プレイレポート
「UNDYING」アーリーアクセス版プレイレポート。刻一刻と迫る“最期”にあらがい,最愛の息子に未来を託すゾンビサバイバル
もはや一大ジャンルとなったゾンビアポカリプスものだが,「UNDYING」は,プレイヤーが操作できない「子供」という存在を中心に置くことにより,単に生存を目指すだけの作品とはひと味違った形に仕上がっているのが特徴だ。今回はSteamのアーリーアクセス版のプレイレポートをお届けしよう。
なお,アーリーアクセス版ということでシステムやローカライズが不完全だが,スタート画面には現在正式版を翻訳中と表示されているので,完成版ではよりクオリティが上がったものに差し替えられるはずだ。
ゲームが始まるのは主人公の“感染後”。最期を迎える前に,我が子に何を遺せるか
時は1990年代初頭,感染すると理性を失い,見かけた人間に見境なく襲いかかる“ゾンビ化ウイルス”が拡大の一途を辿っていた。秩序とインフラは崩壊しつつあり,残された人々は政府の指示に従い避難することとなり,本作の主人公であるアンリンも,夫のジェイコブ,ひとり息子のコーディと共に,地下鉄の駅に避難していた。
ある日,ジェイコブが任務でアンリンとコーディの元を離れた間に,2人が感染者の集団に襲われ,息子のコーディは難を逃れたものの,アンリンは感染者の攻撃を受けてしまう。
地下鉄を逃げ出した2人は,何とか元の自宅にたどり着くが,家は荒らされボロボロになっており,残された物資も雀の涙。なにより“発病”という巨大な地雷を抱えたアンリンは,残された時間が決して長くないことを理解する。
こうしてアンリンは,コーディと共に“最期の時間”を過ごすことを決意する。少しでも長く息子を守り,自分が知る限りの生き延びる術を教えることで,この絶望的な状況から抜け出せると願って……というのが本作の導入だ。
本作は,見下ろし型のサバイバルアクションゲームだ。プレイヤーは,母であるアンリンを操作し,崩壊状態になった世界で一日でも長く生き残るため,食料や医薬品といった生活必需品,バットや罠といった武器,そして木材や金属といった資源を集め,組み合わせてアイテムを作成しつつ,この状況を生き延びる方法を模索してく。
ゲームはリアルタイムで時間が進み,一日単位でフェーズが区切られている。満腹度や体内の水分といったステータスが存在し,リソースの管理がかなり重要だ。探索可能なエリアはマップで分けられており,エリアごとに入手しやすい素材があるが,基本的に多数のゾンビがうろついているので警戒は欠かせない。また,遠出するほど時間も消費する。
序盤は食料や水が比較的簡単に手に入るが,自生しているものを除き基本的にアイテムは復活しないので,同じ場所にとどまり続けるとあっという間にジリ貧になる。なので,移動時間はかかるが行動範囲を広げてアイテムを集めつつ,並行してメインクエストを進めていくことが,基本的な行動指針となるはずだ。
サバイバルの基礎となるクラフトは,拠点となる場所に設置された工具台などでおこなう。ただ,使用するにはまず修理する必要がある。洗面台や雨水の集水装置まで破壊されており,自宅内では水の入手すらままならない状態だ。
各種器具は修理するだけでなく,アップグレードも可能だ。グレードを上げればさらに強力な武器や便利なアイテムを作れるようになるので,最優先で実行する……と言いたいところだが,修理にせよアップグレードにせよ,かなりの資材が必要なのがちょっとした罠となっている。
前述のように一度回収したアイテムは復活しないため,無計画に器具に備蓄をつぎ込むと「道具はあるが材料がない」とか「行動範囲を広げられないまま,安定して入手できる近くの資材を取り尽くした」といった,歯がゆい事態に陥る。実際,筆者はそういった状況に難儀した。
おまけに本作の戦闘バランスは結構シビアで,邪魔なゾンビをすべて排除するような立ち回りをしていると,あっという間に体力と武器を損耗してしまう。武器は新たに作ったり直したりできるが,当然ながら資材が必要だ。さらに,体力は時間経過での自然回復や,眠って回復のようなシステムがないため,基本的に減ったら減ったぶんだけ回復アイテムを消費しなければならない。
本作の難度は全体的に高めで「結構あっさり積む」と感じた。食料,薬(体力),武器のいずれかが足りなくなると途端に生存が厳しくなり,リカバリーも難しくなっていく。何とかギリギリの状態で生き続けてもいいが,基本的にはダメだったらプレイし直して,次の回に経験をフィードバックした方が良さそう,というのが個人的な印象だ。
というのも,何もしていなくても運次第でランダム性が高い“トラブル”が起こるので,安定した状態を保っておくに越したことはないのだ。
あらゆる意味で作品の中心にいる“子供”の存在と,ゲームが進むほど厳しくなっていく自らの状態
単に生き延びるだけでも大変なアンリンだが,さらに大きな問題を抱えている。ゲーム開始時点で彼女はすでに感染者である,という点だ。この病気はすぐにゾンビになることはないようだが,確実に彼女の体を蝕んでおり,毎朝起きると何らかの影響が体に出てくる。
これは,プレイヤーが選択肢の中から任意のものを選ぶことが可能で,いちおう有利な効果が付与されることもあるのだが,「持ち運べるアイテム数が減る」「定期的に咳が出てステルスが難しくなる」「生産器具が使えなくなる」など大概は大きなデメリットが追加される。これは1〜2日程度で解除されるのだが,ゲームが進むと永続的な効果が出てきたり,選ばなければいけない数が増えたりと,どんどんと悪影響が増していく。
自作の薬で解除することもできるのだが,これはこれで貴重な薬品を消費するので,症状に付き合わざるを得ない場合も多いはずだ。
さらに感染はもう一つ,重大な問題を引き起こしている。それは「深夜に活動できない」という点だ。基本的に起きている間は,どう活動しても自由だが,午前0時を過ぎて活動していると,ウイルスが活性化し,体を急速に蝕んでライフがみるみる減っていく。実質この時間までにベッドに戻れないと死ぬことになるため,たとえ備蓄が尽きかけていたとしても,無理に活動を続けることはできないのだ。
だがそんな絶望の中でも,アンリンには息子コーディという大きな希望が存在する。
コーディは自動で後ろを付いてくるが,無敵というわけではなく,母親と同じように空腹度やライフを持つNPCとして存在している。当然食料や水は2人分必要で,さらにゾンビが近くにいると動けなくなってしまうし,母親のように直接ソンビを攻撃することはできないため,そのままにしておくと攻撃を食らって普通にやられてしまう。なので手を引いて一緒に移動したり,隠れられる場所に待機させたりするほか,家で留守番させるという手段もある。基本的には守るべき存在だ。
しかし,コーディは単なる“足手まとい”ではない。連れていくだけでインベントリを拡張して探索の手助けになるほか,アンリンの行動を見て,その方法を学習することができるのだ。具体的には何かを作る,アイテムを探す,物を直すといった作業中にボタンを押したり,敵を倒す姿を見せたりすると,ポイントがたまるようだ。ポイントはスキルの習得に使用可能で,「クラフト」「サバイバル」「戦闘」のそれぞれにポイントを投入することで,ツリー状に分かれた中から好きなものをアンロックできる。
最初は怯えるばかりのコーディだが,スキルの入手によって資源を追加で入手したり,戦闘に参加できたりするほか,場合によっては感染症の影響でアイテムが作れないアンリンに代わって,難しいクラフトをこなすなど,親顔負けの姿を見せてくれる。アンリン自体は強化できず,息子の成長こそが文字通りの“希望”となるわけだ。
とはいえ,時間が経つほど状況は厳しさを増し,病状の進行もさることながら,病状の進行に加え,時を経るごとに手近な水源や資源は枯渇し,電源は失われる。夜間のゾンビ襲撃も苛烈になるなど状況は厳しさを増し,貴重な時間と資源をいっそう消費することになっていく。他のサバイバル作品では,時間を経るほど資源が貯まっていき,進めるほどに難度が下がるものもあるが,本作の場合はそうはいかないようだ。
“アーリーアクセスらしさ”は多分に残るが,自分ひとりの生存を目指すサバイバルとはひと味違う体験
本作は基本システムだけを見れば,大きく目新しいところはない作品だ。グラフィックスはトゥーン調で統一されており,決して陳腐ではないが,いわゆる見栄えのする作りでもない。意図的にローポリゴンにしているとのことで,全体的にかなり地味に感じる人も多いだろう。
ただ,そういったスタンダードな作りも,「自身が感染者」「守るべき子供がいる」という2つの要素が加わることで,かなり感じ方が変化している点が面白い。
初期は余裕が少し作りやすいがコーディは頼りないので,必死に子供を守りながら命を繋ぐ,保護者としての活動がメインだ。だが,アンリンは経験を積んで強くなるどころか,時間が経過するほど弱っていく。周囲の状況悪化も手伝い,厳しい場面は少しずつ増えるだろう。しかしそうした時には,「か弱い子供」から,いつの間にか「頼れる息子」に成長していたコーディが力になるはずだ。我が子のためにやっていたことが,結果的に自分の助けにもなる……という辺りが,親子の繋がりのようなものを感じられて感慨深い。
冒頭でも触れたように,本作はまだアーリーアクセスの段階だ。ローカライズは単語の統一が取れておらず,会話も意味不明な部分が多い。息子の名前すら正常に訳されていないこともあり,現状のクオリティは正直に言って低めだ。また,コーディのスキルなど未実装なものも目立つため,今後のアップデートで全体のプレイフィールやバランスが変わる可能性は十分にある。
ただ,そういった点に目をつぶれるのなら,ゲームプレイそのものに大きな問題はない。本作の絶望的な世界では,あっという間にやられることも珍しくない。だからこそ親子の二人三脚が上手く回っているときは楽しいし,達成感がある。興味があれば手にとって,アンリンとコーディの行く末を見守ってみてはいかがだろうか。
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