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【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
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印刷2013/03/16 00:00

連載

【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能

西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト

画像集#011のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能

(善)後不覚

blog:http://www.z-z-z.jp/blog/


米ニューヨーク市で開催された発表会の模様
画像集#009のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
 北米時間2013年2月20日,PlayStation 4(以下,PS4)が発表されました。
 基本スペック周りやコントローラ関連の情報,そして開発中のゲームコンテンツや予定サービスの基本情報などが明らかになりましたが,一方,詳細はまだ不明なところが多いのも確かです。
 とくに本体は,イメージカット的なものすらない状況。情報は何一つ開示されなかったため,「まだなにもできていない」「いや,とんでもない隠し球が本体に隠されているに違いない」などなど,憶測が憶測を呼ぶ状況になっています。

 そこで,いまさら間に合わないかもしれないけど,夢を抱きつつ,ボクなりに「PS4に付けてほしい機能」をリクエストしてみたいと思います。


要望(1)多画面出力に対応してほしい


 PS4はGPUにRadeon HD 7800シリーズ相当のコアを採用しました(関連記事)。Radeonといえば,多画面出力技術「Eyefinity」がよく知られています。まあ,Radeon HD 7800系といっても,PS4のAPUに統合されるにあたっては組み込みGPU的なカスタム化を受けるはずですから,Eyefinityをそのまま使えるかどうかは分かりませんが,それでもぜひ複数画面への出力に対応してほしいと思っています。

 ちなみに,ボクの偏執的なまでの多画面愛は,この連載の過去エントリでも語っていますが,実際,PCオペレーションが便利というだけでなく,多画面でプレイするゲームはかなり楽しいです。以前,Xbox 360用タイトル「Forza Motorsport 3」を自宅で3画面出力してプレイした話もお伝えしていますが,視界の大部分がゲーム世界の映像で覆われるのは感動的です。

視界を取り巻くように画面を設置するだけで,ゲームはさらに面白くなる
画像集#002のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能

 最近では,20〜24インチクラスで1920×1080ドット解像度を持ち,HDMI入力に対応したディスプレイが,安いものであれば1万5000円前後からで購入できます。3画面ゲーム環境の構築は,コスト的にもけっこう現実味のあるソリューションになってきています。
 PlayStation 3(以下,PS3)でもマルチ画面構成は可能で,たとえば「グランツーリスモ5」なら,PS3本体とゲームソフトを3つずつ用意して,PS3をネットワークで結べば,3画面ゲーム環境は構築できますが,このやり方だと,ディスプレイ機器の導入コスト以上に,ゲーム実行環境の構築コストのほうが高く付いて非現実的です。やはり1台のPS4からの3画面出力をサポートしてほしいですね。

PS4の発表会では,メイン画面があって,それを左右の壁に向かって大きく拡張するようなスクリーンを使ってプレゼンテーションが行われた。これが何かの示唆だといいな,と
画像集#010のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
 ちなみにボクはそのとき,画面あたりのレンダリング解像度が下がってしまってもいいと思っています。たとえば1280×720ドットの3面とか,あるいは1024×600ドットの3面とかにして,それぞれディスプレイに拡大表示するのでもOKでしょう。
 独立した3画面のレンダーターゲットを確保する方式だと,ゲーム開発サイドで多少の面倒が上乗せされる可能性がありますから,適当なシングルレンダーターゲットを,出力側で3分割出力するソリューションでもいいかもしれません。それなら,ゲーム開発サイドはレンダリングするときの画角を広げる方向の調整するだけで追加の手間なく3画面出力に対応できます。

 ちなみに,この3分割出力アプローチの多画面出力は,GPUレベルでの多画面出力をサポートしていなかったGeForce 400&500シリーズを搭載するグラフィックスカードの一部で採用されていました(関連記事)。

 ところで,インターネット上で流布されているまことしやかなリーク情報には,「PS4は2画面出力に対応する」というのがありましたが,2画面ではなく3画面でお願いしたいです。
 2画面だと,ディスプレイを横に並べた場合,中央に表示されることになる主人公が常に2つのディスプレイの中央の表示境界に来てしまって不格好になりますし,あるいは一人称シューティングタイプのゲームだと,照準がこの中央表示境界に来てしまってプレイしにくくなりますからね。

 そういえば,PS3の発売から遡ること1年前。E3 2005におけるPS3の発表会では,「PS3が2画面出力に対応する」と予告されていました。最終製品ではこの多画面出力機能がカットされてしまいましたが,ぜひとも今回は実現してほしいと思います。

E3 2005で,当時のソニー・コンピュータエンタテインメント代表取締役会長兼グループCEOの久夛良木健氏がPS3を発表している様子(左)。そのプレゼンテーションスライドのなかには「2画面出力対応」を予告するものがあった。当時から多画面マニアだった筆者は,厳粛な雰囲気漂う会場の中でただ一人,このスライドが表示されたタイミングで「ヒャッホウ!」と声を上げて失笑された記憶が
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 ちなみに,この3画面機能ですが,なにも1つのゲーム画面をパノラマ的に表示するためだけに使わなくてもよいと思います。
 アイテム画面やステータス情報を表示させるような,ゲームプレイ支援用ディスプレイに使っても便利そうですし,あるいは,1つしかない画面を分割してプレイしていたマルチプレイ対応タイトルを,ちゃんと「1プレイヤー1画面」で個別のディスプレイ機器へ表示できるようにするのもいいかもです。
 3画面を縦に並べて設置するのに対応したゲームが出てきても楽しそうです。超縦画面オチモノパズルとか……は,楽しいかどうかは分かりませんが,1画面のときは顔しか表示されなかった恋愛シミュレーション系のゲームが,縦方向に画面を増やすにつれて下半身まで表示されるようになるとか。

 妄想はこのへんでやめておきますが,ぜひとも3画面出力,お願いします。


要望(2)ゲームの映像が一律HDCP付きなのをなんとかしてほしい


PS3のHDMI出力には,常時,HDCP信号が付加される
画像集#007のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
 PS3では,HDMI端子から出力される映像には,たとえゲームの映像であっても,一律,著作権保護機構のHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)信号が付加されています。そのため,PS3ではゲーム映像をHDMIでキャプチャデバイスへ出力して,デジタル録画するといったことを行えません。Xbox 360やWii UのHDMI端子ならそういうこともないのに,です。

 確かに芸能人が出演するゲームとか,RPGやアドベンチャーのようにストーリーのネタバレが危惧されるゲームでは,その映像が録画されて動画共有サイトに投稿されるのは困るので,一律解除は無理かもしれません。でも,ゲーム開発スタジオのほうで任意にオン/オフできるようにすれば,「これはOK」という感じで,許可できるようになるんですよね。

PS4の発表会では,スマートフォンやタブレット端末を子画面として,SHARE機能を活用する方向性が語られた
画像集#008のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
 あるいは,新作の頃はHDCPオンにしておいて,時間が経ったら無効化するといった,時限の仕組みなどがあってよいかもしれません。
 格闘ゲームなどは,映像が共有されたほうがファンの間で盛り上がりを見せますし,「旬を過ぎた隠れた名作」であれば,ファンのゲームプレイビデオ投稿でブームが再燃するなんてこともありえるでしょう。

 ただ,PS4では,自分のプレイしているゲームの映像を他者と共有できる「SHARE」機能が付くので,そういった「ゲーム映像コミュティの促進」は,ゲームプラットフォームベースで制御しようということなのかもしれませんが。


要望(3)ゲームの4K出力対応を再考してほしい


河野 弘氏(ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン プレジデント)
画像集#006のサムネイル/【西川善司】PlayStation 4に付けてほしい機能
 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンの河野 弘プレジデント
に話を聞いたインタビュー記事中でも触れていますが,PS4では,搭載されるHDMI端子が4K(3840×2160ドット解像度)出力に対応するそうです。ただし,ゲーム画面を4K出力させるかどうかは未定とのことでした。

 おそらく,ゲームで4K出力させるのは,GPU性能的に厳しいということなんでしょうけど,できれば対応してほしいところです。
 たとえば,「4K出力時に限ってはアンチエイリアシングなしでOKとする」みたいな感じとかはどうでしょう。負荷はそれなりに抑えられますし。

 ちなみに,現在はとても高価な4Kテレビや4Kディスプレイですが,近い将来,30インチクラスでリーズナブルな4Kディスプレイ製品も出てくるようです。
 仮に30インチで4K解像度だと,ドットピッチは0.17mmで,1mmあたり約6ピクセル,1mm2に約36ピクセルという高密度ぶりになりますから,そうした4Kディスプレイではアンチエイリアシング処理を用いなくても,ジャギーは気にならないかもしれませんね。


要望(4)Blu-ray再生時の4K出力には超解像処理を入れてほしい


 PS3はBlu-ray Discのプレイヤーとしてとても優秀です。反応がよく,画質も優れています。なにせ,大手AV機器メーカーの視聴室にPS3が常備されていることもあるくらいですから。
 なのでPS4においても,Blu-ray Discプレイヤーとしてのポテンシャルアップには期待せざるを得ません。とくにボクとしては,Blu-rayなどのフルHDビデオ再生時には,ぜひとも,GPGPUを駆使しての「フルHD→4K」の超解像エンジンを搭載してほしいと思っています。

 すでに家電製品の4Kテレビ製品や4Kプロジェクタ製品にはフルHD→4Kの超解像機能を搭載したものが出てきていますが,家電製品では多くのメモリを搭載できないため,たくさんのフレームにわたって映像の解析を行うようなアルゴリズムの実装には至っていません。最新のテレビ製品でもせいぜい3〜4フレームが最大です。

 一方,超解像技術や補完フレーム技術に対して,「Bidirectional Reprojection(双方向再射影)技術を応用していってはどうか」という流れが最近は起こり始めています。
 Bidirectional Reprojectionとは,現在フレームの映像を処理するのに,過去のフレーム複数枚と未来のフレーム複数枚の内容を吟味していこうというものです。「過去から現在」「未来から現在」という2方向から射影を行うから“双方向”再射影というわけですね。

 この概念は,映像圧縮のMPEG系の技術にとってはもはや常識的なものですが,これをリアルタイムで高画質処理に応用していこうというのは,まだ,試みとしては新しいモノになっています。
 未来の映像は映像エンジンにとっては未知のものとなりますが,Blu-ray Discのようなディスクメディアの映像コンテンツなら,これから表示しようとする映像フレームよりも未来のフレームを先読みをしていくことが可能です。またテレビ放送でも,映像データを相当分バッファリングすれば同等のことは行えます。

レグザZ7シリーズ(画像はレグザ55Z7のもの)
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 ちなみに東芝の液晶テレビ「レグザZ7」は,この概念を使って超解像処理を実現していますが,参照フレームは過去が2枚,未来が1枚と,双方向射影というにはまだまだ規模が小さいものに留まっています。その点PS4ならば,GPU性能的にもメモリ容量的にも,もっとたくさんのフレームを溜め込んで処理できるはずです。
 付け加えておくと,このBidirectional Reprojection技術を応用した映像エンジンで先進的なものを持っているのは米MotionDSPで,同社の技術はGPGPUベースで実装されています。


 ……ほかにもいろいろあるんですが,今回はここまでとしておきましょう。
 なお,今回挙げたリクエストは,次期Xboxに採用していただいてもかまいません(笑)。

■■西川善司■■
テクニカルジャーナリスト。最近何かありましたかと問うたところ,「2月22日に書籍『ゲーム制作者になるためのグラフィックス技術』の増補改訂版を出しました。PS4やWii U世代のゲームグラフィックス技術をイラスト図解や実際のゲーム画面を引用して解説していますので,機会があればぜひ手に取ってみてみてください」という回答がありました。……節子,それ近況やない。宣伝や。
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    PS4本体

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