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レトロンバーガー Order 66:逃げるは恥だが「アレックスキッドのミラクルワールド」のリメイク作でスタコラサッサ編
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印刷2021/07/17 00:00

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レトロンバーガー Order 66:逃げるは恥だが「アレックスキッドのミラクルワールド」のリメイク作でスタコラサッサ編

画像集#001のサムネイル/レトロンバーガー Order 66:逃げるは恥だが「アレックスキッドのミラクルワールド」のリメイク作でスタコラサッサ編

「逃げるは恥だが役に立つ」

 2016年に同名のTVドラマがヒットしたことで有名になったフレーズですね。大元はハンガリーのことわざ「Szégyen a futás, de hasznos」だそうです。

 シューティングゲームにありがち(とくにタイトー)な“退路のない戦い”だったら逃避=敗北ですが,戦略的勝利を得る過程では,どこかで戦術的敗北を喫するシーンが発生するものです。逆に局地的な戦術的勝利に執心していると,得られるはずの戦略的勝利すら逃してしまいます。

 皆さんもゲームをプレイしている中で,戦術的敗北をもって戦略的勝利を得たことは大なり小なりあるでしょう。被弾時のノックバックを利用して壁抜けをしたりわざと死ぬことで内部ランクを下げたりヨッシーを足蹴にして崖を越えたり生活を犠牲にしてガチャを天井まで回したり。まあ,最後のは勝ってるんだか負けてるんだかビミョーなところですが。

 そのように,ときには逃げ出すことも重要です。よく「逃げ出さずに頑張れ」みたいなことを言う人がいますが,「逃げて頑張る」という選択肢もあるわけです。そう,スタコラ! スタコラ! スタコラサッサ! 強ーいぞー! 負けーるなー! というわけで,今回は「Alex Kidd in Miracle World DX」PC / PS5 / PS4 / Nintendo Switch / Xbox One)でやっていきましょう。なお取り上げるのはSteamで販売されているPC版です。


 ちなみに「スタコラサッサ」とか「強いぞ負けるな」とかはBGMに付けられた歌詞で,サウンドトラック「アレックスキッド コンプリートアルバム」(デジタル版はVol.2)に収録されたバージョンの「アレックスキッドのうた」では,光吉猛修氏がバリバリ歌っていたりします。



ぼ,ぼくはおにぎりが好きなんだな 


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 2021年6月22〜24日にSteamなどの各プラットフォームでダウンロード版が発売された(国内向けPS5 / PS4 / Nintendo Switchパッケージ版は8月26日に発売予定)「Alex Kidd in Miracle World DX」は,1986年にセガ・エンタープライゼス(当時)から発売されたセガ・マークIII用ソフト「アレックスキッドのミラクルワールド」をリメイクしたもの。グラフィックスは全面的にモダナイズされていますが,基本的なゲームシステムやレベルデザインは原作を継承していて,例えばザコ敵は戦っても別段うまみが無いためスタコラサッサと走り去るのが最適解だったりします。

 発売元はイギリスのMerge Gamesで,開発元はスペインのJankenteam。もともとゲームデザイナーのJose Sanz氏とアーティストのHector Toro氏によって同人ゲーム的にスタートしたプロジェクトだったものの,プロデューサーのRamon Nafria氏の勧めによってセガからライセンスを取得した正規プロダクトとして開発することになったそうです。

 アレク(アレックスキッドの略称)はスーパーマリオの対抗馬となるべく作られたキャラクターですが,そのシリーズ展開はうまく行かず,人気は限定的なものに留まりました。1990年代以降はIP活用もほぼ無く,「セガと言ったらソニック,バーチャ,サクラ!」みたいな1990年代がセガ原体験の筆者としては,ドリームキャスト用ソフト「セガガガ」で初めてアレクの存在を知ったくらいです。ちなみにスペインでは「Alex Kidd in Miracle World」を内蔵した「Sega Master System II」(欧米で発売された廉価版マスターシステム)が好調なセールスを記録したため,アレックスキッドの認知度が高いのだとか。スペインでアレクが復活したのには,そんな背景もあります。

ゲーム内のコレクション要素としてもSega Master System IIが登場。世界で最も素晴らしいゲーム機!
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その他,「アストロシティミニ」に収録された鬼畜難度ゲー「アレックスキッド with ステラ ザ・ロストスターズ」や,アレクの兄・イグルが主人公の「不思議のお城ピットポット」に視線を向けた要素も
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 ボタン配置は,Xboxコントローラで言うと[A]ボタンでジャンプ,[B]ボタンでパンチ,[Y]ボタンでメニューオープン。オサール・コウタ氏(現在は「アイチュウ」シリーズなどを企画・運営をしているリベル・エンタテインメントの代表取締役社長である林田浩太郎氏)が2002年にセガのインタビューで語ったところでは,「差別化するためジャンプとアクションのボタン配置をマリオに対して逆にした」(大意)そうですが,「Alex Kidd in Miracle World DX」では“下のボタンでジャンプ”というデファクトスタンダードに沿った形式となっています。

 また,同インタビューの最後でオサール氏は「リメイクでも新作と変わらないものになるでしょう」と述べていますが,19年後に“本当にそうなった”というのは面白いというか感心するというか,唸らされる部分です。ケイン・コスギさんを主演に迎えたリアル路線での新作という話もされていますが,最近のコスギさんはeスポーツ界で活躍されていますので,こちらも実際ワンチャンあるかもしれませんね。……あ,今のはテキトー言った。

 グラフィックスはモダナイズされていますが,ワンボタン(標準は[R]トリガー)でドット絵に切り替えることが可能。DotEmuから2017年に発売された「WONDER BOY: THE DRAGON’S TRAP」(マスターシステム用ソフト「モンスターワールドII ドラゴンの罠」のリメイク)でも同様のシステムが採用されていましたが,その時々の気分でスキンを手軽に変えられるのは,何気に楽しい要素です。

ワンボタンで随時切り替え可能なグラフィックス
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こちらの画像は「WONDER BOY: THE DRAGON’S TRAP」のもの
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 ただ,先述の通り「Alex Kidd in Miracle World DX」はスペインで開発されてイギリスのパブリッシャが販売しているものなので,ヨーロッパのテイストを強く受けて変更された部分があります。

 アレクの好物に,スペインオムレツフィッシュアンドチップスが追加されているのです。

 アレクの好物と言えばおにぎりです。それが海外ローカライズにあたってハンバーガーに変更されたのも有名な話です。そこへさらに,開発元のソウルフード・スペインオムレツ(一般的にはスパニッシュオムレツとかトルティージャとか呼ばれますね)と,イギリスのソウルフード・フィッシュアンドチップスが追加されたわけです。

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おにぎりを食べます
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ハンバーガーも食べます
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今日の気分はフィッシュアンドチップス?
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湯気が出ているスペインオムレツ

 ポーズメニューから選択できるコンフィグ項目の最上段には「食事」の項目があります。ここで,おにぎり/ハンバーガー/スペインオムレツ/フィッシュアンドチップスの中からプレイヤーの好きな食べ物を選択すると,取得によってステージクリアとなるアイテムや,幕間のイラストに反映されます。ゲーム的にはまったく意味の無い要素ですが,最新おにぎりゲーム「天穂のサクナヒメ」の“持ち上げていると伸びる猫”などのように,そういう部分に労力を注ぐデベロッパは信用できると相場が決まっています。

こういう「キャラクターに遮られる光」とかの芸コマ,良いですよね
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おにぎり食べるのーっ!


 「アレックスキッドのミラクルワールド」と言えば,Nintendo Switch向けにセガから「SEGA AGES アレックスキッドのミラクルワールド」も発売されています。Nintendo Switchだとリメイクと新要素を追加しての現行機移植,2種類のモダナイズ版を楽しめるわけです。


 「〜DX」と「SEGA AGES〜」を遊び比べてみると,例えば“演出の強化”に関しては「〜DX」だと「道中に会話可能なモブキャラを配置」,「SEGA AGES〜」だと「ステージ開始時のイベント絵を追加」。“サウンドの強化”に関しては「〜DX」だと「カントリーミュージック調のアレンジBGM」,「SEGA AGES〜」だと「FM音源への対応」。“難度の緩和”に関しては「〜DX」だと「ライフ無限の設定が可能」,「SEGA AGES〜」だと「リワインド機能の設定が可能」……など,「ゲームデザインに対するアプローチの違い」を感じられて面白かったりもしますね。

 それにしても,かつて“対スーパーマリオ”を目指して開発されたアレックスキッドのモダナイズ版が,Nintendo Switch向けにリリースされているのは面白い現象です。そう言えばNintendo Switch用ソフトに,また別の「スーパーマリオの対抗馬」だったものがありますね。THQ Nordic Japanから発売されている「ギアナシスターズ: ツイストドリームズ - オウルティメイト エディション」です。


 「ギアナシスターズ: ツイストドリームズ - オウルティメイト エディション」は,ざっくり言うと1987年にドイツのRainbow Artsから発売されたCommodore 64用ソフト「The Great Giana Sisters」をリメイク(と言うか,根幹的な部分を継承しつつ全面的に再構築)したもの。そして「The Great Giana Sisters」は,これまたざっくり述べますが,「スーパーマリオブラザーズをモロパクしたので任天堂から警告を受けて,それにより自主回収&発売停止したけど違法コピーでめっちゃ流通してカルト的人気タイトルになった」というタイトルです。ちなみに「訴訟によって販売差し止めとなった」という都市伝説がありますが,ドイツのWebメディア・digitalista.de(閉鎖済)が開発者・Chris Hülsbeck氏にインタビューした2015年の記事によると,イギリス版の発売にあたって現地パブリッシャと契約し,同パブリッシャが「Move over brothers, here come the Giana Sisters!」というキャッチコピーを付けたパッケージ画像を公開した後,任天堂から書面での警告が届いたので先述の対処を行ったそうです。

 その他,シティコネクションから発売されている「忍者じゃじゃ丸 コレクション」に収録の「じゃじゃ丸の大冒険」も“対スーパーマリオ”の意識が強く感じられるタイトルですね。「ギアナシスターズ〜」にしろ「忍者じゃじゃ丸 コレクション」にしろ他プラットフォームでも販売されていますが,「アレックスキッド」シリーズおよび何らかの「スーパーマリオ」タイトルと一緒にNintendo Switchにインストールして,「うわー,ひとつのハードにマリオ兄弟とアレックス&イグル兄弟とギアナ姉妹とじゃじゃ丸くんが入っとるわ……。じゃじゃ丸くんの兄ちゃんの『忍者くん』もアケアカのやつ入れたろ……」となってみるのもオツではないでしょうか。


ツナマヨ!


 Nafria氏はアレックスキッドが大好きなので「Alex Kidd in Miracle World DX」に携わったそうですが,英語圏向けゲームメディア・Nintendo Lifeによるインタビューで述べたところでは,「ファンタジーゾーン」「忍-SHONOBI-」も同じくらい好きなのだとか。

 近年,ソニックが好きすぎるオーストラリア人デベロッパをメインプログラマーとして「ソニックマニア」が開発されたり,4月22日に発売された「ワンダーボーイ アーシャ・イン・モンスターワールド」など「ワンダーボーイ」シリーズが軒並みリメイクされたり,ポーランドのMegaPixel Studioが「パンツァードラグーン ツヴァイ」「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」のリメイク版を開発だったり,ワイルドマンが「パンツァードラグーン Voyage Record」開発中だったり,何よりセガ自身がIPを精査してリメイク/リマスター/リブートを展開する意向だと公表しています。 

セガサミーホールディングスによる2021年3月期の決算プレゼンテーション資料より
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 今後,「セガファンのデベロッパによるセガIPのリメイク」というのは,ますます出てくるようになるかもしれませんね。筆者は「昔,某自販機のシステムをちょっとだけ作ってた。Javaで」くらいの開発能力なので「俺に作らせろ」とはとても言えませんが,誰かに作らせられるだけの資金力がもしあったら,「ダイナマイト刑事」をバカゲー感マシマシでリメイクしたいところです。つきましては,無償で油田の権利をお譲りいただける方をお待ちしております。

 あと「プリクラ大作戦」とか「ブレイゾン」とか「ポラックス」とかのアトラス発売シューティングのリマスターが見てみたいですね。ポラックスは単に怖いもの見たさですけど。あと最近流行ってるメカ少女でバーチャロン。賛否がバッツリ分かれるやつ。どう……どう?
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