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[GDC 2009#05]Windows 7はゲーマー用OSとして定着するか? ゲーム視点で見るその特徴
これによると,Windowsでのゲーム人口は約3億人。そのうち18%はカジュアルゲームしかやらない層,4%はカジュアルゲームをまったくやらない層だ。77%のユーザーは,カジュアルゲームもプレイすれば,カジュアルでないゲームもプレイしている。伸びているのはオンラインゲームで,とくにMMOゲームが圧倒的だという。
“Windowsゲーマー”の総人口と構成 |
オンラインゲームの成長が著しい |
さて,ゲーム用途では現在でもWindows XPを使う人が多く,Windows Vistaはごく一部のゲームでしかメリットがないというのが現実だ。思い返すと,Windows Vistaが登場した直後は,本当に何をやらせてもWindows XPより遅かった。Service Pack 1にまとめられたパッチ群でようやく相応に高速化を果たしたものの,今なお,パフォーマンスという観点でWindows XPには届いていない状況だ。
これに対して,Windows 7は――常識的に考えると,まだパフォーマンスが出る時期ではないのだが――「ATI Catalyst 9.3」グラフィックスドライバを使って32bit版のWindows 7とWindows Vistaを比較したところ,すでにWindows 7のほうが速いという結果が出ている(関連記事)。「どれだけWindows Vistaは遅かったのか」という話にもなるのだが,それはそれとして,Windows 7では,パフォーマンス面で多くの改善がなされる見込みである。
具体的な例としてまず挙げられたのが,OS自体の起動にかかる時間。従来のWindowsでは,インストール直後こそはそこそこ速いものの,使い込んでいるうちに,スタートアップでいっぱいプログラムを組み込むようになって,メモリは食うわ,起動は遅くなるわといった具合になっていたのだが,Windows 7では,先に読み込んでおくのではなく,必要になったら読みに行くという方針に変更される。これにより,OSの起動はそうとう速くなる見込みだ。
なお,ドライバを並列に読み込むことでも高速化を図るというが,こちらがうまくいくかどうかは状況によるだろう。むしろ遅くなる可能性もあると思う。
メモリの消費量はWindows 7で下がる |
ウインドウをたくさん開いても必要なメモリ量は増えない |
また,先ほど述べた,「当面必要とされないドライバは起動時に読み込まない」という仕組みも関連しているのだろうが,右の上段に示したスライドによると,Windows 7では,Windows Vistaと比べて,メモリの消費量が15%程度少なくなるという。
このほか,カーネルの“省メモリ化”が400か所に亘(わた)って行われていることや,ウインドウ管理方式が変更されていることも,トピックとして示された。
右の下段に示したスライドは,「ウインドウを50個開いた」ときの例だが,Windows 7では,たくさんウインドウを開いても,メモリの使用量は増加しないという。
Windows 7では,DirectX 11関係の拡張を行うとともに,一般のウインドウ描画などで使われるGDIやGDI+の処理をハードウェア描画にして高速化したとのことだ。確か,そのあたりを全部DirectXに置き換えたというのがWindows Vistaのウリだったように記憶していたのだが,実は(全部とは言わないまでも)ソフトウェア処理でしたといわれるのは,なにか釈然としないものがある。
……まあ,今回MicrosoftがWindows 7の高速化に自信を持っている理由が少し分かったような気もするが。
新しくなるGame Explorer
Game Explorerは,「Microsoftとしては,すべてのゲームをこんな感じに管理したい」というビジョンを示すもので,すべてのゲームが対応すれば,それなりに便利かもしれないものである。Windows Vista時代は,一部のゲームがインストール時に追加されるだけの,役に立たないランチャーのようなものだったが,Windows 7で提供される新Game Explorerでは,ゲームのパッチ情報を確認したり,その場でパッチをダウンロードして適用したりできるようになるという。
また,ゲームごとにプレイヤーの成績なども表示できるAPIが用意されたり,ゲーム会社が製品のプロモートもできるようになったりという機能拡張もあるようだ。
なお,新Game ExplorerはWindows Vistaには提供されない見込みとのことだった。
64bit OSでの開発
- Windows 7に対応したゲームを作るなら,Windows 7と似ているWindows Vistaがお勧めである
- 64bit環境でメインメモリを多く使えると,大規模なゲーム開発では非常に有効だ
という2本立て。すでに開発環境をほぼ64bit版Windows Vistaへ置き換えているという,EA DICEのJohan Andersson氏,そしてEpic GamesのTim Sweeney氏の談話も紹介されていたが,要は,多くのメモリを使えるというのは素晴らしいという話である。
ゲームのコンパチビリティ
この点,Windows 7の互換性検証では,検証するゲームの生産国を15か国増やし,カジュアルゲームなどについても新たに検証を行うことで,互換性を上げていくという。
なお,Johnson氏は「Games for Windows準拠のゲームなら大丈夫」としていたが,Games for Windowsに準拠したゲームの数自体が非常に少ないのはちょっと問題である。というのも,オンラインゲームだと,Games for Windowsというプログラムが立ち上がる前に作られ,それがずっとサービスされているという例が当たり前のようにあるからだ。
逆にいうと,Microsoftが方針を変化させたことが互換性を失わせている根本の原因であり,そのあたりが変わらない限り,Windows 7でも,Windows Vistaにあった問題をそのまま引きずる可能性があることは押さえておきたい。もっとも,ゲーム側がちゃんと対応すれば済む話ではあるのだが。
全体として,少なくとも,Windows Vistaよりはゲーム向きであると思われるWindows 7。どうやら,MicrosoftもWindowsプラットフォームにおけるオンラインゲームの伸びをちゃんと認識しているようなのだが,果たしてWindows XPから乗り換えて大丈夫なものなのか。今度こそ,ゲーム開発者に対応してもらえる,魅力的なOSに仕上がることを望みたい。
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