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東京レトロゲームショウ2015:第21回 アドベンチャーゲームの歴史に燦然と輝く「Syberia」で,感動に胸を熱くしよう
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印刷2015/10/01 12:00

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東京レトロゲームショウ2015:第21回 アドベンチャーゲームの歴史に燦然と輝く「Syberia」で,感動に胸を熱くしよう

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今週のテーマ:近頃,感動が少ないとお嘆きのあなたに

 ミニコン時代のテキストアドベンチャーに始まり,1980年にApple II向けに発売された「Mystery House」以降のグラフィックスアドベンチャーまで,PCゲーム黎明期に大きなジャンルを築いたアドベンチャーゲーム。しかし,その黄金期は長くなく,やがてFPSやTPS,RTSといったさまざまなジャンルのタイトルが登場するに至って次第に廃れ,2000年頃には「本格的なアドベンチャーゲームの時代は終わった」などと言われていた。そんな状況に一石を投じたのが,今週の「東京レトロゲームショウ2015」で紹介する「Syberia」(邦題「シベリア」)だった。

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Steam「Syberia」紹介ページ


 まあ,何をもって“本格的なアドベンチャーゲーム”とするのか,などといった疑問もあったりするので,上記は話としてあまりにザックリしすぎなのだが,そういう感じだったのかと納得してもらえると,こちらとしても気が楽なので,そう思ってほしい。

 2002年に発売されるや,多くのメディアのアドベンチャー部門の賞を獲得し,プレイヤーからも高い評価を得てヒット作となった「Syberia」は,まだまだいけるぞ,アドベンチャーゲーム,という機運を欧米ゲーム業界において作り出した。デベロッパはフランスのMicroïdsで,ベルギーのコミック作家であるBenoît Sokal氏がディレクターを務めるなど,北米の大作とはちょっと異なる,ヨーロピアンな香りを持っていると思う(個人の感想です)。

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 ゲームは,主人公のケイト・ウォーカーがフランスの田舎町バラディレーンを訪れるところから始まる。彼女は,この街のオモチャ工場を買収するため,アメリカの大手玩具会社の代表としてニューヨークの法律事務所からやってきたのだ。だが,工場のオーナーであるアンナ・ボラルバーグはケイトの到着前日に死去しており,やってきた日にケイトが見たロボット(ゲーム中では,からくり人形と呼ばれる)達の不思議な葬列は,アンナのものだったのだ。仕方なく事情を知る土地の公証人に話を聞いたところ,工場の権利は現在,アンナの弟ハンスの手にあり,死んだとされていたハンスは実は遠く離れた土地で生きているという。かくしてケイトは仕事をやり遂げるため,ハンスを追って旅立つことになる。

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 ケイトが移動に使うのは,ハンスが設計した列車と,それを操るロボットのオスカーで,どちらも図面を元にアンナが作ったものだ。いつか,行けるようになったら弟のところへ行こうと思っていたが,それを果たせないまま亡くなってしまったらしい。
 ハンスは天才的な技術者であり,ゼンマイとバネと歯車でどんなものでも作ってしまう。まるで人間のように話すロボットのオスカーだが,これもそんな部品で作られており,列車は停車駅でゼンマイをギリギリとまき直す必要があったりするのだ。

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 列車に乗り込んだケイトは,ハンスが過ごした大学町バロクシュタット,彼が働いた工業都市コムコルツグラッド,そして保養地アラルバッドへと,さまざまな人と出会いながら探索の足を伸ばすのだが,それは同時にハンスの過去を追う旅にもなる。彼はなぜマンモスに取り憑かれているのか,そして,目的地はどこなのか。胸を打つエンディングまで,プレイヤーはケイトと共に旅を続けることになる。
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 同時に,ケイト自身の状況も,もっぱら携帯電話(ゲームの時代背景は2002年)の会話を通じて分かるようになっており,ケイトとハンス,2人の物語が平行して進むような構成になっているところも小粋だ。

 以上のように物語は最初,リアル系かなと思わせておいて,次第にファンタジー色が濃くなっていく。シベリアというタイトルではあるものの,舞台は「ロシア風の架空の土地」であり,準主役と呼べるオスカーやマンモスなどもごく自然に登場する。

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 グラフィックスは2Dで描かれた背景のうえを,3Dで作られたキャラクターが移動するというもので,発売時はその美しさが高く評価された。それまでは640×480ドットのいわゆるVGAに対応したタイトルが主流だったのだが,「Syberia」では思い切って800×600ドットの固定解像度にしたことで,より細かな背景作りが可能になった。4Kだの8Kだのが注目を集める今とは隔世の感を禁じ得ない。たった13年前なのに。
 ロボットやロケットなど,Sokal氏のデザインしたさまざまなガジェットは,どこか古めかしさを残しつつ緻密に描かれており,ゲーム全体の統一感も見事だ。

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 システムはポイント&クリック式で,カーソルを移動させると,何か注目すべきオブジェクトのある場所でカーソルが光ったり形が変わったりして教えてくれる仕組み。パズルの難しさを競っていた当時のアドベンチャーゲームにあって,「Syberia」のパズル要素は比較的簡単であり,そこがまた本作が人気を得た一因でもあるだろう。
 もっとも,にっちもさっちもいかなくなったことも少なくなく,フラグを立てるには,それなりに想像力を発揮させなければならないし,ちょっとしたひらめきを要求される場面もある。システムはシンプルだが,必ずしも簡単というわけではない。

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 多彩な登場人物は,いずれも過去のしがらみにとらわれており,人の幸福とは,家族とは,といったことを思わず考えさせるストーリーが,静かで美しい音楽に乗って語られていく。興味のある人は,ぜひプレイしてほしい。

 そんな「Syberia」のヒット以降,欧米ゲーム業界では新作が次々にリリースされ,ちょっとしたブームになった。かくして正統派アドベンチャーゲームが全面復活,となればキレイに収まるのだが,続編の「Syberia II」を含めて本作を超えるような作品は,なかなか登場せず,欧米ゲーム市場におけるアドベンチャーゲームは,やはり依然としてニッチなジャンルであるようだ。もっとも,Telltale Gamesの「ウォーキング・デッド」のような大ヒット作も登場したりしているし,過去の名作が,次々にスマートフォン向けタイトルとしてリメイクされている状況も,ファンとして歓迎すべきことだろう。

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 2009年には,Microïdsは最新作「Syberia III」の制作をアナウンスした。2012年には前2作と同様,Benoît Sokal氏がストーリーを書くと発表し,リリースが2015年か2016年になることを明らかにしたものの,それ以降,あまり情報は出ていない。年齢と共にアクションがますます苦手になってきた筆者としては,面白いアドベンチャーをなるべくプレイしたいと思っているので,シリーズ最新作には,期待せざるを得ない。

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 以前は日本語版のパッケージが販売されていた「Syberia」だが,現在はやや入手難の様子。でも安心してほしい,「Steam」版は日本語でのプレイが可能だ(「GOG.com」などでも容易に手に入るが,試していないので,日本語が使えるかは不明)。それなりにテキストは多く,ケイト以外の登場人物のロシア訛りがきつかったりもするので,リスニングも結構大変だが,日本語字幕があれば問題ない。さらに4Gamerには,なんと全6回にわたって攻略連載が掲載されているので,困ったときはこちらを参照すればいいだろう。以上,最後は宣伝でキレイにまとめて,ではまた。

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    Steam

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    シベリア 日本語版

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