レビュー
ASUSの「TUF GAMING」とコラボしたアークのゲームPC,その見どころは?
パソコンショップ アーク CROYDON CY-IC6Z37A-IWTF
20万円を超えるような高価なゲーマー向けデスクトップPCを入手しようという場合,選択の基準として誰しもが考えるのは性能と価格,それに5年程度の長期にわたって問題なく使用できるかどうかではないだろうか。
内閣府が2018年3月に実施した消費動向調査によると,総世帯のPCの平均使用年数は7年。そこまではいかなくとも,一度PCを買ったら,途中でグラフィックスカードを購入しつつも5年くらいは使いたいというのが正直なところだと思う。
今回取り上げる「CY-IC6Z37A-IWTF」は,東京・秋葉原のPCショップであるパソコンショップ アークが展開するゲーマー向けPCブランド「CROYDON」(クロイドン)の新作となる製品だ。ASUSTeK Computer(以下,ASUS)のマザーボード新シリーズ「TUF GAMING」とコラボレートし,耐久性と信頼性に特化した製品とのことだが,その見どころはどのあたりにあるのか,詳しく見ていきたい。
TUF GAMINGコラボでそこら中が光るCY-IC6Z37A-IWTF
本体前面向かって右上部分にはアクリルパネルがあって,「IN WIN」ロゴが光る。電源ボタンはその下だ |
本体側面上部,電源ユニットトレイの側面に,ネオンボードがマグネットで固定してある |
ネオンボードを取り外したところ。光らせるためのLEDは,マザーボード上のRGBヘッダピンとつながっていた |
入手した評価機は吸気用のPolaris RGBが3基(※2基セット,1基セット各1)追加となっていた。BTO標準構成にプラス8970円(税込)だ |
ファンと比べるとさりげない光り方だが,マザーボードの縁(ふち)とグラフィックスカードのクーラーも光る |
Aura Sync自体はWindows上で動作するツール「AURA」を使うことで,かなり細かく設定できる。そのすべてを紹介することはしないが,全体を同じ色で統一するだけでなく,場所ごとに異なる色を指定したり,特定のルールで光り方や色を変化させたりすることも可能なので,購入したら試してみるといいだろう。
なお,「出荷状態の色に戻す」機能はないので,TUF GAMINGコラボモデルっぽい「錆のような橙色」に戻したい場合は,「R」が255,「G」が78,「B」が0と憶えておきたい。
本体両側面のパネルは,ネジを必要としないツールレスデザインになっており,いずれも天面寄りのところにあるビスを回すと取り外せる。左右のパネルはいずれも,底面側に2か所ある差し込み口とビスとで筐体に固定する仕様で,いずれも開け閉めが容易なため,メンテナンスは相当にしやすい。
内部でアクセスできるドライブベイは3.5/2.5インチシャドウ
2本あるPCI Express x16スロットのうち,CY-IC6Z37A-IWTF標準でROG STRIX-GTX1080-A8G-GAMINGの差さっているほうは,金属製シールドを採用することで,一般的なスロットと比べて垂直方向に1.6倍,水平方向に1.8倍高い強度を獲得したとされる「SafeSlot」にもなっている。
SMD4-U16G48M-26V-Dは,1.2駆動のMicron Technology製チップを採用したモデルで,1枚8GBのモジュールを2枚装着することにより総容量16GBを実現している。
3年前そして5年前想定のデスクトップPCと比較
最新世代のデスクトップPCはどこまで速いか?
CY-IC6Z37A-IWTFの性能を推し量るにあたって,i7-8700KとGTX 1080で組んだ自作システムと比較しても,大差のないスコアが並ぶだけなのであまり意味はない。そこで今回は比較対象として,3年前および5年前のゲーマー向けハイエンドPC相当のマシンを用意し,これと比較することにした。当時のPCからCY-IC6Z37A-IWTFへ買い換えた場合にどれだけの性能向上があるかを確認しようというわけである。
とはいえ,完全に当時と同じマシンを用意するのは難しいため,ストレージや電源ユニットなどは共通にしたうえで,「3年前のPC」としては「Core i7-6700K」(以下,i7-6700K)と「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)のペア,「5年前のPC」としては「Core i7-4790K」(以下,i7-4790K)と「GeForce GTX 780」(以下,GTX 780)のペアをそれぞれ用意することにした。厳密にきっちり3年前,5年前のものを選んだというよりは,その当時の代表的なハイエンド構成を選んだと理解してもらえれば幸いだ。
OSはCY-IC6Z37A-IWTFのみ64bit版Windows 10 Homeで,比較対象機は64bit版Windows 10 Proとなるが,エディションの違いが性能に与える影響はないため,問題はないと考えている。
グラフィックスドライバは「GeForce 397.31 Driver」で統一。そのほかのテスト環境は表2のとおりである。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0準拠。解像度は,CY-IC6Z37A-IWTFがハイエンド市場向けGPUを搭載しているため,3840
高解像度で真価を発揮するCY-IC6Z37A-IWTF。描画負荷が高いほどGTX 1080の力が活きる
以下,文中,グラフ中ともに,「3年前のPC」を「i7-6700K+GTX 980」,「5年前のPC」を「i7-4790K+GTX 780」と表記することを断りつつ,「3DMark」(Version 2.4.4264)の結果から順に見ていこう。
グラフ1は3DMarkの「Fire Strike」における総合スコアをまとめたもの。CY-IC6Z37A-IWTFのスコアはi7-6700K+GTX 980比で173〜181%程度,i7-4790K+GTX 780比に対して230〜253%程度という,圧倒的なスコア差を示している。
続いてグラフ2はFire Strikeから事実上のGPUベンチマークとなる「Graphics test」の結果を抜き出したものだ。CY-IC6Z37A-IWTFのスコアはi7-6700K+GTX 980の1.7〜1.8倍程度,i7-4790K+GTX 780の2.4〜2.6倍程度となった。純然たるGPU性能でこの程度高速であるという理解で理解でいいだろう。
一方,CPU性能のテストとなる「Physics test」の結果がグラフ3となる。長らく4コア8スレッド対応であり続けてきたこともあり,i7-6700K+GTX 980とi7-4790K+GTX 780のスコア差は6〜7%程度しかないが,6コア12スレッド対応のCPUを搭載するCY-IC6Z37A-IWTFはi7-6700K+GTX 980に対して,50〜52%程度高い,すなわちコア数比だけきっちり高いスコアを示してきた。
グラフ4はCPU性能とGPU性能の両方がスコアに大きく影響を及ぼすCombined scoreの結果だが,ここでもCY-IC6Z37A-IWTFが比較対象を圧倒している。それだけ,現行世代のゲームPCが持つ性能は従来世代からの飛躍が大きいということなのだろう。
続いてグラフ5は「Time Spy」の総合スコアを,グラフ6,7はその「Graphics score」と「CPU score」をそれぞれ抜き出したものだ。
GeForce 900世代以前のGeForceでDirectX 12への最適化があまり進んでいなかったことを憶えている読者もいると思うが,実際,CY-IC6Z37A-IWTFのスコアはFire Strikeのとき以上に比較対象を圧倒している。総合スコアでi7-6700K+GTX 980に対して78〜82%程度,i7-4790K+GTX 780に対して171〜180%程度,それぞれ高いスコアだ。
実際のゲームだとどうなのか,まずグラフ8〜10は「Prey」の結果となる。
4Gamer読者がゲームで使うディスプレイ解像度の圧倒的1位は1920
「Overwatch」の結果がグラフ11〜13だが,「ただ遊ぶ」だけならi7-4790K+GTX 780でも1920×1080ドットで最小フレームレートが60fpsを上回っているので,これで十分だろう。ただし,垂直リフレッシュレート120Hz環境を狙うのであればi7-6700K+GTX 980が,同144Hz環境であればGTX 1080搭載のCY-IC6Z37A-IWTFが必要ということになってくる。
CY-IC6Z37A-IWTFであれば,2560
CY-IC6Z37A-IWTFが比較対象を圧倒するのが,スコアをグラフ14〜16にまとめた「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)である。ここでCY-IC6Z37A-IWTFはi7-6700K+GTX 980に対し,61〜76%程度も高いスコアを示した。
ただ,Preyと同様,1920
レギュレーション21.0の規定するグラフィックス描画負荷だとi7-6700K+GTX 980でも快適なプレイがおぼつかない結果になったのが,グラフ17〜19の「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)である。
i7-6700K+GTX 980の1920
グラフ20〜22は「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)の結果だ。Wildlandsは,グラフィックスメモリの使用量が大きいのだが,そういうタイトルを前にするとGTX 980の4GB,GTX 780の3GBでは十分でないのが明らかだろう。レギュレーションでは合格ラインを平均60fpsとしているが,それを解像度1920
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものがグラフ23だ。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチは描画負荷が比較的低めなため,1920
ただし,そんなi7-4790K+GTX 780の最小フレームレートは1920
3Dベンチマークの最後はグラフ27〜29にまとめた「Forza Motorsport 7」(以下,Forza 7)だが,グラフィックスAPIにDirectX 12を採用していることもあってか,i7-4790K+GTX 780はまったくプレイできないレベルだ。3840
i7-6700K+GTX 980ならプレイはできるが,4Gamerで合格ラインとする最小60fps,平均70fpsのラインを超えてくるのはCY-IC6Z37A-IWTFだけである。
最大消費電力は350〜360W程度か。ケース内のエアフローはさすがに優秀
CY-IC6Z37A-IWTFの消費電力はどの程度なのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,システム全体の消費電力で比較を行ってみたい。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とすることにした。
ここであらかじめお断りしておくと,i7-6700K+GTX 980とi7-4790K+GTX 780のテストでは電源ユニットにSilverStone Technology製の「SST-ST1200-G Evolution」を用いている。本来なら,CY-IC6Z37A-IWTFと同じ,つまりは650W前後の定格容量を持つ3年前および5年前の電源ユニットを用意すべきなのだが,それができていないので,消費電力の横並び比較にあまり意味はない。今回はあくまでもCY-IC6Z37A-IWTFの消費電力を把握する程度に留めてもらえればと思う。
というわけで,結果はグラフ30のとおり。CY-IC6Z37A-IWTFの最大消費電力はおおむね350〜360Wといったところである。CY-IC6Z37A-IWTFは定格650Wの電源ユニットを搭載しているので,かなり余裕を持った設計ということになるだろう。ユーザーが将来的にストレージを追加したり,それこそ数年後にグラフィックスカードを交換したりしても,そう簡単には容量不足にならないようにという配慮なのだろう。
CPUとGPUの温度も確認しておきたい。Time Spyの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,「HWMonitor」(Version 1.35)からCPUおよびGPUの温度を取得した結果がグラフ31,32だ。テストにあたってCY-IC6Z37A-IWTFは室温24℃環境の机上に置き,比較対象のシステムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で同じ場所に置いている。
なお,比較対象のi7-6700K+GTX 980では,CPUクーラーにIntel製「TS15A」を利用。一方のi7-4790K+GTX 780ではi7-4790の製品ボックス付属のクーラーを用いた。
まずCPUの最大温度から見ていくと,CY-IC6Z37A-IWTFの高負荷時における78℃というスコアは立派。光るケースファン
一方のGPUの最大温度だが,CY-IC6Z37A-IWTFのアイドル時に着目してほしい。CY-IC6Z37A-IWTFが採用しているグラフィックスカードのROG STRIX-GTX1080-A8G-GAMINGは,アイドル時にファンの回転を停止する機能を有している。つまり,CY-IC6Z37A-IWTFはGPUクーラーのファンが停止しているにも関わらず,39℃という低い温度を実現しているのだ。底面吸気する3連ファンがグラフィックスカードの冷却に寄与しているということなのだろう。なのでおそらく,BTO標準構成の場合,アイドル時の温度は若干上がるのではないかとも推測している。
最後にCY-IC6Z37A-IWTFの動作音だが,筆者の主観となることを断ったうえで述べると,その静音性は良好だ。6基ものケースファンを備えてはいるが,それらの動作音は小さく,うるさいと感じることはテストを通じて一度もなかった。これだけのスペックを備えながら,動作音が抑えられている点は評価してよい。
バランスは欠くものの,尖った魅力があるCY-IC6Z37A-IWTF
CY-IC6Z37A-IWTFの仕様や性能を細かく見てきたが,あらためて,良いところと残念なところ,人によって評価が割れるであろうところを以下のとおりまとめてみた。
良いところ
- メンテナンスしやすい筐体設計
- 安定性および信頼性の向上に努めた仕様
- 高解像度でも十分快適にプレイできる性能の高さ
- ケース内のエアフローによる冷却効果のよさ
- 静音性の高さ
残念なところ
- BTO標準構成で512GBしかないストレージ容量
- ファンの風がほぼ当たらない3.5インチシャドウベイ
- ゲーム用としては貧弱なオンボードサウンド
人によって評価が割れるであろうところ
- ターゲット解像度が1920
×1080ドットであればオーバースペック気味な3D性能 - 派手なLEDイルミネーション
- 光学ドライブ非搭載
- 前面ではなく天面部にある追加インタフェース
一方,今回の構成で27万8770円(税込),BTO標準構成でも26万9800円(税込)するPCで,ストレージ容量が512GBというのはさすがに心許ない。ストレージを追加するにしても,3.5インチシャドウベイの冷却がほとんど考えられていない点は気になるところだ。また,ストレージ以外だと,ゲーマー向けモデルとして貧弱なオンボードサウンド機能も,PC全体のコストからすれば看過できない弱点ということになると思う。
また,光学ドライブ非搭載で,後から取り付ける場所すらないのは,「PCゲームのほとんどは配信になった」とはいえ,不安に思う人がいても不思議ではない。
3年前や5年前のゲーマー向けデスクトップPCから買い換える先として,CY-IC6Z37A-IWTFの持つ3D性能は,組み合わせるディスプレイ次第で過剰となってしまうほどに高い。その意味では,CPUとGPUの性能をとことん重視しつつも,ストレージやサウンドは後から自分でなんとかできるような人で,かつ,エントリークラスという価格帯で安定性や信頼性を追求したマザーボードゆえ,機能面では一段落ちる仕様であることを理解して使えるような人が,CY-IC6Z37A-IWTFのターゲットとなるのではなかろうか。
「バランスよくまとまったスペック」とは言えないものの,その分,見た目や3D性能に尖った魅力があるので,そこに惹かれたのであれば選択肢として考慮に値するはずだ。
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arkhive(旧称CROYDON・GOUGER)
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