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ソニーの「INZONE」から,eスポーツ特化の480Hz 有機ELディスプレイ「INZONE M10S」と4K液晶「INZONE M9 II」が10月発売
税込のメーカー想定売価は順に17万4900円前後,13万2000円前後である。
INZONE M10S
INZONE M10Sは,eスポーツゲーマー特化型の製品として,プロチーム「Fnatic」と共同開発したという製品だ。有機ELパネルの特徴を生かした垂直最大リフレッシュレート480Hz,中間調(Gray to Gray)応答速度0.03msという高速表示と,FPSのeスポーツタイトルに特化した表示機能を備えるのが見どころである。
表示機能のひとつは,eスポーツ向け画質モード「FPS Pro+」と「FPS Pro」だ。
FPS Pro+は,その名のとおりFPSに特化した画質モードで,映像全体の彩度は抑えつつ,キャラクターの輪郭に使われる赤色や黄色,紫色などを強調して,さらに輝度やコントラストを上げて敵の視認性を高めるというものである。映像全体の色調は極端に変えないので,特定のFPSで役立ちそうだ。
一方のFPS Proは,Fnaticの選手からの要望に応えたという,かなり特殊な画質モードで,FPSの競技会でよく使われているTN液晶パネルの画質を再現するというものだ。
TN液晶パネルと言えば,応答速度は速いものの,表示色域が狭くてコントラスト比も低いなど,今となっては画質面で褒めるところはまったくない。しかし,TN液晶パネルの見た目に慣れすぎたプロeスポーツ選手からすると,今どきのIPS液晶パネルやVA液晶パネル,あるいは有機ELパネルの映像品質とは差がありすぎて,逆に視認性に問題を感じることもあるようだ。
そこで,あえて有機ELパネルでTN液晶パネルの画質を再現することで,TN液晶ディスプレイから移行しやすくしたのがFPS Proモードである。TN液晶ディスプレイに慣れたプロ選手以外には,ほとんど使い道がなさそうな機能であるが,eスポーツ特化型らしい特徴ではある。
もちろん,有機ELパネルを採用するだけあってINZONE M10S本来の画質は良好で,eスポーツタイトルだけでなく,映像美を堪能するゲームにも適している。
もうひとつのeスポーツに特化した特徴は,「24.5インチモード」だ。eスポーツ向けを謳う液晶ディスプレイとしては,長らく24インチ級の製品が主流であった。そのため,27インチ級のディスプレイであっても,画面の中央に,24インチ級と見た目のサイズが同じになる表示領域だけに映像を表示する特殊な表示モードを備える製品が,とくにBenQ ZOWIEブランドなどから販売されている。INZONE M10Sの24.5インチモードも,そうした擬似的な24インチ級ディスプレイの再現機能である。
INZONE M10Sは,27インチサイズで解像度2560×1440ドットのディスプレイであるが,24.5インチモードを有効にすると,画面の中央,または下側に寄せた24.5インチ相当の領域に映像を表示する。周囲の何も表示していない部分は,真っ黒になる。画面中央だけでなく,下側に寄せて表示できる選択肢も用意したのは,これもFnaticの選手からの要望であるそうだ。
INZONEのディスプレイといえば,スタンドのデザインが独創的で,見た目や利便性では利点もあったが,安定性や高さ調整時に奥行きが変わるという点に不満の声も寄せられていたという。そこで新製品は,比較的シンプルな円形の台座を採用する形に変わった。これにより,安定性を確保しつつ,スタンド周囲に物を置きやすい利便性の高さも維持しているそうだ。
充実した画質設定は,INZONEの初代ディスプレイ製品ゆずりで(関連記事),PC用の統合設定ソフト「INZONE HUB」からディスプレイの設定を変更したり,ゲームの起動に合わせて設定を自動で切り替えるといった機能も備える。
INZONE M9 II
一方のINZONE M9 IIは,直下型LEDバックライトを採用する4K液晶ディスプレイ「INZONE M9」の後継製品だ。INZONE M10Sがeスポーツゲーマー特化の製品であるのに対して,INZONE M9 IIは,アクションゲームやRPGといった,映像美重視のゲームに適した製品に位置付けられている。
画面解像度は3840×2160ドット(4K)で,垂直最大リフレッシュレートは160HzのIPS液晶パネルを採用する。ソニーのテレビ「ブラビア」の技術を応用した直下型LEDバックライトの部分駆動により,8万:1という高コントラスト比を実現したことで,明暗のはっきりした映像を表現できるのも見どころだ。
さらに,映像の残像感を低減する技術として,単純な黒フレーム挿入ではなく,映像に合わせて表示タイミングを細かく制御する「バックライトスキャニング」技術の導入により,残像感の少ない映像を表示できるのも特徴である。
また,INZONE M9 IIでは,ゲームのジャンルごとに用意された画質モードプリセットのバリエーションが増えて,「MOBA/RTS」や「RPG」といった画質モードも加わった。とくにRPGモードでは,晴れた空の明るさやキャラクターのコントラスト感,字幕の見やすさなどが向上したという。
さらに,HDR映像表示時にも,「Game」「RPG」「Cinema」など,4種類の画質調整モードを選べるようになった。映像の表現力は,前世代よりも向上していると言えそうだ。HDR表示時の最大輝度は750cd/m2と高く,VESAのHDR関連規格「DisplayHDR 600」にも対応する。
スタンド形状は,INZONE M10Sと同じく円形台座に変わっていて,安定性が向上した。個性は薄まったが,人を選ばないスタンドになったというところか。
どちらも製品も,ゲーマー向けディスプレイとしてはハイエンドクラスであり,価格も安価とは言えないが,それぞれの用途に最も優れたディスプレイが欲しいという人には,響くところのある製品になりそうだ。
●INZONE M10Sの主なスペック
- パネル:27インチ,有機EL,非光沢
- パネル解像度:2560×1440ドット
- 最大垂直リフレッシュレート:480Hz
- ディスプレイ同期技術:Adaptive-Sync対応,G-SYNC Compatible対応,HDMI 2.1 VRR対応
- HDR表示:DisplayHDR True Black 400
- 輝度:1300cd/m2
- 表示色:約10億7000万色
- コントラスト比:150万:1(標準)
- 視野角:左右178度,上下178度
- 中間調応答速度:約1ms
- 内部フレーム遅延:未公開
- 映像接続インタフェース:DisplayPort 2.1×1,HDMI 2.1×2
- そのほかの接続インタフェース:3.5mmミニピンヘッドフォン端子
- USBハブ機能:USB 3.2 Type-B×1,USB 3.2 Type-A×2
- スピーカー:非搭載
- チルト(上下回転):−5〜+25度
- スイーベル(左右回転):左右180度
- ピボット(縦回転):非対応
- 高さ調整:120mm
- VESAマウント:100×100mm
- 公称消費電力:120W(標準)
- 公称本体サイズ:約604(W)×197(D)×504(H)mm(※スタンド含む)
- 公称本体重量:約6.2kg(※スタンド含む)
●INZONE M9 IIの主なスペック
- パネル:27インチ,IPS方式,非光沢
- パネル解像度:3840×2160ドット
- 最大垂直リフレッシュレート:160Hz
- ディスプレイ同期技術:Adaptive-Sync対応,G-SYNC Compatible対応,HDMI 2.1 VRR対応
- HDR表示:DisplayHDR 600
- 輝度:750cd/m2
- 表示色:約10億7000万色
- コントラスト比:80000:1(ダイナミック)
- 視野角:左右178度,上下178度
- 中間調応答速度:約1ms
- 内部フレーム遅延:未公開
- 映像接続インタフェース:DisplayPort 2.1×1,HDMI 2.1×2
- そのほかの接続インタフェース:3.5mmミニピンヘッドフォン端子
- USBハブ機能:USB 3.2 Type-B×1,USB 3.2 Type-A×2
- スピーカー:2W×2
- チルト(上下回転):−5〜+25度
- スイーベル(左右回転):左右180度
- ピボット(縦回転):非対応
- 高さ調整:130mm
- VESAマウント:100×100mm
- 公称消費電力:100W(標準)
- 公称本体サイズ:約615(W)×211(D)×52.8(H)mm(※スタンド含む)
- 公称本体重量:約6.4kg(※スタンド含む)
ソニーのINZONE特設Webページ
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