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「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」ゲームデザイナーインタビュー | - 2004/06/04 16:54 |
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■■■「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」とは?■■■ ■4Gamer.net(以下,4G) 国内発売間近の「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は,どんなゲームになるのでしょうか? ■金親晋太郎氏(以下,金親) 魔法使いの牢獄"アズカバン"から脱走した囚人がハリー・ポッターを狙っているという,映画と同様のストーリーが堪能できるようになっています。ネタバレを気にしないなら,映画の前にプレイしておくといいでしょう。一応,低年齢層向けのゲームとして制作していますが,映画や原作のファンなら誰もが楽しめると思います。 また本作の大きな特徴は"ハリー・ポッター"だけではなく,"ロン" や"ハーマイオニー"が操作可能になったことでしょう。これまでに「ハリー・ポッターと賢者の石」「ハリー・ポッターと秘密の部屋」外伝として「ハリー・ポッター クィディッチ・ワールドカップ」をリリースしてきましたが,"ロン" や"ハーマイオニー"でプレイしたい! という声が非常に多かったんですよ。 ■4G ゲームのスタート時にキャラクターを選択する形式なんでしょうか? ■金親 ストーリーの進行に応じてプレイキャラクターが切り替わるようになっています。キャラクターごとに習得している魔法は異なるので戦略も変わるし,物語をハリー以外の視点でも楽しめるようになっています。 ■4G プレイキャラクターを変えるだけではなく,ストーリーを多角的に見せられるというのはいいですね。 ■金親 ほかの見どころとして「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」は,PC版,プレイステーション2版,NINTENDO GAMECUBE版,ゲームボーイアドバンス版で,それぞれゲームシステムが大きく異なっています。 ■4G タイトルは同じでも,違うゲームなのですか? ■金親 ええ。プラットフォームに応じて適切な見せ方を考えた結果,そうなりました(編注:プレイステーション2版とNINTENDO GAMECUBE版はほとんど同じ)。コンシューマのパッドでプレイするゲームを,PCに持ってきたところで遊びにくいですよね? 逆もまたしかりで,だったら無理して移植せずにプラットフォームに合わせた「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」を制作しようと考えたんです。ゲームボーイアドバンス版はRPGになっていますよ。 ■4G 具体的にPC版ではどういった点が特徴なんですか? ■金親 PC版はアンリアルエンジンを使用し,アクションゲームとして仕上げました。近所の子供たちにテストプレイを頼んでバランス調整をしているので,誰もが楽しめる難易度になっているはずです。また高解像度ということもあって,とにかくオブジェクトのディテールにこだわりました。たとえばハリーの通う魔法学校には動く階段がありますが,この動きについては,かなりいいものになったと自負しています。また映画は一方向からの描写になりますが,ゲーム世界は3Dなのでプレイヤーが好みのアングルを楽しめます。中庭などの描写も美しいので,ぜひとも映画では見られないアングルを楽しんでほしいですね。ひょっとすると,新しい発見があるかもしれません。 あと個人的に見どころだと思っているのは,ゲーム中のチャレンジで満点を取ると,ビーンズボーナスルームへ行けるようになること。ルーム内では圧倒的な数のビーンズを獲得できるだけではなく,トランポリンで跳ねるなど楽しい要素が満載なのでぜひとも体験して欲しいですね。 ■4G 原作があるものはキャラクターイメージや世界観が確立しているため,自由勝手に開発できない。するとどうしても無難な作品になりがちで,人気に便乗したタイトルと思われてしまうこともあると思います。本作がそう思われないように,どういった点に注力しましたか? ■金親 小説,映画,ゲームの世界観が一体となってハリー・ポッターの世界を作り上げていこうと考えて開発しました。ゲームでは映画で少ししか触れられなかったシーンを膨らませていたり,サイドストーリー的なイベントを盛り込むことで映画や小説を補完しているといってもいいでしょう。またゲーム内ではカードが随所で手に入り,そこに書かれた情報を読むことで,原作への理解力をより深められます。 ■4G 遊びながら原作への理解度をより深められるというのはいいですね。でも映画や原作にない付加要素を盛り込むには,さまざまな制約があったのでは? ■金親 ですね(苦笑)。映画ではあまり触れられない部分をゲームで補完しようとしてアイディアを考えてチェックに出すと,まず通らない。細かい部分では演出に対するチェックにも厳しい部分がありました。炎を投げてくるゴーストとロンが対決するシーンでロンが燃える演出を入れたところ,ワーナーサイドからメインキャラの扱いには慎重にしてほしいとのコメントをいただき,ボツにしました。 ■4G さすがは世界のハリー・ポッターですね。 ■金親 とはいっても厳しいことばかりじゃないんです。原作者のJ.K.ローリング氏がストーリーだけではゲームにしづらいだろうと,ゲームを意識した設定資料などを70ページ以上も書き起こしてくれたんですよ。あまりにも内容が濃くて実は全部使い切っていないので,このあたりの要素は次回作以降で使えたらと考えています。 ■4G そんなにたくさん……。そうした設定が今後のゲームに生かされることにも期待したいです。ところでキャラクターのモデルですが,今回はより映画に近くなったという気もしますが。 ■金親 これまではパッケージやゲームキャラクターに,映画でハリーを演じたダニエル・ラドクリフなどキャストをそのまま使用することは難しかったので,あくまでも「似たもの」になっていたんです。だからどこか違う印象だったと思います。しかし今回はワーナーから許可が下りてポップもパッケージも本人そのまま。これまでを考えると,これは異例の扱いだと思います。 ■4G つまりゲームが認められたと? ■金親 だといいですね(笑)。3タイトルを作って,映画とゲームはより密接に絡み合えるようになってきたことは間違いないように思えます。 ■4G 映画の人物とゲームのキャラクターデザインがイコールになるのは賛成ですが,それはそれで苦労がありそうですね。今度はキャラクターのイメージだけではなく,俳優などにも気をつかわなければならないとか。 ■金親 ダイハードで活躍したアラン・リックマンがスネイプ先生を演じているんですが,肖像権は彼個人が持っているんです。最終的にゲームでは映画のスネイプ先生とはちょっと違うキャラとして描かれています。それから,校長先生を演じていたリチャード・ハリスは亡くなり,アズカバンの囚人ではマイケル・ガンボンが演じています。これはどうしようかと悩んだ結果,両者の特徴をミックスしたキャラクターとして描きました。映画とゲームのキャラクターを比較しながらプレイするのも面白いかもしれません。 ■4G 同シリーズは低年齢層を対象にしたゲームですが,開発者も若いのですか? ■金親 スタッフは18から40歳くらいです。さすがにスタッフたちに子供の気持ちになれ! といっても無理ですから,テストプレイは近所の学校の子供達に協力してもらい,バランス調整しました。開発自体は全作を通じて同じチームなので,非常にやりやすかったですね。日本人スタッフも増えていますよ。 ■4G 日本人スタッフが増えている? ■金親 実は日本からCG担当のスタッフを派遣してもらっていて,今回のキャラクターは日本人スタッフによるものです。前作と比べると顔つきも可愛い感じになっていると思います。昔は日本らしい絵柄(目が大きいなど)は,本家スタッフにはあまりウケがよくなかったんですけど,ジャパニメーションの影響もあってか現在ではそれほど抵抗がなくなってきたし,日本のCGクリエイターもそれほど極端な絵は描かなくなってきたように思えます。お互いがいい形で歩み寄ったおかげで,よいキャラクターが描けたのではないでしょうか。 ちなみにパッケージを見てもらえば分かりますが,同じ作品でも日本で作るものとイギリスで作るものでは,ずいぶんと方向性が違うと思います。どうですか? 確かにずいぶん違いますね。日本のほうが親近感が沸くというか……。 ■金親 また日本人の特徴としてスタッフもプレイヤーもグッズが好きですね。日本では予約特典として"ファイアボルト"の携帯ストラップが付きますよ。ワーナー公認のグッズなので立派なファンアイテムといえるでしょう。コンシューマとPC合わせて1万個しかないので,貴重なグッズになると思います。これ,スタッフでももらえないんですよ。一個でいいから欲しいなぁ(笑)。またこれは文化の違いですが,イギリスではソフトにオマケを付けるという発想がほとんどありません。 日本人はゲームの中でも外でもコレクションが好きですからね。そういうグッズには目がないと思いますよ。ましてやハリー・ポッターには目がないファンが多いので効果は高そうですね。日本向けのプロモーションとしてほかには? ■金親 各ショップで個別のプロモーションをするかな? あと映画が始まる前にゲームの宣伝を入れたり,映画館で直接販売するかもしれませんね。映画を見て,本作をもっと深く理解したいと思ったら,ぜひゲームをプレイしてほしいです。 ■4G シナリオが同じだからゲームをプレイすればハリー・ポッターの苦悩や苦戦を分かち合えますね。ああ,あのときのハリーはこんなに大変だったのかとか。最後に今後の展開についても話を聞かせてもらえませんか? 本編以外に「ハリー・ポッター クィディッチ・ワールドカップ」といった外伝的なタイトルもリリースされていることだし,そのあたりの今後の展望とか。 ■金親 まったく新しい外伝は難しいですね。クィディッチはハリー・ポッターの中に登場する架空の競技をゲーム化したものなので,完全な外伝とはいえないと思います。以前にハリー・ポッターをテーマにしたミニゲームを集めたパーティゲームもいいかなと思いましたが,結局開発はしませんでした。それからMMORPGにも興味はありますが,ゲームの世界でプレイヤーが好き勝手に暴れてしまう可能性を考えると,さすがに怖い気がします。ワーナーさんや原作者が大切に作り上げてきた世界観を損なうようなことはしたくありませんから。といっても今後,外伝をやらないとはいいません。個人的には非常に興味はあります。 事前情報ではイギリスからゲームデザイナーが来日するとの話だったので,てっきりインタビューは通訳付きのものになると思っていたが,現れたのが日本人(といっても日本には数年しか住んでいないそうだ)であったため,少々面食らってしまったインタビューとなった。金親氏は冗舌な人で,インタビューのほとんどは彼がしゃべりっぱなし。インタビュー記事で経営者や大物プロデューサーなどに話を聞く場合は,"お約束の答弁"ばかりが多くて具体的な話が聞けない場合が多いが(現場の人ではないので当たり前なのだが),金親氏のトークの内容からは現場の生きた声が感じられ,非常に楽しいインタビューとなった。 文中にも出てきたが,原作者の70ページ以上にも及ぶ設定も残っているし,"個人的に"とはいっていたが外伝への興味もあるそうで,今後の同シリーズのゆくえは彼にかかっているといっても過言ではないだろう。日本での発売は2004年6月26日。プレイヤーやハリー・ポッターのファン達にどう受け止められるかが楽しみだ。(Murayama) →「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」の記事一覧は,「こちら」 (C)2004 Electronic Arts Inc. 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