プレイレポート
「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」のプレイレポート。伝統あるシリーズの最新作は,プレイヤーにストレスを感じさせない丁寧な作りが際立つ
ご存じの人も多いと思うが,イースシリーズには,“希代の冒険家「アドル・クリスティン」が残した冒険日誌の追体験”という共通の設定がある。イースVIIIは,彼が21歳のときの冒険を記した「ゲーテ海案内記」が題材だ。
主人公はアドルと,彼の夢の中に現れる謎の少女「ダーナ」の2人。物語は,アドルが旅の途中,大型定期客船「ロンバルディア号」に臨時の船員として乗り込むところから始まる。
多くの船が沈没しているという難所を航行していたロンバルディア号は,突然の巨大な触手の襲撃を受け,あえなく沈没。海に投げ出されたアドルが流れ着いたのは,“永遠に呪われた島”と言い伝えられる無人島「セイレン島」だった。
アドルは,同じくセイレン島に流れ着いたロンバルディア号船長の「バルバロス」から依頼され,島の地図作成と他の漂流者達の捜索を開始。合流した漂流者と「漂流村」を作り,ここを拠点に島の探索を行いつつ,島からの脱出を目指す。
アドルと一緒に冒険をするパーティキャラクターは,貴族の令嬢「ラクシャ」,中年の漁師「サハド」,運び屋の青年「ヒュンメル」,セイレン島育ちの少女「リコッタ」の4人。
それ以外にも,ロンバルディア号の遭難者を始めとして,年齢や身分,職業などが異なるキャラクターが多数登場する。彼らにはそれぞれの事情や悩みがあり,ストーリーを進めたり,好感度を高めたりすることによって,人間性がより深く描かれるという仕掛けだ。
そうやって島の探索を進める中,前述したように,アドルの夢にダーナが現れるようになる。彼女は非常に高度な文明を持った地域の王都にいて,ここに住む人々はテレパシーなどの不思議な能力を持っているようだ。
異なる世界で生きるアドルとダーナの運命がどのように交差するのか,それに絡むキャラクター達にはどんな過去があったのか……気になるところだが,そこはぜひ自分の目で確かめてもらいたい。
適度な歯応えで爽快感もあるバトル
本作に用意されている難度は,「EASY」「NORMAL」「HARD」「NIGHTMARE」の4段階。今回のプレイはNORMALで進めたが,それほどアクションが得意ではない筆者でも,全滅したのはボス戦の数回のみだった。ボス戦で全滅した場合は難度を下げてリトライできるほか,システムメニューからも難度を変更可能。初心者やアクションが苦手な人には優しい仕様だろう。
バトルでの基本的な操作は,左スティックで移動,[○]ボタンで攻撃,[×]ボタンでジャンプ,[△]ボタンで操作キャラクター切り替え,[□]ボタンでターゲットロック/解除,といったところ。
攻撃を当てると溜まる「SPポイント」が一定以上あるときに[R]ボタンと[○]/[×]/[□]/[△]いずれかのボタンを同時押しすることで任意のスキル攻撃が繰り出せる。また,スキル攻撃を成功させると「EXTRAゲージ」が溜まり,これが最大になった状態で[R]ボタンと[L]ボタンを同時押しすると,各キャラクターの最強スキルである「EXTRAスキル」が発動可能だ。
筆者がプレイした「NORMAL」の難度だと,フィールド上の敵のほとんどは,あまり立ち回りを考えることもなく,通常攻撃とスキルを連発しているだけで簡単に倒せた。プレイヤーキャラクターの周りに敵が集まってきた場合は,EXTRAスキルでまとめて倒すと爽快だ。
だが,さすがにボス戦となると,攻撃一辺倒で勝つのは難しくなり,「フラッシュガード」や「フラッシュムーブ」といった防御/回避アクションを使う必要が出てくる。
相手の攻撃に合わせてタイミングよく[R]ボタンを押し,フラッシュガードを発動させると,相手の攻撃を無効化したうえで,一定時間自分の攻撃がすべてクリティカルになる。
また,同じく敵の攻撃にタイミングを合わせて[L]ボタンを押すとフラッシュムーブが発動。攻撃を回避できるだけでなく,敵の動きが一定時間スローになって,好きなように攻撃を叩き込める。
前述したようにボス戦では何回か全滅してしまったが,それでもわざわざレベル上げの作業をするほどではなく,リトライするうちに立ち回り方を覚えて,倒すことができた。フィールドの敵から逃げ続けるようなことさえしなければ,自然と強くなっていき,行き詰まることはないはずだ。
密接に絡み合った「島の探索」と「漂流村の発展」がプレイへの意欲を高める
本作ならではの面白さとなっているのが,「島の探索」と「漂流村の発展」。しかも,その2つが密接に絡み合っているのがポイントだ。
前述した通り,アドルはセイレン島を探索してほかの漂流者を見つけ,漂流村に連れて帰るのだが,漂流者達はそれぞれが持っている技能や知識を生かして,武器や防具を作れる「鍛冶場」「工芸屋」,集めた素材をより希少な素材と交換できる「交易所」,薬を調合できる「診療所」といった施設を作ってくれる。
そういった施設で装備を充実させ,強敵がいるエリアへと足を踏み入れていくのだが,漂流者の発見はより直接的な形でも島の探索に影響を与える。島のあちこちには,倒木や岩といったものによって道がふさがれている場所があるのだが,漂流者達の力を借りて,こういった障害を取り除けるのだ。
場所によって必要な人数が異なるので,「●人集まったから,あの場所が通れる!」となったときが嬉しい。このあたりは,探索にメリハリが出るうまい作りだと感じた。
ストーリーを進めていくと,村をモンスターの波状攻撃から守る「迎撃戦」というイベントが度々発生するのだが,ここでもほかの漂流者達がそれぞれのスキルを使って,攻撃に防衛にと活躍してくれる。また,探索で集めた素材を使って,防衛設備を強化することも可能だ。
このように,本作では漂流者達を発見して村を発展させ,新たなエリアに進出し,そこでまた漂流者を見つけて……といった感じでゲームを進めていく。宿敵を倒すために長い旅を続けるのではなく,拠点と未知のエリアを行き来するという流れが,「勇者」ではなく「冒険家」であるアドルの物語にうまくはまっていると言えるだろう。
率直に言えば,本作のグラフィックスはほかのタイトルと比べて特段美麗というわけでもなく,バトルをはじめとしたシステムも基本的にオーソドックスな作りだ。だが,大小さまざまな伏線がエンディングまでの過程できっちりと回収されていくシナリオや,村の発展などを体験すると,とても丁寧に作られているということが分かってくる。
その丁寧さは,地図にも表れている。地図を見れば,素材の採取場所や宝箱の位置,道をふさぐ障害とその除去に必要な漂流者の人数といったことまでひと目で確認可能だ。なので,「欲しい素材が出てきたけど,取れる場所を忘れた」「漂流者が増えたけど,この人数で除去できる障害はどこだっけ?」といったことになっても困らない。
人によっては「便利すぎる」と思うかもしれないが,プレイヤーにストレスを感じさせない配慮が細かいところまで行き届いていると感じられた。
そして,シリーズを通して定評があるBGMは伝統をしっかり受け継いでおり,しっとりとした曲から勇壮な曲まで,多彩な曲が冒険を盛り上げてくれる。ゲームを終えた後も,音楽と共に名シーンが頭の中に蘇り,心地よい余韻に浸れるはずだ。
ボリュームもかなりのもので,携帯ゲーム機用タイトルとはいえ,たっぷり遊べるはず。ちなみに筆者はいろいろとメモを取りながらではあったが,エンディングを見るまでに68時間かかった。
“最高のグラフィックスで,心がヒリヒリするような緊張感の高いバトルを楽しみたい”という人には向かないかもしれないが,ゆっくりのんびり自分のペースで冒険を楽める本作は,幅広い層に響くはず。シリーズ作品を遊んだことがない人にもぜひ触ってもらいたい。
「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」公式サイト
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イースVIII -Lacrimosa of DANA-
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