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「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」
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印刷2015/12/29 12:25

連載

「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」

 グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。第39回の上映作品は,紀里谷和明監督の劇場映画3作目でありハリウッドデビュー作でもある「ラスト・ナイツ」

「ラスト・ナイツ」
監督:紀里谷和明
提供:DMM.com
配給:KIRIYA PICTURES/ギャガ
画像集 No.006のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」

「ラスト・ナイツ」公式サイト



意外な作品が題材だった!


須田:
 2015年最後に紹介するのは,「ラスト・ナイツ」です。

関根:
 紀里谷和明監督作品ですね。紀里谷監督といえば,先日,テレビ朝日系のバラエティ番組「しくじり先生」に出演して話題になりましたね。

須田:
 ネットでも話題にはなっていました。

関根:
 紀里谷監督は,“日本映画界に思ったことを言いすぎてしくじった人”として出演していたんですが,実は監督1作目の興行的には「CASSHERN」ってヒットしているんですよ。だからしくじってはいない気がするんですけどね。

須田:
 そういった印象って不思議ですよね。何となく雰囲気で判断しちゃうけど,実は意外な結果が数字としては出ていたり。

関根:
 そうですね。意外といえば,紀里谷監督の最新作がラスト・ナイツというのも,意外な感じがしませんでしたか。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」

須田:
 そうなんです。昔,この連載で「赤穂城断絶」という1970年代の日本映画を紹介したことがあるんですが。

関根:
 2014年3月の掲載でした。

須田:
 深作欣二監督の描いた異色の忠臣蔵作品として,僕ら二人とも大好きな作品で。

関根:
 支配人が稀代の忠臣蔵マニアとしてオススメしていたにも関わらず,実はほかの忠臣蔵作品はろくに見たことがなかったという,衝撃的な展開だったことはよく覚えています。

須田:
 ああ,そんなこともあったんですか。

関根:
 ありました! 忠臣蔵と同じくらいのどんでん返しでしたよ。

須田:
 で,話を戻しますと。

関根:
 早い!

須田:
 ラスト・ナイツ,実はこれも忠臣蔵を題材にした作品だったんですよ。

関根:
 見れば分かるんですけど,この世界観と出演者達の雰囲気を見ただけでは,さすがに気付きませんでしたね。

須田:
 だからこの時期に紹介するのにぴったりだなと。

関根:
 年末といえば忠臣蔵ですからね。

須田:
 これって偶然なんですかね,年末に公開するのって。

関根:
 どうなんでしょうか。でも,忠臣蔵を意識してのこのタイミングだとは思いますよ。忠臣蔵関係の方々にもお墨付きをいただいているらしいですし。

4Gamer:
 ちゅ,忠臣蔵関係ってどんな方達なんですか。

関根:
 毎年,赤穂義士ゆかりの15自治体が集い,忠臣蔵を核とした地域振興策や観光施策などを話し合う「義士神前友好都市交流会議(忠臣蔵サミット)」なるものが行われているらしいんですよ。
 そのサミットが今年の10月に兵庫県赤穂市で開催されて,そこで紀里谷監督がトークショーを行ったらしいなんです。

須田:
 ほー。なるほど。

4Gamer:
 なんだかそれも意外ですねぇ。

関根:
 また意外な要素が増えましたね。
 物語は中世ヨーロッパの皇帝,騎士達の物語が中心で,ロケもチェコで行っていますから,忠臣蔵と言われてもパッとは気づきにくいですしね。

画像集 No.007のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」
須田:
 確かに。でもやっぱり江戸時代の史実ですから。舞台は変われども,武士道と騎士道,忠義という概念は変わらないですよ。だから西洋人が演技して西洋の舞台だとしても,あんまり違和感はなかった。

関根:
 ええ。違和感は覚えませんでしたね。支配人がおっしゃるように,普遍的なテーマであることも大きいでしょう。


須田:
 なんかね,すごくいい映画だったんですよ。

関根:
 そこは意外とは言いませんよ!(笑)
 なんでしょうかね,何か収まりがいいんですよ。スッキリし過ぎとも言えるくらい。

須田:
 主演のクライヴ・オーウェンのたたずまいが,そう見せるんじゃないですかね。なんというか謙虚さを感じる。日本人の好きな顔力というか,共感しやすい奥ゆかしさみたいなものが,このテーマに合っているんじゃないかと。

関根:
 そうかもしれません。よく日本人は判官贔屓と言われますけど,忠臣蔵ってその典型じゃないですか。

須田:
 そうですね。

関根:
 そんな作品の主演を,ガンガン出てくるヒーローみたいな人が演じなくて良かったなと,見終わって最初に感じました。

須田:
 そういうことですよね。

関根:
 それにしても,日本人じゃなくてもこの作品の奥ゆかしさみたいなものは受け入れてもらえるんでしょうかね。紀里谷監督にとって,せっかくのハリウッドデビュー作ということですから,世界への挑戦結果を知りたいですよね。

4Gamer:
 興味ありますよね。どんな結果にしろ,意外だ! って想っちゃいそうですけど。

関根:
 正直,海外で挑戦するにあたって,先に「ラストサムライ」という映画があるのに,ラスト・ナイツというタイトルをつけたのは,紛らわしいんじゃないかと思ったんですよ。

須田:
 そっか「サムライ」も海外では「ナイト(騎士)」と同じようなものですもんね。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」


ハリウッドデビュー作


画像集 No.008のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」
関根:
 この映画,撮影期間は短かったそうですが,さすがハリウッドですよね。お金がかかってますよね。エキストラの数はすごく多いし。無理して撮っている感じがしない。

須田:
 見応えがありましたよね。迫力というか。

関根:
 あと,俳優陣もね。

須田:
 そう。やっぱりモーガン・フリーマンって分厚い役者だなあって。この人が出るだけで収まりが良過ぎるくらい。何でしょうこの説得力。ハリウッド俳優の力ってこういうことですよね。スクリーンに登場した瞬間,作品そのものが何か違うものに変わるというか。
 それゆえ,多くの有名俳優を出さなくても十分なんだとも思いました。

関根:
 あー,かも知れないですね。説得力のある俳優が一人いれば,世界に引っ張って行ってくれるということがよく分かります。

須田:
 そう,十分です。だからキャスティングが凄く魅力的だったなあと思って。

関根:
 現代の若い人にとっては,日本人が時代劇として小難しい感じで忠臣蔵をやるより,こういった作品のほうがメッセージとしては伝わりやすいのかもしれないと思いました。
 忠臣蔵のメッセージ,武士道とはどういったものなのかを知る作品として,入りやすいと思いますよ。

須田:
 そうかもしれませんね。

関根:
 あと井原剛志さんの役割も非常に良かった気がします。難しい役どころというか,敵将を守る騎士役。悪の親玉と分かっていながらも騎士道,忠義を貫かなくてはいけないという設定は,もしかしたら日本人がやることで,より散りゆく儚さが伝えやすいのではないかと思いました。
 ハラキリの美学を日本人は持っていると思われていますからね,海外からは。

須田:
 それはあるかも知れませんね。井原さんはクライヴ・オーウェンのライバルであり,この物語のメインの一人じゃないですか。赤穂城断絶で例えるならば,千葉真一と一騎打ちする渡瀬恒彦。あれもシビれる戦いでしたね。

関根:
 まあ,そのあたりを赤穂城断絶と比較しながら話す人,支配人以外にいないと思いますけどね。


忠臣蔵はいいですね


須田:
 やっぱり,忠臣蔵はいいですね。忠臣蔵の魅力って,大石内蔵助の潜伏期間,あそこですよね。

関根:
 主君を失ってから討ち入りを果たすまでの動きですね。「敵を欺くにはまず味方から」という物語では,最も有名なものかもしれません。
 大石内蔵助は,遊郭に身を潜めながら敵に討ち入りの意思がないように思わせる工作をするんですね。かなり長い期間それを行った結果,味方の信用も失ってしまう。それでもなお続けた結果,敵を信じ込ませることに成功して,油断しきった相手に討ち入りを成功させる。

須田:
 僕らは討ち入りするって分かって見ているじゃないですか。だからこそ,そこまでの時間にどういうことが行われるのかっていうのが重要になってくる。
 いろいろな忠臣蔵作品がありますけど,そこをどう描き,いかにスリルある展開にしてくれるかっていうのが,だいご味ですよね。

関根:
 それでいうと今回の作品はどうだでしたか?

須田:
 楽しめましたよ。
 楽しかったというか,しっかりできているなと。

関根:
 僕も面白かったです。ただ,ネタバレになるので詳しくは言えないんですが,仇討ちを決めたときに,ちょっとだけ潜伏期間中の種明かしがあったじゃないですか。あの種明かしがもう2〜3個あったら,より興奮して仇討ちを楽しむことができたかなと。

須田:
 それはあるかも知れませんね。僕はあれくらいでも十分楽しめましたけど。

関根:
 ちょっと好みが分かれるところでしたね(笑)。
 話は変わりますけど,僕も好きな忠臣蔵リメイク作品があるんですが,DVDが出ていたんですよ。とりあえずパッケージを持ってきました。

須田:
 「なにわ忠臣蔵」ですね。しかし,凄いキャスト。鶴見辰吾,松田 勝,香川照之,白竜,今井雅之,夏八木勲。いやーこれ,豪華すぎませんか。

関根:
 ですよね! 長門裕之が当然のごとく吉良上野介,岩城滉一が大石内蔵助設定の役どころで出演しています。
 さらにのちに三池崇史監督の「DEAD or ALIVE」で初めて同じフレームに映り込んだことで話題となった,哀川 翔と竹内 力という二大ビデオスターの初共演作でもあるんですよ。

須田:
 これ,絶対面白いですよ。

関根:
 ラスト・ナイツでは飲み屋の2階で女性と一緒に呑んだくれてますけど,なにわ忠臣蔵では岩城滉一演じる大石さんがソープランドに入り浸っているという設定で。

須田:
 うわー,生々しいっすねぇ。

関根:
 まあ,忠臣蔵を題材にしてもいろいろな作品があるなっていうだけのお話です。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」


ゲームを探すのが難しい


須田:
 これまたね,一緒に楽しんでほしいゲームを探すのが……。

関根:
 そうなんですよね。すでに忠臣蔵ゲームは紹介しましたし。

須田:
 ですね。
 でも,思いつきましたよ,オススメのゲーム。

関根:
 思いつきましたっていうのも変な話なんですけどね。4Gamerに思いつきで紹介しちゃダメだろうと。

須田:
 でも,これはいいゲームですよ。

関根:
 なんですか。

須田:
 「アサシン クリード」シリーズじゃないですか? 剣で戦うし。

関根:
 剣で戦うゲームなんて,めちゃめちゃいっぱいあるじゃないですか。

須田:
 いやー,でもねえ,アサシン クリードですよ。そういえばラスト・ナイツの絵作りもアサシン クリードっぽい気がしてきました。

関根:
 そうなんですか? 暗殺者ですよね,アサシンって。

須田:
 そうですそうです。
 でも,作品ごとに時代や舞台が違うんですよね。「アサシン クリードIII」PC / PlayStation 3 / Xbox 360 / Wii U)なんかは南北戦争が題材なので,忠臣蔵な感じはまったくありません。
 でもほら,ラスト・ナイツっぽさはあるかな? なんて。

関根:
 ところで,どんなゲームなんですか?

須田:
 ざっくりいうと,アサシンである主人公が,遺伝子記憶の解析装置で過去の時代のアサシンの行動を追体験するっていう話なんですよ。

関根:
 へー,面白いですね。

須田:
 なので,各タイトルでいろいろな時代に行くんですよ。12世紀のエルサレム周辺だったり,15世紀のイタリアだったり,さっきも言ったように18世紀アメリカの南北戦争の時期だったり。とにかく毎回,舞台が変わるんです。

関根:
 じゃあいずれは日本にもやってくるんじゃないんですか。18世紀の。

須田:
 江戸時代。ということは「アサシン 浪人」……。ありそうですね。

4Gamer:
 日本で売りやすいかもしれなですね。

関根:
 僕が最初に遊ぶアサシン クリードは,アサシン 浪人がいいですねぇ。それは,いつまで待てば遊べますかね。

須田:
 うーん,あと10年? いや,5年後くらいじゃないですかね。そろそろ来てもおかしくない時期ですよ。

関根:
 よくそこまで言い切れますよね。そこまではっきりとでたらめを言う姿に,潔さすら感じてきました。

画像集 No.009のサムネイル画像 / 「キネマ51」:第39回上映作品は「ラスト・ナイツ」

須田:
 騎士道をこの映画で学んだからね。

関根:
 何を言っているのか全然分かりません。

4Gamer:
 しかし冷静に考えると,アサシンが忠臣蔵の物語に介入して,死亡した人が変わったとしても,歴史はあまり大きく動かなそうですよね。

二人:
 ……確かに。

関根:
 吉良が勝ったところで,すでに赤穂藩は取り潰されているし,大きな話にはならないですよね。

4Gamer:
 そう考えると,アサシンが来るのは忠臣蔵というより,戦国時代のほうが妥当なんじゃないかと。

須田:
 あー,確かに。そうですね。そりゃそうだ。「アサシン 戦国」。

関根:
 切り替え早いっすね,支配人。

須田:
 だって面白そうなんだもん。まず,家康を殺すみたいな。

関根:
 家康を最初に殺したら,江戸時代もそこで終わりですよね。再び乱世に?。

4Gamer:
 いやー,やっぱり信長を守って本能寺の変が失敗に終わったなんて話じゃないですか。

須田:
 あー,手堅いですね。

関根:
 じゃあアサシン 戦国については,そういう方向で期待しましょう。

須田:
 ええ。今回紹介するゲームもね,アサシン 戦国ということで。

4Gamer:
 そんなゲームないんですけどね。

二人:
 ……というわけで,良いお年をーーーー!

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「ラスト・ナイツ」公式サイト

 
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