インタビュー
世界一流行っているかもしれないゲーム「Angry Birds」,Facebook版や「Angry Birds Space」についてRovio Entertainmentにいろいろ聞いてみた
本日はよろしくお願いします。Sonninenさんは,Angry Birdsにはどの程度関わってきたのでしょうか。
Antti Sonninen氏(以下,Sonninen氏):
私は2011年の5月にRovioに入りましたので,それからになります。Angry Birdsが世に出て2年くらいですが,おかげで会社は急成長しました。私が会社に入ったときにRovioの社員は85人だったのですが,いまでは250人に達しています。入社して1年も経たないうちに,どちらかというと古株社員になってしまいました(笑)。
4Gamer:
最初にAngry Birdsについて聞いたときは,「iPhoneで変なゲームが凄く流行っているらしい。なんか,鳥をパチンコで飛ばして……」と,なにやら動物虐待のゲームかと思ってしまっていました(笑)。ゲーム内容は実際に見てみれば分かりやすいのですけど。
Sonninen氏:
知らない人からは「なんでAngryなの?」と聞かれることは多いですね。ストーリーについては,ADC 04でもお話ししたように,卵を盗まれた鳥達がブタに仕返しをするというものになります。
4Gamer:
たしかゲーム開始時にちょっとストーリーは出ていたと思ったのですが,あまり気にしたことはありませんでした。ブタが,自分の好物である卵を盗んでいたので,鳥が怒っていたんですね。
Sonninen氏:
基本的なストーリーについては,このムービーを見てもらえばよいかと思います。
ゲーム開始時の絵はこれですね。
4Gamer:
ああ,見覚えがあります。1枚絵だったんですね(右にスクロールすると卵を料理しようとしているブタが見える)。
Sonninen氏:
ストーリーについては,できるだけシンプルに伝えるように工夫しています。
4Gamer:
個人的に少しだけプレイはしていたのですが,私はあまりAngry Birdsはやり込んでいなくて(と,タブレットを見せる)。
Sonninen氏:
それにしては3つ星が多いですね(笑)。
4Gamer:
途中で詰まってしまうと,最初のほうの面をやり直すことが多くなりますから。クリア済みの面でもやり込める要素があるのはいいですね。しかし,やってみるとかなり難しいステージも多いのですが,どれも3つ星は取れるようにできているのでしょうか。
Sonninen氏:
すべてのステージで3つ星を取っているプレイヤーもいますよ。社内にも何人かそういう人がいます。ステージの難易度は,レベルデザイナーができあがったステージをプレイしてみて,どれくらいの点で星を増やすかなどを決めていきます。QAチームもすべてのステージをクリアしていますし,彼らは社内で最もAngry Birdsをプレイしている人達でしょうね。
4Gamer:
なるほど。精進します。ところで,最近発表されたFacebook版の反応はいかがでしょうか。
好調です。現時点での正確な登録者数はちょっとよく分からないのですが,Facebookで調べればすぐに出てきますので調べてください(3月3日時点で430万人登録)。ソーシャル関係の機能,とくに仲間内でいちばん得点が高いと冠をもらえる機能は好評ですね。これからスマートフォン用と同様,頻繁にコンテンツを更新してファンを喜ばせたいです。先日は15個の新しいステージを追加しました。これからも成長が続くように頑張ります。
4Gamer:
ソーシャルネットワークを利用して,誰が一番うまいかとかは分からないのでしょうか。
Sonninen氏:
そういう機能はありませんが,以前フィンランド航空と協力して世界選手権を行ったことはあります。優勝者にはヘルシンキからシンガポールまで無料でご招待という特典付きでした。ただ,誰でも参加できるというわけではなくて,「我こそはAngry Birdsが一番うまい!」というのを応募文章でアピールしてもらい,熱意にあふれた人を選んで開催しました。
この大会ではあるフィンランド人の20代の男性が優勝したのですが,現在ではAngry BirdsはFacebookなどに広がっているので,こういった選手権ももうちょっと簡単にできるようになってくるでしょう。機会があれば,近いうちにまた世界選手権を開催したいですね。
4Gamer:
ところで,Facebook版で開発にFlashを使った理由というのはどこにあるのでしょうか。FacebookだとFlashのゲームが主流だからでしょうか。
Sonninen氏:
それは言われますね。プラットフォームのすべてに長所と短所がありますが,Flashの長所の一つは,広がりやすいということですね。Angry Birdsをどういうプラットフォームで出すかという場合,もちろん事前に市場調査をします。そのうえで自分達のファンに最も適したものはなにかというのを常に考えています。
4Gamer:
今回Facebook版をFlashで開発したわけですが,同じようなものをほかのSNSに簡単に導入できると考えていいのでしょうか。
Sonninen氏:
そうですね。Flashは柔軟な技術ですから,結構簡単にほかのSNSにも移行できると思います。ただ,具体的にどこかのSNSに導入するといった話はまだありません。現在はFacebook版に集中して作業をしています。
4Gamer:
Facebook版のパワーアップ機能について教えてください。
Sonninen氏:
Facebook版には新しいパワーアップ要素が追加されました。以下の4種類です。
・King Sling
スリングショットが2割強力になります。
・Super Seeds
種を食べた鳥が大きくなり,破壊力が上がります。
・Bird Quake
ステージを揺らします。
・Sling Scope
弾の弾道が表示されます。
これらは無制限に使えるものではなく,数が限られていて,毎日1個とか,続けてやっていると2個とかが配られるようになっています。もちろん,アイテム課金で販売もしていますが。
4Gamer:
こういったものの使用が前提になると,ゲームのバランスに問題は出ないのでしょうか。
Sonninen氏:
例えば,これまでにもMighty Eagleというものが課金アイテムとして導入されていました。これは巨大な鷲(ロック鳥並みにデカい)が突っ込んできて,なにもかも吹っ飛ばすような機能です。iPhone版の場合,Mighty Eagleの値段はゲーム本体と同じ99セントです。一度購入すればずっと使用することができます。
ただし,そういったものを使ってクリアした場合は,通常のスコアとは別のスコアに集計されるようになっています。どうしてもクリアできない面があって,先に進めない人のための機能ですね。ゲームそのもののバランスには影響しません。
4Gamer:
なるほど。実際のプレイヤーはこういったものに対してどういう反応を示していますか?
これもMighty Eagleを例に出しますと,熱心なファンの人達はこういったものを使わなくても大丈夫なのですが,それでもAngry Birdsファミリーの「鳥」を手に入れるために最強の鳥を購入する人が多いみたいです。ストーリーの問題で,全部の鳥を揃えておきたいと。結構ストーリーが面白いと評価されていますし,Rovioもファンを第一にストーリーを面白くしようと努力しています。ファンに喜んでもらえない製品は,いくら儲かっても作りたくはないですね。
4Gamer:
Angry Birdsはどういった層に受けているんでしょうか。
Sonninen氏:
RovioがAngry Birdsを出したときには,タッチパネルを有効に使ったゲームというのがまだ少なく,タッチパネルを前提にしたゲームということで一気に有名になりました。Angry Birdsは直感的に操作できて分かりやすく,子供でも大人でもお年寄りでも楽しめるゲームです。
こういうハイテクなものにはてんで弱い私の祖母も,Angry Birdsの動画を見て,これならやってみたいと言っていましたし,「普段ゲームはやらないけど,Angry Birdsはプレイしている」といった声もよく聞きます。男女比も5分5分くらいの割合と,あらゆる層から支持されていることが分かります。今後も分かりやすさを大事にしてより面白いものにしたいと思っています。
4Gamer:
Rovioはこれまで52本のゲームをリリースしていて,Angry Birdsは52本めの作品だということでしたが,この2年間くらいはAngry Birdsだけを開発していたのですか?
Sonninen氏:
ヒットゲームのキャラクターを使って展開していくことはRovioの目標でもありました。昨年Rovio MobileはRovio Entertainmentに社名を変えています。これは携帯ゲームのみならず,いろんなエンターテイメント,例えばアニメとかグッズとかに展開していくという方向性を示すものです。とはいえ,今年中にAngry Birdsに続く新作が出てくる可能性が高いです。
これは他社でも同じだと思うのですが,まずヒットした作品でキャラクターを定着させ,それから新しいゲームでキャラクターファミリーを広げていく感じです。
4Gamer:
日本ではAngry Birdsは海外ほど認知されていません。それについてはどのように思っていますか。
Sonninen氏:
日本は国としても市場としても独特な要素があります。まずスマートフォンの普及は欧米に比べて少し遅れています。Angry Birdsはまずスマートフォンから広がっていったゲームですから。さらに日本でのキャラクターに対する文化は独自のものがあります。多くの製品がキャラクターを持っていたり,製品のブランドになっていたりします。そういったことも影響していると思います。
また日本では,欧米で行われているグッズ販売などが行われていません。我々はAngry Birdsを単なるゲームではなくExperienceだと捉えていますので,そういった物理的な体験を含めて展開していく予定です。
4Gamer:
日本での見通しはいかがですか。
それでも最近はよい傾向になってきているんですよ。スマートフォンの割合も増えてきていますし。また,Facebookというと,まずアメリカ,そしてインドネシアで普及しています。東南アジアではかなり人気がありますね。
そういえば,2011年に最もFacebookが普及した国はブラジルだったのですが,2番めは日本だったんですよ。数年前,日本にいたときには,日本でのFacebookはまだまだだなと思ったのですが,最近では日本でもFacebookの浸透は凄いですね。
4Gamer:
次に出る「Angry Birds Seasons」では日本の春がテーマになっているということですが。
Sonninen氏:
Angry Birdsには3種類の製品があり,そのうちの一つがSeasonsで,季節に合わせたテーマのステージを順次追加しています。最初はハロウィン,次はクリスマス,欧米で一般的なイースターやセントパトリックデイなどを扱ったものもあります。これらではステージの背景やキャラクター,音楽などが変わります。月餅祭を扱った第1弾のあと,中国の旧正月に合わせて「辰年バージョン」をリリースしましたので,西洋以外のものという意味では,「Cherry Blossom」が第3弾になります。
先日のADCでの発表も,よく見るとブタがお寿司を食べていたりしましたね。
Sonninen氏:
あれはSeasonsを作る際に描かれたイメージイラストの一部です。すべてが採用されるわけではないので,使われていないイラストから,鳥とブタが揃って出ているものを選んでみました。
4Gamer:
「Angry Birds Space」についてもなにか聞かせていただけますか。
Sonninen氏:
Facebookのファンページでは現在のところ2羽の鳥が公開されています。また,現在は総合エンターテイメントの会社になっていますので,アニメやグッズ,本などの展開を予定しています。とくにアニメについては評価が気になるところです。自分としては,面白い作品になっていると思いますので,公開がとても楽しみです。
4Gamer:
期待しています。本日はありがとうございました。
――2012年2月29日収録
- 関連タイトル:
Angry Birds Space
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(C)2011 Rovio Entertainment Ltd
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