当サイトの連載記事「奥谷海人のAccess Accepted」の第26回(
「こちら」)で紹介したように,「PhysX」は「PPU」(Physics Processing Unit)であり,文字どおり,モノとモノの衝突など,
物理演算を専門に扱うチップだ。同製品はアメリカの新興企業
AGEIAの手によるもの。元来CPUが受け持つ物理演算を専用チップで処理することにより,ゲームのパフォーマンス(=フレームレート)を落とさないで,爆発の処理などをより現実感のあるかたちで処理できるといわれている。
ここまでのところ,公式な情報はAGEIAのWebサイトにあるのみ。一部海外サイトが「数社が搭載製品を開発中」と報道しただけで,進捗状況は闇に包まれていた。
AGEIAとの契約について明かしてくれた,ASUSTeKのビデオカード部門プロダクトマネージャSean Lai氏
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だが,どうやら事態は動き始めるようだ。COMPUTEX TAIPEI 2005の会場で,ASUSTeK Computer(以下,ASUSTeK)のビデオカード部門プロダクトマネージャ,Sean Lai氏は
「ASUSTeKとAGEIAは(契約の)合意に至っている」と明言。まだ契約自体は済んでいないようだが,「PPUの効果は本物で,パフォーマンスは非常にいい。搭載カードは
今年中に登場し,PCゲームの世界を変えるだろう」と語ってくれた。ただし,残念ながら詳細については「まだ語れない」とのことだったので,サンプルカード登場時期など,はっきりしたことは聞き出せていない。
■カードの価格は「ミドルレンジのビデオカード並み」に
前述の連載で紹介したサンプルカードには,PCIとPCI Express x1,両方のコネクタが付いていたが,これは"そういうこと"だったようだ
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一方,匿名を条件で取材に応じてくれた某有名メーカーの担当者は,「PhysX搭載カードの価格は,
ミドルレンジ価格帯のビデオカード並みになる。もちろん,ハイエンドクラスのビデオカードと組み合わせて利用するのが理想的だが,NVIDIA SLIとほぼ同じ予算で,『ミドルレンジクラスのビデオカード+PhysXカード』を購入するのも,今後は有力な選択肢となるだろう」と話す。どうしても具体的な予価は聞き出せなかったので,1万円台中盤のGeForce 6600クラスなのか,2万円台中盤のGeForce 6600 GTクラスなのかまでは分からない。
なお,この担当者は匿名という条件で安心したのか,以下のようなことも話してくれたので,まとめて紹介しておきたい。
■チップ自体の完成度はすでにかなり高い
■カードはPCI用と,PCI Express用の両方が発売されるはず
■PhysXを利用するにはゲーム側のサポートが必要。対応タイトルでなければPhysXは利用できないが,現在開発中のゲームタイトルは結構な数が対応する予定
そこまで話が具体的になってるならカード見せてよ,というのが正直な感想だが,影も形もない割には,相当期待できそうな雰囲気が漂ってきたPhysX。ゲーマーにとって,年末に向けて楽しみが増えたのは間違いない。(佐々山薫郁)