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基調講演「円谷プロのハイターゲット向けアニメーションについて」聴講レポート。特撮作品へのこだわりが詰まった,大人向けアニメ制作の戦略とは
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印刷2022/09/10 12:20

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基調講演「円谷プロのハイターゲット向けアニメーションについて」聴講レポート。特撮作品へのこだわりが詰まった,大人向けアニメ制作の戦略とは

 2022年8月31日〜9月2日に行われたDMM.comのオンライン展示会「アニメ・ゲームサミット 2022 Summer」にて,円谷プロダクションによる,ハイターゲット向けアニメーションの制作戦略をテーマとした講演が行われた。
 セッションでは同社のマーケティング本部の石塚 徹氏,麻生智義氏,営業本部の稲葉由梨氏が登壇。長く特撮作品を作り続けてきた円谷プロが,大人向けのアニメーションを制作した経緯やこだわりなどが語られた。

左から,マーケティング本部 IP推進部の石塚 徹氏と麻生智義氏,営業本部 コンシューマサービス事業部 マーチャンダイジンググループの稲葉由梨氏
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アニメ・ゲームサミット 2022 Summer


※画像は配信をキャプチャしたものを,主催のDMMオンライン展示会の許諾を得て掲載している


特撮へのこだわりが詰め込まれた,円谷プロの大人向けアニメーション展開


 2023年の春に設立60年周年を迎える,長い歴史を持つ円谷プロダクション。「ウルトラマン」シリーズを代表とするさまざまな特撮作品を制作してきていることはご存じのとおりだが,作品制作だけでなく,イベント部門,商品部門,オウンドメディアのサービスなど,多角的なビジネスを展開している。

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 作品は3才から6才までの男児向けのテレビシリーズをメインに制作しているが,それにとどまらないターゲットに向けたIP展開が行われている。その一つとして挙げられたのが,ハイターゲット向けのアニメーション作品だ。

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 2018年の「SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)」は,1993年の実写作品「電光超人グリッドマン」を原点とした作品で,アニメ制作会社のTRIGGERと組むことで,繊細なキャラクター描写と力強いヒーロー,ロボットの描写を売りとしたアニメーションへと生まれ変わっている。
 2021年には,「SSSS.GRIDMAN」から世界観をリンクしつつ,キャラクターを一新した「SSSS.DYNAZENON(ダイナゼノン)」を制作。ともにアニメファンから高い評価を得て,2019年には「SSSS.GRIDMAN」が長い歴史を誇る国内のSF賞「星雲賞」を受賞している。

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 監督に神山健治氏,荒牧伸志氏の2人を据えた「ULTRAMAN」は,2011年に連載が始まった同名漫画作品を原作としたフル3DCGアニメ。初代ウルトラマンの息子が強化スーツを着用して戦う等身大のヒーローで,これまでにないコンセプトで注目を集めた。
 2019年にNetflixにて全世界同時配信された本作品は,ハイクオリティなバトルアクションが好評で,同年のNetflix Japanのアニメ年間ランキング1位を獲得。今年(2022年)春よりSeason2が配信されている。

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 円谷プロはこれらの作品を「大人向け」「海外市場」の方向性でターゲッティングしている。同社は前述のとおり,3才〜6才の男児やそれに伴うファミリー層向けの特撮作品を展開しているが,そこに該当しない10才代後半〜30歳代のライトアニメ層に注力。元となる特撮作品を知っていても知らなくても,いちから楽しめるクリエイティブを意識し,それを実現できるスタジオやクリエイターと連携して製作している。

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 「SSSS.GRIDMAN」はTRIGGERの雨宮 哲氏を監督に据え,美麗で思春期らしい繊細なキャラクターの感情表現と各話で提示される謎解き的な要素,そしてそれに相反する合体ロボットやヒーロー描写が絶妙に融合され,深夜アニメを楽しむ大人のターゲットを取り込むことに成功している。
 一方の「ULTRAMAN」も,勧善懲悪ではなく,悩みを持ちながら戦う等身大のヒーローを多層的な人間ドラマとして描く内容で,バトルアクションもファミリー向けアニメではできないようなハードな描写を意識している。フル3DCGアニメーションならではのメカニックやスーツのデザイン,ガジェット感なども大人のSFファンに好評を得ている。

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 そしてもう一つのターゲットが,グローバル市場だ。「ULTRAMAN」は当初より,Netflixでの全世界同時配信が決定していて,海外ファンを意識した脚本や画作りをしている。セリフに頼りすぎず,起きている事象でドラマを面白くして,それを一気見できるテンポ感により,万国共通で爽快感を得られるような作りになっている。
 プロモーションもNetflixと連携し,海外のイベントにも積極的に出展。Netflixで全世界に配信する利点を生かし,海外での認知を広げている。その中で常に発信してきたのは“ウルトラマンの精神性”で,利益や利己的な視点を度外視しても正義を貫くヒーロー性は海外のヒーローにはないウルトラマンの特異点であり,それを強調したことで「アニー賞」にノミネートされるなどの結果につながった。


 「SSSS.GRIDMAN」も,制作を手がけるTRIGGERが海外での知名度が高く,2018年のAnime Expoでの第1話世界最速上映を行うなどのプロモーションを行っている。
 元となる「電光超人グリッドマン」は,巨大ヒーローと巨大合体ロボットが共存する世界観で,これをアニメでも継続したことにより,アジア圏で需要の高いスーパーロボット系のアニメとしても認知され,とくに玩具・ゲーム展開において大きなメリットとなった。円谷プロが合体ロボの路線に食い込めたのは「グリッドマン」というIPの特異性であり,今後も大事にしていきたいとのことだった。

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 特撮作品をアニメ化するにあたり,特撮作品を長く手がけてきた円谷プロならではのこだわりも導入している。
 「ULTRAMAN」では撮影にモーションキャプチャを採用している。役者が演じた芝居を取り込んでアフレコをするという行程で製作するにあたり,役者には特撮作品に出演経験のあるスーツアクターを起用し,特撮らしい動きをアニメでも再現している。

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 クリエイターも円谷プロの特撮作品で育った存在であり,例えば原作では横向き(地面に対して水平)に射出されていたウルトラマンのスペシウム光線が,アニメではあえて旧作のイメージを踏襲して縦向き(同垂直)の設定に変更したり,CGなので自在に動かせる怪獣の関節をあえて動かさずに着ぐるみらしい動きにして,特撮作品を見ているような雰囲気を強調したりと,円谷特撮への強いリスペクトとこだわりが感じられる作品に完成した。
 一方「SSSS.GRIDMAN」では,歴代の特撮作品に携わったクリエイターを起用し,メカや怪獣,ヒーローのデザインや,脚本,音楽などを特撮作品と遜色のないものにしている。

 プロモーションでは,アニメ作品でありながらライブアクションのスーツを作り,ショーやイベントを行うなど,円谷プロならではの強みを生かし,特撮ファンとアニメファンの両者が楽しめる“特撮×アニメーション”というジャンルを構築することができた。

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 「ULTRAMAN」と「SSSS.GRIDMAN」は2023年に向けて新たな展開を行っていく。
 「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」は,両作が交わる完全新作の劇場版の2023年公開が決定している。グリッドマンとダイナゼノンの共演は実は初めてのことであり,繊細なキャラクター描写やヒーロー描写はこれまで同様にこだわりを持って見せていくという。配給を東宝,宣伝/音楽をポニーキャニオン,制作をTRIGGER,そして原作を円谷プロという布陣で,より多くのファンに楽しんでもらえる作品を提供する。


 「ULTRAMAN」も2023年前半にはファイナルシーズンを迎える。こちらもグローバル展開を見据え,新たな要素も今後披露されていくとのこと。公開に向けたコラボ,タイアップ,マーチャンダイジングなどのビジネス面も各社に向けてアプローチし,セッションは終了となった。

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円谷プロダクション公式サイト


アニメ・ゲームサミット 2022 Summer

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