連載
【ヒャダイン】「大合奏!バンドブラザーズP」に参加したよ!!
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第23回「『大合奏!バンドブラザーズP」に参加したよ!!」
こちら,任天堂公式のお仕事ということで,公式だからこそできることを思いっきり楽曲に詰め込みました。同じくプリセット楽曲には小室哲哉さん,ゴールデンボンバーさん,八王子Pさんの作品が収録されております。ガクブルなラインナップで恐縮です……。
さて,僕の楽曲について少し説明させてください。まず,タイトルの「Starlight」。そうですよ。任天堂でスターといえば★。そう。「スーパーマリオブラザーズ」シリーズの無敵アイテム,スーパースター!! 金色に輝く★をゲットしたら,一定時間無敵になるアレですよ。あの高揚感ったらなかったですよね。一方,あの曲が終わるときの切なさたるや……。
永遠に無敵でいたくなるような,ハードなコースもありますよねえ。スーパーマリオブラザーズシリーズの一部コースって,やり込みだしたら難度がハンパなかったりしますから。でも,そこが任天堂作品の素敵なところで,小さいお子様が簡単に遊べる要素から,大きなお友達が必死こいてようやくクリアできるかできないかのコースまで用意しているという,全方位体制なんですね。
おっと話がズレました。そう。今回の僕の楽曲はイントロの歌部分にそのスーパースターの「チャッチャッチャッチャラッチャッチャチャッチャ」という,おなじみのBGMのメロディを拝借しております。さらにさらに,スーパーマリオブラザーズのいろいろな効果音を散りばめたわけです。
曲調はイケイケドンドンな感じではなくて,少しR&B調なゆったり感で,歌詞はスターに恋をする女の子のキュンキュンな感じになっております。ありがたいことに,この楽曲を本編プリセット曲として収録していただいているのみならず,スタッフロールのBGMとしてフルバージョンを採用していただいているほか,チュートリアル用ゲーム,プロモーション動画などにも使っていただけて,ああ,曲が愛されてよかったなあ,なんてしみじみ思っています。
まず特筆すべきは「バンブラP」の「P」。昨今動画サイトからボカロPがどんどん出てきて一つの文化を作り上げていますが,かなりかなーり簡単になったとはいえ,やはりコンピューターで音楽を作るというのは,なかなかハードルが高いものです。ボカロ曲が好きで,自分でもボカロPのようなことをやりたいんだけど,音楽的な素地が無いという理由で諦めている人は少なくないことでしょう。さらに,ボカロPに限らず,DTM(デスクトップミュージック)をやってみたいけど,やり方がよく分からないという人も,きっと多いことと思います。
そんな方に朗報!! このバンブラP,簡単にボカロ曲を作れちゃうのです。しかも,自分の声で!! これが凄い。マイクに向かって「らーーーー」というだけで,声サンプルを抽出。そこからボーカロイドを作り上げてくれるのです。自分のアバターも作っておけば,自分の分身がボーカロイドとしてゲームで歌を歌ってくれるのです!!
これがねえ,楽しいんですよ。かなりリアルで。二頭身の自分が,自分自身の声を発しながらゲームで頑張ってくれるなんて,愛さざるをえない!
さらに,楽曲を構成するいろんな楽器でリズムゲームをプレイできたり,インターネットで全国の人と合奏できたり,ネットで最大100曲まで無料ダウンロードできたりと,充実すぎる機能。アーケード機以外の音ゲーの進化,ここまできたか……。
任天堂の音ゲーで思い出したのは,1992年に出たスーパーファミコン用ソフト「マリオペイント」の機能,「サウンドコラージュ」。マリオペイントは,スーパーファミコン初のマウスを使ったソフトで,お絵描きが楽しめたりするんですが,さらに曲を作る機能も付いていたんですね。これが,楽しかったんですよ!
画面上の楽譜の上に16個の音色をポチポチと置いていく作業を繰り返して曲にしていくのですが,音符がただの音符じゃなくて,マリオだったりヨッシーだったりキノコだったり……。そんなカラフルな譜面,楽しさの塊でしょう。
肝心の音色は,マリンバや矩形波のようなものから,「でっていう」というヨッシーの鳴き声や,「あふん」や「にゃー」といったトリッキーなものまで!
とはいえ,20年以上も前のソフトということもあってか,機能はけっこう制限されていました。一番キツかったのは,「黒鍵が使えない」ということ。要するに,ドレミファソラシドだけで,シャープやフラットは使えなかったのです。これは楽曲制作に大きく響きます。
あと,専門用語で「ポリ数」というのですが,同時に鳴らせる音の数が,3音。まあ,ファミコンは3音+ノイズの4音だったわけですから,十分といえば十分ですが。あと,音色はトリッキーで素敵なものが15種類用意されているのですが,音の長さを指定できない。例えば,「にゃー」という音色だったら,「にゃっ」とか「にゃーーーーーーー」とか,音の長さを決められないのですよ。単音のみ! この潔さもたまんないですね。
僕は子供の頃,このゲームは持っていなかったので,友達の家でプレイさせてもらっていたのですが,かなり憧れていましたねえ。ひたすら「でっていう」を連打してぼにょぼにょいわせてゲラゲラ笑ったり,小学校の校歌を打ち込んで「おーーー!」って言ったり。そうやって音の楽しさ,ゲームミュージックの楽しさを味わっていたものです。
これが1992年のこと。そこから21年。ゲームというのは日々進化していくものなんですね。友達の家に集まって,1人が3音を積み上げていく作業をみんなで見ていたあの頃。今やインターネットやローカル通信を使って,それぞれが違う楽器を担当して合奏まで出来るという……。
時代は変わりゆくものです。しかし,「プレイヤーに今持てるすべてを提供する」というゲームクリエイターの皆さんの覇気は変わらないものなのだなあ,としみじみ思いました。
ということでバンブラP,ぜひぜひお楽しみください!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ ヒャダイン氏は,12月10日(火)19:56〜20:54,日本テレビで放送される「踊る!さんま御殿!!」に出演します。明石家さんまさんと一緒の仕事は今回が初めてとのことで,たいそう感動したのだとか。また,YouTubeで展開されている「WISH presents 白黒歌合戦」では,小室哲哉さんと楽曲を共作中。ちなみにヒャダイン氏が初めて手に入れたシンセが,小室氏プロデュースの「EOS B700」だったこともあってか(関連記事),感慨深いものがあるそうです。 |
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