インタビュー
手軽に遊べるカジュアルさを徹底的に追求する。学園物MMORPG「魔導学院エスペランサ」OBT直前インタビュー
すでにオープンβテスト(以下,OBT)へ向けて着々と準備が進められているエスペランサだが,今回,CBTで明らかになった問題点とその対応,そしてOBTや正式サービスへ向けての展望をエスペランサのプロデューサー駒形重紀氏に聞いてみたのでお伝えしよう。
なお,インタビューは3月29日のCBT終了直後に行われたため,まだOBTの仕様として確定していない部分もあるとのこと。本インタビューの内容と,数日後に控えたOBTとで一部仕様が変更となっている可能性もあるので,その旨はご了承願いたい。
「魔導学院エスペランサ」公式サイト
CBT開始直後にトラブルに見舞われたものの
運営の予想を超える好感触
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。数時間前にCBTが終了したばかりですので,まずはその感想からお聞きしたと思います。
はい。今回のCBTでは最初に5000人,そのあとに3000人を追加して,最終的に8000人を募集しました。数字的には昨今サービスされているMMORPGにも引けを取らない人数が集められたと思います。ただ,それもあって初期にはプレイヤーさんが殺到して,ログインできない状況が発生してしまいました。
4Gamer:
オンラインゲームの宿命みたいなものですね。
駒形氏:
ですが,そのあとはとくにトラブルは発生せず,無事に1週間の日程を終えられたのでほっとしています。
4Gamer:
では,参加したプレイヤーの反応はいかがですか。
駒形氏:
TwitterやFacebook,プレイヤーさん個人のブログなども参考にさせてもらっていますが,いろいろなご意見をいただいています。あと,今日(3月29日〜4月5日に実施)から公式サイトでアンケートを募集していまして,そちらの意見にも目を通しています。
4Gamer:
ちなみに,どのような意見があったのでしょう?
駒形氏:
「思ったより良くできている」と言ってくださる方が多かったです。あまり期待せずに始めた方も多かったみたいで,その割にはシステム的にいろいろと揃っているので,遊べそうだと感じていただけたみたいです。
4Gamer:
好意的な意見が多かったんですね。
駒形氏:
もっとボロクソに言われるかもと思っていたので驚きました(笑)。その一方で,こちらでも認識していた問題ではあったのですが,ゲームの「スピードやテンポが遅い」といったご意見もありました。
4Gamer:
たしかに,プレイしていて全体的に遅さを感じることはありました。
駒形氏:
例えば視点移動で,右クリックで画面の視点を変更するスピードが遅いという指摘もありましたね。
4Gamer:
視点変更……ですか。あまりスピードが要求されるゲームではありませんし,プレイした感触ではそれほど問題があるとは思いませんでしたが。
おそらく現状のゲーム全体のスピード感から,その部分が遅いと感じるプレイヤーがいるのではないかと思います。これに関しては,OBTに間に合うかどうかはギリギリになりますが,CBTを1倍速とすると,1.5倍速,2倍速といったようにオプションで変更可能にする予定です。
もう一つ意見が多かったのが,「戦闘のテンポが良くない」ということについてです。これは今後の課題になるかと思います。
4Gamer:
あー,なんとなく分かります。戦闘のテンポについては,スキルのクールタイムが一元化されていることで,スキルを繰り出す爽快感が損なわれているのではと感じました。
駒形氏:
それはスキルがヒットしたら,すぐに別のスキルを使ってコンボのようにつなげたいという,どちらかと言えばコア寄りのプレイヤーからの意見として出ているのだと思います。ですが我々としては,プレイヤーによって差が生まれる状況をなるべくなくして,カジュアルに遊べるよう調整していましたので。
4Gamer:
なるほど。プレイヤースキルに寄らないバランスにしたかったわけですね。
駒形氏:
そこがエスペランサの特徴だと思っているので,オンラインゲームを長年遊び込んでいるコアプレイヤーさんからすると,物足りないかもしれません。しかし,プレイヤースキルを明確に要求してしまうと,ほかのMMORPGと同じになってしまうので,そこは割り切りました。
4Gamer:
あくまでカジュアル指向でいくと。どちらの要望も同時に満たすのは難しいですよね。
駒形氏:
ええ,難しいところです。従来のMMOのように戦闘の過程を楽しみたいという方もいれば,そこまで求めないという方もいます。ここ数年は戦闘自体に手ごたえを求めるアクション系のゲームが,流行したと思うのですが,そこに追従していくとゲーム性が大きく変わってしまいます。
4Gamer:
もっとまったりと遊びたいというプレイヤーは必ずいますしね。
駒形氏:
そうです。今回のCBTでも,「こういうクリックタイプのMMORPGって最近は少なかったよね」という肯定的な意見が出ていますし,今のスピード感でも「ゲームプレイにストレスが掛からなくて遊びやすい」という意見もありました。こうしたカジュアル指向には賛否両論ありますが,そうした意見を持ったプレイヤーさんも少なくないことが分かったので,より簡単に,より楽しく,より気軽に遊べるように進めて行けたらと思います。
本番はレベル30から
OBT以降はゲームテンポの改善も
4Gamer:
それではゲームのシステム部分について教えてください。まずプレイヤーキャラクターに関してですが,1アカウントにつき1体となっていますよね。個人的に複数キャラクターを作成したいと思ってしまうのですが。
同じような要望を,多くのプレイヤーさんからいただいています。これも今後の課題ですね。
4Gamer:
ぜひ,増やしてほしいところです。また,キャラクターメイキングに使用できるパーツも,やや少ないという印象でした。
駒形氏:
おっしゃるとおりで,キャラクターメイキングのカスタマイズ性の低さは把握しています。ですので,今後,使える顔や髪型のパターンを増やしていく予定です。さらにキャラクターの音声も追加する予定で,男女それぞれ5人ずつ用意しており,職業に関わらず好きな声優さんの声が選択できます。(関連記事,男性声優/女性声優)
4Gamer:
ちなみに,こうしたパーツは台湾版と共通なんですか?
駒形氏:
プレイヤーさんの意見の中には「キャラクターの見た目が好みじゃない」というのもありましたが,実はキャラクターの顔は台湾版そのままではなくて日本人のデザイナーに描き起こしてもらったものなんですよ。カッコイイ系と可愛い系,ネタ系と用意してみたんですが,どうもネタ系のウケが良くなかったようで。
4Gamer:
合う合わないは当然あるでしょうし,新しく追加されるパーツで解消されることに期待したいですね。ところで,顔や髪型などが追加された場合,既存キャラクターのパーツは変更できるんですか?
駒形氏:
OBT以降になってしまいますが,将来的に変更できるように開発を進めています
4Gamer:
現状は,1アカウント1キャラクターですし,その点は安心しました(笑)。次に戦闘に関してですが,CBTにおける攻撃面は,ステータスがしっかりと影響していると思いました。その一方で,防御面はアーマーオーラ(※)のおかげか職業による違いがほとんどないですよね。職業やステータスのバランスはこのままになるんですか?
(※防御力を強化する要素。敵の攻撃で減少すると,合わせて防御力が下がっていく)
駒形氏:
とくに変更の予定はありません。というのも,そもそも初期の段階では属性値やアーマーオーラを意識しなくても遊べるようなバランスになっています。そして,レベル30以上になってくるとキャラクターごとの影響が大きくなるという感じです。
4Gamer:
なるほど。プレイした範囲が,まだまだ序盤だったからそう感じたんですね。
駒形氏:
レベルが上がってくると,一撃でアーマーオーラのほとんどを削ってくるような敵が出てきますので,キャラクター本来の防御値が重要になってきます。つまり,ある程度ゲームに慣れ親しんできたころに,手強い敵が出てくるように設計してあるわけです。
4Gamer:
とはいえ,レベル20近くまではクエストで簡単に上がりますが,そこからレベル30まで上げるとなると,それなりに大変ですよね。そうした面白さにつながるポイントまでが遠いと,途中で脱落するプレイヤーも多いのではと思いますが。
駒形氏:
レベルアップの速度については,獲得経験値とクエストで必要なターゲットの数を調整する予定です。ターゲット数は15匹から10匹になるといった感じですね。また敵のHPを若干減らしたりして,CBTに比べてレベル30まではテンポよく上がるようになります。
またレベルの上昇曲線についても全体的に調整を入れるほか,移動スピードもCBT時よりもアップするなど,全体の進行速度を見直しています。
4Gamer:
なるほど,ゲーム全体のスピードやテンポの改善にもつながりますね。
駒形氏:
さらに「魔導ペット」に乗ると+αでスピードが上がります。こうなると戦闘時の敵から敵にターゲットが移る時の移動の速度も変わってくるので,そこでも戦闘のテンポが変わってくるのではと期待しています。
レベルキャップは段階的に開放
台湾ではレベル125まで実装済み
4Gamer:
それでは4月10日から始まるOBTについて教えてください。CBTが終わった本日(3月29日)からはあまり間を開けずに行われるようですが,CBTとOBTとで大きな変化はありますか?
実はCBTバージョンを開発したのは2011年末で,そこからすでにOBTバージョンを作り込んでいます。ですので,結構変わったと思っていただけるはずです。内容としては,CBTでレベル35までだったキャップが,レベル65まで解放されて,クエストやマップも開放されます。
4Gamer:
参考までに,サービス中の台湾版のレベルキャップは,どうなっているんでしょうか。
駒形氏:
レベル125ですが,まださらに先のレベルがあるみたいです。
4Gamer:
ということは,OBTの段階でもまだまだ中盤にいくかどうかといった段階なんですね。正式サービスでは,このレベル125まで開放されますか。
駒形氏:
いえ,一気に開放してしまうと,やりこむ人とそうでない人とで差が大きくなりすぎてしまいます。ですので,プレイヤーさんのプレイ状況を見ながら,順次開放していこうと考えています。
4Gamer:
なるほど。では,OBTでは,どういったコンテンツを用意しているのでしょうか。
駒形氏:
学院イベントというプレイヤー間で楽しめるPvEやPvPを追加する予定です。学院イベントには,トレジャーハント,クリスタル戦といったコンテンツがあります。
4Gamer:
具体的に,どんな内容なのか教えてください。
駒形氏:
シミュレーションはごく普通のPvPですね。トレジャーハントは,専用マップ上に定期的にポップアップする宝箱の中身を,プレイヤーで奪い合うというものです。
4Gamer:
宝箱をいかに素早く開けるかという勝負になるわけですか。
駒形氏:
そうですね。あと,このマップではPKも可能です。別途用意しているランキングで上位者には賞品のアイテムが獲得できるのですが,PKで倒した人数もポイントとしてランキングに影響してくるので,邪魔な人は倒すといった遊び方も可能です。もちろん,ほかのプレイヤーと協力して団体行動で進めるのも良いでしょう。
4Gamer:
宝を独り占めするか,仲間と協力するか,そこはプレイヤーの自由なんですね。
駒形氏:
そうなります。次にクリスタルバトルですが,これはチーム戦で相手チームのクリスタルを破壊すると勝利というものです。
これらの学院イベントで勝利したり,条件を満たしたりすると,イベント専用のアイテムが手に入り,レアなアイテムを狙えます。
4Gamer:
このほかOBTでは,どのようなシステムが追加されるのでしょうか。
駒形氏:
名前は調整中ですが,「宝探し機能」というものがあります。「羅針盤」というアイテムを作るための材料を敵が落とすようになり,材料を集めて羅針盤を完成させると,どこのマップのどの座標に宝箱が埋まっているかが分かります。
アバター関連については,レベル18以降になると制服が手にはいるのですが,さらにその先にちょっと高級感のあるエリート制服が入手できるようになる予定です。これもOBTに間に合うか微妙なところなのですが,間に合わなくてもそう遠くないうちに実装できる予定です。
4Gamer:
今後登場する予定のアバターなどはどうでしょう。
駒形氏:
まだ確定してはいないですが,お約束のメイド服にナース服,ゴシック服やコックの衣装,あとはクマや羊の着ぐるみなどもあります。学院らしく,ジャージを半袖にしたり,制服も夏服を出したいと思っています。
4Gamer:
夏と言えば,水着などが季節感あってよさそうですね。東京ゲームショウでのインタビューで,ちらっと出ていましたが。
駒形氏:
水着やブルマ,スパッツなどですね(笑)。そのあたりを夏までにどうにかしたいです。あと細かいものですが,ログインしている累積時間でアイテムがもらえる仕組みも実装する予定です。
「おまえ何中だよ!」
同じ制服で生まれるプレイヤー同士の連帯感
4Gamer:
今回お話を聞いていると,今後,ゲーム全体のバランスに関わるような大きな変更がいろいろあるようですが,台湾の開発側に対して,日本側の要望はどの程度通っているのでしょうか。
もちろんケースバイケースですが,基本的にはすべて受け入れられる友好的な関係で進められています。東京ゲームショウのインタビューでも,台湾の陳プロデューサーと一緒にお話をさせていただきましたが,日本市場と台湾市場が違うのは分かっているので,日本版は日本のプレイヤーに合わせるべきだろうという考えのもとで,台湾版と日本版は別ものとして開発していきます。
4Gamer:
では,今回のインタビューでお聞きした戦闘のテンポだったり,成長のバランス調整なども,台湾版に合わせてといったわけではないんですね。
駒形氏:
そうです。ちなみに日本からの要望を実装した例としては,補習特訓システムのジャージなどがあります。
4Gamer:
補習特訓システムって,最初からジャージじゃなかったんですか?
駒形氏:
ええ,台湾版は補習特訓システムを使ってもジャージにはなりません。日本ではBOTが嫌われているので,補習特訓システムをなくすという選択もあったのですが,それよりはこのゲームの特長を生かした方がいいと考えました。そこで,その補習特訓システムを使っているのを周りから「ジャージならしかたないか」と見た目で分かるようにしたかったのと,「学院らしい雰囲気」も出せるかなと思ったんです。
4Gamer:
たしかに,システムを使っていることが一目で分かるのと,普段と変わらないのに話しかけても反応がないのとでは感じ方も変わりますね。学院っぽさに関しては,まだCBTだからかもしれませんが,それほど感じる機会はなかったように思います。その辺りを強調するような施策は用意されていますか?
駒形氏:
今後は,ほかの学院(※)に所属している生徒と交流したり,鉢合わせしたりするマップも出てくるので,「おまえ何中だよ!」みたいな感じで,同じ制服を着たプレイヤー同士の連帯感もでてくるんじゃないかなと思います。
(※プレイヤーは,3つの魔導学院のいずれかに所属することになる)
4Gamer:
なるほど(笑)。
駒形氏:
また,先ほどお話しした学院イベントで学院間でポイント争いをしてもらい,トップだった学院に所属しているプレイヤー全員にアイテムを配布するなど特典を与えようと考えています。
学院ランキングのポイントにあまり貢献できていないプレイヤーでも所属していればもらうことができます。こういったイベントで,学院に対する所属意識を高められればなと考えています。
4Gamer:
今は学院という単位ですけど,例えばチャットだったりで,クラス分けみたいなのができても面白そうですね。では,最後に4Gamer読者に向けてコメントをお願いします。
駒形氏:
まず最初に,CBTに参加してくれたプレイヤーさん,ご参加いただきありがとうございました。みなさんのプレイによって,さまざまなプレイ結果のデータが得られました。直接いただいたご意見について,OBTに間に合いそうな機能もあれば,今後の課題として残っているものもあります。今後もいただいた意見をゲーム内にフィードバックできればと思いますので,よろしくお願いします。
「魔導学院エスペランサ」はとにかく楽に,気軽に手間がかからずに遊べるというコンセプトで開発しています。今後もこの方向で進めていきます。もしストレスになることや,つまずいたところがあれば,気軽にお知らせください。今後とも頑張っていきますので,どうぞよろしくお願い致します。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
コアなプレイヤーほどハードでやりごたえのあるゲームを求めがちだが,「魔導学院エスペランサ」はその逆……とまではいかないが,手軽に遊べるというコンセプトで作られている。極力プレイヤーの負担を軽減させ,世界観やプレイヤー同士のコミュニケーションを楽しんでもらおうという姿勢が印象的だった。
CBTではあまり感じられなかった学園物の雰囲気も,OBT,そして正式サービススタート後はより感じられるようになるという。本作に興味を持った読者は,明日4月10日から始まるOBTに参加してみよう。
「魔導学院エスペランサ」公式サイト
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魔導学院エスペランサ
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