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ゲーム会社への投資のメインは,VCから大手ゲーム会社へ―――韓国のゲーム投資の歴史をちょっと掘り起こしてみる
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印刷2023/11/10 15:52

業界動向

ゲーム会社への投資のメインは,VCから大手ゲーム会社へ―――韓国のゲーム投資の歴史をちょっと掘り起こしてみる

下記の記事は,GAMEVU(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部,画面写真などを変更したり,文化的な背景などで理解されづらいものについては日本向けに表現を変えたりしている箇所があります。(→元記事

 ゲームは,代表的な「ハイリスク,ハイリターン」事業に挙げられる。ゲーム会社が10個のゲームを開発するとして,9個が失敗でも1個成功すれば,損失をすべて埋めて生き残ることができるのだ。

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 ゲームを開発するには,多くの費用がかかる。最近では,ゲームのスタートアップ企業における月間の維持費は,少なくとも2〜3000万ウォン(約240万円〜360万円),規模によっては1億ウォン以上(約1200万円)がかかるという。
 そのコストの中で,最も多くの割合を占めるのはやはり開発人材の人件費だ。開発者の能力によって,ゲームのクオリティが変わるからだ。それぞれの会社が,高い年俸や特別な福利厚生などを掲げて人材を集めようとする理由はそこだ。
 規模の小さいスタートアップを創業した代表にとっては,彼自身がお金持ちでもない限り,運営費用の調達は容易ではない。そういう会社には,会社が持つマンパワーと技術力を鑑みて,彼らを成功させるために投資をする会社が存在する。

 スタートアップの投資には,創業初期に行われる「シード」もしくは「Pre-A」(プレシリーズA)投資,ある程度の成果を得たあとで行われる「シリーズA」,事業拡大を目的とする「シリーズB」,海外進出やM&A目的で進行する「シリーズC」がある。
 そして,ほとんどの投資はシード段階で行われる。その時に投資することが,最高の収益率を記録するためだ。


過去にはベンチャーキャピタル,現在はゲーム会社が投資の主導


 過去の韓国は,スタートアップの投資をベンチャーキャピタル(以下VC)が担ってきた。リスクヘッジのため,2つ以上のVCが同時に投資をする場合もあった。Bluehole(現KRAFTON)とPearl Abyss,Neptuneも,創業当時にVCの投資を受けて大きな成功を収め,投資家に大きな収益を与えた。

 しかし,ゲーム産業が成長し続けたことにより,ゲーム会社主導の投資が増加し始めた。VCよりゲームのことをよく知っていて,玉石混交の状況において有利なだけでなく,特に有望なスタートアップなら,そのままM&Aして子会社として編入して,自分達の会社自体の競争力すら強化させることができるからだ。

VC法人のSmilegate InvestmentPearl Abyss Capital
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 投資を行う会社の代表例は,NexonとNetmarble,KRAFTON,カカオゲームズ,Wemade,Smilegate,Peal Abyssなどだ。親会社や子会社を通じて行う場合がほとんどだが,SmilegateとPearl Abyssは,別途VC法人を設置して投資を進めている。
 もちろん,政府レベルでもスタートアップへの投資を進めている。「ゲーム制作支援事業」を通じて,審査を通過したゲームの開発費用を支援することだ。だがそれは,決まった予算を均等に分けてくれる形式なので,受け取れるお金は短期的に役立つだけで,長期的な助けにはならない。だからスタートアップの立場でも,ゲーム会社からの投資がより大きな助けになっているのだ。


ゲーム会社の投資成果は,Wemadeが一番槍


 多くのゲーム会社がスタートアップ投資に乗り出しているが,その中で最も目立つのはWemadeだ。 これまでWemadeが投資したゲーム会社は,まさに華やかなリストになっている。

 「ブレード(BLADE)」を開発したAction Square,「ヒーロー」を開発したThumbAge,「ダークエデン」の開発会社であるSOFTON Entertainment,「ハンドレッドソウル」を開発したHOUND13,「アーキエイジ(ArcheAge)」を開発したXLGAMES,「リン:ザ ライトブリンガー(Lyn:The Lightbringer)」を開発したPulsar Creative,「デスティニーチャイルド」のパブリッシャーであるNextFloor,「Tree of Savior」の開発会社であるIMC Games,JOYCITYの親会社であるnDreams,メタバースプラットフォーム「DITOLAND」の開発会社であるUTPlus Interactiveなどがある。蒼々たる顔ぶれだ。

 そればかりではなく,Wemadeに大きな利益をもたらしたスタートアップゲーム会社も多くある。その代表として挙げられるのが,「オーディン:ヴァルハラ・ライジング」の開発会社であるLionheart Studioだ。
 Wemadeは,2018年に50億ウォン(約6億円)を投資し,以後一部持分を売却して1187億ウォン(約142億4400万円)を稼いだ。残った持分価値も1675億ウォン(約201億円)と評価され,最終予想収益は2862億ウォン(約343億4400万円)で57倍の収益率を記録している。

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 そして「勝利の女神:NIKKE」の開発会社であるSHIFT UPにも,2018年に100億ウォン(約12億円)を投資した。この株式は,Tencentの子会社として知られているAceville Pte.Ltd.などに800億ウォン(約96億円)で売却した。これにより,8倍の収益率を記録している。

 2020年には,「Night Crows」を開発したMAD ENGINEに200億ウォン(約24億円)を投資した。Wemadeはこのゲームをパブリッシングして韓国で成功し,その後投資をさらに進めて,投資金を500億ウォン(約60億円)に増やして,子会社への編入を推進している。なお持分評価額は,2400億ウォン(約288億円)となっている。

 さらにWemadeは,ブロックチェーンやメタバースなどの関連企業にも投資を続けている。2021年のハイパーリズム(Hyperithm)を皮切りに,2022年にはアルタバ(ALTAVA),ファンシー(FANC),イスクラ(Iskra),プラネタリウムラブス(Planetarium Labs),Jadu,double jump.tokyoなどに対して,シードあるいはシリーズ投資を進めている。
 今年はシンガポール法人を通じて,ブロックチェーンゲームを開発する中国のゲーム会社5社に対して,約86億ウォン(約10億3200万円)を投資した。

 またゲーム会社ではないが,Kakaoに250億ウォン(約30億円)を投資して1900億ウォン(約228億円)で売却し,ここでも8倍以上の収益を収めている。Wemadeのチャン・ヒョングク代表は「投資と成功の間に時間差がある」として,信念を持った投資は,時間が経って成功するという哲学を述べている。


ますます投資が減り,貧富の差が激しくなっている


 しかし昨今では,ゲーム業界の好景気の元ともいえた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束に向かい,それと同時に世界的に不況が訪れ,ゲームスタートアップへの投資が行われる数や金額も減少していることが分かった。特に韓国ではブロックチェーンとメタバースのブームが去り,その余波がゲームにも及んでいる。

直近5年(2019〜2023)第1四半期業種別ベンチャー投資現況(単位:億ウォン)
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 韓国中小ベンチャー企業部が発表した今年第1四半期のベンチャー投資現況によると,ゲーム部門は196億ウォン(約23億5000万円)で前年同期比でー73.7%になっている。投資金額で見ると前年より549億ウォン(約65億8800万円)減少し,その金額は,2019年以降の第1四半期で最も少ない。

 投資集計サイトのTHE VCによると,昨年一年間で国内スタートアップを対象にした投資や買収合併は50件を超えており,総額1兆3千億ウォン(約1560億円)以上が投入された。しかし今年は,10月末時点で行われた件数は30件ほどに過ぎず,金額はわずか2000億ウォン(約240億円)にも及んでいない。

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 それでも,有望なスタートアップへの投資は続いている。「BTS」の所属事務所HYBEのゲーム子会社であるHYBE IMは,Aquatreeに300億ウォン(約36億円)のシリーズA投資を行った。Aquatreeは,Netmarbleで「リネージュ2 レボリューション」と「二ノ国」の開発を総括した,元Netmarble Neo代表のパク・ボムジン氏が設立したスタートアップだ。AAA級を追求するMMORPG「プロジェクトA」を開発中だ。

 KRAFRONは最近,バウンダリーに対してシード投資を行った。バウンダリーは,ハック&スラッシュアクションRPG「UNDECEMBER」開発会社の元代表であるク・インヨン代表と主要開発陣が合流したスタートアップだ。ハック&スラッシュジャンルの新作「プロジェクト・ナット(Project NUT)」を開発中だ。

 多くのVCが参加した投資もあった。3つのVCが,RPG専門のスタートアップBLACKSTORMに対して150億ウォン(約18億円)シリーズA投資を行った。ここは「妖怪ウォッチ メダルウォーズ」「マーベル・フューチャーレボリューション」の開発陣で構成され,「プロジェクトXT」と「プロジェクトNB」の2種類のゲームを開発中だ。

 Rich Alienは,親会社である111 Percentを含め,4つのVCから115億ウォン(約13億8000万円)のシード投資を誘致した。日本の有名漫画である「賭博黙示録カイジ」をベースにした,都市経営シミュレーションゲーム「カイジ:激熱の街」などのゲームを開発中だ。

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 とはいえ全体的に投資そのものは減っており,その理由について業界では,チャレンジングな投資ができない状況だと口を揃える。投資するゲームを探している企業やVCは依然として多いが,メンバーの能力とコンテンツを選ぶレベルが年々高まっているということだ。シード投資も慎重になり,シリーズA投資は検証されたところだけが進行する傾向になっている。

 それに加えて,投資をしようとするゲームのプラットフォーム比重が,モバイルからPCとコンソールにシフトしていること,一般的なジャンルを相手にしないことというのも,最近の傾向だ。モバイルゲームは,すでにレッドオーシャンになっているだけに,特別さがなければ成功が難しいからだ。とある開発会社の代表は「最近の投資家たちは,放置型や「リネージュライク」などのジャンルは興味がない」と明らかにした。
 さらに,プラットフォームの特性上,マーケティングが成否に大きな影響を及ぼすが,モバイルマーケティング費用が高騰しているのも理由として挙げられる。だから多くのパブリッシャーが,マーケティング費用に対するギャランティを付けない傾向だという。

 つまり,現在韓国のゲームスタートアップ投資状況は,より安定的で可能性の高い方に投資をすることへと流れている。優れた開発人材と差別化されたコンテンツ,モバイルおよび特定ジャンルからの脱却などが,投資を受ける可能性を高くする必須要素となっている見通しだ。(著者:パク・サンボムザン・ヨングォン
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