インタビュー
[TGS 2007#43]サイカン,「新作MMORPGを準備中」と金会長が明言
Cykanグループを指揮する金会長に,サイカンブースの出展内容の見どころなどを細かく聞いたところで何も始まらないわけで,今後の事業戦略などに話を向けてみようとしたら,まだ何も情報が明かされていない新作MMORPGの話題が飛び出した。
サイカンゲームズ,オリジナルの新作MMORPGを準備中
4Gamer:
ちょうど1年ぶりですね。お久しぶりです。盛大に出展されていた東京ゲームショウ2006から,今回の東京ゲームショウ2007までの一年間,どんな動きをしてたのでしょうか?
金会長:
水面下で活発に動いてきましたよ(笑)。まず,日本の上場企業であるコムシードを買収し,その傘下にサイカンゲームズを設立することで,日本市場への本格参入に向けた組織の整備を行いました。
4Gamer:
なるほど,確かにそれは大きな動きでした。前回は韓国のCykan Entertainmentとしての出展でしたが,今回は日本のサイカンゲームズとしての出展ですし,着々と準備が進んでいる,と。
金会長:
ええ。韓国では「Paper Man」や「R-MAN」のクローズドβテストを終えましたし,新タイトルの準備もしてきています。
4Gamer:
新タイトル……ですか?
金会長:
ええ。オリジナルのMMORPGを準備しているんです。近いうちに日本でも公開できると思いますよ。
4Gamer:
おや,MMORPGですか。確かにサイカンのラインナップには,これまでMMORPGはありませんでしたね。しかし現在,韓国市場ではMMMORPGが飽和状態に陥り,停滞気味だと思うのですが。
金会長:
おっしゃるとおり,韓国市場ではMMORPGは停滞あるいは下向きになっています。しかし,現在企画しているMMORPGは,既存タイトルとは大きく異なる特徴を持った作品なんです。
4Gamer:
その特徴とは?
金会長:
詳細はおいおい発表することになると思いますが,一言で言うなら“従来より強化したコミュニティをMMORPGの中心に据える”デザインになっています。この作品を,韓国,日本,東南アジアをはじめ,世界規模で楽しんでもらえるようにしていこうと考えています。
4Gamer:
とはいえ,コミュニティ機能の充実したMMORPGは,これまで各社からいくつもリリースされています。きっと,金会長にはそれだけに終わらない,なんらかの戦略があると思うのですが。
金会長:
それはもちろんです。確実なことを一つだけお話しすると,このMMORPGは日本のゲーマーをメインターゲットにしています。日本のゲーマーに気に入ってもらえる作品は,世界のどこへ持っていっても受け入れられますからね。グローバルな展開を視野に入れたうえで,まずは日本でのサービスを重視したいんです。
4Gamer:
日本を土台に世界へ?
金会長:
ええ。コムシード傘下のサイカンゲームズの開発スタジオ(Cykan Games Korea)は韓国にありますが,ゲームのパブリッシングやサービスはサイカンゲームズが日本を中心に行っていきます。そして,日本で成功したタイトルで,グローバルな展開をしていくという動き方を描いているんです。その中心となるのが,新しいMMORPGなんです。
大小のコミュニティを積極的にサポートしていく
今夏,ドイツで開催された「Games Convention」(GC)では,韓国のパブリッシャやデベロッパが欧州や北米の市場に向けてアピールしていたのが印象的でした。でもCykanは日本市場を向いているんですね。
金会長:
実は元々,オンラインゲームに限らず,日本でゲーム事業をやりたいと強く思っていました。ですから,たとえほかのパブリッシャやデベロッパが北米や欧州を向いているとしても,私は日本でやりたいんです。
4Gamer:
そこまで日本のサービスにこだわるのは,いったいなぜでしょうか?
金会長:
ご存じのとおり,「ラグナロクオンライン」(以下,RO)が日本のゲーマーから非常に愛されたことで,日本との縁が生まれました。当時,ROのコミュニティを通じてさまざまなゲーマーと接し,ゲームについての単純な感想から考え方,ゲームを作るときの方向性,それから事業性などを学んだんです。この経験が大きいですね。
4Gamer:
ROのコミュニティがあったからこそ,現在の金会長もあるということですか。
金会長:
ええ。ROのコミュニティに対しては,規模の大小を問わず今でも感謝しています。彼らのおかげでビジネスが成功したようなものですし。ですから今後も,コミュニティの応援やサポートのための活動は,積極的にしていきたいですね。そうすることで,コミュニティがもっと活性化されれば,そのコミュニティが属するゲームはより良く発展するものですし。
準備中のMMORPGでは,コミュニティを通じて日本と韓国のゲーマーの文化を融合し,新しいものを生み出したいとも考えているんですよ。
4Gamer:
コミュニティ……といえば,コムシードの子会社であるセカンドファクトリーが,秋葉原にインターネットカフェを含むアミューズメント施設「ADスクエア」をオープンしますよね。これは,コミュニティを重視する姿勢の表れととらえてもよろしいのでしょうか。
金会長:
コミュニティを活性化するための一つの重要なパーツではあります。ADスクエアをオープンするのは,そこにさまざまなゲーマーを集めることで,ゲーマー同士の交流の拠点を作りたかったからなんです。
4Gamer:
特定のコミュニティを組織するというわけではないと。
金会長:
ええ,さまざまなコミュニティをサポートしていけば,ゲームメーカーとしては有益な意見をくみ取りやすくなりますよね。そうすれば,ゲーム自体もより良く育ちます。日本のオンラインゲームの発展のためにも,こういうシナジー効果を生み出せるような良いパートナーになりたいのです。
4Gamer:
というと,規模の大きな公式掲示板みたいなものですか?
金会長:
そうですね,そういう感じになると思います(笑)。
新作MMORPGは,2008年中にもサービスインか?
それでは,サイカンゲームズとCykan Games Koreaの今後の動きについても少し教えてください。
金会長:
実は2008年初頭にも,日韓共同開発プロジェクトチームを設立するべく,優秀なスタッフの目星をつけているところなんです。いずれは,日本のサイカンゲームズにも専従の開発チームを設置して,オンラインゲームはもちろん,モバイルやコンソールなど,さまざまなプラットフォームに展開していきたいと考えています。日韓共同開発プロジェクトチームは,そのための第一歩と言ってもいいでしょう。
4Gamer:
新たに設立される日韓共同開発プロジェクトチームは,どれぐらいの規模で,最初にどのような業務を行う予定ですか?
金会長:
まずは10〜15人程度のチームを考えています。具体的な業務に関しては……そうですね,そのチームを先ほどお話ししたMMORPGのチューニング専門にするか,すでに動いているチームと組ませるか,それとも独立したチームとして新しいことをさせるかなど,さまざまな可能性を考慮に入れて検討している段階です。
4Gamer:
その結果が,どのような作品に繋がるのか楽しみにしています。それでは最後に,サイカンゲームズが日本で見せる最初の大きな山場はどのタイミングになるのかを教えてください。
金会長:
どのゲームにしろ,我々が持っているコンテンツをリリースするときは,すべてが山場です(笑)。ですが,MMORPGに関しては世界で成功させるためにも,まずは日本で成功させなければなりませんから,やはりそこですね。時期的には,おそらく2008年頃でしょう。
4Gamer:
え? MMORPGって,そんなに近い将来の話だったんですか?
金会長:
あれ? 言いませんでしたっけ? 情報公開自体は2008年に,サービス自体も可能であれば2008年中を予定しています。
4Gamer:
そのスケジュールどおりに開発が進むことを期待しています。今年もありがとうございました。
少なくとも現在のMMORPGにはコミュニティが存在しないものはないわけで,“コミュニティを重視したMMORPGって言われてもなぁ……”という気はしなくもないが,金会長自らがここまでプッシュするということは,きっとそれなりの仕掛けが施されているはず。まずは,2008年に情報が公開されるのを待つことにしよう。
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