レビュー
「ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン」レビュー。“別バージョン”以上の追加要素を満載した,これまでと立ち位置の異なるタイトル
2016年11月に発売された「ポケットモンスター サン・ムーン」にさまざまな要素を追加しつつ,ストーリー展開などにも手を加えたタイトルだ。本稿では,「ウルトラムーン」をプレイしてのレビューをお届けしていきたい。
これまでの「ポケモン」シリーズでは,過去のタイトルを新たなハードでリメイクしたもの(「ポケットモンスター 赤・緑」における「ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン」など)や,ナンバリングタイトルの続編(「ポケットモンスターブラック・ホワイト」の続編「ポケットモンスターブラック2・ホワイト2」),あるいは同世代のタイトルに新要素を追加した“別バージョン”(「ポケットモンスター クリスタルバージョン」や「ポケットモンスター エメラルド」など)といった,完全新作ではないタイトルが展開されてきた。
今回の「ウルトラサン・ウルトラムーン」は,どちらかと言えば“別バージョン”に近いのだが,ストーリーの一部変更やシステム面の強化に加え,過去シリーズの「伝説のポケモン」がすべて登場するなどの新要素もあり,強化版と言えるプレイ感覚なのだ。こうしたタイトルが新作として,しかも2バージョンで発売されるというのはこれまでにない例である。
アローラ地方にはポケモンジムが存在せず,ジムリーダーに挑んでバッジを手にしていくという過程も本作にはない。その代わりに4つの島に住んでいる「キャプテン」や「しまキング・しまクイーン」といった人物達から課せられる「試練」に挑んでいくことが,一人前のトレーナーになるための儀式となるのである。
試練はバトルはもちろん,特別なルールが設定されていることもある |
本作のヒロインとなるリーリエ。トレーナーではないが,「ほしぐもちゃん」ことコスモッグを連れている |
これは「サン・ムーン」からだが,「ひでんマシン」の代わりに採用されたと思われる移動手段「ポケモンライド」,「Zクリスタル」を持たせることで発動する強力な「Zワザ」,ポケモン「ロトム」がポケモン図鑑に入り込んでプレイヤーに話しかけてくる「ロトム図鑑」など,ゲームシステム面にも大幅な変更が加えられている。グラフィックスに関しても,同じニンテンドー3DSで発売された「ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア」などと比較すると,シリーズの雰囲気は残しつつ,かなり垢抜けて見応えのあるものとなった。
システム面でもビジュアル面でも,これまでの「ポケモン」に慣れ親しんできたプレイヤーにとっては,革新的とも言えるリニューアルが施されており,個人的にはシリーズの新しい方向性として十分アリだと感じている。
何もかもが新しい最新作ながら,道中でポケモンを捕獲して図鑑を充実させ,野生のポケモンやトレーナー達とバトルをしてポケモンを育てていく楽しさに変わりはない。「リージョンフォーム」によってアローラ地方独自の姿となった従来作のポケモン達を見るのもまた楽しく,バラエティに富んだ図鑑が完成するはず。もちろんウルトラサンとウルトラムーンで出現するポケモンは一部異なるので,図鑑の充実には通信交換が必須だ。
「ウルトラサン・ウルトラムーン」では,初めて出会うポケモンにはロトム図鑑が反応。序盤でゾロアが登場した |
もちろん,旅の道中で出会うトレーナーとのバトルも発生 |
本作では一部のポケモンが仲間を呼ぶ「乱入バトル」が採用されていて,ときには1対複数という手ごわいバトルが展開することがある。このときはモンスターボールを投げられなくなり,1匹に減らすまで捕獲することもできなくなってしまう。「サン・ムーン」ではこの乱入バトルが頻繁に発生し,一部のプレイヤーのストレスの原因となっていたが,本作ではその発生が減少し,多少なりとも改善されているように感じられた。
なおこの乱入バトルは,試練などに現れる「ぬしポケモン」なども行ってきて,そのバトルは苛酷なものとなる。「サン・ムーン」を踏まえていることもあってか,本作の全体的なバトルの難度はかなり手応えがあるのだ。切り札となるZワザの使用や,しっかりとしたポケモンの育成などは必要となるはずだ。
仲間を呼ばれると,どちらか1匹にするまでモンスターボールが投げられない |
トレーナーのポーズ演出と派手なエフェクトがでて繰り出すZワザ。かなり強力だ |
そして気になる本作の新要素だが,やはり一番大きいのは,新たな伝説のポケモン「ネクロズマ」の存在だろう。「サン・ムーン」にも登場してはいるものの,その立ち位置はまったく別物で,本作のパッケージにもネクロズマが伝説のポケモン「ソルガレオ」と「ルナアーラ」を取り込んだ姿が描かれている。本作で新たに登場する謎の集団「ウルトラ調査隊」もネクロズマと関係があり,ゲーム序盤から「おっ,なんかちょっと違うぞ」と思わせる演出に気付くはずだ。
ストーリーの根幹に関わることなので詳しくは触れないが,「サン・ムーン」とはベースとなる内容は同じながらも,その行き着く先は異なるものとなっており,とくにストーリー後半からクライマックスに向かうまでの展開は見逃せないものとなっている。
システム面での追加要素は,ポケモンと写真を撮れる「アローラフォトクラブ」や,ぬしポケモンを仲間にできる収集要素「ヌシール」,レンタルしたポケモンを使ってバトルを楽しむ「バトルエージェント」など複数あるが,その中で筆者がお気に入りなのは,「マンタインサーフ」だ。
旅のスタート地点となるメレメレ島には,「サン・ムーン」では存在しなかったビーチができていて,ポケモンの「マンタイン」に乗って,島と島の間をサーフィンしながら移動できるのだが,これがちょっとしたアクションゲームとなっていてなかなか楽しい。
クォーターパイプ状になった波で加速をしながら上へと飛び出し,トリックを決めて着水する。目的地の島にたどり着くまでこれを繰り返して,トリックで得たスコアを競うわけだが,波間には水辺に生息するポケモンたちが顔を出し,ぶつかると減速してしまう。また着水時に体勢が崩れていると大きなロスになってしまうので,トリックを決めるタイミングも重要になる。
ポケモンに技を覚えさせるためのBP(バトルポイント)が比較的手軽に手に入り,さらにすべてのサーフスポットでランキング1位になると,知っている人には懐かしい,あの技を覚えたピカチュウがもらえるので,やらない手はないだろう。なお島と島の移動手段には船もあるので,早く移動したい人にも安心の仕様だ。
空中でスライドパッドを素早く入力してトリックを決める。その後の着水も重要だ |
「サン・ムーン」では空き地だった場所に作られた「アローラフォトクラブ」。お気に入りのポケモンと写真を撮れる |
冒頭でも述べたとおり,本作はストーリーやシステムに変更はあるものの,基本的には「サン・ムーン」がベースになっている。「サン・ムーン」を未プレイの人であれば,本作は非常に新鮮でやり応えのあるタイトルに仕上がっているのだが,プレイ済みとなると,違いがわかるところに行き着くまでの“掴み”が弱く感じるというのは,指摘しておくべきだろう。とはいえ,どちらもまだ未プレイという人なら,実勢価格以外の面で「ウルトラサン・ウルトラムーン」を選ばない理由はない。さまざまな面で従来のシリーズとは異なっており,進化している部分も多いので,ぜひ遊んでみてほしい。
個人的には,今後「ポケモン」シリーズの新作がどのような形でバージョン展開をしていくのかという点にも興味がある。かつてのスタイルへと戻るのか,あるいはさらなる進化を遂げてプレイヤーを楽しませてくるのか,そのあたりも気にしつつ,しばらくは「ウルトラサン・ウルトラムーン」でポケモン集めを楽しんでいきたい。
「ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン」公式サイト
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