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印刷2021/07/07 12:54

プレイレポート

「風雨来記4」プレイレポート。実写の360度ビューを導入した旅アドベンチャー最新作の舞台は岐阜。“日本の真ん中”の魅力をツーリングで体験

 日本一ソフトウェアは,アドベンチャーゲーム「風雨来記(ふうらいき)4」PS4/Switch)を2021年7月8日に発売する。
 フォグが2001年にPlayStationにて発売した「風雨来記」シリーズの最新作であり,「風雨来記3」のPlayStation Vita版からは日本一ソフトウェアとの共同開発作品としてリリースされている。
 主人公がバイクに乗って旅をする舞台を実写の写真や映像で描写し,実在するスポットを訪れる「旅アドベンチャー」というジャンルが冠されたこのシリーズ。最新作では,撮影に360度カメラが導入され,バイクでのツーリングシーンや立ち寄るスポットを全天球の360度視点で楽しめるようになっている。
 本稿では,据置ゲーム機のシリーズとしては16年ぶりの発売となる本作のプレイレポートをお届けしていきたい。今回プレイしたのはPlayStation 4版で,ボタン表記などはそちらに準じている。

画像集#001のサムネイル/「風雨来記4」プレイレポート。実写の360度ビューを導入した旅アドベンチャー最新作の舞台は岐阜。“日本の真ん中”の魅力をツーリングで体験


全天球の360度視点で,岐阜の魅力に触れられる


 筆者は,実はこれまで本シリーズのプレイ経験がない。本作の魅力の一つである恋愛アドベンチャーの部分も,どちらかというとあまり得意ではないのだが,それでも今回プレイレポートの執筆を引き受けたのは単に仕事だからというだけでなく,実写による映像や写真が使われていることに強く惹かれたからだ。元々地図を眺めるのが好きで,暇があればGoogleマップのストリートビューを使ってバーチャル旅行を楽しんでいる筆者に,本作で導入された実写による全天球360度映像のシーンは,PVなどから非常に魅力的に感じられたのだ。

オープニングから実写のツーリングシーンが導入。大画面でプレイすると臨場感が増す
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移動のシーンには待望の動画を導入。しかも上下左右を360度見回せる
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 また舞台が岐阜というのも個人的に気になる点であった。岐阜は本作を発売する日本一ソフトウェアのお膝元であり,同社や「全国エンタメまつり(ぜんため)」の取材で何度か訪れたことがある。これまでのシリーズから受け継いだ“プレイすることで舞台となる場所の魅力を知ることができる”という部分に強く惹かれたわけである。
 といったところで,普段以上に前向きな姿勢でゲームプレイに挑んでいることをお伝えしておきたい。

「岐阜の名所ってどこだっけ……」という人にも,その魅力をゲームを遊びながら知ることができる
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「ぜんため」が開催される岐阜市の柳ヶ瀬商店街にも行ける。筆者も3年前に取材をしていて,懐かしさを覚えた
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 プレイヤーの分身となる主人公は,雑誌の中堅ルポライターだ。デフォルトの名前が前作の主人公と同じ「榊 千尋」であり,前作の肩書き“駆け出しルポライター”に対し,本作では“中堅ルポライター”となっていることから,同一人物とも思えるが,具体的に言及はされていない。この名前と愛称は変更も可能だ。

プレイヤー名はオプションからいつでも変更が可能だ
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 旅雑誌「ぐるり」のライターである主人公は,岐阜新聞が主催する岐阜をテーマにしたメディア対抗記事コンペ「濃飛清流コンペティション(のひコン)」にエントリーするため岐阜入りし,4週間の期限の間,バイク移動とキャンプ生活をしながら,取材した記事を現地から投稿していくことになる。
 そのオープニングから風を感じるようなバイクの1人称視点の映像が流れるわけだが,主人公は東京から中央自動車道を使い,諏訪を経由して岐阜県に入っていることが分かる。現地入りするまでの描写があるのも旅アドベンチャーらしい演出で,主人公に対する感情移入が深まる。

主人公が乗るのは「MT-10 SP」。THE KING OF MTとも呼ばれる,ヤマハのフラッグシップなリッターバイクだ。いいマシン乗ってるね……
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バイクで巡る岐阜の取材旅。360度全景のわき見運転OKのツーリングを楽しもう


 岐阜に入ってからの行動は,[□]ボタンかメニュー画面から見られる地図上に表示されたスポットへバイク移動し,その場所で取材を行い,その日の夜にキャンプ場から取材内容をWebにアップして1日が終了するという流れとなっている。移動時は画面右下に表示されたスタミナを一定量消費し,これが0になると強制的にその日の取材が終了する。もちろんスタミナをすべて消費する前に取材を終えることも可能だ。

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ゲームを始めたばかりの岐阜のマップ。黄色いポイントが取材できるスポットとなる
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画面右下にあるのがスタミナゲージ。ツーリングとスポットでの徒歩移動で少しずつ消費する
1日の終了は最寄りのキャンプ場に寝泊まり。取材記事はここからアップしていく
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 主人公はオープニングで図書館に立ち寄り,岐阜に関する知識を得ていたこともあって,モノローグや登場人物との会話がその場所に関する解説となっている。
 本作のディレクターである椎名建矢氏は,日本一ソフトウェアの「プリニーブログ」で「テレビの旅番組とかブラタ○リとか,とても面白いですよね。自分も大好きです」と話しているが,本作の取材における着眼点は,引用にある番組ばりにマニアックなところも多く,ダムや神社,農地,活断層など,一般的な観光ではあまり訪れないような場所にも行ける。こうしたスポットの情報は,本作とタイアップしている地元メディアの岐阜新聞からの情報をもとに,およそ100か所が用意されているとのことで,見て回るだけでかなり楽しかった。

矢印の方向に方向キーを押すと進める。「EXIT」や「BACK」と書かれた方向が出口方向だ
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スポット内は簡易なマップで構成されている。移動できる場所は360度全方向を見渡せる
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初めて訪れた場所では静止画のカットも入る。主人公の語りがその解説となっていることも多い
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眺めのいいスポットは癒される気がする。取材記事に使用する写真を撮ることを忘れずに
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主人公が取材するのは観光地ばかりではない。ときには社会問題に関連した場所を取材することもある

 こうした取材地への移動は,すべてバイクによって行われる。ツーリングのシーンは360度カメラの動画で撮影されていて,道路を走る10秒程度の映像が滑らかにつながって流れていく。映像はほとんどは天気のいい日に撮影をしていて,どこを走っても気持ちがよく,実際にツーリングをしているような気分にさせてくれる。
 また,このときは実際に運転しているときには不可能な,“360度全景のわき見運転”ができるのもゲームならではのポイントだ。景色のいいところではついカメラを回して眺めたくなる。

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画面上に表示されているのがルート上の次のエリア。カーソルを合わせた方向に進んでいく
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駐車場のPマークがあるのがスポット。条件が揃うと行けるようになる場所もあるようだ

 この移動に関するシステムもよくできていて,運転はもちろん自動だ。分かれ道などでは行ける方角が表示されるので,映像が流れている間に行きたい方向を選べばそちらへと進める。[OPTION]ボタンで一時停止すれば,その場でUターンも可能だ。
 ナビゲーションやファストトラベルの機能も備えていて,前者の場合は地図上の行きたい場所にマーキングをすると最短ルートが構築され,自動運転でその場所にたどり着ける。一方後者は,移動分のスタミナを消費しての直接移動で,ツーリングシーンは表示されない。ツーリングは本作の見どころの1つなので,個人的にはあまりオススメしない手段であるが,周回プレイ時など時間を短縮したいときに便利な機能となるだろう。
 なお移動中に新たなスポットを見つけられたり,同じスポットを何度か訪れると新しい発見があったりすることもある。臨機応変な行動はソロ旅の醍醐味であり,残っているスタミナと相談しながらいろいろ走ってみることをオススメする。

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スポットへのナビ機能を使うと,最短ルートで自動運転が行われる
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走行中にカメラを後方へと向けてみると,主人公の姿が映っている。360度カメラならではの映像だ

 旅の目的であるコンペの記事投稿については,それまでに訪れた場所をテーマとした記事の草案がリストアップされ,その中から選んだものが記事化され投稿できる仕組みだ。記事には取材時に撮影した写真を2枚まで添付できるようになっていて,記事内容にマッチした写真を使用することで評価が上がることもある。現地で出会うヒロインをモデルに撮った写真を使うのもOKだ。

 記事投稿のためには,取材地でとにかく写真をたくさん撮っておくことが重要なのだが,撮りすぎるとどれがどこの写真なのか整理が付かなくなる恐れもある。このあたりはゲームをプレイして感覚を掴んでいくしかない。また取材内容と写真の有効期限は3日間で,期限を過ぎると消去されてしまう。
 うまく記事を作れると,場合によってはコメントが付くこともあり,これが結構嬉しい。現在の「のひコン」のランキングも見られるので,「ぐるり」が今何位にいるのかもチェックできる。

スポットで[R1]を押すとカメラを構える。ピントはオート,セミオート,マニュアルが選択可能
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スマートフォンのスタイルでも撮影可能。こちらはオートのみ
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リストから見出しを選ぶと,記事が構築されていく。選択肢で記事内容が変わるものもある
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写真を選ぶと記事が完成してアップロードされる。ちゃんと読み物として完成するのが嬉しい
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「のひコン」のランキング。「ぐるり」だけでなく,ほかのメディアの動きも見てみよう


会わなくてもいい。会いたいときに会えない。もどかしさも感じられる,ヒロインとの邂逅


 もう1つの本作の重要要素となるヒロインについても触れておこう。筆者は,ゲーム冒頭でメインヒロインと出会って意気投合し,その後いくつかのスポットで彼女たちと再開。恋愛アドベンチャーとしての掴みを感じられたわけだが,それ以降,ちっとも会えなくなってしまった。
 どこでどのタイミングで再開できるのか条件はあるようだが,スポットが非常に多く,1日に使えるスタミナの量も決まっているため,会うために岐阜を走り回るのは限界がある。会話の中に再開のヒントがあったのかもしれないが,そのときは別段意識していなかったため,見逃してしまっていたのかもしれない。ここにきて恋愛アドベンチャーへの弱さが露呈してしまったようで,今は偶然の再会に期待するしかないようだ。

 彼女たちと再開しなくても旅を続けていける一方で,会いたいと思ったときになかなか会えないもどかしさも感じられるバランスはなかなか絶妙だ。ソロ旅をテーマにしているからこその仕様で,普段は1人でいるのが当たり前のところに,偶然(という必然)の出会いが本作のいいスパイスになっている。
 ヒロインではない人物との出会いもあり,場合によっては取材対象になることもある。

冒頭に立ち寄る諏訪湖サービスエリアで出会った柚原日陽(ゆはらひよ)。東京のOLで,ヤマハの中型バイクで岐阜を旅している
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岐阜県図書館で出会う鵜瀬 垂(うのせしづる)。郷土史,風俗史を研究する大学院生
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明るい女の子,母里ちあり(もりちあり)。筆者は一向に彼女と出会えなかった
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彼女たちは記事のモデルになってくれることもある。「のひコン」にアップする記事も映える
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スポットで出会う無名のキャラクターとの交流が,取材のネタになることも

 本作はアドベンチャーゲームとしてはややクラシカルな作りで,インタフェースなどもシンプルだ。しかし,今回本格的に導入された360度カメラによる映像や写真によって描写される岐阜の情景と膨大なテキスト量が,気になるところをすべてカバーしてくれているように思えた。360度カメラで撮影されたビジュアルが,静止画と比べるとやや解像度が低いのが少し残念ではあるが,これを高解像度にすると,ゲームの容量がとんでもないことになってしまうと思われ,ここは仕方のないところだと思う。

メッセージのスキップやセーブ/ロードのショートカットなど,アドベンチャーゲームとしてのインタフェースは過不足ないクラシカルな作り
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キャンプ中も,特別なシーンが挿入されたり,主人公の語りが毎回変わったりして退屈させない
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主人公が訪れた場所は「アルバム」モードで振り返ることができる。360度全景の写真も自由に見ることが可能だ

 実写の映像を使っていることで,現実とリンクした印象が強いのもいい感じだった。現地を訪れたことがある人には,実際に見た景色がゲームのシーンとして出てくるのは嬉しく,逆にゲームプレイ後に“聖地巡礼”をするのも楽しいだろう。また岐阜新聞やヤマハ発動機,アライヘルメットなど,実在する企業とのタイアップにより,現実感はさらに増している。

 またこの手の実写ゲームは,ゲーム画面そのものが時代の記録として残るのも貴重で,本作は360度カメラによるビジュアルということで,価値はより高いものとなるだろう。一部のシーンは昨年から今年にかけて撮影されたようで,観光地などではマスクをした人々が映り,この情勢下での制作の苦労が偲ばれるが,これもまた時代の記録である。
 ちなみに筆者がプレイした範囲では,マスクをしていることに触れるテキストは見られたものの,今の情勢がゲームの世界観自体には反映されておらず,登場キャラクターがマスクしているようなことはなかったこともお知らせしておく。

普段の姿が見られないのが少し残念ではあるが,今現在の岐阜をゲームで体感できるのが本作ならでは
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 待望のツーリング映像が本格的に導入されたシリーズ最新作。家にいながらにして旅気分を味わえるのと同時に,旅に行きたくなる作品でもあった。近い将来,旅行も自由にできるようになったときに備え,岐阜への旅の情報を本作で集めておくのもいいかもしれない。

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