プレイレポート
[プレイレポ]ファイナルファンタジー最新作「FF16」,本日リリース。世界が注目するナンバリング新作は「FF」の可能性を拓くことに成功した
果たして,本作は新たな「FF」の可能性を拓くことができたのか。先に結論から言えば,これは見事に成功したと言っていい。
本稿では,発売前にスクウェア・エニックスより提供を受けたレビュービルドによるプレイレポートをお届けする。なお,レビュービルドはPS5版,パフォーマンスモードでプレイしている。また,同社の要請により,今回の掲載時点では,全体の約1/4までのシナリオに言及している。
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戦乱の世界で描かれる成長の物語
「FF16」の物語の舞台は,2つの大陸に広がる「ヴァリスゼア」。この大地には「マザークリスタル」と呼ばれる巨大な魔力を込めた結晶が存在し,人々はこれらを生活の基盤にしながら,大小さまざまな国に分かれて生活をしていた。
しかし,ある時から「黒の一帯」と呼ばれる淀みが大陸を蝕み始める。黒の一帯に蝕まれた大地には草木が育たず,それに伴い動植物,魔物,人間も住むこともできなくなる。徐々に食糧や住居が減少し,かつて平和だった国同士も残された資源を巡り,「ドミナント」と呼ばれる超人を使った戦争を余儀なくされていく。
戦乱へと向かうヴェリスゼアの北方,「ロザリア公国」に生まれた第一王子「クライヴ・ロズフィールド」。彼もまた戦乱からは逃れることができず,やがて,ヴァリスゼアにおける恐るべき真実と向き合うことになる──。
このあらすじから分かるとおり,「FF16」の舞台はクリスタル,魔法,魔物などが存在する幻想的な世界でありながら,一方でそこに住む人々はそれぞれ国や社会を築き,対立も起こしている。人間社会のリアリティも描く,ハイ・ファンタジー作品である。
また,その裏で「ベアラー」と呼ばれる人種に対する差別が横行したり,大国による小国の搾取が存在したりして,世界観はなかなかに重苦しい。
当然,そこで生きる主人公クライヴの人生も一筋縄ではいかない。生まれこそ王子であるものの,物語が始まるとすぐに紛争へ巻き込まれ,大国の捕虜として生きていく。その後も人々の死や,残酷な世界と向き合いながら,果たして自分の正義とは何か。また,その正義を貫くことができるのかを問われる。
ただ,そうした過酷な人生の中でも,クライヴは試練を乗り越え,成長していく王子の資質も兼ね備えており,ただ絶望に打ちのめされ続ける物語でもない。
そのため,「FF16」の世界や物語には一定のリアリティ・ラインが通底しているものの,それはただ漠然と露悪的なわけでなく,むしろ芯にはある種の人間賛歌がある。中でもクライヴ,その仲間たちは,何度も苦難にぶつかり,打ちひしがれても,そのたびに立ち上がり,この暗い世界に光を取り戻そうともがく。この点では本作は貴種流離譚と言えるだろう。比較的,感情移入のしやすい物語として,しっかりと調整されている。
「FF16」の物語は,実のところ「FF」シリーズが描いてきた物語を踏襲している。例えば「ファイナルファンタジーIV」は,王国軍に属する主人公が(故意でなく)村人たちを惨殺する衝撃的なオープニングから始まりながらも,その罪と向き合い,パラディンとなることで暗黒と対峙していく物語だった。このように「FF」は過酷な世界で主人公が成長する過程を描いており,この点から「FF16」は新たな「FF」としてファンも納得できる物語となっているはずだ。
美しいアニメーションとエフェクトに酔いしれる爽快アクション
次はゲームプレイだ。本作のゲームプレイを評価するうえでのポイントは「選択と集中」にある。多くの面で従来の「FF」シリーズにあった要素を「集中」し,一方で「FFらしい体験」を現代のトレンドで再構築するには何が必要かを「選択」している。
最初に注目してほしいのは,本作の戦闘部分を完全なアクションゲームとして構築していることだ。
言わずもがな,「FF」シリーズの戦闘はコマンドバトルが基礎にあった。作品によってはターン制からアクティブタイムバトルになったり,ガンビットやオプティマと呼ばれるシステムが導入されたりする変化があっても,やはりベースはコマンドバトル。アクション要素が導入された前作「FINAL FANTASY XV」では,仲間に対してはコマンドの指示ができたし,「FINAL FANTASY VII REMAKE」でも「ウェイトモード」で間接的にコマンドバトルを再現できる。「FFらしさ=コマンド」と開発側が認識していることは疑いようがない。
対して「FF16」はコマンドバトルではなく,リアルタイムのアクションRPGとして構築されている。まず操作できるのは原則的にクライヴのみ,仲間のメンバーはほぼ自動で行動する(相棒「トルガル」のみ,非常に簡単な命令ができるが,基本的には自動で戦ってくれる)。さらに仲間は適宜入れ替わり,クライヴ1人で戦う場面も少なくない。こうした特徴から,仲間にコマンドを出し,協力して戦うという従来の「FFらしさ」は一見すると控えめだ。
その分,「FF16」はアクションゲームとしての完成度が非常に高い。基本的にクライヴは剣と魔法を使いこなせるうえ,さらに「召喚獣」の力を一時的に借りる召喚獣アクションも使える。この3種のアクションはコンボも可能で,とくに召喚獣アクションは大技らしく爽快感もある。
また,防御手段としては回避が存在するのだが,敵の攻撃に応じてタイミングよく回避すると「プレシジョン・ドッジ」と呼ばれる技に派生する。敵の動きをよく観察し,リスクを覚悟で回避のタイミングを合わせるなどの駆け引きも生じるのだ。
中でも特徴的なシステムの「ウィル」は,HPとは別に用意された黄色いゲージで表示され,ダメージが蓄積すると少しずつ減っていく。そして,0になると一時的に「テイクダウン状態」となって動きを止め,敵に与えるダメージも増加する。これは「ファイナルファンタジーXIII」の「チェーンゲージ」を,「SEKIRO」(フロム・ソフトウェア)の「体幹ゲージ」的に再解釈したような塩梅で,戦闘にメリハリが生まれ,ウィル削りに特化した技の選択肢が増えるといった,「FF16」の戦闘を一層奥深いものにしている。
もっとも,こうしたシステム自体は特別新しいものではない。しかし,全体的なバランス,自由度,一体感といった点で,既存の傑作に匹敵するほど完成度が高い。バランスという点では,無用になりがちな遠距離攻撃を近接のコンボに組み合わせた「マジック・バースト」に派生させるなど,どの技にも一定の実用性がある。
また,召喚獣アクションが多数あり,これらを付け替えて新たなコンボを作り出せる可能性は自由度につながっている。
そして何より,筆者が近接アクションゲームに大切だと考えているのが一体感だ。実際にプレイヤーが入力したコマンドが,仮想世界の主人公の行動としていかに直観的かつ大胆に出力されるか。これによって生じる一体感こそ,アクションゲームの醍醐味だと考える。
この点も「FF16」は優れており,斬る・放つ・避けるといったあらゆる動作に一定の手ごたえと爽快感があり,プレイヤーの入力とクライヴの出力がシンクロする歓びに満ちている。この背景には,主人公のアニメーションが本当によく練られている点が挙げられるだろう。ただ剣を振るだけの動作も,おそらく何十,何百とリテイクしたのではと思うほどだ。
さらに,アクションの一体感を支えるのが美しいエフェクトだ。主人公の召喚獣アクションでは,炎や風,雷といったエフェクトが画面いっぱいに炸裂し,一方,強敵の攻撃も派手なエフェクトで一目で脅威だと分かるように描写される。先ほど,本作は仲間と共闘する場面が少ないと述べたが,このエフェクトのおかげで仲間の攻撃や回復も一目で判別でき,ピュアな近接アクションゲームでありながら,「FFらしさ」である「共闘感」は十分発揮されている。
なお,戦闘が苦手な人向けに「ストーリーフォーカスモード」と「オート系指輪」が用意されている。これは,「NieR」シリーズの「EASY」と「オート系チップ」に該当するもので,これらを併用すると戦闘を半自動的に攻略することが可能になる。そのため,アクションゲーム(3Dゲーム)が苦手だという人もストーリーを楽しむことはできるだろう。
簡略化されているが,必要十分な成長要素
このように,「FF16」の戦闘はコマンドを排しつつも,純粋な近接アクションゲームとして「選択と集中」をもって完成させている。では,RPGの醍醐味である成長要素はどうか。実はこちらも,「選択と集中」がかなりはっきりと行われている。
そもそもRPGにおける成長は,人的資源(レベル,スキル等)と物的資源(アイテム,ギル等)に大きく分かれるが,本作ではどちらもかなり簡略化されている。
まず人的資源という点では,本作は戦闘やクエストで経験値を獲得し,それによってレベルアップする。ここまでは従来の作品と同じだが,ステータスはほぼ一律,自動で上昇し,スキルも戦闘時に用いるアクティブスキルを増やすもので,例えば「体力を10%増やす」といったパッシブスキルはほぼ存在しない。
さらに物的資源という点でも,そもそも装備のスロットは「武器,防具,指輪」の3種しかなく,しかも主人公1人分だけ調達すればいいため,かなり負担が少ない。アイテムにしても,ポーションはゲームオーバー時に自動で補給され,他の消耗品もすぐに買えるという塩梅だ。
本作はRPGにおける「成長=資源を調達して分配する過程」を,かなり簡略化している。これは古典的なRPGを求める人にはやや物足りなくなるかもしれないが,どちらかといえば,ドラマチックなカットシーンとハイクオリティなアクションのテンポを落とさず,そこに「集中」してほしい意図と解釈すべきだろう。
また,本作には「リスキーモブ」と呼ばれる強敵,2周目から選べる「ファイナルファンタジーチャレンジ」と呼ばれる高難度モードが用意されているため,こちらで存分にやり込むことが可能だ。
総じて,「FF16」はアクションにせよ,成長にせよ,大胆な「選択と集中」を行うことで鮮やかなゲームプレイを構築できている。従来の「FF」のシステムに過度にとらわれることなく,そこで楽しむ仲間との共闘感,苦難を乗り越えた達成感を,現代的な近接アクションゲームとそれを拡張する成長要素に「選択」している。そこにアニメーションやエフェクトといった開発のリソースを「集中」的に注ぐことで,長時間プレイしても飽きない奥深さが生じているのだ。
「ファイナルファンタジー」の名にふさわしいクオリティ
冒頭で触れたとおり,今回は全体の約1/4までのシナリオに限られるため,「FF16」の世界やストーリー,ゲームプレイの踏み込んだ内容には触れられなかったが,それでも「FF16」の魅力は伝わったかと思う。
過酷ながらも成長が軸にあるストーリー,研ぎ澄まされたアクションの戦闘,物語と戦闘を補佐する必要十分な成長要素。本作は「FFらしさ」を現代的な形で再解釈して見事に落とし込んでおり,従来のファンから新しいゲーマーまでどちらも楽しめるポテンシャルを持っている。
なお,本作の体験版が公開されており,それだけでもストーリーと戦闘に十分踏み込んだ内容となっている。もし購入を迷っている方は,ぜひ参考にしてみてほしい。
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