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ナラティブな体験がステルスゲームの本質へと結びつく。「ERIKSHOLM: The Stolen Dream」で描く新たなステルスアクション[gamescom]
1900年代初頭のスカンジナビアをイメージ元とした,広大な北欧の街エリクスホルムを舞台に,街全体の運命をも変えてしまう出来事に巻き込まれる一人の女性・ハンナの物語が描かれる。2024年6月9日に配信された「Future Games Show: Summer Showcase 2024」での発表を見て,ドラマチックなムービーや雰囲気ある街の情景に興味を持った人もいるのではないだろうか。
そんな本作について,ドイツのケルンにて現地時間2024年8月21日から25日まで開催されたgamescom 2024でRiver End Gamesのクリエイティブディレクター・Anders Hejdenberg氏にゲーム特徴や開発の思いを聞いてきた。
本作を制作するRiver End Gamesは,こちらのページにあるとおり,さまざまなバックグラウンドを持つ20人ほどのクリエイターたちによる小さな開発チームだ。
今回ゲームを紹介してくれたAnders Hejdenberg氏は,1998年に3Dアーティストとしてゲームキャリアをスタートし,その後ゲームデザインとプログラミングに傾倒。DICEなど大手メーカーで著名なゲームを手掛けてきたが,「適切な人材が集まれば,小さなチームでもクールなものを作れるかもしれない」という考えのもと集まったメンバーと共にRiver End Gamesを立ち上げた。
River End Gamesと氏がゲーム開発で大事にしていることが,「心を込めて何かに取り組むことで,そこにいる誰かとつながることができる」という考えだ。
大手メーカーでいわゆるAAAを手掛けていたころ,たとえば「100万人のプレイヤーがいる」と言われても,実際にプレイしている人とのつながりを感じることは希薄だったが,小さな会社で「ゲームが好きで孫と楽しんでいる」「一緒にゲームをしていた人と夫婦になり,そして親になった。今でも一緒にあなたの作ったゲームをしています」といった,実際のプレイヤーの声に触れられるようになり,あらためてものづくりの大事な部分を感じられるようになったという。
そんな,人に寄り添う考え方は,失踪した弟ハーマンを探すうちにエリクスホルムの街全体を揺るがす出来事となるハンナの旅を描く本作にも大きく影響している。
ハンナとハーマンが暮らすカッターズヒル地区(筆者のリスニング)は,エリクスホルムの中でも最も貧しい場所として知られる地域だ。かつては船大工や製帆職人が多く暮らす地域だったが,蒸気船の誕生によって失業者が増加。エリクスホルムの街にとって誇り高い地域から苦難の多い場所へと変わった。といってもハンナとハーマンにとってはここは故郷。つまり大事な場所であり,互いに強い絆で結ばれている。
ある日,仕事に出かけたまま帰らなくなったハーマンを探し,家族との再会を果たすべく奮闘するハンナの物語は,ナラティブを重視したクォータービューのステルスゲームとして描かれる。物語が進むとハンナの協力者などが加わり,最終的に3人のキャラクターを切り替えながらステージにチャレンジすることになる。
遠くの一人が音を鳴らすといった何かしらの行動で「今のはなんだ?」と敵を引き寄せ,敵の近くにいたもう一人がその背後をこっそり通り過ぎる。エリクスホルムの街全体が,プレイヤー自身のアイデアと選択が生かされるステージになる。
この“プレイヤー自身が解法を考えること”というゲームプレイ部分での導きが,ナラティブに重きを置いたアドベンチャーとうまく結びついたことが,本作を制作していて興味深いものだったという。
ゲーム開始時のプレイヤーキャラクターはハンナ1人。それもしばらくずっと1人で,2人目の登場はまだまだ先だ。そしてハンナは何かしらの特技や戦う術などを持っていない。
これはストーリー上,ハーマンは警察に追われており,ハンナもまたその行動を監視される側となるため,つまり急に追われる側になるわけで,それへの対策などはできていない。何も持っていなければ,本当に注意して行動しなければならないし,無防備ではいられない。
音を鳴らして相手を引き寄せてそのうちに逆側に向かって歩く。視界に入らないような道を探して腰を沈めて移動する。弱い立場だからこそ隠れて行動するということが,ステルスゲームの本質と合致したわけだ。
これを物語の流れのままに体験し,物語の進行によって操作できるキャラクターが増えたとき,今までの自分の行動をベースに「仲間との協力」という要素を取り入れ新たな攻略に挑む。River End Gamesが本作のゲームデザイン/レベルデザインで大事にしたのが「ゲームの新鮮さを最後まで保ちたい」という考えだ。
テストプレイを実施したときにプレイヤーが口を揃えていうことが,「次は何があるのか知りたい」という衝動に駆られるということ。それはゲームのメカニズムやステージの仕掛けに依存するものではなく,余計なボタンや使いこなさなければならないギミックを追加する必要なく,ストーリー上の展開に合わせた表現でその希望は叶えられるということだ。
「ERIKSHOLM: The Stolen Dream」は,PCのほかPS,Xbox向けにも開発が進められている。日本語字幕の対応も予定されており,ダイアローグが重要な作品だけにプレイヤーの視線がシーンから外れることのないよう字幕位置などにもこだわって対応するとのこと。
Steamなどでのデモ版の配信は今のところ予定していないということだが,2025年内の発売前に自分自身の手とアタマで本作の雰囲気に触れてみたくもある。とりあえずはSteamのウィッシュリストに入れて,今後の展開に注目したい。
- 関連タイトル:
Eriksholm The Stolen Dream
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