危険性も考えられるので,まだ検討中といったところですね。なお,プチコインを貯めると,専用のガチャガチャが楽しめたり,プチコインを「Gコイン」に変換できるようになっています。
4Gamer:
ほほう,Gコインといいますと?
末光氏:
Gコインのほうは課金して購入するポイントで,アバターの洋服や家に置く家具など,有料アイテムを買うのに使います。イメージ的にはプチコインでプレイヤーの行動を促し,Gコインでアイテムを買ってもらうという感じですね。ちなみにGコインの購入時には,サービスとして購入額に応じてプチコインがもらえるので,事実上のキャッシュバックといったところでしょうか。
4Gamer:
ゲームの中でのアクションや,コミュニケーションを楽しむことでプチコインを貯めて,それをGコインに変換して有料アイテムが買えるというのはいいですね。お小遣いの少ない人でも十分に楽しめそうな気がします。ところで普通に購入する以外にも,実はユニークなGコインの入手方法があるとか。
末光氏:
はい。実はアバターの衣装に,制作/販売機能を持たせようと考えています。プレイヤーが作った洋服を,ほかのプレイヤーが購入できるのです。価格も制作者が決められるのですが,これらのアイテムはGコインでの販売となるので,商品が売れた場合は制作者にもGコインが入ります。うまくいけば巨万の富を得られるかもしれませんね。
4Gamer:
それはすごい! ちなみに,どのように衣装を制作したり販売したりするんでしょうか。
末光氏:
独自のペイントツールを配布して作ってもらいます。完成したものは,まずジークレスト側で著作権などの面で審査したのち,コンテストを開催してプレイヤーの皆さんに投票してもらい,上位の作品が商品化されるという形式になります。洋服には制作者などの項目が入るので,「誰が作ったか?」といったこともチェックできますよ。
4Gamer:
なるほど,「この服,○×さんのデザインだぜ!」なんて,カリスマデザイナーも登場するかもしれませんね。一山当てれば,誰もが巨万のGコインを獲得できるというあたり,かなり夢のあるアイデアじゃないですか。
■Flashゲームから本格MMORPGまで楽しめるゲームコンテンツ
4Gamer:
では,メインとなるゲームコンテンツの話なども。βテストがスタートしましたが,どんな感触ですか?
末光氏:
当初予定していた,βテスト開始時のコンテンツ数から考えると,40〜50%ぐらいのスタートですね。でも,最初はちょっと抑え気味になりましたが,どんどんアップデートしていきますよ!
4Gamer:
最初はカジュアルゲームが中心ですね。
末光氏:
初日は簡単なFlashゲームを5タイトル導入しました。いずれも,セルフィーと同一のブラウザ上でプレイできるものばかりです。まずはこれらFlashゲームを充実させていき,逐次,麻雀やパチンコなどを導入していこうと思っています。最終的には「バルビレッジ」「トリックスター+」など,ジークレストのメインコンテンツも,すべてここから遊べるようにします。
4Gamer:
大手のゲームポータルというと,定番ゲームはどこもフォローしているので,どこもコンテンツ内容が似た感じになってしまいますよね。やはりよくあるミニゲーム以外の,コンテンツが勝負どころとなってくると思うのですが,そのへんはいかがですか。
末光氏:
海外からコンテンツを持ってくるところも多いですが,ウチとしては「競馬伝説Live!」のような,独自開発のオリジナルコンテンツをどんどんやりたいですね。大きめのタイトルなども今後2,3本くらいは入れたいと考えています。これは名前くらいは今秋には発表できるのではないかと。
4Gamer:
ジャンルだけでも教えてもらえませんか?
末光氏:
それはまだカンベンしてください(笑)。まだちょっと公表できる感じじゃないので。とはいっても,年内には導入できるオリジナルゲームも1タイトルくらいはあるので,楽しみにしていてください。
4Gamer:
では,年内のコンテンツの予定を教えてもらえますか。
末光氏:
これはミニゲームを含めての話になりますが,年内50タイトルを目指してアップデートしていきます。メインはライト層ですけど,ヘビーなユーザーにも楽しんでもらえるコンテンツも用意したいですね。
4Gamer:
ミニゲームでライト層を集めて,遊んでいくうちにヘビー層に育成できるのであれば,業界的にも嬉しいですね。オリジナルコンテンツは楽しみです。
■巷のSNSを超えるプロフィール機能
アバター,ゲームコンテンツの話を聞いてきましたが,ほかに「アットゲームズ」らしい機能はありますか。
末光氏:
コミュニティ機能ですね。プロフィール欄では,ただ自分のアバターと自己紹介を表示させるだけではなく,日記を書いて載せたり,ほかのプレイヤーの日記へコメントを付けたりできますよ。
4Gamer:
それはすでにSNSというやつですか?
末光氏:
「フレンドリスト」や「足跡コメント」といった機能もあります。あと,まだ未実装ですが,いずれ「マイサークル」といった機能も稼働しますよ。
4Gamer:
ゲームポータルでありながら,基本的なSNSの要素を押さえているんですね。これもセルフィーと同一ブラウザ内に収められた機能ですか?
末光氏:
そうですね。しかも連動しており,同じエリア内にいる別のプレイヤーのセルフィーをクリックして,メニューから「プロフィール」を選ぶと,そのプレイヤーのプロフィールページに飛べます。
4Gamer:
なるほど,「セルフィー」の世界から派生する交流もあるわけですか。それは世間のほかのSNSサイトよりも,さらに出会いの機会が広がるアイデアですね。そのほか何か独自の機能などはありますか。
末光氏:
いやらしいですけど,「欲しいものリスト」というものがありますね(笑)。プロフィールを見ると,その人の欲しいアバター用アイテムが載っているわけです。ちなみに有料アイテムのトレードはできませんが,購入時に「プレゼント」として贈れるので,誰かに買ってあげることはできます。
4Gamer:
事前に友人の欲しいものリストをチェックしておいて,誕生日にプレゼントなんてことができるわけですか。
末光氏:
ですね。モテる女の子とか,たくさんプレゼントされるんじゃないでしょうか(笑)。そのほかの面白い要素としては,ウチの親会社であるサイバーエージェントが運営している「アメーバブログ」と,なんらかの連携ができないかなとも考えています。まあ,これは将来的な話ですけどね。
4Gamer:
ブログはまだまだ可能性があると思いますが,ほかにも仕掛けはありますか?
末光氏:
いやぁ,まだまだアイデアはあるんですけど,そうした機能は今後の更新に期待してもらいたいですね。
4Gamer:
アバター同士が自由に歩き回ってコミュニケーションできる「セルフィー」システム,ジークレストの数々のゲームコンテンツ,そしてSNS的なプロフィール機能が一体となり,そのほとんどを1枚のブラウザに収められた「アットゲームズ」は,まさに三位一体とでもいえばいいでしょうか。ゲームだけではなくコミュニィを育成するという意味でも,非常に楽しみな存在です。
末光氏:
海外発のポータルが日本でも活躍していますが,我々としては「日本人がポータルを作るとこうなる!」ということを提唱したいと思っています。イラストも国内で人気の高い原田さんにお願いしていますし,とにかく日本人テイストに合うゲームポータルを目指していきますよ。
4Gamer:
今後のアップデートにも期待しています。今日はありがとうございました。
現在,ピンからキリまで含めるとなると,すでに膨大な数のゲームポータルが国内に乱立している。さらに最大手としては圧倒的シェアを誇るハンゲームの牙城があり,後発となるアットゲームズの進む道には,幾多の困難が待ち受けていることだろう。
ジークレストはこの状況の中,「バルビレッジ」などで培った独自のノウハウを生かしたアバターシステム,流行りのSNS機能をベースに盛り込んだプロフィール機能など,単純に「ゲームを数多く揃える」以外のところからアプローチしてきた。これは後発ならではの利点を生かした戦術といえるだろう。
肝心のメインコンテンツの充実,未実装な機能の改善など,まだまだ多くの課題が残されているアットゲームズだが,生え抜きのゲーム業界出身ではない長沢氏が率いるジークレストが,その特徴を生かしてどのようにゲームポータル業界に切り込んでいくのか,今後の発展が楽しみだ。(Murayama)
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