インタビュー
「DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation」を,動画で興味をもった160万のPCユーザーに届けたい。今作の気になるところを開発者にインタビュー
基本プレイ無料作品ということで,「おそらくガチャで水着を獲得するのかな」と想像はできそうだが,一方で「その水着をちゃんと彼女たちに受け取ってもらえるのだろうか……」と気になっているファンもいるのではないだろうか。筆者もそんな1人である。そこで,本作の気になるところをプロデューサーの早矢仕洋介氏とディレクターの作田泰紀氏にインタビューしてみることにした。
動画で興味を持った160万のPCユーザーに届ける「DEAD OR ALIVE Xtreme」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。東京ゲームショウ2017のスペシャルステージは大盛況でしたね。
早矢仕洋介氏(以下,早矢仕氏):
ありがとうございます。とにかく人が多かったですし,イベントも盛り上がりました。
作田泰紀氏(以下,作田氏):
ひとまずほっと一安心でしたね(笑)。
プロデューサー 早矢仕洋介氏 |
ディレクター 作田泰紀氏 |
4Gamer:
「DEAD OR ALIVE Xtreme」(以下,DOAX)シリーズとしては,前作となる「DEAD OR ALIVE Xtreme 3 Fortune / Venus」の発売からハイペースでの発表になりましたよね(※前作の発売は2016年3月,前々作は2006年11月)。
早矢仕氏:
ええ,そうですね。実は,前作「DEAD OR ALIVE Xtreme 3」のプロモーションを展開していく中で,YouTubeでの反響が大きかったことが制作のキッカケになったんです。
4Gamer:
それはどのような?
早矢仕氏:
公式動画のビュー数が160万を越えていて。これはコーエーテクモのタイトルとしてはトップの再生数なんです。
作田氏:
ほかのタイトルが10万〜50万ビューくらいで。
4Gamer:
それは文字どおり桁違いの数字ですね。
早矢仕氏:
おかげさまで,そのDOAX3も好評で,我々の想定以上の結果はあったのですが,一方で売上が160万本だったというわけではありません。もちろん,ビュー数がそのまま実際のプレイ人数になるわけではないのですが。
4Gamer:
割合で見ても,ビュー数と売り上げには幅があったと?
早矢仕氏:
そうなんです。ですから,コンシューマ版の購入に至らなかった,PCで動画を見ていた人達にも,もっとDOAXシリーズを遊んでもらいたいと考えたんです。
4Gamer:
なるほど。動画で興味を持った潜在的なプレイヤーが,ゲームプラットフォームとしてのPCにはいるはず……ということですよね。
ところで,基本プレイ無料タイトルとなると,スマートフォンで展開するという手もあったと思うのですが。
もちろんスマートフォンも候補になります。ただ,「DOAX」の新作を作るとなると,シリーズの魅力である「やわらかエンジンで描写されたハイクオリティの女の子たちが動くこと」と「セクシーな要素」は外せません。スマートフォンだと,スペックの関係から満足のいくグラフィックス表現ができませんし,セクシーな要素があるとリリースの審査が厳しいです。
4Gamer:
どちらも「DOAX」としては,きわめて重要な要素ですよね……。
早矢仕氏:
はい。この問題に頭を悩ませている時に,DMM GAMESさんから「DMM GAME PLAYER」というPCゲームに対応したプラットフォームがあるとうかがい,「DOAX」の新作をそこで出したいと提案させていただいたんです。
4Gamer:
ユーザー層もマッチしそうですし,まさに渡りに船という感じですね。では,コーエーテクモゲームスとDMM GAMESの役割は,それぞれどういったところになるのでしょう。
早矢仕氏:
DMM GAMESさんからは,ユーザー属性などに関してアドバイスをいただいています。ゲームそのものに関しては,コーエーテクモゲームスが開発/運営を行っていきます。
4Gamer:
つまり,DMM GAMES側はポータルサイト的な役割になると?
早矢仕氏:
ええ,そうなりますね。
4Gamer:
分かりました。ところでDMM GAMESで展開するゲームと言えば,ブラウザゲームが多いというイメージがありますよね。本作が最初に発表されたときも,ブラウザ型のタイトルになるのかと思ったくらいで。
早矢仕氏:
確かにそんなイメージはありますね。改めて言っておくと,「DOAXVV」はブラウザ型でなく,クライアント型のタイトルになります。ですが,目指しているのは「ブラウザゲームのように遊べるクライアント型ゲーム」なんです。
4Gamer:
と言いますと?
早矢仕氏:
ブラウザゲームのような手軽さで,PCゲームとして高度なグラフィックス表現があり,しかも基本プレイ無料+アイテム課金制なので思い立ったらすぐに始められるというものですね。
4Gamer:
なるほど。ただ,クライアント型ということで,自分の家にあるPCだと動くかどうか心配になる人もいるのでは。
作田氏:
もちろんロースペックPC用の設定もあります。これは軽量化したCGモデルと「やわらかエンジンLite」が使われていて,前作のPS4版とPS Vita版の違いを思い出していただければイメージしやすいと思います。
早矢仕氏:
環境設定はランチャーから切り替えられます。通常は「やわらかエンジン2.0」で描写され,「尻や太ももの挙動」「着くずれ表現」「日焼け表現」「肌の紅潮表現」「高度な肌表現」「高度な変形表現」に対応したフルスペック版となります。
4Gamer:
肌の紅潮表現というのは,今作からの新表現ですよね?
作田氏:
はい。主に頬の紅潮表現,つまり頬を染める恥じらいの表現ですね。「DOAXVV」の新キャラクターを作るにあたり,オーナーの身近に寄り添ってくれる女の子として「みさき」が生まれました。彼女の魅力を表現するために,「やわらかエンジン2.0」の進化として恥じらいを表現することにしたんです。
4Gamer:
「DOAXVV」でやわらかエンジン2.0を使うにあたって苦労されたところはありますか?
作田氏:
チューニングに苦労しましたね。プログラマーとグラフィッカーが本気でぶつかりあって,とにかくパラメータが細かく1つ1つのコスチュームごとに調整されていて。職人芸の結晶なんですよ。開発内では担当者のことを「やわらか職人」とも呼んでいます(笑)。 ですから,すべてが苦労話と言っても過言ではないくらいです……。
4Gamer:
聞くだけで大変そうです……。今回のプラットフォームはPCになるわけですが,レーティング的な意味で,従来作との違いはあるのでしょうか。CEROだと,前作と「DOAXVV」のどちらもD指定ですが。
早矢仕氏:
審査自体に違いはありませんし,PCなら規制が緩くなるといったこともありません。ただ,「DOAXVV」では「ギリギリのD」といったラインを狙っています(笑)。社内から「ガチャの演出でシャワーシーンとかありますけど大丈夫ですか!」なんて聞かれたりもしましたが(笑)。
4Gamer:
いやまあ,みんなそう思いますよね(笑)。
少し話を戻しますが,本作は基本プレイ無料+アイテム課金制ということで,多くのファンが気になっていると思うのですが,プレイヤーはどういったところにお金を払うことになるのでしょう? いわゆるスタミナ制になるのでしょうか。
早矢仕氏:
主な有料要素となるのは,水着を手に入れるためのガチャですね。もちろん無料でも水着は手に入りますが,追加で欲しい場合は有料のガチャで手に入れることになります。
4Gamer:
その水着について「DOAX」シリーズのファンが一番気になるのが,プレゼントに関してです。これまでのシリーズですと,オーナーが女の子に水着をプレゼントしても,好みに合わないものだと突っ返されるということがありました。今回もこうしたフィーチャーは存在するのでしょうか。
作田氏:
いえ,今回はどんな水着でも受け取ってもらえますよ。その女の子が着用できるものに限られますけど,好きな水着を簡単に着せられます。
4Gamer:
それは嬉しい限りです。「DOAX」ファンも一安心ではないでしょうか。
作田氏:
ただ,水着の「好み」自体は存在しているので,受け取ったときのリアクションが変化します。また,水着にはビーチバレーの試合に関するパラメータを強化する働きがあります。レアリティが高い水着だとスキルが付与されていることもあるんですよ。さらに,試合などで手に入れた素材を合成して水着をパワーアップさせられます。
4Gamer:
RPGにおける装備品に近いニュアンスになるわけですね。
作田氏:
そうなります。水着もアップデートで定期的に増えていきますので楽しみにしていてください。
早矢仕氏:
開発中にモニターさん(いわゆるテスター)にもプレイしていただいているのですが,「DOAXシリーズの大ファンだが,これこそ究極のDOAXだ!こういう遊びを求めていたんだ!」という,すごく熱い反応をしてくださった方もいらっしゃいました。用紙の枠に入りきらない位にビッチリと書いていただいて。
4Gamer:
熱いですね。でも,水着を突っ返されずに,アップデートで水着が増えていくと聞くだけでも,自分としては「究極のDOAX」になりそうです(笑)。
オーナーであるプレイヤーと女の子達とのふれ合いをしっかりと描く
4Gamer:
ゲームデザイン的に,これまでのシリーズと違いはありますか?
早矢仕氏:
一番大きな違いは,ビーチバレーの操作方法ですね。ビーチバレーは2on2形式で行われ,プレイヤーは自分で女の子を操作するのではなく,試合中に指示を出すんです。
4Gamer:
プレイヤーが出せる指示にはどんなものがあるのでしょう。
作田氏:
試合前やタイムアウトをとって,スパイクやフェイントといった攻撃方法や,相手チームの誰を狙うかといった方針を指示できます。また,試合を進めて女の子の「テンション」がMAXになった状態だと,一定時間能力がアップする「テンションバースト」を発動させられるんです。
4Gamer:
なるほど。ビーチバレーをするのはあくまで女の子で,プレイヤーが出す方針やテンションバーストのタイミングが試合を左右するわけですか。
早矢仕氏:
ええ。DMM GAMESさんのゲームを遊ばれている方々の中で,ゲームパッドを持っている人がどれだけいるか分かりませんし,キーボードをフルに使ってアクションゲームをやるのはどうなのかと。そこで,ビーチバレーの面白さをシンプルに表現するゲームデザインを追求した結果,シミュレーション型がいいんじゃないかということになったんです。
4Gamer:
時代に即したゲームデザインといった感じでしょうか……先ほどおっしゃっていた「ブラウザゲームのように遊べる」は,これを指しているわけですか?
早矢仕氏:
そのとおりです。また,プレイヤーの立ち位置も従来作より明確になっていて,女の子とのふれ合いをしっかり描く形になっています。これまでの「DOAX」だと,プレイヤーの立ち位置が分かりにくいところがありました。
4Gamer:
確かに,初期シリーズでは女の子をゲームパッドで直接操作しつつ,その女の子のグラビアを撮影できたりもしましたね。
早矢仕氏:
このテーマに取り組んだのが「DOAX3」の「オーナーモード」なんです。ここでプレイヤー=島のオーナーという立ち位置を明確にしました。
4Gamer:
プレイヤー自身が島の運営を任される,というバックストーリーもありましたし,女の子たちも「オーナーとしてのプレイヤー」に呼びかけてくれていましたね。
早矢仕氏:
その方向性をさらに推し進めたのが「DOAXVV」なんですよ。女の子たちはオーナーとしてのプレイヤーを見ていますので,今まで以上に身近に感じていただけると思います。
作田氏:
女の子がレベルアップしたり,ヴィーナスフェスを勝ち上がっていくことで「おもいで」のエピソードが解放されます。エピソード内で描かれる彼女たちのキャラクター性にも注目してほしいですね。
4Gamer:
その女の子たちですが,どうやって増えていくんですか?
早矢仕氏:
ゲームの開始時にお好きな女の子を2人選んでいただけます。さらに女の子を増やしたい場合はガチャを回していただく感じですね。
作田氏:
試合の際には,ほかのオーナーさんが連れている女の子を借りることもできます。このあたりも,いわゆるブラウザゲームやソーシャルゲームと同様ですね。
4Gamer:
これまでのシリーズには女の子同士の相性がありましたが,「DOAXVV」にもこうした要素は存在するんでしょうか。
内部的なパラメータとして相性は存在しますが,現時点ではゲーム性に影響しません。まずは,それぞれの女の子と仲良くなることを目的としてもらえればと。そのあとで女の子同士の相性なども活かしたものを追加したいなと思っています。
4Gamer:
分かりました。ところで,今作にもグラビア撮影モードはあるんですか?
作田氏:
もちろんありますよ。グラビア中に「うちわ」で風を吹かせると服や水着がなびいたり,「霧吹き」で水を吹きつけると服が濡れて透けたりします。ちなみに,濡れた服を「うちわ」で扇いで乾かすこともできますよ。撮影にこだわりたい方向けのプロフェッショナルな機能として,プログラマと相談しながらこっそり追加しました(笑)。
グラビア以外にホーム画面でも撮影できますが,オプションの中には「時差」という項目があり,ホーム画面におけるゲーム内の時間を自由に変えられます。
4Gamer:
時差という表現は面白いですね。
早矢仕氏:
ゲーム中はリアルタイムで時間が経過するのですが,プレイ環境によっては「いつも夜」という人もいるはずです。ですから,時間の変更を用意しているのですが,これを時差として設定することで,リゾート島が地球上のどこかにある場所なんだというのを表現しています。
「DOA」のスピンオフではなく,「DOAXVV」という最新作
4Gamer:
それにしても,「DOAXVV」のゲームデザインは,これまでのシリーズからかなり変わっていますよね。
早矢仕氏:
そうですね。これまでのシリーズでは,「シリーズとして変えてはいけない部分」がありました。ですが,そうしたところを全て取っ払って,イチから構築したのが「DOAXVV」なんです。
スマートフォンゲームやブラウザゲームを遊ばれているお客さんに違和感のないようなゲームデザインにして,そこに「DOAX」の魅力的な要素を思い切りぶつけました。そうした意味では,開発は楽しかったですね。みんなゲーム開発を何十年も経験したベテランスタッフなんですけれどね。
4Gamer:
開発現場の熱量が高そうですね(笑)。
早矢仕氏:
それはもう(笑)。あと,「DOAXVV」では女の子の方向性も変わっています。これまでの「DOAX」は格闘ゲームである「DEAD OR ALIVE」のスピンオフという位置づけでしたから,強そうな女の子,つまり格闘ができる女の子しか出られないというところがありました。
4Gamer:
初代「DOAX」の新キャラクターであるリサも凛々しいイメージでしたね。後に「DEAD OR ALIVE 4」で,ルチャドーラ「ラ・マリポーサ」としてバトルもしていますし。
早矢仕氏:
「DOAXVV」の制作にあたり,女の子の魅力の方向性が従来作と違っていてもいいんじゃないかと思ったんです。「バカンスゲームなのに,なぜ登場キャラクターが拳法を使えないといけないのか?」と。従来の“格闘ゲームに出せそうな女の子”や,“強そうな女の子”という方向性は一度外したうえで,魅力的な女の子を作りたかったんです。
4Gamer:
そうした取り組みの結果が新キャラの「みさき」になると。
そもそも今作のタイトルロゴは,「Venus Vacation」の部分を大きくしています。これは,「DEAD OR ALIVE」のスピンオフではなく,独立した1本の新規タイトルだという思いを込めたものなんです。
4Gamer:
なるほど。そう考えれば,みさきのような格闘技とは離れたキャラクターが今後追加されることにも期待できそうです。とくに「DOAXVV」は,運営型タイトルですし。
早矢仕氏:
そうですね。「DOAXVV」にも新キャラクターを追加できればと考えていますし,もちろん格闘ゲームの「DEAD OR ALIVE」シリーズも今後しっかりと展開して伸ばしていきますよ。
4Gamer:
どちらの展開も楽しみです。運営型ということで,さまざまなイベントを企画していると思うのですが,季節イベントなどはあるのでしょうか。舞台は常夏のリゾート島ですし。
作田氏:
できるだけ女の子との距離感を近くして,お客さんの環境とリンクさせたいと考えていますから,ゲームの世界観を崩さない範囲で,同じ時間にいるような季節を感じるストーリーを使ったイベントを作っていきたいですね。
4Gamer:
オーストラリアなどは夏のクリスマスですし,飾り付けなどで盛り上げるのもアリですよね。では,コラボイベントはどうでしょう。
早矢仕氏:
コラボ先を募集中です! もしコラボしてもいいという心の広いIPホルダーの方がおられましたら,ぜひご連絡ください(笑)。
4Gamer:
IP物のキャラが着用していた水着だったり,キャラ画像そのものをプリントした水着みたいなものだったりも考えられそうですね。それこそリアルな衣料品や水着メーカーとの相性も良さそうです。
早矢仕氏:
ええ,そちらもご連絡をお待ちしています(笑)。
4Gamer:
時間も少なくなってきました。最後にお聞きしたいのですが,VR対応はあるのでしょうか?
早矢仕氏:
スタッフからは「いつでもやりますよ!」と声が上がっていて,隙あらばプロジェクトを進めようとするくらいに現場の士気は高いです。ただ,まずはPCでしっかりと安定したサービスを展開することを優先します。ですので時期的なことはお約束できませんが,サービスが軌道に乗れば,その際は再度検討したいと考えています。
4Gamer:
期待しています。では,読者に向けてメッセージをお願いします。
作田氏:
期待の声が高まっているのは感じていますので,少しでも早くお届けできればと思います。そして,「DOAXVV」の世界を広げていくために,お客さんからのご意見をいただければ幸いです。
早矢仕氏:
PCで遊ばれているメインゲームの合間や,仕事の合間のお昼休みなどにちょっと立ち上げていただいて,スキマ時間に遊んでいただければと思っています。
4Gamer:
仕事の合間はちょっと勇気が要りますね(笑)。
早矢仕氏:
そうですか?(笑)。ともあれ基本プレイ無料ですので,まずは遊んでみてください。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
「DEAD OR ALIVE Xtreme Venus Vacation」公式サイト
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