旧特集
1チームを二人でも操作可能。武功炸裂のキャラクターサッカー「熱血江湖Strikers」について開発会社に聞いてみた
そのあたりを含め,開発会社であるCHOCOLATE EntertainmentのExective Producer,Lee Sang Kyoon氏に,いろいろ聞いてみた。熱血江湖オンライン譲りの武侠モチーフを取り込んだ,コミカルな作品になるようだ。
■意外なことに熱血江湖オンラインとの連携は少ない
本日はよろしくお願いします。まず,「熱血江湖Strikers」の現在の開発状況を教えてください。
Lee Sang Kyoon氏:
現在約70%といったところです。11月末までにネットワーク周りの開発が終わって,それでかなり完成に近いところまでいくはずです。
4Gamer:
おお。それではクローズドβテストもそれほど遠くないわけですね?
Lee Sang Kyoon氏:
ええ。来年(2007年)1月を予定しています。
4Gamer:
熱血江湖の関連タイトル第1号として,サッカーゲームが選ばれたのはなぜでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
開発室長が釣り好きで,釣りをしている最中に「サッカーでいこう」と思い立ったのです(笑)。
4Gamer:
え,ええと。そこで釣りゲームではないのですね(笑)。それについてはあとでまたお聞きしますが。
Lee Sang Kyoon氏:
そうです(笑)。まず,サッカーがトレンドになっていること。そして,開発が面白そうだということ。武侠とサッカーをつなげるという試みが,新しくて興味深そうだということ。それから,漫画でもオンラインでも成功した熱血江湖の魅力などを総合的に考えて,やってみようということになりました。
ちなみに,漫画原作者の方も出来上がったムービーを見てかなり気に入ってくれました。最初は,漫画の設定がサッカーゲームになるということで,かなり気になっていたそうですが。
4Gamer:
それはよい話ですね。では,一番気になるところをお聞きしていきます。この作品は,「熱血江湖オンライン」本体と,データ的に連携しているのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
はい,つながりがあります。まず,RPGのほうで使ったキャラクターの,ヘアスタイルなど首から上の部分の姿が,こちらのキャラクターに反映されます。それと,RPGの内部からミニゲームのように起動できます。
4Gamer:
例えば,キャラクターのパラメータや所持アイテムなどについてはいかがですか?
Lee Sang Kyoon氏:
その部分については共有されません。まったく別扱いです。
4Gamer:
では,例えばサッカーのほうでお金を稼いで,それをRPGに持っていくといった連携はないのですね?
Lee Sang Kyoon氏:
ええ,できません。ただし,イベントなどを通じて,RPGとStrikersでコスチュームの交換などができるようにしたいと考えています。
4Gamer:
熱血江湖オンライン本体のほうでキャラクターがレベルアップしていくと,ヘアスタイルや髪飾りなどは変わっていきますよね。それは随時反映されると考えてよいわけですね?
Lee Sang Kyoon氏:
そのとおりです。
4Gamer:
なるほど。もう一つ,熱血江湖オンライン本体との関わりで気になるのが気功(パッシブスキル)と武功(スキル)です。それらの要素はStrikersにも取り入れられていると聞いていますが,それはどんな形でなのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
RPGに出てくる気功,武功と,同じ名前のものがStrikersにも登場します。しかし,それはあくまでサッカーに合わせた形,別のものとして使われています。
4Gamer:
熱血江湖オンライン本体で育てたキャラクターの,気功/武功の能力が,Strikersのほうに変換されて反映されたりもしないわけですね?
Lee Sang Kyoon氏:
はい,連動はしません。
4Gamer:
キャラクターのレベルもそうですか?
Lee Sang Kyoon氏:
ええ,プレイバランスが崩れてしまいますからね。
4Gamer:
熱血江湖オンライン本体のキャラクターが持つ職業というのは,Strikersで意味を持ちますか?
Lee Sang Kyoon氏:
ステータスに関しては意味を持ちません。外見に反映されるだけです。
4Gamer:
では逆に,Strikersからゲームを始めて,キャラクターの特徴が熱血江湖オンライン本体に反映されるという要素はありますか?
Lee Sang Kyoon氏:
いろいろアイデアはあるのですが,まだ具体的には決まっていません。ただし,データは共有できていますので,必要とあらばそうしたシステムを作るのはいつでも可能です。
4Gamer:
ふーむ,なるほど。ではこのゲームにおける,内功(マジックポイント)や気功/武功,連戦(コンボ)の使われ方を教えてください。果たしてサッカーの試合に,武侠の概念がどう適用されるのか,というところです。
Lee Sang Kyoon氏:
RPGにあったキャラクターの属性は,Strikersにもあるのですが,気功や内功はキャラクターのステータスとして別の形に整理されます。武功だけは存在するのですが,そのほかの気功/内功/連戦といったものはなく,Strikersのキャラクターが持っているのは「素早さ」や「力」といった別のステータス数値なのです。
4Gamer:
ではStrikersでも依然として有効だというキャラクターの属性は,どういった形で機能するのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
RPGの場合と同じく,Strikersでも火・水・風・自然・電気という五つの属性が存在します。それらに合わせて,例えば火のキャラクターはパワフルだけれどもスピードが落ちるとか,水のキャラクターは平均的な能力を持っているとか,風のキャラクターはシュートの正確さは落ちるものの素早いとか,属性に合わせた形でステータスが決まっています。
属性はプレイヤーが選ぶ形になっています。キャラクターは必殺シュートなどといった特別な技を持っているのですが,例えば属性が火なら火のグラフィックスが出ますし,水属性なら水の流れが表示されたりと,画面効果的な意味も持っているわけです。
4Gamer:
それはなかなか楽しそうですね。ではその必殺シュートは,どうすれば発動できるようになっているのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
ゴルフゲームなどを想像すると分かりやすいのですが,シュートチャンスが訪れたときにシュートボタンを1秒間押し続けると,キャラクターが空中に跳び上がってタイミングゲージが現れます。そこでタイミングよくボタンを押すと,まるで「少林サッカー」のように派手なボレーシュートを繰り出したりします。
4Gamer:
武功についてはどうですか?
Lee Sang Kyoon氏:
武功については発動タイムがありまして,それがめぐってくると発動できます。武功の中身は属性ごとに違って,相手チームの選手を凍らせるとか,風で吹き飛ばすとか,そういった力を持っています。
4Gamer:
それぞれ,使えるようになる条件があったりするのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
武功は,レベルが上がるにつれてより強力なものが使えるようになります。一人しか凍らせられなかったものが,レベル30になったら3人凍らせられるとか,そういう形です。
一方必殺シュートに関しては,とくに条件はなく,チャンスがあればいつでも発動できます。
■2プレイヤー対応,1チームを二人でも操作できる
なるほど,どちらもうまく使うことで試合を有利にできそうですね。武功と必殺シュート以外に,普通のサッカーゲームにない要素はありますか?
Lee Sang Kyoon氏:
そうですね,ワールドカップのタイミングでたくさんのサッカーゲームが登場したわけですが,プレイヤーが1人の選手を操り,4 vs. 4や5 vs. 5といった人数で対戦する形が多いようです。
我々も当初そういった形で企画していたんですけれども,どうしても対戦相手をうまく見つけられない人も出てくるのではないかと考えました。そこで,1チームは5人だけれども,プレイヤーは1人か2人,残りを自動的にAIプレイヤーが埋めるという形にしました。 それが,ほかのゲームと異なるこのゲームの特徴です。
4Gamer:
確かに,かなりユニークな試みですね。1プレイヤー=1選手でも,1プレイヤー=1チームでもなく,1チームを二人でプレイするというのは初めて聞きました。そのほかに,サッカーゲームとしてのStrikersの全体的特徴は,どんなところにあるでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
小さなフィールドで,比較的スピーディに展開します。フルサイズのサッカーと比べて,フィールドの広さは4分の1ほどです。ゲームとしてはチームマネジメントの要素を持ち,メンバーを雇用する戦略的な面,それから,自分のチームだけのユニフォームが作れます。
4Gamer:
1チーム5人というとき,ゴールキーパーは含まれますか?
Lee Sang Kyoon氏:
含まれています。
4Gamer:
ゴールキーパーもプレイヤーが操作するのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
そうです。プレイヤーはそのときボールを持っているキャラクターを操作します。育てられるキャラクターは一人ですが,試合中にはほかのキャラクターも操作するわけです。
4Gamer:
とすると,自分のチームがボールを持っていないときは,コンシューマゲームのサッカーゲームによくあるように,ボールに一番近い選手を操作する形になるのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
そこは,ボールの近くにいる選手が自動的に選択されるわけではなくて,「S」キーを押すことで,該当する選手にコントロールが移ります。ですから,随時Sキーを押しながらプレイを進めていくことになります。
4Gamer:
いまキーボードの話題が出ましたが,マウスとキーボード以外のゲーム用デバイスには対応していますか?
Lee Sang Kyoon氏:
メニュー操作以外にマウスは使いません。ジョイスティックには,最初の段階から対応していて,キーボードと併用することにより,1台のPCで二人までプレイできます。
4Gamer:
おお,それはカジュアルタイトルとして重要な利点ですね。ところで,1試合の時間はおおよそどれくらいでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
4分間です。そこで引き分けだった場合,ゴールデンゴール形式で2分間の延長戦があります。それでも引き分けの場合,PK戦となります。
4Gamer:
それは確かにスピーディですね。ところで,例えば敵チームをすべてAIに設定するといったことで,ソロプレイは可能になっているでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
「シングルモード」という形で,開発の計画はあります。2007年中盤ごろのアップデートで導入できるのではないかと見ていますが,開発にはかなり困難な部分があることも判明しています。
4Gamer:
クローズドβテスト開始段階で,持っているはずのゲームモードの種類を教えてください。
Lee Sang Kyoon氏:
クローズドβテストの段階だと,とくにそういったものは想定されておらず,シンプルに1 vs. 1対戦か2 vs. 2対戦のどちらかになりますが,その後のアップデートで,トーナメント戦やシングルプレイの導入が計画されています。
4Gamer:
オリジナルのユニフォームが使えるという話がありましたが,これはゲーム内にあらかじめ用意された柄や形を選ぶのでしょうか,それとも,好きな画像を自分で持ってきて使えるとか,そういう形なのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
プレイヤーが自由に画像をアップロードして,その画像を使えるというようなシステムはありません。現在,いろいろなユニフォームやエンブレムのサンプルを用意しているところです。
4Gamer:
各選手にポジション設定のようなものは存在しますか?
Lee Sang Kyoon氏:
ポジション変更はできませんが,フォーメーションは変更できます。1:2:1から2:1:1とか,そういった意味です。
4Gamer:
例えばウィングに向いた選手だとか,フォワードに向いた選手だとか,そうした設定が用意されているわけではないと?
Lee Sang Kyoon氏:
そうした設定はありません。ただし,キャラクターがレベルアップするとポイントが与えられて,それを伸ばしたいステータスに割り振る形になっています。ミッドフィールダーに「闘志」が必要だと思ったら,それを伸ばせるわけです。
4Gamer:
1チームを二人でプレイするとき,フォーメーションや作戦を決めるのは,どちらか一方という形になるのですよね?
Lee Sang Kyoon氏:
そうです。二人のうち一人が決めます。その決定権については,ゲーム内の「じゃんけんシステム」で決まり,勝ったほうがキャプテンになります。
ポジションに関してですが,最初にゲームを開始したときは,第1プレイヤーがフォワード,第2プレイヤーは後ろにいます。その後,ゴールが決まったりして再度キックオフとなると,今度は第2プレイヤーがフォワードになるという風に,交代制になっています。
4Gamer:
なるほど。ポジションに特化して偏った選手を育て,分業するわけにはいかないんですね。
Lee Sang Kyoon氏:
ええ。ゲームとしてフェアに,という開発方針です。
■サッカーに続く熱血江湖関連タイトルは……
続いて,ゲームに用意されている視点設定の種類を教えてください。
Lee Sang Kyoon氏:
大きく分けると二つです。通常のプレイ中は,ゴールを両端に置いた角度で進むのですが,シュートを決めるタイミングであるとか,ファウルをしたときなど,イベント性のあるときには,選手をクローズアップする形になります。
4Gamer:
なるほど。では,自陣から敵陣を奥行き方向に見る視点や,トップビューは備えていますか?
Lee Sang Kyoon氏:
ゲーム中の視点は,基本的に固定されています。ただし,シュートを決めた瞬間については,Spaceバーを1回押すごとに,横からや下からなどと変えられます。
それは何のためかというと,そもそもこの作品にはリプレイ機能があって,カッコいいシュートを決めたときに,プレイヤーが一番よいと思った角度で見るためです。
4Gamer:
そのリプレイ機能,というかマクロ記録機能では,1試合を丸々記録しておくというようなことは可能でしょうか? それともハイライトシーンのみなのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
本当にシュートが決まった瞬間だけです。プレイ全般を記録することはできません。録画したものをWebに投稿して,プレイヤー同士で「こんなゴールがあったよ」と話したりできます。
4Gamer:
投稿は,いったんムービーにしてからですか? それともリプレイデータそのものを扱うのでしょうか?
Lee Sang Kyoon氏:
ムービーです。
4Gamer:
このゲームは各選手キャラクターにレベルが設定されているわけですが,レベル差が大きく開いた人同士では楽しめない危険があると思います。そこで,レベル別に対戦相手を制限するようなシステムは用意されていますか?
Lee Sang Kyoon氏:
サーバーがリーグ別になっています。そして,例えば一番下のルーキーリーグはレベル1から3までしか入れない,という感じです。同様に,4から10まではアマチュア,それから上10レベルはプロ,そのまた上の10レベルはチャンピオンです。
4Gamer:
同様の論点ですが,ランキング機能は備えていますか?
Lee Sang Kyoon氏:
ランキングに相当するものとしては,先ほど話に出たトーナメント戦があります。36人のプレイヤーが同時に接続して,16試合が行われます。トロフィーを懸けて戦うのですが,そこで何回優勝したかがランキングとしてWebサイトに掲示されます。
4Gamer:
対戦であるなしにかかわらず,プレイヤー同士が交流できるコミュニティ機能についてはどうでしょう? 先ほどムービーのところで出てきた話題でもありますが。
Lee Sang Kyoon氏:
まず,mGameのプレイヤー同士をつなぐmGameメッセンジャーという独自のシステムがあります。それから,このゲームでもプレイヤー同士で「門派」を作れますので,そこには門派コミュニティという交流の場が用意される予定です。
4Gamer:
そこで,熱血江湖オンライン本体で作った門派を引き継げたりしますか?
Lee Sang Kyoon氏:
いえいえ,この場合も別のものです。
4Gamer:
では,熱血江湖Strikersからは少々話題が離れるのですが,熱血江湖オンラインには,ほかにも予定されている関連タイトルがあったと記憶しています。それについて,今後の展開予定も含めて教えてください。
Lee Sang Kyoon氏:
熱血江湖のシリーズ作品ということで捉えると,まずはパッケージソフトの「熱血江湖」があって,次に熱血江湖オンラインと,今回のStrikersがあります。
熱血江湖自体が一つのブランドですので,いくらでも発展の可能性はあるのですが,とりあえずStrikersの反応を見てからということもあって,この先についてはまだ具体的に決まっていません。
4Gamer:
以前,釣りだとかカートレースといったシリーズものが考えられていると聞いたことがあるのですが,これは本当ですか?
Lee Sang Kyoon氏:
ええと,私も正確な情報は知りません。ただ,そうした企画があるという話は聞きました。
4Gamer:
では,話題をStrikersに戻しまして。クローズドβ以降の大まかな日程を教えてください。
Lee Sang Kyoon氏:
クローズドβテストの結果次第でもありますが,オープンβテストは2007年の3月ごろを考えています。あくまで予定ですが。
4Gamer:
日本でサービスを展開する予定はありますか?
Lee Sang Kyoon氏:
時期としては,2007年夏以降を考えています。もっとも,mGame側とCHOCOLATE Entertainmentが調整して決めることではありますが。
4Gamer:
では最後に,日本でもサービスされると仮定して,ここまでの話を興味深く読んでくれた日本のゲーマーに,ぜひメッセージをお願いします。
Lee Sang Kyoon氏:
熱血江湖Strikersが,非常に手軽で楽しいゲームになるよう,開発をがんばっています。例えばご家庭で兄弟が,あるときは同じチームになり,あるときは対戦するといったシチュエーションを考えながら制作しています。
サッカーと武侠を融合させたユニークな取り組みですので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
作品そのものに関する取材では,残念ながら確たる答えを導けなかったのだが,これはおそらく,今後のmGameが重視するポータル展開に合わせた方針転換なのだろう。
熱血江湖オンラインというMMORPGを中核に,ファミリータイトルとの相互通行でファンを惹きつけるという原案は,いまや過去の構想となっている可能性が高い。そして現在は,ゲームポータルの存在を前提に熱血江湖ブランドを生かしつつ,さまざまなゲームジャンルに展開することで,MMORPGファンに限らず広くゲーマーを確保するのが第一のミッションとなっている……。そう理解するのが妥当なところだろう。
この発想の延長でさらに推測を続けるならば,ほかの関連タイトルもミニゲームという感じではなく,独立したカジュアルゲームとしての規模と装いで登場する可能性が,高いように思われる。そして今回,それらについての続報を聞けなかったのは,上述したような意味で企画の練り直しが入ったからだと考えるのは,少々うがちすぎだろうか?
ところでこの作品の日本サービスについて,エムゲームジャパンからは現在のところとくにアナウンスがない。熱血江湖が持つブランド展開能力の核となる漫画版が普及していない日本では,あるいは,また別の構想が必要なのかもしれない。
日本展開を見据えるにせよそうでないにせよ,なかなかユニークなサッカーゲームになるのは間違いない様子。キャラクター性,ブランド性のみならず,ゲーム性の点でも注目すべき作品となることを,大いに期待したい。(Guevarista)
- 関連タイトル:
熱血江湖SOCCER(旧題 熱血江湖Strikers)
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