インタビュー
続編を望む声が多ければ「2」の可能性も? 魅力的なキャラクターと質の高いシナリオが魅力の「ソールトリガー」について,御影良衛氏と曽我部修司氏(FiFS)にインタビュー
キャラクターデザインに「ペルソナ3」「ペルソナ4」のコミカライズや,「GOD EATER」のプレイヤーキャラクターデザインでお馴染みの曽我部修司氏(FiFS),シナリオに「ファイナルファンタジーVII」「ファイナルファンタジーX」で絶大な評価を得た野島一成氏を迎え,声優陣としては鳥海浩輔さん,花澤香菜さん,小清水亜美さん,三宅健太さん,悠木 碧さん,杉田智和さんなどなど,アニメ/ゲームファンなら誰もが知っているキャストが揃っているのだから,イメージエポックの力の入れようも伝わってくるというもの。
今回,そんなソールトリガーのエグゼクティブ・プロデューサーを務めたイメージエポック 御影良衛氏と,キャラクターデザインを担当した曽我部修司氏に,同作の見どころや制作エピソードをお聞きする機会を得た。イメージエポックが「PSP最後のJRPG」にかけた意気込みや,曽我部氏がこだわったキャラクターデザインのポイントなど,興味深い話をたくさん聞くことできたので,JRPGファンはぜひチェックしてほしい。
「ソールトリガー」公式サイト
「ソールトリガー」で最も注力したのは「演出」
表情豊かに動くフェイシャルアニメーションは必見
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初に,「ソールトリガー」の企画の発端と,見どころを教えてください。
発売時期などを考慮すると,「ソールトリガー」はイメージエポックがPSPで発売する最後のRPGになるだろうということで,「PSP向けJRPGの集大成となる作品を作ろう」という考えから企画をスタートしました。
最大の見どころはやっぱり,曽我部さんのキャラクターデザインと,野島(一成)さんのシナリオですね。僕らはストーリーと映像を合わせて「演出」と呼んでいるんですけど,演出が「ソールトリガー」のもっとも大きなポイントとなります。今回,この2人に参加していだけたことによって,演出の部分が非常にクオリティの高いものに仕上がりました。
4Gamer:
その演出についてですが,もう少し具体的に教えていただけますか?
御影氏:
アニメーション制作プロダクションのJ.C.Staffさんに,TVアニメが1本まるまる放映できるだけの尺である約25分のアニメーションムービーを制作していただきまして,ゲーム中の一番盛り上がるタイミングで流れます。
それとは別に,モーションキャプチャーを利用したハイエンド映像を約2時間分用意していいます。これらも,プレイヤーさんが「次,何か来るな……!」と予想されるだろう部分にきちんと入る設計になっています。
4Gamer:
そういった映像デモが入るタイミングというのは,御影さんが監修しているんでしょうか。
御影氏:
一通り監修はしているんですけど,基本的にはスタッフと相談しながら決めています。PSPというハードの限界もあるので,いろいろな部分を考慮しながらうまく抜き差しの判断を重ねていきました。モーションキャプチャーを利用した演出デモは「Aデモ」って呼んでいるんですけど,そこを曽我部さんにすごく褒めてもらったときは嬉しかったですねぇ。頑張った甲斐があったなと。
4Gamer:
それだけの映像を収録しているとなると,ゲームデータの容量も大変なことになっていますよね。
御影氏:
そうですね。PSPでこんなに豊かな表情が作れるんだ……っていうくらい表情変化を作り込んでいるので,そこもぜひ見ていただきたいですね。
4Gamer:
イベント中,キャラクターの表情がここまで繊細に変化するのは印象的ですよね。さすがにPSP向けゲームだと,キャラクターの表情までこだわっているものは少ないので,プレイしていて驚きました。
御影氏:
これはやっぱり,「ラストランカー」などでカプコンさんとお仕事をさせてもらった経験のおかげだなと思います。おそらく静止画で見るより,実機映像のほうが綺麗に見えるはずなんですけど,そういう意味では,PSPで最上級クラスのグラフィックスになっているのではないかと思います。
曽我部氏:
ああ,それは自分も思いました。プレイしていて,「おれは本当にPSPのゲームをやっているのか?」って思ってしまう部分が時々あるんですよ。とくにAデモでは,それを顕著に感じましたね。
テンポの良さを最重視したバトルシーン
4Gamer:
では次に,バトル部分について話を聞かせてください。私も実際に「ソールトリガー」をプレイしたんですけど,お世辞ではなく非常にテンポ良いバトルで,ほとんどストレスを感じることがなかったのが印象的でした。
ありがとうございます。やはりコマンド選択式のターン制バトルにおいて,テンポの良さというのは最も大切な部分ですからね。そこはかなり気を使って作りました。
冒頭でも申し上げた通り,「ソールトリガー」はイメージエポックがPSPで作るJRPGの集大成となるので,バトルシステムも,「セブンスドラゴン2020」「最後の約束の物語」「LAST RANKER」などで培ってきたノウハウを,「ソールトリガー」で最大限に活かしています。
そこに,本作ならではの要素として,ソールをチャージできるというオリジナルシステムを採用しています。
4Gamer:
なるほど,そう言われてみると「ソールトリガー」のバトルシーンからは,各作品の特徴的な雰囲気が感じられますね。
御影氏:
あと,「バトルでキャラクターを常に表示してほしい」という要望をネット上で散見したんですけど,ゲームのテンポ感とのバランスを重視して,スキルを使ったときに表示させる形にしました。その分,スキル演出を作り込んで,通してプレイしたときに自分のキャラクターの印象がくっきり残るように設計しています。
バトルのテンポ感と演出は相反する要素なんですが,そのバランスとしては理想的なものができたと自負しています。
4Gamer:
PSP向けタイトルの開発は,ハードの制約との戦いになる部分もありますよね,やっぱり。
御影氏:
そうですねぇ。「だったらPS Vitaで作れよ」という意見もあるかと思うんですけど,「ソールトリガー」は,まだPS Vitaの開発機材が揃っていない頃から作り始めていたので……。なので「ソールトリガー」が売れて,次の作品を作ろうってなった時に,曽我部さんが「(キャラクターデザインを)やってあげてもいいよ」って言ってくれれば,PS Vitaでの展開もあるかもしれません(笑)。
曽我部氏:
やらせてもらえるならやりたいですよ(笑)。
4Gamer:
ちなみに,「ソールトリガー」の開発の規模はどのような感じだったんですか?
御影氏:
外部の協力会社さんを含めて,ベースが70〜80人くらいですかね。でも結局マンパワーが足りなくなって,ラスト3か月はそれにプラスして,社内スタッフ延べ70〜80人くらいが関わりました。イメージエポックは派遣スタッフも入れて130人くらいの規模なので,ほぼ総動員といった感じですね。
4Gamer:
まさに集大成……というか総力戦ですね。
御影氏:
これでクソゲー作ったらやばいよねって,最後の数か月はよく言ってましたよ(笑)。
4Gamer:
TGS 2012にも試遊台を出展していましたし,体験版や製品版をプレイしたお客さんの声も聞こえてきていると思いますが,反響はいかがですか?
御影氏:
非常に良いですね。7割くらいの人が面白いと言ってくれていたので,手応えはあります。発売日以降,Twitterを使ったキャンペーンなどで感想やご意見をいただいているんですけど,拝見するとご満足いただけているお客様が多くて,うれしく思っています。
フランのデザインは当初,全身金色だった?
4Gamer:
続いては曽我部さんにお聞きしたいのですが,「ソールトリガー」のお話をイメージエポックから聞いたときは,どのように思われましたか?
曽我部氏:
資料を見せてもらったときは,中二的な設定全開なところが非常にイメージエポックさんらしいと思いましたね(笑)。
最初にデザインのサンプルをいただいたんですけど,それを見たらキャラクターが,割とハードな黒い衣装を着たレジスタンスだったんですよ。そういう部分も非常に面白そうだなと感じました。
ソール=光ということで,黒い衣装に光のラインが走る服装のアイデアなどが浮かび,まとまりのいいデザインが出来そうだと感じましたし,個人的にも興味を惹かれたので,ぜひやらせてくださいと快諾しました。
4Gamer:
ぜひ注目してほしいといったキャラクターはいますか?
ソフィの足には網状のテクスチャが貼ってあるのですが,拡大するとしっかりと立体感が出てるんですよ。そういう細かいところもじっくりとこだわって作られているので,ぜひ見てほしいですね。
あとやっぱり,全体的にキャラクターモデリングが綺麗に作られているので,デザインした者としてはすごく嬉しいです。「ソールトリガー」はこのインタビューの前にクリアしたんですけど,キャラクター同士のデモもすごく綺麗で,生き生きしていてかっこいいなって思いました。
4Gamer:
ちなみに,プレイヤーからはどのキャラクターの人気が高いんですか?
御影氏:
女性ファンからは圧倒的にヴァルターですね。男性ファンにはソフィ,フランが人気ですけど,比較的分散しているので一概には言えません。たぶん平均的に人気があると思いますよ。機会があれば人気投票とかもやりたいですね。
4Gamer:
キャラクターデザインは,イメージエポックからあらかじめサンプルを提示したということですが,曽我部さんとしては割と自由に仕事をできた感じですか?
曽我部氏:
簡易なコンセプトを提示されたくらいなので,結構自由にできましたね。入りは自由に,最後は厳しくみたいな(笑)。フラン以外は,初期のデザインラフでおおよそのラインが固まりました。
御影氏:
フランに関しては,僕がダメ出しをしました(笑)。
実は,最初に出したフランのデザインは,全身が金色なうえに髪の毛が銀髪で,おまけに獣の耳まで付いてたんですよ。ゲーム内に出てくるキメラの技術で作ったらこうなるんじゃないかっていうイメージで描いたので。
加えてフランに関しては,渋めの要素を求められることが多かったので,今みたいにあまり露出も高くなくて,帽子を被っていたり,モッズコートみたいなものを着ていたりした時期もありましたね。
4Gamer:
今のフランとは全然雰囲気が違いそうですね……。ところで曽我部さんは,これまでいくつかゲーム関連のお仕事をされてきましたが,作業的にはだいぶ慣れてきた感じですか?
曽我部氏:
キャラクターデザイナーとしてのキャリアは7,8年になります。ただ,RPGのお仕事をちゃんとするのは今回が初めてだったので,「『ソールトリガー』ならではのキャラクター」というのはすごく意識しました。
とくに,色関係は相当こだわって配分しましたね。ヒロイン(エマの髪色がピンク,ソフィの髪色がブルー)の2人だけをアニメ的な色にしているところなどにも注目してほしいと思います。あとエマとソフィって服装のラインが一緒なんですよ。普通は被らないように分けるんですけど,2人とも胸の部分が菱形に開いていたりしますし。
4Gamer:
なるほど,確かに。
曽我部氏:
エマとソフィのイメージソースってネグリジェなんです(笑)。なので2人とも,ちょっとそういう要素があるんじゃないかって思ってもらえるように描いています。あとこの2人は,ファレルにとっては同じポジションになり得るキャラクターなんですよ,ということをデザインで提示している部分でもあります。
曽我部氏が語る「ソールトリガー」の魅力とは
4Gamer:
ところで,曽我部さんはすでに「ソールトリガー」をクリア済みとのことですが,実際にプレイしてみていかがでしたか?
御影氏:
それ,僕も聞きたいですね。どうでしたか? リアルな意見をお願いします。
曽我部氏:
超リアルな話をすると,ゲーム自体はすごく面白かったです。
御影氏:
駄目だったところと良かったところをお願いします(笑)。僕の次のプロジェクトに関わるので。
駄目なところは,Aデモ(ハイエンドデモ)の出来が良すぎるから,通常の会話シーンでキャラが棒立ちになっている感じがして,そこが結構つらかったですね。あとはエンディング後の「アレ」がよく分からなかったので,そこは後で御影さんにくわしく聞いてみようかなと……。
4Gamer:
なるほど,Aデモが良すぎるから……というのは確かにそうかもしれませんね。
曽我部氏:
良いと思ったところは,ソールを注入するシステムですね。僕の場合は,戦闘で通常攻撃を使わず,毎回スキルを使うのが前提になっていたので,ソールを注入して一発で敵をしとめて「一発もダメージは食らってやらないぞ!」という感じの遊び方ができたので,スリリングで楽しかったです。
ソールをチャージするときは,方向キーの上を押すと,最初からゲージがマックスになるんですよね。それに気付いてからはすごくラクになりました。スキルが増えていくと戦闘が華やかになるし,与えるダメージも増えていくので,本当にワンショットバトルだなって感じでしたね。
御影氏:
ちなみに,ゲームは何時間くらいでクリアできました?
曽我部氏:
27時間くらいですね。
御影氏:
うちのスタッフの平均クリアタイムがだいたい35時間くらいなので,27時間というのはかなり速いほうだと思いますよ。
曽我部氏:
ザコ戦ではソールタンクを溜めて,ラスボス戦では,ソールを1人1000くらい積みましたね。あとプレイ中は,回復役を外していました。
4Gamer:
回復役が実質一人しかいないゲームでそれを外すというのは,ゲームの仕様を相当理解した人じゃないとできないプレイですよね。食らわなきゃいいんだっていうことに気が付いたというか(笑)。
御影氏:
でも,傷薬だけじゃ回復は間に合わないですよね。そこはどう対処したんですか?
曽我部氏:
基本的にはシリルのオート回復スキルですね。シリルは,毎ターン毎ターン補助スキルをマックスで空撃ちしていました(笑)。
御影氏:
シリルって,最初は超弱いんですよ。なので,まず,たいていの人はあの娘を育てようと思わないんですが,育てると相当心強いキャラクターなんです。
曽我部さんはかなりのゲーマーですね……。そういう特殊なプレイの話を聞くと,すごく興味が湧いてきます(笑)。
曽我部氏:
本当に戦闘はめちゃくちゃ面白いですよ。効率化のために,伸ばすスキルを選別していく楽しみがあるので。
御影氏:
やっぱり一番大事なのは,スキルの伸ばし方ですね。ソールをチャージするほど成長のスピードも速くなるので,ゲーム中はソールを全ぶっ込みして,自分の使いやすいスキルをどうやってレベルマックスにするかっていうキャラクターカスタムも面白いと思います。レベルマックスになるとオーバーロードでさらに強い必殺技が撃てたり,演出が一部変わったりするので,その辺もモチベーションにつながるんじゃないかな。
4Gamer:
戦闘シーンも含め,「ソールトリガー」ではキャラクターが非常に魅力的に描かれていますけど,自分の描いたキャラクターが生き生きと動いているというのは,やはり嬉しいものですか?
曽我部氏:
ふだん自分が動かしているキャラクターがしっかりと動いている姿を見るのはやっぱり嬉しいですね。あ,このモデルはこんな表情するんだとか,このモデル超カッコイイなとか,そういった部分を発見できたりするので。
あと,この角度からはパンツが見えまくるとか(笑)。
御影氏:
結構いいショットいっぱいありますよね(笑)。
曽我部氏:
ただ僕的に,自分の描いた女の子のキャラクターにそこまで需要があるとは思ってないんですよね。なので今回は,女の子のキャラクターも注目してもらっているので嬉しいですね。
御影氏:
女性キャラクターのイラストが上がってきたときは,「胸と尻のセクシー度が足りない!」ってダメ出ししましたね,そういえば(笑)。
曽我部氏:
もうちょっとムッチリにしてくれって言ってましたよね(笑)。
御影氏:
僕が常に絵描きさんに言うのは,愛したくなるような女性キャラクターを描いてくれってところですね。やはり男性プレイヤーから見て,女性キャラクターは恋愛対象であるべきなので。
続編を望む声が多ければ「2」の可能性も?
4Gamer:
ところで,「ソールトリガー」の主題歌をBYEE the ROUND(バイザラウンド)に決めた理由というのはあるのでしょうか。
御影氏:
ソニー・ミュージックレコーズさんに新進気鋭のロックバンドを紹介してほしいと相談して,BYEE the ROUNDさんを含め何人か紹介していただいたんですね。それで曲を聴かせてもらったらBYEE the ROUNDさんが一番カッコ良かったんですよ。「コンティニュー?」は「ソールトリガー」の世界観ともすごくマッチしていたので,すぐに決まりました。
4Gamer:
アニメソングやゲームソングに強い歌手の方ではなく,ストレートなJPOPを歌う方を起用されていますけど,そこには何か狙いが?
アニソンはアニソンでいいと思うのですが,ギターやドラムの音が目立つ疾走感のある曲のほうが,今回の世界観には合うと思ったんです。
あと余談ですけど,「コンティニュー?」という曲名は,BYEE the ROUNDさんがゲームの詳しい内容を知る前に付けられたものなんですけど,偶然ゲーム中の世代交代という設定とリンクしているんですね。それを知ったボーカルの松山さんが「運命的だ」って感動したと聞いています。
4Gamer:
これだけ力の入った作品だと,アニメ化などのメディアミックス展開もあるかなと思うのですが,その辺はいかがですか?
御影氏:
「ソールトリガー」に限って言えば,僕自身はアニメ化にはそんなに興味ないんですよ。それよりも,もし機会があれば「2」が作りたいですね。少なくともウチはRPGを作り続けますし,売れて続編を望む声をたくさんいただけたら,ぜひやりたいとは思っていますよ。
4Gamer:
分かりました。ではそろそろお時間ですので,ファンの方に向けてメッセージをお願いします。
曽我部氏:
エンディングのヴァルターは超おいしいので,ファンの方は期待していて下さい(笑)。あと,重ねて言いますけど,ゲーム中ではキャラデザインが忠実にモデリングされていますので,その部分にもぜひ注目してください。僕のイラストが好きだと言う方は,たぶんデモを見ているだけで楽しめると思いますよ。
御影氏:
物語に関して言うと,ほとんどのヒロインキャラクターと仲良くなれるようになっています。「このキャラクターは仲間にならないから……」と思われている方も,ぜひお手に取って遊んでみてください。基本的に,ちゃんとハッピーエンドにはしているので,イメージエポックが贈る最後のPSP向けJRPGを,ぜひ最後まで楽しんでください。
4Gamer:
ありがとうございました。
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