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[AOGC2007#04]“掛け算”で考えるライセンスビジネスとは? サイバーステップ代表取締役社長 佐藤類氏が語る日本発全世界行きのゲーム
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印刷2007/02/21 17:40

インタビュー

[AOGC2007#04]“掛け算”で考えるライセンスビジネスとは? サイバーステップ代表取締役社長 佐藤類氏が語る日本発全世界行きのゲーム

 2月22日,23日に開催される「Asia Online Game Conference 2007 Tokyo」(AOGC 2007)において,サイバーステップの代表取締役社長である佐藤 類氏は,「海外ライセンス/自社運営に関するHowTo」と題した講演を行う予定だ。
 サイバーステップというと,自社が開発したオンラインアクションゲーム「ゲットアンプド」(日本でのタイトル名は「ゲットアンプドR」)の,全世界での累計プレイヤー数が2000万人に達したという発表を行ったばかりである。また,そのうち約半数のプレイヤーがいる韓国で,2月10日に行われた「ゲットアンプド世界大会2007」は,約10万人もの来場者が訪れ大盛況だったという。
 韓国での成功とは裏腹に,日本では順風満帆とは行かなかったが,2月26日からはサイバーステップ自身による自社運営で“三度目の正直”を成しえようというところである。

 サイバーステップが一体どのようにして,ライセンスビジネスを定着させるに至ったのか。そして,紆余曲折を経て自社運営を選び,得たものとは何か。このあたりについて,佐藤氏に直接話を伺ってきた。



■アジア圏を着実に席巻しつつある「ゲットアンプド」

サイバーステップ 代表取締役社長 佐藤 類氏
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。今回のAOGC 2007では,「海外ライセンス/自社運営に関するHowTo」について講演を行うとのことですが,一体どのような内容になるのでしょうか?

サイバーステップ 代表取締役社長 佐藤類氏:
 当社は2000年の4月に創業してから,これまで約7年間にわたって経営を続けてきました。事業の中核といえる「ゲットアンプド」については,全世界で2000万人もの人達がID登録するほどに成長しました。その経緯において,ライセンスビジネスをどうやって確立させたのか,というのが一点。それと,今後は「ゲットアンプドR」を自社運営で展開させるわけですが,その狙いなどについてお話できればと。

4Gamer:
 分かりました。それではまず,ライセンス状況について話を聞かせてください。「ゲットアンプド」は現在,どれくらいの国々でサービスが行われているのでしょうか?

佐藤氏:
 日本,韓国,中国,台湾,タイ,インドネシアの6か国・地域になります。最終的には200か国・地域に展開して,正真正銘世界中の人達に遊んでもらうのが目標です。

4Gamer:
 今後はどういった国々へと展開する予定ですか?

佐藤氏:
 はやっているという情報は,近隣諸国まですぐに届くものです。これまでは韓国→中国→タイ→台湾→インドネシアの順に展開していきましたが,今後はシンガポール,マレーシア,ベトナム,フィリピン,インドといったあたりまで展開できると考えています。

4Gamer:
欧米諸国に関してはどうでしょうか。

佐藤氏:
 アメリカへの進出は,サイバーステップの悲願です。アメリカで認められれば,そこから同様に,英語圏の国々を切り拓いていけると考えています。本心としては一気に欧米諸国へと進出したかったのですが,まずはアジアで地盤を固めるのが先決ですね。



■開発コストを抑えて“掛け算”で展開させるライセンスビジネス

4Gamer:
 それにしても,サイバーステップは日本で作ったPCゲームを世界へ輸出して成功を収めているわけで,これは最近ではたいへん貴重なケースですよね。

佐藤氏:
 2003年から2004年頃までは,日本のメーカーが自社で開発したPCゲームを,海外へ輸出しようという動きもありましたが,最近はあまり聞かなくなりましたね。PCゲームのジャンルに限っていえば,日本から輸出するタイトルは数えるほどで,逆に年間2〜300本が韓国から輸入されている状態だと思います。

4Gamer:
 いったい,どうしてこのような状態になってしまったのでしょうか。

佐藤氏:
 最近のPCゲームは大作指向が強いですが,これがよくないと思います。
大作タイトルを作るとなると開発コストがかさむだけでなく,運営コストもそれに見合ったものにしなければならない。パッケージ売りの場合はROMの製造コストが大きく,また在庫を抱えるリスクも生じてしまう。ダウンロード販売を行うにしても,回線を借りるためのデータセンターの料金がばかにならないです。
 大作タイトルは,開発以外にもさまざまな面でコスト増大に結びつきやすいのです。

4Gamer:
 ふむふむ,なるほど。

佐藤氏:
 その結果,会社が萎縮してしまい,無難なタイトルやシリーズ物が多くなっています。このような悪いイメージが日本市場全体に蔓延していて,開発者がなかなか冒険できなくなってきていますね。まず,ゲームを作る。次に,作ったものを売る。そして売った結果利益を得る。この基本的なチャレンジが行いづらくなってきているのは,とても残念です。

4Gamer:
 問題は,ごく基本的な部分にあると。

佐藤氏:
 確かに,いきなり自社運営で黒字を出せればそれがベストではありますが,昨今の状況だとなかなかそううまくはいきません。そこで,当社がやってきたのがライセンスビジネスです。
 仮に開発コストが1タイトルで1億かかるとして,ライセンス契約が1か国平均で5000万円だとしましょう。3か国と契約すれば差し引き5000万円のプラスとなり,これにロイヤリティ収入も加わります。開発費の回収はそれほど困難ではないのです。開発費が抑えられれば,ライセンス契約の単価が低くても利益が出せるので,ライセンスできる可能性が更に高まります。

4Gamer:
 ライセンス契約を結べれば一定量の収益が保障されますね。しかし,そこまで辿りつくのが難しいのではありませんか?

佐藤氏:
 そこが肝心なところですが,結局は,楽しいゲームを作りさえすればどうにかなると思います。
 欧米の開発メーカー,韓国の開発メーカーには,それぞれにシミュレーション系やコミュニティ性の高いものなど得意なジャンルというものがあります。仮に日本がそういった,他国の得意ジャンルで戦おうと思っても,ほとんど勝ち目はないと思います。

 そこで,じゃあ日本の得意ジャンルは何か? というのを考えると,純粋な“ゲーム性”だと私は思います。遊んでいて楽しいと感じさせるゲームを作らせたら,日本メーカーの開発力は現在も,世界レベルで見てトップクラスだと思いますよ。だってファミコンの頃からずーっとやってるわけですから。
 日本の開発したゲームは,どこに国に持っていっても提供できる,言い換えるとライセンス契約が結べるレベルのクオリティがあります。

4Gamer:
 なるほど,そこが明るい材料になるわけですか。

佐藤氏:
 しかもこれがオンラインになると,地域に縛られることなくたくさんの人に遊んでもらえるわけです。
従来のように,一本作っていくら儲けて,また一本作っていくら儲けて……という,「足し算」の計算ではダメなんです。当社はライセンスを中心に考えることで,「掛け算」のビジネスを行えるよう心がけています。

4Gamer:
 掛け算,ですか。

佐藤氏:
 少々大ざっぱな計算になりますが,ライセンス契約を結んで運営国が増えると,その国の数をかけたのが売り上げ総額になるという考え方です。場合によっては,プラットフォームを増やすことでさらに掛け算ができます。もちろん,プラットフォームは各国によってインフラや普及率が異なるので,一概にはいえませんが。
 例えばゲットアンプドで考えると,現在6か国で展開しているわけで,この時点で一本のタイトルが6倍になっています。この状態で別にもう一本タイトルを開発すると,ゲットアンプドのベースがあるので容易に展開できる可能性が高くなり,すなわち「2×6=12」という計算になります。
 しかし,もし他国展開を視野に入れていない場合,仮に2本のタイトルを作っても,足し算で2にしかならないでしょう。

 ちなみに,掛け算の対象として,いま私がとくに注目している国はタイです。タイの運営会社とは,2004年くらいにライセンス契約を結んだのですが,数年前の韓国並の伸び率を見せていますよ。



■開発者なら,ソフトを作らないことには何も始まらない

4Gamer:
 ゲットアンプドにせよリリースされてから7年目のタイトルですよね。佐藤社長の言う掛け算の法則に辿り着く前に,ゲームタイトルとしての寿命が尽きてしまう場合もあるのではないかと思うのですが。

佐藤氏:
 私は7年といわず,ゲットアンプドを100年遊ばれるゲームにしたいと考えています。例えばインターネットで使われているプロトコルや,UNIXのソースコードの中には,20年近く使われているものも多いです。優れたプログラムは必然的に長期間使われるわけで,ゲームもまた然り,です。

4Gamer:
 100年ですか。そこまで来ると,もはや囲碁や将棋に挑戦する勢いですね。

佐藤氏:
 優れたタイトルが一本あれば,それをベースに新しいデザインのゲームを作っていけます。例えば,ゲットアンプドのシステムを流用しつつ,プログラムを修正するなどして,携帯ゲーム対応などといったさまざまな展開が考えられるわけです。
 当社が開発した「ロボ聖紀C21」という別タイトルは,ゲットアンプドのプログラムを一部使いつつ,+αで作っています。このようにすれば,新規に一本作るのに比べて,開発コストは大幅に抑えられます。

「ロボ聖紀C21」のスクリーンショット


4Gamer:
 一度波に乗ればどんどん先へと行けるシステムという印象を受けますね。話を聞く限りでは,最初の波を作るまでが大変そうに思えますが,そのあたりはどうでしょうか。

佐藤氏:
 自分たちが開発をやり始めた頃は20代前半でしたし,無我夢中になってみんな働いてました。
 しかし,大切なのは最初の一歩目を踏み出せるかどうか,だと思うんです。日本人は開発のセンスがすごくある。すごく繊細なところにまで凝るし,世界的に見てもセンス・レベルともに極めて高いんですよ。それなのに,志を持った若い人が自分達の企画で開発を行わず,下請けなどに流れてしまうのはすごく残念です。

4Gamer:
 なるほど。

佐藤氏:
 最初に開発するものは,どんなに小さくても構わないわけです。極端な話プログラマーが一人と,ゲームデザイナーが二人でもやっていけます。また月の運営コストに関しても,欲を言えば1000〜2000万欲しいですが,それが無理なら100万まで落とせばいいし,実際にそれでもやりようはあります。
 開発コストや運営コストを抑えた会社は,リスクも低いわけです。

 ゲットアンプドの運営を開始して間もない頃は,380円の月額課金と,3680円のパッケージ売りの2プランを用意していました。それで結局,同時接続が15人で,毎月3〜5万円程度しか収益のなかった月もありました。
 でも,作らないことには何も始まらない。運営コストがどうとか開発の収支がどうとか,そんなのはどうでもよくて,モノ作りの人は作らなきゃだめなんです。それに良質なソフトを作れば,ライセンスを買ってくれる運営会社は,世界中にたくさんあるんですよ。

4Gamer:
 ライセンスを買ってくれる会社は,実際のところどれくらいあるのでしょうか?

佐藤氏:
 一般の方が想像している以上に,数多くあると思いますよ。
今の日本PCゲーム市場は,作る人が減ってその代わり運用する人が増えてしまっています。日本市場の運営会社に絞っても,メジャーどころで20,細かいところを含めると50近くはあるのではないでしょうか。

 携帯電話向けのゲームを作って,年商100億以上になる会社なんてたくさんあります。が,そういった会社が最初からすごいタイトルを作っていたのかというと,全然そうじゃない。最初はどんなに小さな規模でも,とりあえず作ってみたことが偉いわけです。
 パッケージ売りが主流のコンシューマ機の世界では,新規タイトルを一本開発するのに数億,どんなに低くても5〜6000万円かかるといわれています。これに製造原価や販促費,小売店のマージンなどが加わると膨大な額となり,仮に在庫が残ったらそれだけに赤字になってしまいます。それに比べたら,オンラインゲームの開発におけるリスクは全然高くない。

4Gamer:
 確かに,日本だけにしか目を向けないのは問題ですね。佐藤社長は,最初はゲットアンプドの海外展開をどのように行ったのですか?

佐藤氏:
 それはもう,口コミのレベルでたくさんの人を紹介してもらって,後はひたすら見せるのみです。かつて,日本以外でゲットアンプドを運営している5か国でライセンス契約を結んだ際は,私自身がPCを持って行き,その場で説明しました。交渉も全部日本語でやりました。
 有限会社とか個人の集まりが作ったようなタイトルでも,結構聞いてくれる運営会社はあると思いますよ。昔は2〜3人で開発したようなタイトルをよく見かけましたが,本来はああいったノリがいいんです。

4Gamer:
 ゲットアンプドは,日本では2001年にサービスを開始,韓国では2002年からサービスを開始しています。当初からそのようなライセンスを軸にすえたビジネスモデルを考えていたのですか?

佐藤氏:
 いいえ,違います(笑)。
 振り返ると,当時は挫折の連続でしたが,それだけに現在こうやって活動できているのはありがたいことです。AOGCには,開発系の方が多く興味を持つので,そういった人たちにとりあえず作ってみてほしい,と伝えたいのが講演の主な目的のひとつです。



■紆余曲折を経て「ゲットアンプドR」を再び自社で運営

4Gamer:
 続いて,日本国内における「ゲットアンプドR」の運営についてお聞きします。順番に見ていくと,最初は自社による運営で,次にガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下,ガンホー)へ運営委託,そして再び自社運営と,非常に珍しい形で推移してますよね。まずガンホーに運営を委託した経緯から聞かせてください。

佐藤氏:
 ゲットアンプドを開発したばかりの頃,当社は開発専門に業務を行っていました。あの頃は資金的にも厳しく,ゲームを運営する体制としては辛いものがありました。
 例えば,毎月1000万の運営コストがかかるとして,1年に1億2000万がかかり,しかもその間利益を生まない可能性があるわけです。それは当時の当社の体力や社内体制,インフラのコストなどを考えるとできませんでした。
 そこで,サービス,プロモーション,マーケティングについて専門の運営会社があるのだからパートナーを結ぼう,という流れです。

4Gamer:
 しかし結果として,ガンホーへの委託から自社による運営へと再び切り替わったわけですが,これにはどういった事情があったのでしょうか?

佐藤氏:
 ガンホーさんとパートナーとして組み,さまざまな企画を両社で考えて実行したり,一人でも多くの人に楽しんでもらえるように両社でがんばりましたが,当時の日本の市場を大きく切り開くという目標を実現する目処がなかなか作れませんでした。パートナーであるガンホーさんにとって,ゲットアンプドが重荷になり,ビジネス的により大きな展開を両社で行うのが困難な状況になったため,自社単独でサービスを再開していく形でこちらから話をもちかけました。
 当社としてはゲットアンプドが“長男”にあたるので,日本においても仮にビジネスにならなくても,一人でも多くの人に楽しんでもらえるようにしたいと考えました。そのためには自社単独による運営が良いと。

4Gamer:
 そういう事情だったわけですね。開発したタイトルを自社で直接運営することのメリットには,どのようなものがあるのでしょうか?

佐藤氏:
 自社で運営を行うと,プレイヤーのリクエストなどがダイレクトに伝わって来ますが,これは非常に大きいです。2月10日に開催した「ゲットアンプド世界大会」も,開催までにどれくらいのコストが必要なのか,というのも分かりましたし。もし自社運営でなければ,ああいった大会はまず行えませんでしたね。
 それと,自社での運営に成功すれば,外部へライセンス委託した際のロイヤリティよりも大きな利益を得られます。世界大会では当社としても非常に多くの費用が掛かっていますが,宣伝効果などを踏まえると,それを大きく上回るリターンがあったと思っています。

4Gamer:
 先日行われた「ゲットアンプド世界大会」は,10万人もの来場者があったと聞きました。韓国でそこまでゲットアンプドが受け入れられている理由は,一体どのあたりにあるのでしょう?

佐藤氏:
 よく言われるように,当時の韓国市場は家庭用ゲーム機が規制されており,そういった中,オンラインゲームに飛びついたというのは確かにあるでしょう。
 しかし,最も大きいのは,韓国におけるパートナーのWindySoftの運営がすごく良かったからだと思います。テレビや雑誌へのプロモーションをいろいろと試して,失敗もたくさん経験して,フィードバックを得て,そういった地道な作業をWindySoftは辛抱強く続けてくれました。
 最初から適切なプロモーションというのは存在しないので,WindySoftと出会えたことには本当に感謝しています。

4Gamer:
 ちなみに,ほかの国の運営面についてはどういった見解をお持ちですか?

佐藤氏:
 台湾はPCゲーム市場がすでに飽和していると思うのですが,それでも100万IDの登録を達成しています。人口に対する割合を考えると,かなり健闘している数字だと思います。中国についても数百万単位のID登録を達成していますが,中国は,上を目指すとそれこそ億の単位になるので,まだまだ上を目指します。
 ちなみにプレイヤーの比率が一番高いのは韓国で,現在1000万以上のID登録があります。これらの国々では,ID登録時に住民登録番号を取っているので,それなりに信憑性の高いデータだと思います。

4Gamer:
 IDベースでは凄い数字ですね。同時接続者数についてはどうでしょうか?

佐藤氏:
 それについては,現地の運営会社の情報になるので申し訳ありません。ゲットアンプド全体で数万人単位になります。

4Gamer:
 国の話が出たので一緒に聞いてしまいますが,「ゲットアンプド世界大会」の際,それぞれのプレイヤー層の違いについては,どのように感じましたか?

佐藤氏:
 韓国のプレイヤーは最も人口が多いことから,対戦プレイに場慣れしている,という印象を強く受けました。韓国勢が上位を独占していたのを見ても分かるように,もっともレベルが高いですね。また中国と台湾については,団結心が強いのか,とくにチーム戦が強いと思いました。タイも同様に強かったです。
 インドネシアについては,サービス開始が2004年からと年季が浅いのと,元々インフラ面が弱いこともあって,やや分が悪かったようです。インドネシアは,一本のアナログ回線にPCを10台繋げている環境も珍しくないので。
 ちなみに日本のプレイヤーは,対戦よりも皆と楽しく遊ぶことを重視しているようですね。あえて装備品を珍しいものにするのは,ほかの国には見られない傾向でした。アクセサリの個性を知り尽くしている感じですね。

4Gamer:
 そのほかの,国別プレイヤーの傾向などについては感じるところはありましたか?

佐藤氏:
 これは日本人ならではの傾向だと思うのですが,ゲットアンプドに限らずゲームバランス面に対する目がシビアなのか,仮に強すぎるアイテムなどが実装された場合,それに対するバランス調整を要望として出してきます。
 これが韓国や中国のプレイヤーになるとまったく逆で,一度売られたものに関しては,何があっても決して手を加えてはならない,というスタンスです。つまり,バランス調整目的のアップデートは望んでいないわけです。過去に海外で後からバランス調整のアップデートを行ったことがあったのですが,掲示板が荒れるなど大問題に発展しました。

4Gamer:
 うーむ,そうなんですか。

佐藤氏:
 韓国や中国のプレイヤーは,バランス調整のパッチは望みません。その代わり,高い性能のものに人気が集中してしまいます。それはそれで問題があると思うのですが,プレイヤーの傾向としては興味深かったですね。



■「ゲットアンプドR」は2月26日より正式サービス開始

4Gamer:
 2月26日から日本で「ゲットアンプドR」の正式サービスが行われますが,現状についてはいかがでしょうか。

佐藤氏:
 まだまだこれから,といったところです。数字的な話はこれからなので控えさせてください(笑)

4Gamer:
 日本では今後どういった展開を考えていらっしゃいますか?

佐藤氏:
 「ゲットアンプドR」はオンラインゲームですが,オフラインでのイベントも盛り上げていきたいですね。昔,ファミコン時代にハドソンさんがやっていた“キャラバン”のような,プレイヤー間の繋がりを重視したいです。

4Gamer:
 一方の,世界レベルでの展開はどうでしょうか?

佐藤氏:
 ゲットアンプドのアピールポイントは,シンプルだけど普遍的な楽しさを提供できるゲーム性にあると思っています。それを継続的に行うために,各国の運営会社やプレイヤー達の要望をいち早くキャッチし,それに答えていくことを何よりも重視しています。

 例えば韓国版では,プレイヤーからの要望によって,キャラクターなどすべてのスピードが1.4倍早くなる“ターボモード”が実装されており,これは今となっては標準仕様となるほどに定着しています。しかし,これでもまだ満足できない人がいたので,先日行われた世界大会では,更にスピードが速くなるアクセサリがもっとも使われていました。これは来場者達が見てても緊張感があり楽しいので,かなり好評だったと思います。

4Gamer:
 なるほど,そういった部分も人気の秘訣といえそうですね。今日はありがとうございました。



 2000年にマンションの一室で,たった4〜5人による運営体制でスタートした「ゲットアンプドR」は,現在はアジア地域だけで2000万人もの人に親しまれるタイトルへと成長した。サイバーステップのライセンスビジネスは順調なようで,アジア諸国で次々と成功を収めている。それだけに,AOGC 2007の2日目,B11のコマにて行われる佐藤氏の公演は,志に溢れた若き開発者にとって頼もしいエールとなるだろう。

 そして紆余曲折の末に辿り着いた日本国内での自社運営で,今後どういった手腕を見せてくれるのかは実に興味深い。2000万IDという数字にしても,現時点では日本のプレイヤーにとって“すごい”を通り越して,いまひとつ実感しにくい面がある。ほかのアジア諸国での数字に負けない成果を大いに期待したいところだ。(川崎政一郎)

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