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PCやゲームの起動が速くなる? ディスクキャッシュ用高速ストレージ「Optane Memory」をIntelが発表
Optaneは,PCのストレージキャッシュとして機能するもので,これを装着することにより,アプリケーションの起動やデータ読み出しが高速になるとIntelは主張している。製品は,M.2 type 2280フォームファクタに対応し,PCI Express(以下,PCIe) 3.0×2接続を使用するモジュール型で,ラインナップは容量16GBと32GBの2モデルだ。ただし,Optaneを利用するには,Kaby Lakeこと第7世代CoreプロセッサとIntel 200シリーズチップセットを備えるOptane対応マザー
本稿ではOptaneの概要について,簡単にまとめてみたい。
フラッシュメモリ以上,DRAM未満の高速メモリ技術3D XPoint
Optaneがどんな製品なのかを説明するには,3D XPointとは何かから説明しなくてはならない。その3D XPointの概要は,Intelによる発表時の記事に詳しくあるのでそちらを参照してもらうとして,ここでは簡単に説明しよう。
そもそも,3D XPointは,IntelとメモリチップメーカーのMicron Technologyが共同で開発した不揮発性のメモリ技術である。3D XPointは,コンピュータのメモリに使われるDRAMと,ストレージに使われるフラッシュメモリの中間的な特徴を持っており,DRAMよりも大容量化が可能で電源を切っても保存した情報が消えることがなく,フラッシュメモリよりも読み書きが高速で耐久性もあるのが利点だ。
ただ,フラッシュメモリに比べるとビット単価が高いので,大容量化すると製品価格が高くなり,読み書きの速さはDRAMに及ばない。
こうした特徴を有する3D XPointを使えば,比較的高速かつ大容量の記憶媒体ができるので,Intelではこれを採用したストレージ製品にOptaneという名前を付けて,製品化に乗り出したというわけだ。
ディスクキャッシュでPCを高速化するOptane
WoWのログイン時間が6分の1に短縮!?
今回発表となったPC用のOptaneは,容量が16GBまたは32GBしかないので,PCのメインストレージとして使う用途には向かない。では,何に使うのかというと,それはディスクキャッシュだ。
Windowsにはディスクアクセスを高速化する仕組みとして,HDDの読み書きをフラッシュメモリにキャッシュして高速化する「ReadyDrive」という機能がある。PCの性能を左右するファイルの読み書きを,アプリケーションからは見えないように高速なキャッシュ側で行ってファイルアクセス時間を短縮することで,性能が向上するというのがその理屈だ。
恐らくは今回のOptaneも,Windows側では同様の仕組みを利用しているのではないだろうか。
覚えている人はほとんどいないだろうが,IntelはWindows Vistaに合わせて2007年に投入した「Intel Centrino Duo Processor Technology」(開発コードネーム Santa Rosa)で,「Intel Turbo Memory」(以下,Turbo Memory)というフラッシュメモリを使ったディスクキャッシュシステムをリリースしたことがあった。Turbo Memoryを搭載するPCはあまり製品化されなかったと記憶しているが,今回のOptaneはどうなるだろうか。
製品として登場するOptaneには,2つの3D XPointメモリチップを搭載している。そして,Intelのストレージ制御用ソフトウェア「Intel Rapid Storage Technology」により,デュプレキシング(※2つのドライブを交互にアクセスすることで,読み書き時間を短縮する手法。ストライピングとも呼ぶ)を行う。
Intelによれば,第7世代Coreプロセッサ(※CPUの種類は未公表)と1TBのHDDを搭載したPCに容量16GBのOptaneを搭載すると,搭載前に比べて,「Fallout 4」の起動は+18%,Fallout 4の「Level Load」(※ゲーム世界の読み出しを意味すると思われる)は+58%の高速化を実現したという。ゲーム以外でも,PCの起動は2倍,Webブラウザ「Google Chrome」の起動は5倍,メール&スケジュール管理ソフト「Microsoft Outlook」(以下,Outlook)の起動は6倍もの高速化を実現したそうだ。
Intelは,第6世代Coreプロセッサ(※なぜか第7世代ではなくても動いていた)と容量1TBのHDDを搭載するPCを使って,Optaneの有無による「World of Warcraft」のログインに要する時間を比較するデモも披露した。
それによると,メインメモリ容量16GBでOptaneなしのPCでは,ゲームへのログインに86.37秒を要したのに対して,同じPCをメインメモリ容量4GB,容量16GBのOptane搭載に変更した場合は13.23秒でログインできたという。
ほかにも,Adobeの写真編集ソフト「Adobe Photoshop Elements 15」の起動と画像の読み出しは45.6秒から2.5秒,MicrosoftのOfficeアプリケーション「Word」「Excel」「PowerPoint」そしてOutlookの起動は45.47秒から13.83秒まで短縮できたそうだ。
Optaneはディスクキャッシュなので,読み出すべきデータがOptaneにキャッシュされている状態でなければ,これほどの効果は得られないだろう。あくまでも理想的な状態での結果であることは,念頭に置いておく必要がある。また,HDDではなくSSDにゲームのデータを保存しているPC環境では,当然ながらこれほどの差はつかないはずだ。数少ないマザーボード上のM.2スロットを,Optaneに割り当てるほどの価値があるのかどうかは,実機で確かめてみないことにはなんとも言い難い。
とはいえ,うまくキャッシュが機能すれば,ゲームの起動やプレイを快適にする効果が期待できそうではあり,どの程度の価格で登場するかによって,ゲーマーにとってOptaneが価値あるものかが決まるのではないだろうか。
なお,今回の発表に先立つ北米時間2017年3月19日に,Intelは,同じ3D XPointメモリを採用するサーバー向けSSD「Optane SSD DC P4800X」を発表済みだ。こちらはPCIeスロットに装着するカードタイプか,U.2インタフェースに接続するタイプの2種類が用意され,容量のラインナップは375GB,750GB,1.5TBになる。
PCIeカード型の375GBモデルは,すでにサンプル出荷を開始しており,2017年第二四半期には,いずれも量産出荷が始まる予定とのこと。用途や容量からして,ゲーマーが手を出せる価格にはならなさそうに思えるが,どの程度の性能を発揮できるのか,興味深い製品ではあるだろう。
IntelのOptane Technology 情報ページ
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