テストレポート
絵札合成がやめられない止まらない。「天外魔境 JIPANG7」クローズドβテストで,“有名IPの世界観&絵師”で展開する本作の中毒性を実感
「今作は“インターネットゲーム”(ブラウザベースの作品)である」との衝撃的な発表からおよそ5か月,あれよあれよという間にクローズドβテスト実施まで開発の進んだ,人気シリーズ最新作「天外魔境 JIPANG7」。
本稿では,2月7日から2月14日まで実施された,同作のクローズドβテストのプレイレポートをお届けする。
「天外魔境 JIPANG7」公式サイト
天外魔境 JIPANG7は,1989年の第1作発売から連綿と続く「天外魔境」シリーズの最新ナンバリングタイトルである。天外魔境シリーズは“海外から見たおかしな日本像”という,日本のようで日本でない,少しいびつな和風のモチーフを持つ作品として広く知られている。遊んだことはなくても,タイトル名,あるいは本シリーズの産みの親である広井王子氏の名前ぐらいは聞いたことがあるはずだ。
今作は,これまでの「ジライア」「戦国卍丸」「カブキ団十郎」などのキャラクターを主人公としたヒロイックな物語から一転,天外魔境の世界観を反映した舞台で,プレイヤーがそれぞれの生活を営めるソーシャルゲームとして制作されている。
シリーズ作品として新たなプレイヤーを取り込むことはもちろん,コアなファンでも新鮮な気持ちでプレイできる作品として,大きな期待がもたれているタイトルというわけだ。
なお今回のCBTは,4Gamerおよび,本作のチャネリングサービスが行なわれるハンゲームでテスターが募集され,計2000人の規模で行なわれた。
CBTだけに,有料アイテムはもちろん,ストーリー関連のクエストなどは未実装。しかし,絵札を使ったカードバトルや,絵札を制作するための素材合成といった一連のシステムはじっくりと試すことができ,ソーシャルゲームとして生まれ変った“新たな天外魔境”として「これはハマる!」と予感させるに十分な手応えが得られた。
ちなみに,今回のCBT段階では,BGMや効果音は未収録だったが,公式Twitterにて,正式サービスに向けて音楽が制作されている旨がつぶやかれている。
不安な気持ちでプレイしていたテスターもいたと思うが,その点はご安心を。
※本記事はクローズドβテスト時のゲーム内容を元にしています。そのため,各種アイテムやパラメータなどは,今後,変更される可能性があります。
フィールド,バトル,そして拠点となる「あばら家」
ゲームの全体像とプレイのサイクルをチェック
まずはゲームの進行について,その全体像を把握しておこう。初めてゲームにログインしたときは,最初に案内役「おミヨ」によるチュートリアルで,ひととおり遊び方のレクチャーを受けることになるが,この辺りは個々のトピックに分けて後述するため,ここでは割愛する。
チュートリアルを終えると,プレイヤーは自らの操作するキャラクターを作成する。名前は任意,選べるキャラクターは男女のバリエーションも込みで以下の7種類だ。各能力値の意味と共に掲載しておこう。
●各能力値の意味
体……戦闘要素「絵札戦」におけるキャラクターの体力
術……戦闘における「術」札の強さに関係する
精……戦闘における「召還」札の強さに関係する
力……戦闘における「直接攻撃」札の強さに関係する
段……レベル。徳を得ることで段階的に増える
徳……経験値。敵を倒す,クエストをクリアするなどで増える
●選べるキャラクター
【ジパングの民】男/女
体:60 力:2 術:2 精:2 段:1 徳:0
各パラメータが平均的に育つ。「火田」(後述する,アイテムを育てる畑のようなもの)における作物の成長速度が速い
【火の一族】男/女
体:52 力:4 術:2 精:1 段:1 徳:0
力の値が高く,威力の強い武器を扱うのが得意
【鬼】
体:70 力:3 術:1 精:1 段:1 徳:0
体力・力は高いが,術・召還が苦手
【人魚】
体:45 力:1 術:3 精:4 段:1 徳:0
精神力の値が高く,召還攻撃が得意
【天狗】
体:48 力:2 術:4 精:2 段:1 徳:0
術の値が高く,攻撃術・回復術が得意
このキャラクターの選択によって,マップ上でのプレイヤーの拠点「あばら家」の配置が決まってくるほか,戦闘においては攻撃が得意,回復が苦手,といった具合に得手不得手がでてくる。
また,CBTでは「火の一族のみ使用可能」といった特殊な装備品や絵札の存在も確認できた。裏を返すと,CBT段階ではそれぐらいの違いしかなかったわけだが,正式サービスでは各種族の役割が戦闘以外の部分でも明確化されているのかにも注目しておきたい。
さて,キャラクターを作成すると,プレイヤーはすぐにマップや各種施設にアクセスできるようになる。以下四つの画面が,本作の主戦場だ。
(1)フィールド
(2)絵札戦
(3)あばら家:火田(ひだ)
(4)あばら家:ほこら
プレイヤーは,これらのマップと施設を行ったり来たりすることになる。フィールドを探索し,敵を倒してキャラクターを成長させながらアイテムを獲得,そのアイテムを火田で育て,育てたアイテムを合成して「絵札」を作り,さらに強い敵と戦えるようにして行動範囲を広げる,というのが本作の大まかなプレイのサイクルだ。
なお,ゲームのウィンドウはブラウザの別ウィンドウとしてポップアップするタイプとなっており,解像度は760×630ドット。かなり小振りな画面から,ソーシャルゲームならではの“ながら”プレイを強く意識していることがうかがえる。
では,フィールド,絵札戦,あばら家,コミュニケーション機能と,順番に各要素の詳細を確認していこう。
効率良く探索するためには頭を悩ます必要が
全域に「暗黒ランの根」がはびこるフィールド
フィールド画面では,まずキャラクターをクリックして移動可能範囲を表示させる。そしてその範囲のなかで,移動させたいポイント,あるいは魔物などのオブジェクトをクリックしてキャラクターの行動を決める。
キャラクターの移動自体には基本的に制限はないが,魔物との戦闘やダンジョンの攻略,またクエストを受ける場合には,画面上部に表示されている「行動力」を消費する。消費量は魔物であれば強さ,クエストやダンジョンであれば難度に比例して上昇。消費した行動力は現実時間で3分経過するごとに1ポイント回復し,行動力の最大値は,キャラクターの段を上げることで高めることができる。
キャラクタークリックで表示される移動可能範囲。実質的には障害物がない限り移動は制限されないので“何歩動けるか”という意味ではなく“どこへ動けるか”を把握するための機能だ |
フィールド画面右上にある「地図」アイコンを押すと,ジパング全体を俯瞰できる。大陸が「出雲」「美輪」「火越」「瀬戸内」「浪華」「伊勢」「尾張」という七つの地域に分割されているのが分かる |
あばら家。マウスカーソルを合わせると所有者の情報をチェックできる。ほかのプレイヤーのあばら家は,キャラクターを連れていけば中を覗ける |
魔物は黒っぽいシンボルで表示される。マウスカーソルを合わせると,「ランク」(強さの指標)と消費行動力が表示されるので,チェックしてから戦いを挑める |
さて,フィールドの構成要素として重要なのが「暗黒ランの根」の存在だろう。この不気味な植物は一見するとランダムに生えているようにも見えるが,実はマップをより細かい長方形のエリアに分断している。
CBT時点での暗黒ランの根は,一つの根を切断するために1時間を要し(ただし時短アイテムあり),しかも一定時間で再生するという形で実装され,プレイヤーの行動範囲を制限していた。
マップ上ですぐ近くに見える場所でも,暗黒ランの根が二つ(「自分のいるエリアを囲っている2ライン」というのが適切か)邪魔をしていれば,到達には2時間かかるというわけだ。
ただし,暗黒ランの根を挟んでコミュニケーションのとれるほかのプレイヤーがいれば,こちら側から根を一つ,あちら側から一つという具合に,開通時間を半分に短縮することはできる。この辺りは,効率良くマップを行き交うために,プレイヤー間の協力体制が重要になりそうだ。
CBT中,考えなしにランを刈りまくってしまった。20本ということはつまり,20時間を使ったということである。とほほ |
フィールドには,おそらくストーリー関連のクエストで討伐することになるであろう「暗黒ラン」などが,根や通行不可能な山に遮られた険しい土地に鎮座ましましている。すぐ下には「暗闇城」なる建物も。CBT中に近くまで行ったプレイヤーもいたようだが,この辺りはまだ謎に包まれている |
非常にシンプルなカードバトル「絵札戦」。
汎用デッキではなく,敵に合わせたデッキを考える
フィールドでの魔物シンボル選択時や,ダンジョン入場時に行われる戦闘は,「絵札戦」という形で行われる。
絵札戦で使う絵札,そして絵札の集合であるデッキは,画面下部にある「絵札設定」で管理できる。絵札は「直接攻撃」「術」「召還」「英雄」といった種類が存在し,前者三つは「直接攻撃」(グー),「術」(チョキ),「召還」(パー)といった“じゃんけん”の3すくみとなっている。
それぞれの絵札には必要なスロット数が設定されており,デッキに使える枚数は,プレイヤーの段に比例する最大スロット数と,デッキに含める絵札によって決まる。当然,強力な絵札はより多くのスロットを必要とするといった具合だ。
絵札戦自体は,お互いのデッキから絵札を設定した順番に出していくという,実にシンプルなものだ。じゃんけんで勝てば若干のボーナスが付加された状態で先制でカードが使用され,負けてもカードは使われる。カードが能力を発揮しないのは“あいこ”で双方のカードが相殺された時だけである。
勝敗は,相手の体力を削りきった側の勝ちで,お互いのカードを使い尽くしたときは,残りの体力が多かったほうの勝利となる。実はこのルールがミソで,これによって以下のような戦略をとれるようになる。
- 相手より体力が勝っていれば,全部あいこにして勝つ
- 少し相手の体力を削って,あとは回復絵札を使い続けて自らの体力を維持して勝つ
- じゃんけんの勝敗は気にせず(じゃんけんで負けてもカードは使われるため)高い攻撃力の絵札で圧倒する
- 逆に,とにかく消費スロットの低いカードを総動員して,カード枚数で圧倒する(カードがなくなった側は,一方的に攻撃されることになるため)
「全部あいこにするなんてことができるの?」と思われるかもしれないが,プレイヤーはともかく,魔物は種類によってデッキの構成も決まっている。そのため,この魔物にはこのデッキ,あるいはこのダンジョンにはこのデッキ(ダンジョン攻略は1種類の魔物と戦うことと同義なため),といったことが可能なのだ。
これだけでも“農場ゲー”として十分に面白い
「火田」でのアイテム育成と「ほこら」での「合成」
各プレイヤーが一つ所有することになる冒険の拠点が,「あばら家」だ。あばら家には,アイテムを植えて,一定時間放っておくことで別のアイテムに育ったものを刈り取れる「火田」と,複数のアイテムを合成して絵札を作ることのできる「ほこら」という二つの施設が用意されている。
まず火田では,「○○の種」といった植物から,骨,鉄などの鉱物,「○○の巻物」といったものまで,さまざまな素材を植えて育てることができる。植えたものが何に成長するかはある程度決まっており,たとえば鉄屑は,植えると鉄→鋼→玉鋼などといった具合に成長する。お察しのとおり,植える素材が高級になればなるほど,育つのにも時間がかかるという仕組みだ。なかには,育成に十数時間を要するものもある。
この火田,基本的には植えて放っておけば素材は勝手に育っていくが,畝(うね)が乾いた状態で48時間放置すると,素材が枯れて使えなくなってしまう。無制限に与えられる水,あるいは有料アイテムとして用意される肥料(時短の効果もある)を与えれば,枯れを防ぐことができる。
素材には「○○に育つ」と明示的に書いてあるものとないものがある。初めて遭遇する素材なら,とりあえず植えてドキドキしながら変化を待つことに |
常に火田が埋まっているように管理しないと,時間を無駄にしてしまう。刈り取るタイミングを合わせるために,できるだけ同じ素材を同時期に植えるようにするなどの工夫が必要だ |
火田で素材を育てたら,次に行うのは「ほこら」で複数の素材を掛け合わせて絵札を作る「合成」だ。
合成は,まず「ほこら」の画面で「くべる」アイコンをクリックして合成のためのウィンドウを出し,掛け合わせる素材を選択する。選択した素材が二つ以上になると,それらを掛け合わせてなにができるのか,またその成功確率が何%か,といった情報が表示される。過去に作ったことのある絵札なら,レシピにその素材の組み合わせが記憶されているため合成時に参照できるが,そうでない絵札なら合成結果の欄は「???」(何ができるのか分からない)と表示される。
プレイヤーは,成功確率を見て,ときには「安定剤」(有料アイテム)で成功確率を高めて,合成を実行することになる。そうすることで,絵札が一丁上がりという仕組みだ。
このように,掛け合わせたい素材を追加していくだけ |
安定的に同じ絵札ができる組み合わせはレシピに記録される。とはいえ,自分でいろんなレシピを揃えるのは素材の無駄が多そうだ。ここはほかのプレイヤーからうまく情報を収集していきたい |
この合成で,アイテムの組み合わせは大きく2パターンがある。一方は安定的な掛け合わせで,何度やっても同じ絵札ができる組み合わせ。こちらは,最初に合成が成功したタイミングでレシピとして記録される。
他方は,合成してみるまで何ができるか分からないパターンだ。こちらは「偶然の産物」として扱われ,レシピには記録されない。素材を無駄に使ってしまうかもしれない半面,予想外の,あるいは見たことのない絵札ができたりもするので,プレイヤーが意図的に偶然の産物を狙うということもあるだろう。
実際にかなりドキドキできるシステムなので,冒険をそっちのけで合成にふける人も出てきそうだ。
「偶然の産物」が! |
もちろん合成は失敗することも。そうなると,大事な素材がパーである。ここぞという素材で挑むときは,有料アイテムで成功確率を上げるしかない |
今のところ「チャット」はナシ。
ソーシャルゲームとしての機能をチェック
本作は“ソーシャルオンライン活劇”と題したソーシャルゲームである。ここでは,ソーシャルゲームとして,プレイヤー同士がコミュニケーションをとるための機能を見ていこう。
まず覚えておきたいのは,本作にはいわゆるリアルタイムのチャットがないうえ,プレイヤーがフィールド上でほかのプレイヤーのキャラクターを見つけても,その場では直接話しかけられないということだ。
ほかのプレイヤーへのファーストコンタクトは,あばら家を通じて行う。具体的には,ほかのプレイヤーのあばら家を訪問して火田にあるかかしをクリック,「伝言を書き込む」か「友達に申請する」といった行動を行う必要がある。友達になると,画面下部メニューの「友達手帳」で相手のキャラクターをチェックでき,そこからメッセージをやりとりできるという仕組みだ。
とにもかくにも,プレイヤー同士が友達になるには一方が他方のあばら家を訪れる必要があるというわけである。これはつまり,――暗黒ランの根もあることだし――遠方にいる多くのプレイヤーと友達関係になるにはかなり骨が折れるということを意味している。
また,あばら家でできる「暇設定」もある意味重要なコミュニケーション要素だ。これは,プレイヤーがオフライン時にキャラクターをどのような状態にしておくかを設定できるというもの。状態は,以下の二つを設定できる。
- 「旅立ち完了」……ほかのプレイヤーに自キャラクターを傭兵として連れ回してもらえる
- 「喧嘩上等」……ほかのプレイヤーからの試合申請を受け付けられる
とくに旅立ち完了は,オフライン時にはぜひ設定しておきたい。ほかのプレイヤーにキャラクターを連れ回してもらえばれば,徳を積んで段を上げることができるほか,アイテムも入手できる。つまり,勝手にキャラクターが育つのである。
また逆に,ほかのプレイヤーが旅立ち完了に設定していれば,そのあばら家を訪れることで当該キャラクターを連れ回すことができる。他人のキャラクターを連れている間は,絵札戦において両者の絵札が交互の使用され,戦闘で得られる徳にもボーナスがつく。
自分とはプレイする時間が昼夜あべこべになる友達を見つければ,お互いにキャラクターを連れ回し合ってかなり効率よく徳やアイテムを得ることができるだろう。
なお今回のCBTで筆者のキャラクターでは到達できなかったが,特定のアイテムを集めてフィールドにある「空き地」に砦を建築すれば,いわゆる“ギルド”に相当する組織「団」を結成できる。
団に属するメンバーは,ほかの団との団体戦を楽しめたり,団員掲示板によって連絡を取り合うことができるほか,団用の火田やほこらを使用可能になる。
ほかのプレイヤーとの絵札戦にはランキングのような仕組みが用意されるとのことなので,団としてジパングの覇者を目指すような仕組みも別途用意されるのかもしれない。こちらも中〜上級者用のコンテンツとして期待したい。
メインストーリーが気になってしようがない
絵札の種類もアイテムももっと見たい!
本作をプレイして感じたのは,日本人好みの2Dグラフィックスと“ながらプレイ”可能なゲームシステムの組み合わせはかなり強力だということ。
あばら家のほのぼのとした風景,戦闘のたびにビュンビュンと画面を横切る絵師・辻野寅次郎氏のキャラクターイラスト,用途はともかくとりあえず集めたくなるアイテムや絵札など,小さなブラウザのなかに天外魔境の世界観がギュッと詰められている感覚がたまらない。
しかも,BGMもメインストーリー関連のクエストも未実装の段階でこれである。テスターならば,高いポテンシャルを秘めていることがヒシヒシと感じ取れたはずだ。
“牧場”タイプや,いわゆるトラビアン系のタイトルとして,人気絵師の2Dグラフィックスを用いて展開される国内有名IPのブラウザゲームはそれほど多くない。天外魔境ファンはもちろん,ブラウザでまったり遊べる国内産ゲームを探している人は,今後の展開に大いに注目しておいてほしい。
なお最後に,ゲームシステムを想像するため役に立ちそうな情報として,「ジパング両」という通貨によって購入できるアイテム(おそらくは有料アイテムの扱い)を掲載しておこう。ブラウザゲームになれた人なら「なるほどね」と,ゲームの作りをイメージしやすいはずだ。
ちなみに,2月15日にはゲームポータル「GameComplex」のポータルサイトが開設された。本作は,ハンゲームのほか,このGameComplexを通じてサービスが提供される予定となっている。現在のところ,ポイント購入などはできないが,会員登録(無料)は行える。本作の詳しいサービススケジュールは,まだ発表されていないが,取り急ぎ会員登録だけでも済ませておいてはいかがだろうか。
「GameComplex」
「天外魔境 JIPANG7」公式サイト
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