イベント
台湾最大級のボードゲーム展示即売会を見てきた。海外進出に意欲的な日本人出展者のブースも多数
TOBEは2017年に始まった比較的新しいイベントだが,その規模は(新型コロナウィルス流行期を除けば)順調に拡大している。今年は温帯低気圧の影響で天候に恵まれないながらも,出展者の熱意と来場者の意欲によって大盛況のうちに終わった。今回は3日間参加した筆者が,その様子をレポートする。
会場は近年の再開発で誕生した,台北市松山文創園區にあるレトロな倉庫だ。この地区は古い工場などを改装して文化施設としており,同日にはほかにも展示会などのイベントが行われていた。連日雨天にも関わらず,会場はたくさんの来場者でにぎわっていた。
パッと見渡しても,ゲーム好きな若者たちだけでなく,小さい子連れのファミリーやカップルなど,日本と同様に広く多くの人がアナログゲームに関心を持っているのが見て取れた。付き合わされて会場に来たと思しきカップルの片方が帰りたそうな表情をしているのを時折見かけるのも,日本と同様だ。
各ブースではおおむね試遊スペースが用意してあり,試遊するとスタンプがもらえ,集めると賞品がもらえる仕組みになっている。その効果もあってか会場の試遊卓は盛況だった。
出展ブース数は約60と,規模的にはゲームマーケットなどと比べてそこまで大きいわけではない。しかしそのぶん,出展者同士の協力は密なようで,それぞれ手を取り合い台湾のアナログゲーム界を盛り上げていこうという確かな熱意を感じられた。
このイベントで目を引いたのが,日本からの出展者の多さで,なんと11ブースもあった。そのほかにも,出展者は台湾の企業だが展示物は日本生まれのゲームの中文版というパターンもいくつか見かけた。海外への進出に意欲的な日本のアナログゲーム制作者たちも多いようだ。
海外イベントと言うと,不安になるのがやはり言語だ。筆者は,中国語の基本的な挨拶と麻雀で使われる単語しか分からないので不安だったが,幸いほとんどのブースでは英語が通じたため,ゲームの説明を聞いたり試遊をしたりといった範囲では問題なく楽しめた。日本語が通じるブースもあったほどだ。
出展者にとっても,言語の壁は大きな問題の1つである。日本から出展しているほとんどのブースでは現地スタッフを雇っていたが,小さいブースでは現地スタッフの手が足りずに,日本から来た出展者が英語で対応をする場面も見られた。もちろん来場者は全員が英語を話せるわけではないため,残念ながら試遊を諦めてしまう人もいたが,例えば子供連れのお父さんが英語を話せるので子供に通訳して伝えるなど,微笑ましい光景も見られた。
海外からの来場者に対して,現地の人々の対応はとても暖かく歓迎的だった。例えば日本の出展者の弁当を,隣の現地企業のスタッフが代わりに電話注文してくれたり,日本のゲームを気に入った来場者がデザイナーに飲み物を差し入れたりなど,さまざまなエピソードを耳にした。筆者自身,いくつかのブースでとても親切に日本語で対応していただいたし,言葉が通じなくても何とかしようとしてくれた。ありがたいことである。
三日目に降った雨は台北の基準でもかなりの豪雨だったようだが,それでも来場者の客足はそれほど鈍っていなかったことは特筆に値する。名だたる世界のイベントに比べると小規模とは言え,TOBEは台湾のアナログゲームシーンで確かに根づきつつある。また,今後の成長を感じさせる密度と熱気もあった。日本からも比較的行きやすい台北で行われるTOBEには,来年以降も注目したい。
著者紹介:Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」をはじめ,アメリカ「Gen Con」,フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年はSPIEL Essenに行きたい旅行者向けのガイド「Essen Spiel Guidebook 2023」を同人誌として刊行。
tackman
Im Kartonメンバー。訪問時は文字を書いたり写真を撮ったりする。「Civilization IV」でストラテジーゲームにハマり,「Civilization: The Board Game」(2010)でボードゲームにハメられた。好きなボードゲームは「イノベーション」「テラフォーミング・マーズ」など。
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