連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ / 第111回:「レベルファイブ作品が大好き」
著者近影
唐突だけれども,私はレベルファイブ作品が大好き。何が好きって,ゲイムから伝わってくる姿勢が。
……いきなり話をそらして恐縮だけど,ゲイムってのは,なんだかんだいって商品なのよね。ゲイム会社も,文字どおりゲイムを扱っている会社なわけだから,利潤を追求してしかるべきなの。
どんなに面白い作品ができても,それが売れなければ会社にとってはマイナスでしかないし,商品としては失敗といっていいでしょう。
実は,それってプロレスでも同じことがいえて,興行でどれほど面白い試合があったとしても,お客さんが入っていなければ,会社にとってその興行は失敗なの。だからプロレスでいうところの“良い試合=興行の成功”,ゲイムの場合は,“良い作品=売れるゲイム”……という図式は,実は必ずしも成り立たないの。
実際に良い試合があってもお客さんが入っていないことは多々あるし,面白いゲイムなのに売れないってことは往々にしてあるから。
では,逆はどうなんだろう。“売れるゲイム=良いゲイム”なのか。これは,会社的にいえば「良いゲイム」にほかならないわ。だって,会社の第一目的である利潤を,その商品がもたらしているわけだから。仮にそのゲイムが面白くなくても,売れればいいゲイムなのよ。会社にとっては。
と,ここまでが現実の話ね。
では,ゲイムを商品ではなく,作品として考えた場合はどうなのってのが,次の話ね。会社には利潤追求の次に,建前というものが存在するわ。例えばありがちなのが,「子供に夢を与える」っていう建前。それはそれで嘘ではないんでしょうけど,あくまで利潤の次に来るものなのね。だって,会社は社員の生活を守らなきゃいけないから。
で,利潤の次に来る大義名分という名の建前の話をするならば,その場合は,問答無用で“面白いゲイム=良いゲイム”,プロレスでいうと“いい試合があった興行=良い興行”が成立するわ。「ユーザーに感動を与える」という建前は満たしているわけだから,そこにいくら売れたか,という数字は直接的には関係ない。
ただし,この面白いっていう感覚が実にあいまいで,何を面白いと感じるかは人によって違うわけね。
例えば,私は個人的に「はじめの一歩」で一歩が伊達に負けたことは物語として良かったと思っているけど,一歩に負けないでほしかった人もきっといる。ジョーには真っ白に燃え尽きないでほしかった人もいるだろうし,カーロスがパンチドランカーになったのが許せない人もいるでしょう。
要するに,何を面白いと感じるかは人それぞれだから,自分にとっての良い作品が,必ずしも他人にとって良い作品であるとは限らないってこと。
ただ,ここでも数字というのは無視できなくて,たいていの場合,「より多くの人が面白いと感じたもの」は,良い作品だといえると思うのよ。相対的にはね。
だから,より多くの人が面白いと思えるゲイムを作れる会社ってのは,それだけでいいゲイム会社だと思うの。もちろんこれは建前的なもんだし,ユーザー側の勝手な思い込みであって,株主なんかにとってはそう単純な話じゃないんだけど。
で,ついに話が戻ってまいりました。レベルファイブ作品について! 私がレベルファイブ作品のことを好きな理由として,「姿勢」を挙げたのは,現実と建前のバランスが素晴らしいから。
詳しくいうと,利潤追求という現実と,より多くの人に面白さを供給するという建前の,両方を満たしたゲイムを作ろうとしているのが,遊んでいるゲイムから伝わってくるからなのね。
……ウン,シンプルにいうわ。私,「二ノ国 漆黒の魔導士」をプレイしたのよ。で,このゲイムの完成度+新しい試みに感動した,と。そういうことなの。
スタジオジブリとのコラボやら,豪華な声優さんやらっていうのは,ハッキリいってゲイムを売るための方策なわけじゃない。それでいて,一方では分厚い魔法書「マジックマスター」を実際にプレイヤーに持たせ,その内容とゲイムの内容がリンクする,っていう斬新な試みにチャレンジしている。
正直,マジックマスターがないとゲイムが進まない場合があるから,プレイしていて煩わしく感じるときもあるわ。地方巡業に持っていくには,ちょっと大きすぎるしね,マジックマスターって。
でも,そんなデメリットは制作している人も重々承知しているはずなのよ。それでも作っている人達は,そんなデメリットも内包した「物語と現実のリンク」を,プレイヤーに与えることを選択した。これって,凄いことなの。私も表現者の端くれだから分かるわ。これは,度胸と覚悟が無いと,とてもじゃないけどできない。
誤解を恐れずにプロレスで例えると,「いい試合」っていうのは,やろうと思えばけっこうできちゃうものなのよ。この技をやっとけば観客が喜ぶだろうっていうものを出しとけばいいわけだから。
でも,「今まで見たことがない試合」や「印象に残る試合」っていうのは,今まで見せたことのない自分を出さないと作れない。今まで見せたことがないということは,当然見た人がどう反応するか分からないことでもあるわけ。
新しい挑戦をしながら,見る人に感動を与えて,かつきちんと結果を出すのがどれだけ難しいことか。二ノ国 漆黒の魔導士はそれができている作品。最近では「ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生」の挑戦の姿勢も好きだったけど,こちらの志の高さも負けず劣らず好き。
まあ,こんな小難しいことを考えなくても,普通にクオリティの高いRPGとして楽しむのが正しい遊び方なんだろうけどね。ちゃんとジブリっぽいし,レベルファイブっぽい。普通に相当面白いゲイムだから,プレイして間違いないと思うわ。安心して遊ぶがよろしい。
と,そんな感じで2010年最後のヒヒョーが終わったわけだけど,今年って例年に比べて面白いゲイム多くなかった? そう思ってるの私だけかしら。こんなにゲイムが積まれたのは今年が初めてよ。
世の中が不況でゲイムが売れなくなってるらしいんだけど,逆にこういうときだからこそゲイムをプレイすべきだと思うんだけどなあ。外で遊ぶよりはお金かかんないし。
そんな感じで来年もガンガンあんなプレイやこんなプレイをヤってイクわよ! ぶっちゃけ読むのはタダなんだから,気になりゃ読めばいいし,気に入らないなら読まなきゃいい。
でも……来年もよろしく……なんて言わないんだから!…………ヨロシク!
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