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  • 発表日:2003/09/24
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印刷2006/11/29 14:01

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AMD,「4×4」ことコンシューマ向けデュアルCPUプラットフォーム「Quad FX」を発表 2個のデュアルコアCPUで“4コアシステム”を実現

Ian McNaughton氏(Product Manager - Athlon 64 FX Processors, Desktop Marketing, AMD)
 AMDは,2006年11月29日,AMD64ベースの新プラットフォーム「Quad FX」を発表した。開発コードネーム「4×4」(フォーバイフォー)として知られていたQuad FXは,デュアルコアCPUを2個搭載して,システムレベルで4コアを実現する環境を一般ユーザー向けに提供するもので,もっといえば,IntelのクアッドコアCPU「Core 2 Extreme QX6700」対抗となる。

 11月1日に開催された報道関係者向け事前説明会の内容では,AMD本社のプロダクトマーケティングマネージャーで,Athlon 64 FX担当のIan McNaughton(イアン・マクノートン)氏が,Quad FXのキーワードとして「Mega Tasking」(メガタスキング)を強調。複数のタスクを同時に実行させることの多いパワーユーザーが,Quad FXの主なターゲットであると説明した。

Mega Taskingの定義を示したスライド(左,出典:日本AMD,以下同)と,会場で行われたデモ(右)。2007年に20タイトル以上など,今後はマルチスレッド対応ゲームが増えていくとした。またデモでは,「City of Heroes」の“2アカ”実行とムービー再生などを同時に行い,一部のゲーマーにとってMega Taskingはすでに十分な意味を持つとアピール


■Quad FXを実現する“コンシューマ向けOpteron”
■Athlon 64 FX-70シリーズ


Athlon 64 FX-70シリーズの製品イメージ
 そもそもQuad FXは,4×4という開発コードネームからも分かるとおり,4個のCPUコア,そして4個のGPUを同時に利用することがターゲットとされている。だが,Intelとは異なり,2006年現在,AMDは4個のCPUコアを一つのパッケージに封入したクアッドコアCPUを投入できていないため,“4個のCPUコアを持つPC環境”の実現には,いささかアクロバティックな手法を採用せざるを得なかった。その結果として今回発表されたのが,“Quad FX専用CPU”,「Athlon 64 FX-70」シリーズだ。

Quad FXの主な仕様を示したスライド
 従来製品のAthlon 64 FX-60シリーズがシングルCPUソケット(=シングルCPUシステム)向けのデュアルコアCPUであるというのは,今さら説明するまでもないだろう。現行のAthlon 64ファミリーは,2個のCPU間を接続する「Coherent HyperTransport」(コヒーレント ハイパートランスポート)という仕組みを持たないため,Athlon 64 FX-60シリーズを同一のシステムに2個搭載したシステムというのは,物理的に実現不可能だった。一つのシステムに2個や4個のCPUを搭載したい場合は,Opteron(オプテロン)という,Coherent HyperTransportを持つ,サーバー/ワークステーション向けCPUファミリーを選択する必要があったのである。

 こう説明するとピンと来る人もいると思うが,Athlon 64 FX-70シリーズを一言で説明するなら,それは「デュアルCPUソケット構成を実現するため,Coherent HyperTransportを採用したAthlon 64 FX」ということになる。ただし,既存のAMD製CPUと比較してみると分かるが(),その実態はAthlon 64 FXの特別版ではなく,「デュアルCPUソケット向けのOpteron 2000シリーズを,コンシューマ向けのアンバッファードメモリに対応させたもの」だ。



Athlon 64 FX-70シリーズ3モデルのTDP,Tcaseが示されたスライド
 もう少し細かく見てみよう。
 CPUソケットは既存のAthlon 64ファミリーとは異なり,Opteron 2000シリーズと同じ1207ピンのSocket Fを採用する。そのため……かどうかは分からないが,Athlon 64 FX-74は,AMDのデュアルコアCPUとして初めて,動作クロック3GHzの大台を突破した。
 快挙といえば快挙だが,「ケース内温度はこの数値以下にしないと安定動作を保証できない」という目安であるケース最大温度(Tcase)が,56℃という低い値になっている現実もある。さらりと流してしまいそうな数字だが,実際のところ,Athlon 64 FX-70シリーズの熱設計消費電力(TDP)は125Wで,言ってしまえば,125Wの白熱電球を2個内蔵するようなもの。そんなシステムを56℃以下のケース内温度で運用するのはかなり難しく,扱いやすいCPUとは言えそうにない。空冷する場合には,大きな動作音への覚悟が必要になる。

Athlon 64 FX-70シリーズの価格を示したスライド。「per pair」(1ペア当たり)の価格になっている(※クリックすると全体を表示します)
 同じくデュアルCPUソケット構成を採用するOpteron 2220SE/2.8GHzとの価格差にも注目したい。同じ2.8GHz動作のAthlon 64 FX-72は799ドルなので,Opteron 2220SEより高価に見えるが,実は,Athlon 64 FX-70シリーズは,2個1組のセット販売が行われる。そして,表中に示されている価格のうち,Athlon 64 FX-70シリーズだけはセット価格,つまりCPU 2個分の価格なのだ。Opteronの場合は,TCaceが高いなど,サーバー/ワークステーション向けの配慮があるので,同列に語るのは難しいが,少なくともパフォーマンスで比較するなら,Athlon 64 FX-72はOpteron 2220SEのほぼ半額。1ドル116円とした単純計算で799ドル≒9万3000円だから,店頭価格はOpteron 2220SEと同じ,10万円弱になると思われる。
 Athlon 64 FX-70なら599ドル(約7万円)。同じ2.6GHz動作,L2キャッシュ1MB×2のAthlon 64 X2 5200+の実勢価格は2006年11月29日時点で5万2000円前後だから,これもかなり安価。最上位のAthlon 64 FX-74/3GHzのセット価格も,IntelのクアッドコアCPUであるCore 2 Extreme QX6700/2.66GHzと同じ999ドルだから,かなり気合の入った価格設定といえそうだ。

Quad FXリファレンスシステムのCPU周りを拡大してみた。二つのCPUクーラーに挟まれるように,CPU 1個当たり2DIMM,合計4DIMMの構成になっているのが分かる
 これだけ安価だと,Opteronを買う人がいなくなってしまうのではと心配になってしまいそうだが,実は意外な落とし穴が用意されている。Athlon 64 FX-70シリーズには,1CPU当たり2DIMMで,最大2GBのメインメモリサポートしか行われないのである。Opteronには,もちろんこのような制限はない。

 エラー訂正機構がなく,多くの枚数を差すのが難しいアンバッファードタイプを採用するといっても,Socket AM2でAthlon 64ファミリーは4DIMMをサポートしている実績がある。そうなると,Athlon 64 FX-70シリーズが2GBまでという制限を持つのは,ハードウェア的な理由というより,Opteronを売りたいというマーケティング上の理由である可能性が高い。さすがに,Opteronと同等のスペックを持つ製品を,そのまま半額で投入するわけにはいかず,どこかで差を付ける必要があったのだろう。

■Athlon 64 FX-70シリーズ+nForce 680a SLI
■=Quad FXプラットフォーム


Quad FXの構造を示したスライド(※クリックすると全体を表示します)
 Quad FX用チップセットとしては,先行して“4×4用”として発表が行われている「nForce 680a SLI」が組み合わせられる。同チップセットの詳細については2006年11月9日の記事が詳しいのでそちらを参照してほしいが,簡単に説明すると,「nForce 590 SLI AMD Edition」のMCPによく似た仕様のnForce 680a SLIチップ×2で,4枚のグラフィックスカードをサポートするチップセットだ。各nForce 680a SLIは16レーンと8レーンのPCI Expressをサポートし,それがいずれも片方のAthlon 64 FX-70シリーズとHyperTransportで接続。Athlon 64 FX-70間は,前述のCoherent HyperTransportで接続される。
 なお,これも9日の記事で説明されているが,NVIDIA SLIを構築するには,同一のnForce 680a SLIで提供されている16レーンと8レーンのPCI Expressを利用することが推奨されている。

DSDCロゴ
 さて,ここで意識しておきたいのは,Quad FXというブランド名が,少なくとも発表時点ではAthlon 64 FX-70シリーズとnForce 680a SLIの組み合わせだけに与えられる点だ。原理的には,サーバー/ワークステーション向けチップセットである「nForce Professional 3600」にデュアルコアOpteronを組み合わせても名乗れそうなのだが,これはQuad FXとしては認定されない。
 そしてAMDは,Quad FXを特別に「DSDC」(Dual Socket Direct Connect)アーキテクチャと呼び,専用のロゴまで用意している。

DSDCのメリットを謳うスライド。当たり前といえば当たり前だが,そのままOpteron 2000シリーズのメリットと言ってしまっても問題のない内容だ
 ブランド名であるQuad FXでなく,DSDCに対してロゴを用意しているのは解せないが,このロゴに「NVIDIA SLI」ロゴが含まれているのは興味深い。
 事前発表会でAMDとNVIDIAは親密さをアピールをしていたが,AMDがATI Technologies(以下ATI)を買収した以上,CrossFire Xpressチップセットベースで,同じような環境が将来的にリリースされる可能性はある。仮にそういう製品が登場したとき,その組み合わせはQuad FXなのだろうか?

 この点,AMDは将来について言葉を濁しつつも「パートナーとの関係を重視する方針は従来どおり変わらない」と述べる。AMD64の将来を考えればNVIDIAとの協力関係を崩すわけにはいかないが,NVIDIAの強力なライバルになった現実もある,AMDの立場の微妙さを示した発言といえそうだ。

■将来は8コアにグレードアップ可能
■……だがゲーマーにとっては?


 厳しい言い方をすれば,Quad FXは,Core 2 Extreme QX6700に対抗するため投入された,単なるデュアルCPUソリューションにすぎない。Athlon 64 X2を「真のデュアルコアCPU」と位置づけていたAMDからするとエレガントさに欠けるのは間違いなく,苦し紛れの対応策と言われても仕方のないデキだ。

 もちろん,“クアッドコア”にこだわらなければ,洗練されたアーキテクチャなのも確かである。
 Core 2 Extreme QX6700は,2個のCore 2 Duoダイを一つのCPUパッケージに封入した製品であり,4コアシステム用のCPUとして,効率のいいものとはいえない。この点,内部構造がほぼOpteronそのままのAthlon FX-70シリーズなら,両デュアルコアCPU間は高速に接続され,メインメモリもCPUごとに直接接続されている。理屈のうえでは,4コアの効率はQuad FXのほうが上だ。AMDの主張するMega Taskingは,この効率のよさが根拠なのだろう。

8コアシステムへのアップグレードが可能であると強調するスライド
 2007年上半期の投入が予定されているクアッドコアCPU「Barcelona」(バルセロナ,開発コードネーム)への布石という意味合いでも,Quad FXは語られる必要がある。

 Barcelonaでは,単にCPUコアが4個になるだけでなく,コア自体にも大幅な改良が加えられる。まず,メモリコントローラを刷新してメモリバス帯域幅を拡大。新たにL3キャッシュを搭載して,コア数の増大に合わせたメモリ周りのパフォーマンスアップが図られる。
 また,SSE系命令を実行する浮動小数点演算ユニットの性能が現行製品の2倍に引き上げられ,整数演算ユニットにも改良が加えられて性能がアップする。1コア当たりの性能はCore 2 Duoと同等レベルになると予想されており,同じ動作クロックなら凌駕するかもしれない。それが,クアッドコア動作に最適化された形,いわば「真のクアッドコアCPU」として実現されるのだ。
 メモリ容量の制限があり,バランスには欠けるものの,Barceloraコアの次世代Athlon 64が登場すると,8コアまでスケーラブルにCPUコア数を拡張できるプラットフォームとして,Quad FXには相応の価値が出てくると思われる。

参考として示された,Barcelonaの概要


 ただ,少なくとも現時点において,Mega Taskingがゲーマーにメリットを与える局面は,それほど多くない。ゲームクライアントを2個同時に立ち上げるならデュアルコアCPUでほぼ事足りる。せいぜい,FPSなどでゲームサーバーを運用しつつ,そのサーバーに自分もログインするといったシチュエーションが考えられる程度だ。

 しかも,Quad FXの弱点は決して少なくない。
 Quad FXプラットフォームを採用したシステムは,2007年1月にホワイトボックス系PCメーカーから登場する見込み。将来的には「Athlon 64 FX-70シリーズ2個入りボックス」なども登場するようだが,少なくとも発売当初はシステムのみになる。nForce 680i SLIとは異なり,nForce 680a SLIマザーボードの単体販売も,今のところは予定されていないので,せっかくCPUのコストパフォーマンスが高くても,PC単位でしか購入できないとなると,どうしても価格的な魅力は失われる。
 まあ,TDP 125WのCPUが2個に,最大でグラフィックスカードが4枚ともなれば,1kWクラスの電源ユニットや,強力な冷却機構が必要になり,かなり大がかりなシステムになるわけで,自作したところでそれなりのコストはかかるのだが。

 また,「2個のCPUソケットに対応するWindowsが必要」という点もコストパフォーマンスを悪化させる。
 例えば,Windows XP Home Editionはライセンス上,Quad FXを利用できず,Windows XP Professionalが必要になる。また,Windows Vista世代ではさらに厳しく,2個のCPUソケットをサポートするのは最上位のUltimateか,企業向けのEnterprise,あるいはBusinessに限られる。個人で企業向けバージョンを購入するメリットがほとんどないことを考慮するに,Quad FXシステムでWindows Vistaを動作させようと思ったとき,ゲーマーの選択肢はUltimateしかない。

 次世代の3Dゲームでは,マルチスレッドへの最適化が進む可能性が高いため,そうなれば最高8コアが可能なQuad FXは魅力的だ。ただ,メモリ周りの制限も考えると,Quad FXの導入は,Barcelornaが登場して,そのパフォーマンスが明らかになってからでも遅くないように思われる。レビュー記事を見ても分かるように,安価にワークステーションクラスのPCを導入したい人はともかく,ほとんどのゲーマーにとって,Quad FXを導入してまで,4コア環境の整備を急ぐ必要はなさそうだ。(米田 聡)

発表会では,Microsoft Game Studios AsiaのAndrew Flavell(アンドリュー・フラベル)氏が「Megatasking in Games」として,ゲームにおけるマルチコアの重要性について説明。スピーチの4分の3がXbox 360やWindows Vistaの説明に費やされたのはご愛敬だが,マルチスレッドへの対応は,難度が高いものの,グラフィックスやAI,物理効果など多くの面でゲームを大きく変えるほどのインパクトがあるため,次第に普及していくという見通しを示した
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    Athlon 64

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