2004/08/25 19:29 |
E3の1C Companyブースで初公開された「The Stalin Subway」のデモがドイツでも展示され,ゲームの全貌が見えてきた。最近ロシアではちょっとしたブームになっている共産主義時代を舞台にした作品の一つで,政府の陰謀を阻止するために一人で奮闘するというFPSである。地味な設定とは裏腹に,かなり期待できそうなタイトルだ。
The Stalin Subwayは,密告と粛清でソ連の「権力政治体質」が世界に知れ渡ったスターリン時代末期,1952年ごろを舞台にしている。鉄道シミュレーションを連想してしまいそうなタイトルセンスだが,実際には一人称視点のシューティングだ。 1952年にスターリンは72歳,史実では翌年に死去するわけだが,ストーリーはまったくのフィクションとして進行する。子飼いの軍部高官たちが,スターリン引退後の混乱を予想し,最悪の事態に対処するために強力な破壊兵器を開発したのである。いわばモスクワごと人質にしたようなものだ。 プレイヤーが操る主人公は,その事実を知ったKGBの若き将校グレブ・スボロフで,民衆を犠牲にしてまで保身に走る政権に,ただ一人で叛旗を翻す。地下鉄の駅構内や路線はもちろんのこと,モスクワ州立大学やクレムリンなどのランドマークが登場することから,ずっと地下に潜っているわけではなさそうだ。もっとも,一番の見せ場はコードネームでD6と呼ばれる軍専用の地下鉄道と,秘密基地になるとのことだ。
開発元のG5 Softwareによれば「壁やオブジェを画面で復元するために何度もリサーチしたが,まだすべてが真新しい50年以上前の風景に仕立てるのは難しかった」という。武器も当時のままのものが再現され,第二次世界大戦を経てパワーアップしたグレネードランチャーや火焔放射器,さらには対戦車ライフルのPTRS-41など,およそほかのゲームではお目にかかれないシロモノが使える 展示されていたゲームはまだ敵やNPCもほとんど配置されていないα版だったが,駅の場面では列車の発着の様子が描かれていた。テクスチャが非常に細かく,実在する建物に関してはすべて寸法を合わせているという凝りようだ。軍の輸送列車や工事用の貨車,研究所,バンカーなどが登場し,破壊できるオブジェクトも多い。さらには,火をつけたり貯水池を決壊させて洪水を起したりもできるらしい。
G5 Softwareは,描画および物理エンジンに独自のものを開発し,Havok系のソフトとは少し異なる雰囲気のラグドール処理(ragdoll。意識を失ったときなど,外部の力だけで動かされる状態の人体モーション)を実現している。顔の表情も変化するが,こちらはLifeStudioの「HEAD Technology」というミドルウェアを使用している。マルチプレイヤーモードも計画されており,現実のモスクワの風景や建築物を使って専用マップを制作したり,特別にシナリオを用意したキャンペーン型のチーム対戦モードを用意したりといった,新しいアイデアにも注目したいところ。
発売時期はまだ決まっておらず,ロシア以外でどのようにリリースされるのかも不明だ。G5 Softwareは今回の出展で,ヨーロッパやアメリカへの販売ルートを切り拓くことができたのだろうか。あまり馴染みのない題材ではあるが,その技術力や独自のマルチプレイヤーモードで,興味をそそる作品なのは間違いない。(奥谷海人)
(C)2004 Buka Entertainment,1C Company,G5 Software
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