プレイレポート
パラサイト・イヴ,シリーズ11年ぶりの新作「The 3rd Birthday」を先行プレイ。アヤの魅力はもちろん,“オーバーダイブ”による戦略性の高さも魅力
舞台は前作から10数年後のニューヨーク。未知の生命体“ツイステッド”によって崩壊してしまった世界で,主人公のアヤ・ブレアが過去に“オーバーダイブ”することにより,事件の真相を捜査していくという物語が展開していく。前作までのストーリーは設定や時間軸はそのまま引き継がれているが,主人公のアヤは何らかの理由で記憶を失っているため,とくに前作をプレイしていなくとも物語にはすんなり入っていけるはず。
オープニングも含めて,イベントパートで挿入されるレンダリングムービーは,ここ数年のPSPの開発技術のレベルの高さを実感できる美しさだった。
ジャンル的には,これまでの「パラサイト・イヴ」シリーズは2作品ともRPGだったが,本作はハードな雰囲気をそのままに,アクション要素がより濃くなったミッションクリア型の,アクションRPGとしての登場となる。
「The 3rd Birthday」公式サイト
NPCに意識をダイブさせる
“オーバーダイブ”がゲームのカギに
ゲーム本編はアヤを背後から見る形でプレイすることとなる。アヤの攻撃は銃器による射撃のみで,格闘などの攻撃手段は取ることができない。Rボタンを押すことで敵をロックオンして,□ボタンで射撃する。武器はミッションスタート時に3つ持つことができ,これにオーバーダイブ先のNPCが持つ武器を加えた4つをLボタン+□△○×ボタンで切り替えて使っていくことになる。そのほか,×ボタンで回避,○ボタンでグレネードを投げるなど,基本となる操作に複雑な要素はない。
このほか,近くにいるNPCの兵士とともに一斉射撃を行う“クロスファイア”や,一定時間高速移動し,敵の攻撃を自動回避する無敵状態になる“リバレーション”といった特殊技も存在する。クロスファイアは,敵をロックオン状態にしていると増加していく,リンケージゲージが貯まった状態で□ボタンを押すと発動する。一方のリバレーションは,敵にダメージを与えると増加するリバレーションゲージが貯まった状態で,○ボタン+△ボタンで発動する。
本作を遊ぶうえで,とくに重要な要素となるのが,ストーリーのキーワードにもなっている“オーバーダイブ”だ。これは戦闘時に,ステージ上の味方兵士や一般人などのNPCにアヤの意識をダイブさせるアクションで,△ボタンを押した瞬間にダイブ先の人物がアヤとなり,そこから再び戦いを続けることができる。
オーバーダイブのメリットは,NPCのいる場所へ瞬間的に移動することで,敵からの攻撃を回避したり敵の背後に回るなど,攻撃面で優位に立てることだが,ライフや武器がNPCのものと入れ替わることを利用して,回復や武器調達に役立てる,といった使い方ができる。ライフが0になってしまっても,近くにオーバーダイブ対象がいれば,倒れる前に△ボタンを押すことで復活することが可能だ。ちなみに,オーバーダイブ後のNPCが持っている武器はアヤの4つめの装備となり,のちに自らの新装備として購入できることもある。武器をコレクションする楽しみもありそうだ。
オーバーダイブは,兵士間を渡り歩くだけでも気持ちが良いのだが,単に体を瞬間移動させるだけがこのオーバーダイブの面白さではない。本当に面白いのは,前述のNPCたちとオーバーダイブを組み合わせた戦略性にある。
兵士を含めたNPCたちは,あまり積極的に攻撃は行わず,場所も大きく移動することはない。逆にいえば,オーバーダイブで適切な場所へと移動させておくことで,戦闘を有利に運ぶことができるようになる。例えば,クロスファイアを発動させるには,発動前に兵士が,ステージ上に存在するバリケードのそばにいる必要がある。そこでアヤが兵士にオーバーダイブして適切なバリケードへと移動させ,再びもといた兵士のほうへ戻れば,クロスファイアを発動できる状況を自ら作り出せるというわけだ。またこのクロスファイアは,特定の条件下の敵をひるませることができ,その敵に△ボタンを押すことで発動する“オーバーダイブ・キル”(敵にオーバーダイブして内部から破壊する)を行えば,より大きなダメージを与えられる。クロスファイアとオーバーダイブ・キルのコンビネーションは,とくに体力の大きい敵に対して有効な手段となるのだ。
また,アヤやNPCたちのライフは一定時間何もしないでいれば少しずつ回復していくので,ライフが減ったときは敵の攻撃が少ない場所へ移動してから別のNPCへオーバーダイブすれば,もとのNPCはその場でライフが回復し,その間にアヤは別の行動を行うことができる。また,マップ上には武器を持たない一般人NPCも存在する。一般人にオーバーダイブした場合,アヤが所持している武器以外は使えず,クロスファイアも行えないが,ステージの補給ポイントまで移動すれば,その一般人を救出したことになり,ミッションクリア時に表示される,ゲームの成績に反映されるようになっている。
プレイヤー1人で複数のキャラクターを動かして戦闘を行う戦略性は,ちょっとしたRTSのようでもあり,これこそが「The 3rd Birthday」の醍醐味といえそうだ。
筆者自身も最初は普通のTPSアクションの気分で遊んでいたのだが,ボス戦などでオーバーダイブの使い方がある程度理解できた瞬間に,このゲームの面白さがグンと上がる手応えを実感した。ステージ自体もこのオーバーダイブを使う前提のレベルデザインが施されており,序盤の巨大なボスを挟んで,ビルの下と上でオーバーダイブを駆使して戦うシーンでは,その攻略方法を掴んだ瞬間,ちょっとしたパズルを解いたような達成感が得られたほどだ。
主人公のアヤを徹底フィーチャー。遊ぶほどにアヤが好きになる!?
そのため,ムービーなどで見せる彼女の表情やセリフ回し,戦闘時の悲鳴などには,いわゆる戦場の最前線で戦う“強い”女性とは違った,恐怖や憂い,悲しみが見える人間味あふれる演出がなされている。CTIの本部に仲間はいるが,戦場で戦うときは常に孤独な彼女。兵士達はあくまで彼女の補助役であり,同じ能力を持った仲間は存在しない。そんな境遇にある彼女が,過去にオーバーダイブすることで,少しずつ自身の記憶を取り戻していくというのは,これまでのシリーズ以上に彼女への感情移入ができる設定だろう。
また,彼女の服はいわゆるアーマーの代わりになっており,これが破れていくと防御効果が薄れていく。用意されている服には,メイドやチャイナなどのコスプレ風衣装が含まれるなど,ややフェティッシュながら,プレイヤーが彼女により思い入れができるような要素も数多く用意されている。ちなみに,衣装が変わると,その衣装に応じた口調に変化するので,それも楽しみの一つとなりそうだ。
もちろん戦場で戦ったアヤは,倒した敵から獲得した経験値で成長し,さらに,オーバーダイブやオーバーダイブ・キルによって稀に戦場で手に入る“OEチップ”を使うことで,プレイヤーはアヤを自分の好きなタイプにカスタマイズ可能だ。このあたりはスクウェア・エニックスのタイトルらしいシステムと言えそうだ。
もちろん,ただ単に難しいわけではなく,オーバーダイブを繰り返して,ステージの大まかなつくりを把握し,ときには敵にやられて,トライ&エラーで攻略法が少しずつ見えてきた時には,相応の達成感を味わえるはず。2周目以降の引き継ぎプレイや武器の収集,アヤの育成などのやり込み要素も充実しており,まずは簡単な難度で遊び,徐々に高難度にチャレンジするなど,長く遊べそうな作品に仕上がっている。この年末年始を利用して,アヤ一筋で遊んでみるの良いかも?
なお,嬉しいことにゲームアーカイブスでは「パラサイト・イヴ」「パラサイト・イヴ II」がともに配信中なので,アヤにもっと感情移入したくなったら,ぜひこれらも同じPSPに入れてプレイしてみると良いだろう。
「The 3rd Birthday」公式サイト
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