プレイレポート
「進撃の巨人」のプレイレポートを掲載。見事に再現された立体機動アクションで巨人を駆逐せよ
なお,今回プレイしたのはPS4版で,掲載しているスクリーンショットもPS4のSHARE機能で撮影したものだ。
物語の舞台は,「巨人」が人々を食らう残酷な世界。人類は強固な防壁の中に引きこもって一時の安心を得るが,防壁の一つが破壊され,再び巨人の恐怖にさらされることになった。プレイヤーは主人公のエレン・イェーガーをはじめとする兵団のメンバーを操作し,仲間と連携して巨人を駆逐するのだ。
冒頭でも触れたとおり,本作最大の特徴は,原作に登場する「立体機動」のゲーム的再現にある。
立体機動とは,小さな人間が巨人に立ち向かうべく生み出した,ワイヤーアクション的戦法だ。エレンをはじめとする兵士達は,腰に装着した立体機動装置からワイヤーを射出して建物や木々に打ち込み,そのワイヤーを巻き取ったり,装置から高圧ガスを噴射させたりして空中を飛び回れる。巨人との戦いにおいては,標的となる部位にワイヤーを打ち込んで一気に接近し,手にしたブレードで巨人の肉を削ぎ落とすのだ。
アクロバティックでいかにもゲーム向きなアクションなのだが,開発陣のコメントによれば,これをプレイヤーが楽しめるものに仕上げるのは非常に難しい作業だったという。
その苦労の甲斐あってか,本作の立体機動はシンプルな操作で楽しめる。まず移動は,ワイヤーを射出する[□]ボタンを押しっぱなしにしながら左スティックを倒すだけで,その方向へ自動的にワイヤーを繰り出して空中を進める。建物の壁に接触しても,[□]ボタンを押しておけば,自動的に壁走りを披露してくれるのだ。
周囲にワイヤーを打ち込む物がないときは,[×]ボタンでガス噴射による「ブースト」を使えばいい。もちろんブーストから再びワイヤーによる立体機動に戻ることも可能となっている。建物や巨木の間を飛び回るスピード感はとにかく爽快だ。原作ではエレン達が血のにじむ訓練で体得していた立体機動だが,本作ならすぐに使いこなせるはず。
巨人との戦いも,操作自体はシンプルだ。[R1]ボタンで巨人の手や足,最大の弱点であるうなじといった部位をロックオンし,[□]ボタンでワイヤーを打ち込んでから,左スティックをニュートラルにすると自動で巨人に接近する。後は[△]ボタンを押して斬撃を放てばいい。
ただし,戦闘ではこの手順を繰り返していればいいというわけではない。重要なのは,巨人と自分の位置関係の把握だ。
巨人と一定以上の距離があるところから接近を始めると,十分に加速できて与ダメージがアップするが,距離が近いと加速しきれずに威力が下がり,近すぎる場合は攻撃が弾かれてしまうこともある。また,キャラクターの中には,巨人の頭上から攻撃すると威力がアップするなどといったスキルを持つ者もいるため,接近ルートまで考えたいところだ。
距離や接近ルートを確保するために,ワイヤーを打ち込んだあとに巨人からいったん離れるのも手だが,攻撃までに時間がかかりすぎたり,巨人とプレイヤーの間に建物や別の巨人が入ったりすると,ワイヤーが外れてしまう。そうなると,着地するまで無防備になり,かなり危険なので,周囲の状況に気を配りつつ,できるだけ速やかに攻撃する必要があるのだ。
巨人の弱点であるうなじの耐久力をゼロにできれば,討伐は完了。すれちがいざまの一撃で巨体が沈むときなどは実に痛快だ。足を攻撃して動きを止めたり,手を斬り落として攻撃を封じたりと,うなじ以外の部位破壊にもメリットはある。新たな武器の作成に必要な素材が入手できる場合もあるので,積極的に部位破壊を狙っていきたいところだ。
このように,スピード感にあふれて実に爽快な立体機動アクションなのだが,筆者が原作らしさを強く感じられたのは,その弱点とでも言うべき部分だ。
まずは平地での戦いだ。前述したように,立体機動は建物や木々にワイヤーを打ち込み,そこを支点として空中を飛び回るものなので,周囲に何もないところでは使えない。平地で巨人との交戦を避けたほうがいいのは原作どおりだ。ちなみに,馬に乗って機動力を補う戦術もしっかり再現されているので,あえて平地で戦うとすればこれを使うことになるだろう。
次は,ブーストに必要なガスに限りがあることだ。これが尽きてしまうと,補給兵と接触したり,巨人に食われた兵の亡骸から回収したりして補充するまで,ブーストが使用不能となる。ワイヤーによる立体機動はかろうじて可能だが,平地でガスが切れてしまうと,いよいよ大ピンチだ。
ブレードも消耗品で,巨人を斬る度に耐久度が落ちていき,ゼロになると「欠損」して与えるダメージが激減する。予備のブレードと交換すれば元通りになるが,持てるブレードの数は装備する「鞘」の種類によって変わるので,耐久度の低いブレードを使うときは予備を多く持てる鞘を使うなどの工夫が必要だろう。
そして,戦いにおいて最も気をつけなければならないのは,巨人と比較して人間があまりにひ弱なことだろう。巨人に掴まれてしまい,ボタン連打による脱出にも失敗すると,食べられて即ゲームオーバーとなる。“世界は残酷”だ。また,プレイヤーキャラクターはある程度のダメージを受けると瀕死状態となり,一定時間が経過するか,「回復薬」を飲むまで動きが鈍くなってしまう。
巨人に掴まれる寸前などの危機的状況では,時間の経過がゆっくりになる「アクセルタイム」が発動し,ある程度の余裕が与えられるが,発動回数にも限りがあるので,当てにしすぎるのも考えものだ。
このように,本作の立体機動アクションによる戦闘は,“スピード感”“巨人の恐ろしさ”“人間のもろさ”といった原作の特徴を,見事に再現していると感じられた。
本作のメインとなるモードは,原作のストーリーを追体験する「進撃モード」と,好きなキャラクターでさまざまな任務に挑戦できる「壁外調査モード」の2つだが,基本的な流れはほぼ同じだ。任務に出撃し,巨人を倒して得た素材や資金で,ブレードや鞘,立体起動装置といった装備品を生産・強化し,次なる戦いに挑んでいく。
血しぶきが飛び,巨人の手足が欠損するといった描写が当たり前のように出てくるため,苦手な人はゴア表現を軽減するオプションを使うといいだろう。
任務のバリエーションは豊富で,巨人の討伐だけでなく,施設を防衛することが目的とものもある。この場合は施設の耐久力が尽きないように,攻め寄せてくる巨人を倒していくのだ。
任務中に味方が助けを求めてくることもあり,うまく救えれば一緒に戦ったり,予備のブレードやガスといった補給品をもらえたりできる。仲間は最大で4人連れ歩くことができ,能力が低い仲間を外して,高い仲間を加入させるようなことも可能だ。
任務を成功させると経験値が得られ,一定値に達すると「練度」が上昇し,キャラクターごとに新たなスキルを獲得していく。中でもエレンの巨人化は印象的で,建物が壊れるのもお構いなしに敵の巨人を蹴散らしていくという,立体機動とはまた違った爽快感が味わえる。超人的な兵士であるリヴァイやミカサは,ロックオン状態から[△]ボタンを連打するだけで,3か所の部位を続けざまに攻撃できる連撃というスキルを持っていて,頭脳派のアルミンは任意のタイミングで仲間に攻撃を指示できるなど,しっかりとキャラクターづけもなされている。
また,戦場には巨人用の罠や大砲も用意されていて,これらをうまく使えば戦いを有利に運べる……のだが,例えば大砲は「奇行種」など,動きの速い巨人にはなかなか当たらず,なぜ立体機動がないと巨人に立ち向かえないかが実感できたりもする。このあたりも憎い原作再現だ。
ここまでの紹介でお分かりいただけたかもしれないが,本作には可能な限り原作の設定を生かそうという姿勢が感じられる。しかし,本作の魅力はそこだけではない。実際にプレイしてみると,コーエーテクモゲームスがこれまで開発してきたアクションゲームのノウハウがうまく取り入れられた作品に仕上がっていると感じられた。
公式サイトなどでは「タクティカルハンティングアクション」というジャンル名が付けられている本作だが,その名のとおり,「無双」シリーズに代表されるタクティカルアクションと,「討鬼伝」などのハンティングアクションのおいしいところがまとめられたような印象を受ける。広大な戦場でさまざまなイベントが起こり,仲間とともに立ち向かうあたりはタクティカルアクション,部位破壊をしつつ巨人を倒して資材を獲得し,装備品を強化していくのはハンティングアクションの楽しさだ。
立体機動のゲーム的表現においても,「討鬼伝」シリーズのノウハウが生きているのではないかと推測している。同シリーズには,立体機動によく似たアクションが楽しめる「鎖鎌」という武器がある。鬼の体に分銅を打ち込み,これを支点として空中を駆けるというものだが,これは開発スタッフがテクニック指南動画を公開するほどの“玄人”向けだった。
本作の立体機動が前述したようにシンプルな操作にまとめられているのは,この経験があったからではないかと個人的には思っているのだ。
本作がただの「原作ファン向け」作品に終わらない面白さを持ったアクションゲームであることは間違いない。もちろん,たびたび紹介してきたように,原作の要素はしっかりと再現されているが,それを生かしつつ,アクションゲームとして高い完成度となっている。3月24日に予定されているアップデートではオンラインマルチプレイモードも実装されて,さらにゲーム性が広がりそうなので,ここから「進撃の巨人」の世界に入り,原作漫画やアニメへと手を広げていくのもいいのではないだろうか。
「進撃の巨人」公式サイト
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(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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