プレイレポート
3つのボードを持つ異色の新作デジタルTCG「Artifact」をプレイ。ゲームの基礎から独自のマーケットシステムまでを紹介
さらに,世界初のTCG「マジック・ザ・ギャザリング」をはじめ,幾多の人気カードゲーム&ボードゲームの制作に関わってきたリチャード・ガーフィールド氏がルールデザインを行ったとあって,アナログゲーム界隈からも注目を集めている。
しかしながら,本作にはボードが3つあり,見るからに難しそうな雰囲気である。また,ほかのデジタルカードゲームと違って基本プレイ無料ではなく,クライアントを購入しなければならない(2300円)ということもあって,プレイするのに二の足を踏んでいる人も少なくないだろう。
そこで今回は,筆者が正式サービス後にガッツリとプレイしてみて感じたことや,プレイのコツなどをお伝えしよう。課金の仕組みやデッキ構築に掛かる値段についても言及しているので,気になる人はぜひ一読してほしい。
「Artifact」公式サイト
まずは,基本的なゲームシステムから紹介していこうと思うが,その前に以下のスクリーンショットを見てほしい。
おそらくだが,ほとんどの人が3つあるボードを見て「うわっ難しそう!」と思ったのではなかろうか。もちろん筆者も最初はそうだった。
画像のとおり,ゲームを開始すると「レーン」と呼ばれる3枚のゲームボードが展開される。プレイヤーの目的は,各レーンごとに1つずつ設置されている相手の「タワー」にダメージを与え,相手より先に叩き折ることだ。
ただし,1本だけ破壊しても意味がない。勝利するには,3つタワーのうち2本を破壊するか,タワーを破壊した後に出現する「エンシェント」を壊す必要がある。複数のレーンで勝利を目指すか,ひとつのレーンでエンシェントの破壊を目指すかは状況次第と,ルール自体は一度理解してしまえばそれほど難しい話ではない。
●タワーとエンシェント
名称 | 耐久力 | 詳細 |
---|---|---|
タワー | 40 | 3本中2本の破壊で勝利 |
エンシェント | 80 | タワーを破壊したレーンに出現,1個でも破壊すれば勝利 |
まず,本作には「ハースストーン」のようなターン制は採用されておらず,1アクションごとに交代していく仕組みだ。3つのレーンには個別にマナが用意されており,それを消費して手札のカードをプレイしていく。
最初は左のレーンからプレイを開始し,両プレイヤーが“パス”を選択した段階で,レーンに並べられたカードがいっせいのせで,正面にあるカードを攻撃する。それが終わると今度は真ん中のレーンに移り,カードをプレイするフェーズから再開するという感じだ。
3つのレーンで戦闘が終了するまでの流れを「1ラウンド」と呼び,ラウンドが巡るごとに各レーンで使用可能なマナが増えていく。また,ラウンドごとに数体のクリープ(通常のモンスターカード)がランダムでレーンに配置されるので,どこに配置されたかで戦略も変わってくるだろう。
最初は「ボードが3枚だと考えることも3倍だな」などと思っていたが,自動攻撃という仕組み上,攻撃対象の選択は不要なので,意外にもプレイ感覚は軽快に感じられた。最初にパスをしたプレイヤーが,次のレーンで先手になるという点も,複数のレーンを跨いだ読み合いを奥深いものにしている。
そして,本作における最大の特徴は“ヒーロー”の存在だろう。ヒーローは,デッキに必ず5枚入れなければならない特殊なカードで,破壊されても1ラウンド待てば再配置可能となる。配置コストは必要なく,自由にレーンを選べるのもポイントだ。
デッキ構築時は,ヒーローを選んだ段階で「シグネチャカード」と呼ばれる3枚の固有カードが自動でデッキに組み込まれる。いずれもヒーローの特徴に合った強力なものばかりなので,デッキ構築における大きな指針となる。
ヒーローは「単に強いクリープ」というわけでなく,ゲームルールの根本部分にも関わっている。ヒーローには,ほかのカードゲームにおける“色”と同じ縛りがあるのだ
本作のカードは「赤/緑/青/黒」の4色に分かれており,手札のカードを使用するには,同じ色のヒーローがそのレーンに配置されている必要がある。要するに,逆転を狙えるカードを持っていても,そのレーンに同色のヒーローがいなければ意味がないのだ。逆に,相手のレーンに存在するヒーローのことを熟知していれば,使ってくるカードの“読み”もしやすくなる。
特定レーンにヒーローを置かずにいると,カードが使えずにマナを無駄にしてしまう。レーンを1つ開けると単純計算でマナを1/3失うことになるので,可能な限り複数レーンを保持しつつ戦いたい。
また,ヒーローの大きな特色のひとつとして,アイテムカードを装備できる点が挙げられる。アイテムは「武器」「防具」「アクセサリ」「消費」の4種類があり,消費以外のアイテムはヒーローごとに1枚ずつ装備可能だ。
アイテムは通常のデッキからはドローできず,敵のカードを破壊したときに得られる「ゴールド」を使って,各ラウンド開始前に購入できる。装備したアイテムはヒーローが破壊されても残り続けるため,投資が無駄になりにくいのも嬉しいところ。
さて,以上が本作における基本的なルールとなる。この辺りで,それぞれの色の方向性を簡単にまとめておこう。自分が使いたいデッキの方向性を決めるための参考にしてほしい。
赤 | ステータスが高く,直接戦闘を仕掛けて戦うのが得意。ヒーローを強化するスペルが非常に多いため,序盤から戦闘を繰り返すビートダウン戦法が強力。単純なステータスの暴力で攻め立てるエネルギッシュな色だ |
緑 | クリープを含む味方全体をまとめて強化しつつ,集団で攻めるのが得意。左右の味方を強化したり,味方との位置を入れ替え効果を駆使して序盤をしのげば,中盤以降に強烈なボードを作り上げられる |
青 | 直接ダメージを与えられるスペルが豊富で,ボードコントロールを得意とする。極端に低いヒーローのステータスは,スペルを使ってカバーしよう。マナ回復系のカードを一気に放出すれば,露出したエンシェントを1ターンで削り切るのも容易だ |
黒 | 攻撃に偏重したステータスを持ち,敵のカードを打ち倒すことに関しては最強の勢力。ゴールドを増やすカードも多いため,アイテムとの組み合わせで爆発的な攻撃力を発揮する。戦闘を介したタワー破壊も得意なので,序盤からガンガン攻めることも可能だ |
最初にプレイするオススメモードはカジュアルドラフト。ゲームの基礎と強力なカードを一緒に覚えよう
本作のゲームモードは,事前に構築したデッキで対戦できる「構築」と,その場でパックを開けてデッキを組み上げていく「ドラフト」(ファントムドラフト/取りきりドラフト)の2種類が存在する。
それぞれのゲームモードには,無料で楽しめる「カジュアルプレイ」と,挑戦のためにチケットが必要な「上級プレイ」が用意されている。ただ,上級プレイのチケットは5枚で550円とリアルマネーの投資が必要なので,いきなり始めるには少しハードルが高い。
ドラフトではカードパックを開けて,相手プレイヤーと順番にカードを2枚ずつ選んでいく。デッキのコンセプトを決定しうるカードは序盤に取られてしまうことが多いので,カードを選ぶ順番も重要となる
最初にプレイするモードとして筆者がオススメするのは,カジュアルプレイのドラフト戦だ。ドラフト戦ではカードパックを開け,相手プレイヤーと順番にカードを2枚ずつ選んでいくため,さまざまなカードを目にする機会が生まれる。カードを覚えつつシステムを習得するには最適なゲームモードと言えるだろう。
デッキを構築した後は,2敗するまで同一のデッキで対戦を繰り返す「ガントレット」に挑戦することになる。なお,上級プレイのガントレットでは,どのモードであっても3勝以上でリワード(報酬)が入手でき,4勝以上でカードパックが獲得可能だ。
果たして「Artifactは高い」は本当か? Steamコミュニティマーケットを活用した売買システムとデッキ構築価格をチェック
カジュアルプレイのドラフト戦で,安定してゲームが楽しめるようになった頃には,デッキ構築の基礎も同時に掴めてくる。そうしたら,オリジナルデッキの構築にチャレンジしてみよう。
ただ,「カードパック買って,引いたカードを使おう!」という方向へ進むのはちょっと待ってほしい。本作には,Steamウォレットを使ってプレイヤー間で直接カードの売買をするシステムが備わっている。要するに,必要なカードを個別で購入できるのだ。
正直,筆者も最初は「カードの個別購入って高くつくんじゃないの?」と思っていたが,その内実は驚くほどに安い。というのも,本作のカードのレアリティは「コモン/アンコモン/レア」の3種類しか存在せず,レアはカードパック1袋につき必ず1枚が封入されるため,そもそもレアカード自体の希少性が低いのだ。ヒーローのレアカードは入手が難しいものの,それでも1000円前後で済み,かつヒーローカードは1枚で役割をこなしてくれる。
もちろん,自分が引き当てたカードを出品することも可能だ。コモンの安いカードは,リサイクル機能を使ってチケットに変換し,アンコモン以上のカードは出品する形を取れば,かなり安くカードを揃えられるだろう。
ただ,本作の課金システムはプレイヤーの間で賛否両論な意見が出ている。確かに構築戦に挑む場合は初期投資は必要になるが,最前線に立つための価格は他の同系作品と比較して圧倒的に安い。クライアント代についても,スターターデッキとカードパック10袋に加えてチケットも含まれており,価格以上の封入物であると筆者は感じた。
非常にぶっちゃけた話をするが,筆者はだいたい2万円ほどで,環境に存在するほとんどのデッキを構築できた。単に強いデッキをひとつ完成させるだけなら5000円も掛からないだろう。リアルorデジタルを問わず,TCGをプレイしている人であれば,これがかなり安いことが分かるはずだ。
カードパック「戦闘準備」での環境の強力なヒーローと,その戦略をピックアップ
最後に,最初にリリースされたカードパック「戦闘準備」環境における強力なヒーローを中心として,それらを取り巻くカードと戦略を紹介していこう。これからドラフトに挑みたい人や,デッキ構築したい人の参考になれば幸いだ。
本作はランダム要素も非常に多く,これまで存在したあらゆるカードゲームとも異なる特殊なタイトルだ。1プレイも長く,お世辞にもライトユーザー向けとは言い難い。
しかしながら,レーンごとに配置されるヒーローやリソース投入タイミングの読み合いや,「カードを使わないという判断」への重み付けによって,本作は圧倒的な独自性を獲得している。
今後はスマートフォン版のリリースも予定されているので,興味を持ったゲーマーはぜひプレイしてみてほしい。
「Artifact」公式サイト
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