プレイレポート
リズム×アクションアドベンチャー「No Straight Roads」プレイレポート。目で見るな,耳と身体で感じろ!
METRONOMIKは,「FINAL FANTASY XV」のリードゲームデザイナーを務めたWan Hazmer(ワン・ハズメー)氏と「ストリートファイターV」のコンセプトアーティストであったDaim Dziauddin(ダイム・ゼィアウディン)氏が中心となって立ち上げたデベロッパだ。
淡々とステージのハイスコアクリアを目指すのではなく,主人公を中心としたユニークなキャラたちによって繰り広げられるストーリ仕立てになっている「No Straight Roads」。日本語版では,主人公キャラに豪華声優陣によるフルボイスも用意されるなど,ローカライズにも力が入っている。
本稿では,PC向けの製品版とほぼ同等のバージョンをプレイできたので,その感触をお伝えしよう。
※記事にはネタバレが含まれるので,まだクリアしていない人やこれからプレイする人は,その点を了承のうえで読み進めてほしい
音楽が電力に変換される世界で繰り広げられる
EDMとロックのバトルストーリー
本作の舞台となるのは,主人公たちが生活するビニールシティ。そこは巨大なEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)レーベル「NSR」に支配されている。いくら巨大とはいえ,いち音楽レーベルが街を支配できている理由は,この世界が「電力が音楽から生成される」という,なんとも夢のあるシステムで支えられているから。NSRの力によって音楽が効率よくエネルギーに変換できるようになったために,ビニールシティは豊かな街へと生まれ変わったようである。
主人公となるギタリストのメイデイ(CV:佐倉綾音さん)とドラマーのズーク(CV:福山潤さん)はインディーロックデュオ「バンク・ベッド・ジャンクション」のメンバーだ。
ロックとビニールシティへの愛にあふれたこの2人組が,NSRの主催するオーディションに参加するところから物語はスタートする。2人とも確かな手応えが得たものの,結果はまさかの落選。
審査員からのロックに対する強い否定に肩を落としながら帰途につく2人だったが,道すがらNSRの審査の不正とシティに対する裏切りを目にすることに。EDMに支配されたシティに音楽の自由を取り戻そうと,ロックミュージックを武器に巨大組織NSRに立ち向かっていくことになるのだ。
クリアのカギは注意深く「聴く」こと
ビートに乗ったアクションでステージをジャック
勝負はもちろん普通の戦闘ではなく「音楽で!」となるわけだが,「No Straight Roads」のバトルは,いわゆる音ゲーとは大きく異なった作りになっている。
それもそのはず,開発陣は本作について「DARK SOULS」シリーズにインスパイアされたことを明かしていて,ベースになっているのは三人称視点3Dアクションだ。
非常に個性的なボスキャラと,そのボスの個性を映し出したステージから繰り出される攻撃をジャンプやドッジロール(ローリング)で避けたり,合間を縫ってプロップ(小道具)を起動して攻撃したり,特殊攻撃をパリィで弾き返したり,といった感じで戦っていくスタイルになっている。
ただの三人称視点3Dアクションではなく,バトルを「No Straight Roads」たらしめているのが“ビート”というスパイスだ。ビニールシティでは,すべてが音と一体化していて,それは敵だけでなくプレイヤーのアクションにも当てはまる。そして,その音こそが,本作のバトルを有利に運んでいくためのカギとなっているのである。
大抵の3Dアクションゲームの場合,防御すべきか,攻撃すべきかを判断するには,敵のモーションやエフェクトをよく見ることが必要だ。「No Straight Roads」の場合は,それに加えて,注意深く“聴く”ことも重要になる。
見た目にも予測しやすいモーションをとってくれる敵が多い序盤はまだいいものの,極彩色のステージの中,見ているだけでは分かりにくい,気付きにくい攻撃が次第に増えてくる。また,移動するオブジェクトに飛び移るときも,動きだけを見ているとタイミングが掴みづらい場合がある。
そんなときにプレイヤーにとって頼れる武器になるのが聴覚。多様なステージトラックのビートに合わせてアクションボタンを押すことが,基本の移動や攻撃,効率的・効果的な回避や反撃につながっていくのだ。
クリア後に広がる遊びの要素:A面
拠点アンロックでプレイがより快適に
本作には,ボスを倒していくことで,徐々にアンロックされていくコンテンツもある。各ステージのバトルは,たとえ負けてしまっても,そのままコンティニューが可能なため(代わりにスコアランクは低くなる),メインストーリーをクリアすること自体はさほど難しくはないだろう。むしろアンロックされてからが本番とでも言わんばかりのカジュアルさだ。
最初のボスステージをクリアすると開放されるのは,下水道にあるメイデイとズークのホーム。戦利品を飾ったりできる「リラックスルーム」,敵の情報が分かる「地下戦略室」,バフやスペシャルムーブなどを管理できる「ズークのワークショップ」,スキルツリーを調整できる「地下ライブハウス」,ファンを増やすための「海賊放送スタジオ」,などといった部屋が,段階を追って開かれていく。
スキルツリーとファンついて,もう少し詳しく説明しよう。
シングルプレイでは,キャラを切り替えながらストーリーやバトルを進めることができる。休憩中のキャラはHPが回復していくため,体力が心許なくなってきたら,もう一方のキャラに切り替えるといった戦い方が基本になるのだが,慣れてきたら場面によってキャラを使い分けるのもいい。というのも,元気なギタリストのメイデイ,冷静なドラマーのズークというキャラ設定が,それぞれの持つスキルツリーにも生かされているからだ。
メイデイは重い一撃を放つアタッカー。ズークは攻撃力こそメイデイに劣るものの,素早い打ち込みとキャンセルも可能なコンボの達人という特性を持つ。「地下ライブハウス」では,そんな特性に基づいた各々のスキルを伸ばしていける。例えば,メイデイなら強力な攻撃が出やすくなり,ズークならコンボの数が増えていく,といった具合だ。トラックに合わせて,どのキャラを使うとどんなビートにノリやすいのか探ってみるのも,自分の得手不得手の傾向が分かって面白いかもしれない。
これらのスキルツリーの拡張に必要なのが,ファンのパワーだ。ファンの数は,NSRの目を忍んで海賊放送に出演したり,シティで不具合が起こっているマシンにミニクワサと呼ばれるエネルギー源(電池のようなもの)を供給したりすることでも増えていくが,手っ取り早く増やすなら,より高いスコアでステージをクリアするのがいい。
なので,クリア済みのステージでも,新しいスキルを開放したり試したりと,快適なプレイを求めて繰り返し挑んでしまいたくなるはずだ。満足のいかないスコアでクリアしてしまったボスならなおさらだろう。
クリア後に広がる遊びの要素:B面
難度と組み合わせて繰り返し楽しめるアレンジトラック
「ロックでEDMに革命を起こす」
そのテーマを見たとき,ロックもEDMも好きな筆者としては,どちらかのジャンルに優劣をつけるような要素が作品内で出てくるのではないかと,少し構えてプレイを始めてしまった。しかし,その点において本作は,うまくバランスをとっていると感じた。
EDM陣営のボスは,これまでスクリーンショットで紹介してきたように,主人公たち以上に個性的で憎めないキャラばかりだし,彼らのステージトラックは普通にかっこいい。面白いのは,バトル中にトラックのミックスが自然にシフトするところだ。開始直後はEDM調だったトラックが,プレイヤー側が要所でアクションを起こすとアクセントとしてギター音が上乗せされたり,バトルの状況によってトラック自体がシームレスにロック調へと変化したりするのである。
著名なコンポーザーたちによって生み出され,オーディオと名のつく幾つかのアワードを獲得している本作のステージトラックは,ディスコ,キュートコア,ラップ,ネオクラシカル,ファンキーハウス,サイケデリックダブなどといったジャンルが揃っている。そのどれもが,EDMミックスになっても,ロックミックスになっても心地良く,いい意味で耳に残るサウンドばかり。
クリア後は,各種難度と組み合わせてミックス選択もできるようになっており,そこには作り手側のトラックへの自信と,徐々に開放されていくスキルをあれこれセットしながら,さまざまなモードで繰り返し遊んでほしいという想いが見え隠れする。そして,ついついプレイしてみたいという衝動に駆られてしまったのなら,それはきっと「No Straight Roads」にハマってしまったということなのだ。
気になる人は,SpotifyやAWAにて,ミニ・オリジナル・サウンドトラックが公開されているので,この機会にぜひ聴いてほしい。筆者もヘビロテ中だ。
そしてもう1つサプライズで、NSRのミニ・オリジナル・サウンドトラックも公開スタートしました!日本ですとSpotify, AWAでチェックできますのでぜひ聴いてくださいね♪
— No Straight Roads 日本語公式|PS4、Switch、PC、XboxOneで発売中 (@NSR_JP) June 29, 2020
Spotifyはこちら: https://t.co/ATltsSHZPS pic.twitter.com/so9NIY7hwj
「No Straight Roads」を,プレイヤーが主体となって演奏する一般的な音ゲーとしてプレイしてしまうと,求めていた爽快感ではないこと,ややクセのある操作タイミング,パッと見では分かりにくい映像表現などに違和感や戸惑いを覚えてしまうかもしれない。
でも,その感覚は恐らく正しく,ある意味で開発者たちが意図するところだろう。ストーリー,ビートアクション,ユニークなキャラとサウンドを融合させた本作が目指したのは,これまでにない体験だ。
ハイスピードで流れてくるノーツにシビアなタイミングで向き合うスタイルになりがちな音ゲーとは切り離された世界。万人がビートに身体を委ねられるようなジャンルを新たに生み出そうと模索する姿が,そこからはうかがえた。
本作をプレイすると,普段いかに目に頼ってゲームをしていたか,ということにもまた気付くはず。たまには意識の大半を「耳」に傾け,ときには全身でビートを感じながらゲームを楽しむという感覚も,またいいものである。
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No Straight Roads(C)2020 Metronomik SDN. BHD. Published by Sold Out Sales and Marketing. "No Straight Roads" is a registered trademark of Metronomik SDN. BHD., Malaysia. All rights reserved.
(C)2020 METRONOMIK SDN. BHD., All Rights Reserved. Published by Game Source Entertainment in Japan and Asia.
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