インタビュー
サービス15周年が迫る「リネージュ2」に「自動狩り」システムが実装。日本運営の統括プロデューサーにその真意と今年の展開について聞いた
ライブサービスにおける血盟システムの変更は,従来のコミュニティ環境の破壊,自動狩りはいわゆる「公式BOTではないか」という現役プレイヤーからの指摘もあって,賛否両論が巻き起こっている。いずれもMMORPGにとってセンシティブな内容であり,なぜ,このような大きな改編を行うのかは気になるところだ。今回,エヌシージャパンのリネージュ2統括プロデューサー 新井友和氏に,自動狩りの導入や血盟システムの改編を決断した真意,そして15周年を迎える2019年の展望について聞いた。
リネージュ2の新たな発展のために自動狩りの導入を決断
MMORPGなどオンラインゲームの歴史は,BOTを含んだ不正行為と運営との戦いの歴史でもある。プレイヤーにとってもBOTは,狩りの邪魔になり,ゲーム内の経済を混乱させる存在として,古参であるほど嫌悪感を抱く存在と言えるだろう。そして,それは長年サービスを続ける本作も例外ではない。
新井氏自身も,自動狩りには若干の抵抗があると話すが,それでも導入に踏み切ったのは「新しい大型のコンテンツに挑むための環境整備と,リネージュ2の今後の発展のため」だそうだ。
MMORPGにおける発展と言えば,メインストーリーの拡充だったり,魅力的なコンテンツの実装だったり,攻城戦をはじめとするPvPだったりといろいろな要素はあるが,その根幹となるのは,“プレイヤーの増加”に他ならない。そして,それを実現させるための「自動狩り」になるのだという。
というのも,昨今の新作MMORPGはというと,スマートフォン向けにタイトルが多くリリースされ,戦闘を自動で進めるモードが標準装備されているものがほとんどなのだ。スマートフォンというプラットフォームならではのスタイルだが,とくに若いプレイヤーにとっては,それが当たり前の機能になりつつある。
そんな彼らが慣れ親しむ「自動狩り」をリネージュ2に導入することで,新規の獲得を目指し,また,生活環境の変化などで長いプレイ時間を確保できずに離れてしまった休眠プレイヤーが復帰しやすい環境も作りたいというわけだ。
ただ,すべてを自動狩りで済ませるわけではなく,新井氏によれば,自動狩りはあくまでプレイのサポート的な役割として,手間と時間が掛かる部分を任せ,レベルが上がったら自分で操作して仲間とパーティプレイを楽しむといったように,使い分けてほしいとのことだ。
ところで,この実装で気になるのは,自動狩りに任せてプレイヤーがPCから離れている状態,いわゆる不在マクロ状態についてではないだろうか。自動狩りというシステムの性質上,一時的か長時間かはともかく,そのまま席を離れることは少なくないはずだ。事実上BOTを利用しているのとあまり差異がない状況を今後,運営側がどう判断するのだろうか。
新井氏によれば,今回導入する自動狩りと非公式BOTなどによる動作は,一見しただけでは判別は難しいそうだ。ただし,BOTの利用はセキュリティ上の問題点がある。そのため,運営ツールなどで検知可能な非公式BOTへの対処を含め,不正行為への対処は今後も続けていくと明言した。また,リネージュ2ではPK(プレイヤーキラー)が可能なので,自動狩りをしたままで離席すると,その間にPKされることもあり,長時間の離席はお勧めできないとのことだった。
このほか,自動狩りが導入されると同時に,グレードペナルティの撤廃も予定されている。リネージュ2では,レベルの低いキャラクターが高グレードのアイテムを装備するとペナルティが課されていたが,今後はゲームを始めた直後でも高グレードのアイテムを装備できるようになるというものだ。
「強くてニューゲーム」ではないが,トレード機能を利用し,装備の貸し借りを行うことで,自動狩りと相まってレベルが上げやすい環境が生まれ,新井氏もキャラクターの成長により血盟の強化が促進され,攻城戦で勝てるチャンスが増えるのではないかと期待しているという。
アップデート「戦乱の幕開け」で3つのシステムに大きなメスが入る
続いて,ライブサービスでのみ実施されるアップデートについて話が及んだ。2月27日に実施されるアップデートは「戦乱の幕開け」。そのタイトルからイメージできるように,対人に特化したコンテンツの追加が決定している。
これに伴って,大きな3つのシステム改編が予定されている。
1つめは,成長ルートの見直しだ。リネージュ2はキャラメイク時の初期クラスから1次職を経て,4次職(覚醒特化クラス)まで転職が行える。そこに至るまでのクエストをクリアしたり,各クラスの多彩なスキルを覚えたりしていくのが本作の面白さの1つだったが,一方で1クラスの系統だけでも50以上ものスキル性能を理解しなければならず,初心者や復帰者にとっては大きなハードルになっている。
そこで,種族・クラスに関係なく,覚醒特化クラスになれるLv85までの育成ルートをほぼ1本道に変更し,大幅なスキル変更が導入される。
2つめは血剣アカマナフと魔剣ザリチェの2つの呪われた剣についての変更となる。
サーバーに2本しかないこの呪われた剣は,PKに特化した性能を持ち,装備しているとキャラクターネームがそれぞれの呪われた剣の名前となり,自身の正体を隠したままPKができる。この呪われた剣のシステムがリニューアルされる。
呪われた剣所持者がPKをすればするほど,攻撃力がアップするのはこれまでと変わらない。今回のアップデートでは,フィールドにドロップした呪われた剣を手に入れ,低位置に出現している「宝箱」を守り切ることで,呪われた剣の所持者は50億〜100億アデナが得られるのだ。
大きな報酬だが,宝箱を狙ってNPCの「神官」が攻撃を仕掛けてくるし,呪われた剣の所持者のアデナ入手を阻止する目的で,所持していないプレイヤーに襲われる可能性もある。大量のアデナを入手しようと思うと,NPCとプレイヤーの板挟みになり,獲得は一筋縄ではいかなそうな雰囲気だ。
3つめは,現役プレイヤーからも大きな反響があったという,血盟システムの改編だ。
簡単に説明すると,レベル8以上の血盟の所属人数上限が大幅に削減される。血盟レベル15においては約1/3弱となり,そこに含まれなかった血盟員は強制退会させられてしまう(※)とのことだ。
※最終ログアウトの日時順で判断される
この改編を実施する理由として新井氏は,今後実装が予定されている血盟を対象とした競争型コンテンツをあげた。というのも,1つの血盟が圧倒的な人数を擁していると,それだけで勝利が確定してしまい,公平感が失われてしまうからだ。その前段階として,今回の血盟システムの改編に踏み切ったのだという。それと同時に,一強に近い状態の攻城戦を,より活性化させるという意味もあると新井氏は付け加えた。
長い間血盟を中心としたコミュニティを築いてきたプレイヤーさんに対して大変申しわけないと謝罪を重ねる新井氏は,今後,血盟育成がしやすいように,血盟ポイントを付与するようなイベントの実施をはじめ,様々なケアをしていきたいと述べた。
このほか,新規プレイヤーや復帰プレイヤー向けに,期間限定のダンジョンを開設し,既存プレイヤーに追いつけるような施策も予定しているとのことだ。
自動狩り特化の新サーバー「アデン」オープン。数々の新システムで新規プレイヤーもラクラク育成
クラシックサービスの最大のトピックとなるのが,新サーバー「アデン」の開設だろう。このアデンは通常のクラシックサービスサーバーとは違い,自動狩り,そして初心者や復帰者向けに特化したサーバーであることが特徴だ。
ゲームの流れとしては,ライブサービスの成長ルートの見直しと同様に,クエストから転職,そしてキャラクターの育成までが1本道となっていて,迷うことなく進められるという。クエストのNPCにクリア報告をすると,次のクエストの狩り場まで転送してくれるなど,いたれりつくせりだ。さらに,NPCと会話しなくても,画面上のアイコンを押すだけでも,いつでもどこでもテレポートが可能となっている。
さらに,自動狩りがしやすいようフィールド上のオブジェクトが大幅に削減されていて,移動がしやすくなっている。また,モンスター数が増加しており,リポップするまでの時間も短くなっているという。これは,自動狩りによってフィールドは大きく混雑することに,事前対応した形だ。なお,フィールド上のオブジェクトの削減は,ダンジョンなどには適用されていないので,ダンジョン内ではプレイヤー自身が動かした方が良さそうだ。
また,経験値テーブルが緩和され,キャラクターが育成しやすいのもアデンサーバーの特徴だ。この経験値テーブルの緩和は,ライブサービスやほかのクラシックサービスの既存サーバーにはない,アデンサーバー独自のものとなっている。具体的には,2〜3日普通にプレイしていれば,レベル50くらいにはすぐ到達できるバランスになっているとのこと。ただ,レベル60以上になるとソロでは少し厳しくなるため,パーティ狩りを推奨するとのことだった。
このほかにも,街や特定の狩り場にいる“ニャオーン団”から,無料で長時間のバフをかけてもらうことができるので,より狩りをしやすい環境が整っている。
そのほかにも,プレイヤーの育成を手助けする「L2コイン」と「魔法のランプシステム」が導入される。
L2コインはアデナと同様にモンスターからドロップする第三の通貨で,専用ショップで装備やアイテムが購入できる。そのほかに,死亡してしまった時の復活にも使用可能だ。
ただし,レベル40までは1日に160枚,レベル41からは1日に300枚までと,獲得数に制限があり,また基本的にトレードはできない。アデナに比べてドロップ率が低いのは残念だが,いろいろと便利で使い勝手のある新通貨となりそうだ。
魔法のランプシステムは,モンスターと戦っていると魔法のランプゲージが溜まり,溜まったゲージを使って魔法のランプガチャが回せるというもの。ガチャは1等から4等まであり,経験値獲得アイテムやSPが得られる。1等で獲得できるアイテムを使えば,レベル20から48まで上がるほどで,一気にレベルをジャンプアップさせることも可能だ。狩りにかけた時間を経験値に還元できるので,狩りのモチベーションになるのではと,新井氏は期待を寄せていた。
これらのほかにもアデンサーバーでは,ライブサービスの「バイタリティシステム」に似た,獲得経験値にボーナスが加えられる「サイハの恩寵」の導入や,毎日ログインすることでアイテム報酬がもらえるイベントなどが行われる予定で,さらに2月20日からはウェブページにログインすることで,アップデートと同時にアイテムがもらえるキャンペーンなども実施されている。新井氏によると,+16の強化されたノングレード武器の配布もあるとのことで,毎日プレイしてレベルも装備も充実させてもらえればと述べていた。
なお,アデンサーバーでは,攻城戦やオリンピアードは未実装の状態でのスタートとなるとのことだ。
最後に新井氏は,2月16日〜17日にかけて発生したログイン障害について,多くのお客様にご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんと謝罪し,2019年の展望として,引き続き短いサイクルでアップデートを実施して,プレイヤーにより迫力のある,ドキドキワクワクを感じてもらえるコンテンツを提供していきたいと話した。
そして,今回のアップデートはその第1弾であり,サービス15周年となる6月22日には,様々なイベントを予定していて,新しいコンテンツをお披露目するとのこと。これからも,プレイヤーとってリネージュ2が人生の喜びになるようなゲームを作っていくので,楽しみにしてほしいと述べて締めくくった。
「リネージュ2」公式サイト
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