プレイレポート
硬派でダークなSRPG「ディサイプルズ リベレーション」プレイレポート。信念を貫くか,打算で動くか。選択の積み重ねで未来が決まる
プレイヤーは,ひょんなことから隠された古代都市を発見した流浪の傭兵「アヴィアンナ」として,争いが絶えない「ネヴェンダール」と呼ばれる地で,自由を得るための戦いに身を投じていくことになる。本稿で,詳しいプレイレポートをお届けしよう。
なお本作にはマルチプレイモードも存在するが,発売前のプレイでマッチングが機能していないため,今回はシングルプレイモード紹介のみとなっている。
流浪の傭兵アヴィアンナ,国を作るために東奔西走す
本作の舞台は,「ネヴェンダール」と呼ばれるファンタジー世界だ。ネヴェンダールでは国を支配する帝国が,内部の腐敗による機能不全に陥っており,反乱軍が公然と台頭しつつあるだけでなく,外部ではエルフ族との紛争が続いている。また悪魔の軍団と,アンデッドの群れも周囲を脅かしており,国は極めて混沌とした状況となっていた。
プレイヤーの分身となるアヴィアンナは,親友のオライオンと一緒に,ネヴェンダールで気ままな傭兵稼業を続けているたくましい女性だ。ある日「腐敗した神官を始末する」という高額の依頼を受けた彼女は,早速2人で教会に潜り込み,ターゲットの目前まで迫っていた。
しかし,襲撃は事前に察知されていたらしく,アヴィアンナたちはピンチに陥り,逆に追い詰められることに。命の危険が迫る2人だったが,それに呼応するようにアヴィアンナに不思議な力がわき上がり,なぜか瞬時に“別の場所”に放り出されてしまう。
その場所は,はるか昔に放棄され,忘れ去られた無人の都市「イリアン」。この場所に不思議な縁を感じたアヴィアンナは,都市を復興し,自らの国として導いていくことを決意する。
とはいえ,たった2人で国を作ることは不可能で,誰かの手を借りなければ物事は進まない。敵対した帝国にあえて近づくか,敵の敵であるエルフに協力するか,あるいは悪魔やアンデッドの手を借りるか……ネヴェンダールの未来を決める“元傭兵”の過酷な冒険が,ここから始まるのだ。
さて,冒頭でも少し触れたが,本作はRPG要素を含んだタクティカルシミュレーションだ。プレイヤーはアヴィアンナを操り,戦乱で荒廃したネヴェンダールの各地を冒険し,さまざまな決断をおこないながら,謎の都市であるイリアンの復興を目指していく。
基本はワールドマップで好きな地域を選び,フィールドを探索しながら戦闘やイベントをこなしていく。戦闘はヘクス(六角形)で区切られた戦場を利用したタクティカルバトルとなっており,戦力が相手を圧倒していない限りは,きっちりと戦術を立てて戦わないと勝つのは難しい。
戦闘はシンプルなターン制だが,ユニットの行動に必要なAP(アクションポイント)は移動のみに使える青色,攻撃(アビリティの発動)のみに使える赤色,どちらにも使える汎用型の黄色に分かれている。このAPの色配分は,クラス(職業や種族)ごとにそれぞれ異なるため,行動の自由度がユニットごとに大きく変わってくる。
さらに,戦闘チームの編成は直接戦闘に関わる「前衛」と,援護に徹する「後衛」に分かれている。前衛では弱くて使いどころが難しいが,後衛では援護専用アビリティが輝く……なんてユニットもおり,事前の編成にも頭を悩ますことになるだろう。
ユニット同士の戦闘は,基本的に同じレベル帯ならいい勝負ができるが,大きくレベルが上回る敵に勝つのは至難の業。最初のうちは強敵を避け,強くなってから挑むのが無難だ。
多少レベルで上回っていたとしても油断は禁物で,無理に敵陣に突っ込むと集中攻撃を食らってユニットはあっさりやられてしまう。本作では,イベントで仲間になるキャラや特殊なアンデッドを除き,戦闘でやられたユニットは消滅するので,気をつけよう。
難度自体はそこまで高いという印象はないのだが,歯ごたえを感じる要素もあり,“きっちりと考えて進める”必要があるという印象だ。
「考える」という点では,ストーリーやイベントでの選択肢も非常に重要だ。対峙した勢力と戦うか戦わないか,誠実に振る舞うか裏切るかといった細かい選択が,その後の展開やセリフに影響を与えるからだ。
ネタバレを避けるために詳細は省くが,良かれと思って農民を助けるために取った行動で,後々の報酬が減ってしまったり,安全の確保が不十分のまま急いで閉じ込められた人々を助けたら,途中で襲われて全滅したり……と「あの時の選択がここに影響するのか」と驚くことも珍しくなかった。選択やイベントのこなし方で,人々のアヴィアンナの呼び方や出会ったときの反応が変わるなど,細かいところにまで選択の影響は出てくる。
なお,自軍に採用できるユニットはイベントで加入する「仲間」を除き,帝国やエルフなど,各勢力のキャラクターを雇う形で増やすのがメインとなる。各勢力との関係性は,キャラクターの雇いやすさに影響を及ぼすのはもちろん,士気などにも影響する。結果的ではあるが,どの勢力に積極的に荷担するかで,物語の進行や戦闘の難度が変わってくると言えるだろう。
ちなみに登場勢力は,きっちり善悪に分かれているワケではない。帝国内部には拷問や虐殺などを平然とおこなう組織があるし,エルフたちの中にも領土近くを通ったというだけで,子供すら殺める者もいる。一方で,アンデッドや悪魔でありながら他人へ危害を与えることない気のいい連中もいる。どの勢力に加担するか,簡単に決められない選択が非常に多いのだ。
こういった選択に対して,プレイヤーがどう行動するのか,悩みながらアヴィアンナとして,歩んでいく物語も本作の魅力の1つと言える。
古代都市「イリアン」を発展させ,より頑強な軍隊を作りだそう
本作のユニットは大きく分けて「アヴィアンナ」,シナリオ進行と共に加入する「仲間」,古代都市イリアンを発展させることで雇えるようになる「雇用ユニット」の3種類に分かれている。
仲間や雇用ユニットは,基礎的なステータスや使用できるアビリティが決まっており,レベルアップによるステータスの向上はあるものの,それによって能力が飛躍的に上昇するようなことはない。強力なユニットが手に入れば,弱いユニットの使いどころは大きく減るだろう。
しかし,主人公であるアヴィアンナだけは例外だ。彼女はレベルアップ時に入手できるポイントを投入することで,スキルツリーから自身の攻撃力アップや仲間への強力なバフを付与するスキル,一部の状態異常を無効化するスキルなど,さまざまな能力を取得できるのだ。
ストーリーを進めていくとクラスチェンジも可能で,近接攻撃のみを得意とするマーシナリーから,魔法剣士のような能力を持つヘクスブレード,高度な魔法を使いこなすウィッチなどにチェンジすることで,戦術の幅も広がっていく。
戦闘チームに何体のユニットを編成できるかも,アヴィアンナの「指導力」によって決まるようになっており,これもレベルアップなどで上昇する。当然ながら味方の数が多い方が戦闘は有利に進むし,編成の自由度も上がるので,彼女のレベル上げは非常に重要なポイントだ。
さらにアヴィアンナは,アビリティとは別に「呪文」を使うこともできる。これは拠点で呪文の研究を進めることで取得できるもので,専用スロットに装備することで,敵に大ダメージを与えたり,ヒーラーがいなくても味方を回復したりできる。
呪文は強力だが,発動には彼女のみが持つ「マナ」ゲージが必要で,基本的には時間経過などで回復しない。チャージするにはフィールドに存在する回復ポイントまで戻る必要があるので,ちょっとした切り札のような存在だ。多用するのは少し難しいが,序盤の遠距離攻撃手段として重宝したり,ピンチをくぐり抜けたりするのに役立つので,うまく使いこなしていきたい。
かなり多芸なアヴィアンナだが,当然ひとりでは厳しい戦いを続けられない。仲間を強化し,協力していくことが重要だ。序盤で発見する古代都市イリアンは,まさにそういった戦力を整える拠点となる場所で,ダンジョン内部や戦闘中を除き,いつでもアクセスできる。
最初は中央の城で,仲間との会話や前述の呪文の研究,教会・墓場といった各勢力固有の施設で弱めのユニットを雇用することしかできない。物語を進めて設計図を入手することで,市場や鍛冶屋を増設することが可能となり,装備の売買や強化を行えるようになっていく。施設はアップグレードも可能で,より高性能なユニットの雇用や装備を大幅に強化可能になる。
施設の建設には,資金や木材,金属などの資材が必要だ。これらはイベントのクリアやフィールドに落ちているものを拾うことで手に入るが,フィールドにある鉱山や伐採所などを占領し,“定期収入”を増やしていけば,より効率よく集められるようになる。
鉱山や伐採所といった場所には,大概守備兵が配置されており,場所によっては非常に強固な防衛を固めているところもある。しかし,“定期収入”で手に入る資材の量は多く,どんどん積み上がっていくため,苦労する甲斐は間違いなくある。多少遠回りしてでも,占領を優先しよう。
さまざまな選択に悩み,答えを出して進んでいく大人向けのシナリオと,骨太のタクティカルバトルが魅力
最初こそチーム編成の自由度は低いが,イリアンの施設が充実するたびに強力な雇用ユニットが雇えるようになっていく。中盤以降は,「どのユニットを使えばいいのか,よりどりみどりで迷う」といったぜいたくな悩みを抱えることになるだろう。
手持ちのユニット同士で,強力な組み合わせを探していくのは楽しいし,ユニットのレベルも訓練で簡単に上げられるなど,全体的にプレイしやすい作りになっているのが好印象だ。
一方,多数のユニットに用意されている固有のアビリティやさまざまな状態変化,ステージの特殊ギミック,使ってみないと性能がわかりにくい呪文など,ルールはかなり複雑な印象だ。すべての要素を使いこなせないと勝てない……というわけではないが,理解できるまで少し時間を要するので,腰を据えてのプレイをオススメしたい。
グラフィックスに関しては,クラシックな見下ろしタイプの作品だが,混乱が続き疲弊した帝国領土,見るからに地獄のような領域が続く悪魔の要塞,拷問の跡が痛々しい地下室など,各エリアはバラエティに富んでいるので,見ているだけで楽しい。戦闘のモーションやエフェクトも見栄えがするものが多く,派手でわかりやすいバトルを楽しめるはずだ。
ローカライズに関してもクオリティが高く,ボイスこそ英語のままだが,それ以外は独自の世界観も含めて,かなりうまく訳されている。
気になった点としては,ゲーム内に自由に読めるヘルプやマニュアルがなく,仕様やルールがわかりにくい部分が散見されたところだ。また戦闘中に敵のターンで進行が止まるなど,発売前のバージョンということもあってか少々の不具合に出会うこともあった。
本作は“何が正しい”のかわからないほど,正義と悪と暴力が入り乱れるハードかつダークな世界で,プレイヤーがどう選択するか迫られる。そして.選択の結果により世界は変わっていく。「名誉を取るか,実益を取るか」という選択肢も少なくなく,大人向けなシナリオという印象だった。
主人公であるアヴィアンナは,序盤から「やってから後悔しましょう」ということをよく言うが,裏を返せばこれは「選択してやってみないと,結果はわからない(から行動しないと後悔もできない)」ということをプレイヤーに暗に伝えている……のかもしれない。
長年続くシリーズの最新作ということで,前作をプレイしていないと分からないのではないかと不安に思う人もいるかもしれないが,その点についてはまったく問題ないと言い切れる。かくいう筆者も本作で初めてシリーズに触れたプレイヤーだが,とくにプレイや進行に影響はなく,アヴィアンナの冒険を十分に楽しむことができた。
シリーズファンだけでなく,大人なファンタジーRPGが好きな人にもオススメできる作品なので,興味がわいたらぜひ手にとって,ネヴェンダールを駆け巡ってほしい。
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