連載
「キネマ51」:第32回上映作品は「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」
グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏が支配人を務める架空の映画館,「キネマ51」。この劇場では,新作映画を中心としたさまざまな映像作品が上映される。第32回の上映作品は,昨年末に引き続き1年のシメとなる「相棒」シリーズより,「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」。
「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」公式サイト
いやぁ部長,もう年末ですよ。
関根:
支配人,今年もお世話になりました。
須田:
いよいよ今年最後の作品ということですね。
関根:
ということです。今回は「相棒」です。season 13も始まりましたし,「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」をご紹介したいと思います。今年の4月に公開された作品を,なぜ今まで寝かせていたかというと……。
須田:
キネマ51ファンの皆さんから,「なんで相棒やらないんだ!」と,凄くたくさんコメント欄に書き込みがありましてね。ここからリンク飛べますけど。
4Gamer:
そんな反応ありましたっけ? そもそもコメント欄がないんですけど。
須田:
あーっ,そうでしたかー。
4Gamer:
支配人のFacebookにリンクでも貼っておきましょうか?
須田:
あ,いや,すいませんでした,余計なこと言いました。
関根:
いつか痛い目にあいますよ,その適当っぷり。
須田:
グハハハハ。まぁ,話は戻りますけど,これはやっぱり恒例にしたいなと思っているんですよね。キネマ51の1年のシメは相棒という形を。なので温めておいたわけですよ。
だから今日はね,満を持してたっぷりと語っていきたいんですけども。
関根:
……支配人,たいへん申し訳なんですけど,私はけっこう忙しくてですね,今日はお得意先にカレンダー配りにいかなきゃならないもので。
須田:
師走ですからね,じゃあ,一気にしゃべっちゃいましょう。DVDとBlu-rayは10月に発売されているんで,ご覧になった方も多いとは思いますが,部長,どうでした?
関根:
今回はスケール感がありましたね。
須田:
ありましたねぇ。「名探偵コナン」の影響らしいですよ,このスケール感は。
関根:
また支配人,さっき「痛い目にあいますよ」って釘を刺したばかりじゃないですか。
須田:
いやいや,ホントですって。コナンの劇場版「名探偵コナン 絶海の探偵」という2013年の作品に影響を受けてるという話なんですよ。
関根:
……。
須田:
いやいやいやいや,そもそもコナンの原作者である青山剛昌先生が相棒の大ファンで,かつてseason 9の第10話「聖戦」にも鑑識役でカメオ出演しているんですよ。
しかも絶海の探偵って,脚本が相棒でおなじみの櫻井武晴さん。
関根:
あ,そうなんですね。
須田:
それで,映画を観た相棒スタッフがこういうスケールの大きい作品をやろうっていうことになったらしいんですよね。大掛かりなロケ,劇場映画としての迫力,そういったものを作ろうと。
関根:
なるほど,確かに映画全盛期の超大作感がありましたよね。
須田:
もう部長,お願いしますよ。
関根:
失礼いたしました。ところで今回,僕が一番グッときたポイントは,月本幸子(鈴木杏樹)と右京さん(水谷 豊)の今後が気になる展開になったということ。
須田:
気になりますねぇ。
関根:
season 13の第1話,2時間スペシャルの内閣情報調査室総務部門所属の社美彌子(仲間由紀恵)との会話につながる感じで。
須田:
確かにそうだ。右京さんにとってのプライベートとなる部分として出てきますよね。
関根:
これでついに益戸育江a.k.a.高樹沙耶[1]から卒業できるのかなと。
須田:
「いつも励ましてくれたのは,右京さん……」ですよ。
関根:
リアップでね。
4Gamer:
あー,“禿げ増す”ね。
須田:
うまい!
関根:
あー,なるほど……って,禿げが増しちゃだめでしょ,逆効果でしょ。
須田:
あらららららーー。
関根:
北野広大[2]まで戻りましたか。
須田:
月本幸子(殺人を犯して右京さんが逮捕,出所後右京さんの前妻がやっていた小料理屋「花の里」を継いで女将になる)と右京さんの関係って,僕達はずっと見守ってきたじゃないですか。
関根:
そうですね。
須田:
だけど警察官は前科のある人との結婚が難しいという不文律みたいのがあるんですよね。僕の妻のお父さんが警察官だったので話を聞いたことがあるんですよ。
関根:
そうなんですね。支配人はそんなお父さまによく結婚を許してもらえましたねぇ。
4Gamer:
殺すゲームばっかり作ってるのに。
一同:
(笑)。
須田:
結婚した頃まだ作ってなかったですから……。
関根:
あ,支配人,ちょっとマジで焦りましたね。
須田:
いやいや,焦ってませんよ。で,社美彌子が「犯罪歴のある女性と親しくしてるんですね」と,右京さんに圧を加えるんですよね。
関根:
右京さんは平然と構えているわけですけど。
須田:
そう,でも,そこにちゃんと言及してくるあたりね,さすが相棒だなぁと……。だいぶ話しましたけどこの映画,本題は月本幸子じゃないんですよ。
関根:
あ,違うんですね。
須田:
違いますよ。そもそも部長時間ないんじゃないですか。
支配人の考える「相棒III」の本題とは?
須田:
本題は,ずばり国防です。これまで相棒でほとんど足を踏み入れなかった国防ですよ。今まであまりなかった自衛隊との関わりも描かれました。
関根:
そうですね。
須田:
特命係が直接関与することで見えてくる,警視庁と自衛隊の組織の対立構造が,とても新鮮でした。もちろん緊張感のある関係で,また相棒世界が広がったなという実感を得られましたね。
関根:
あとは近隣諸国との緊張関係なんかにも触れていますよね。
須田:
そう。この時代だからこそ相棒は国防を選んだのかなと。和泉聖治監督,脚本の輿水泰弘さんのインタビューを読んだら,相棒だからこそ今回はここまで踏み込むことが出来たとおっしゃっていて。相棒って国民的なドラマであり,映画じゃないですか,だからこそ視聴者へのメッセージはより強く響いてくるというか。
関根:
そうですよね。やろうと思えばこうやって踏み込むことができるんですよね。
須田:
そうです。やっぱり相棒は鋭いテーマに毎回向かうなと思いました。
関根:
元自衛隊員の民兵が日本の軍事情勢を憂いて,独立部隊を立ち上げようとするという事件を軸に描かれる物語。そこで平和憲法と自衛隊という存在の矛盾について考える場面が出てくる。
須田:
「核を持っている国があるのに,なぜ日本は核を持ってはいけないんだ。なぜその格差があるんだ」と問われて,右京さんの相棒,甲斐 享くん(成宮寛貴)は何も言えなくなるんですよね。
関根:
そう,でも右京さんにはきっと明確な答えがあるんですよ。法に基づいた確固たる答えが。
須田:
そうですね。彼は立法ありきですからね。
関根:
でも,情を捨てることの出来ない甲斐君は,自分の考えの矛盾に気付いて何も答えられない。
須田:
相棒の永遠のテーマ,法に基づく正義がすべての判断基準という一貫した右京さんのスタンス。これが素晴らしいですよ。ブレない。
関根:
だからほかの刑事ドラマで踏み込めない難しいケースも描けるのかもしれませんね。正義の判断基準が明確に提示されているからこそ。
須田:
そうですね。タブーな事件にぶつかったときや,立場の違う正義がぶつかり合う中でもね。だから相棒は続いているんだと思うんですよ。
関根:
ほかのドラマでは人情話として終わらせてしまうような社会的弱者の事件も,情でうやむやにすることなくブレない判断をするからこそ,巨大な犯罪に対しても正々堂々と法の名の下の正義を貫くことができる。矛盾がないんですよね。彼の正義を貫く権利がある。
情で判断することを自ら封じることによる苦しみも,たぶんたくさんあると思う。でも,それを耐える強い気持ちもある右京さんだからこそ,今回のように国防に絡む各組織の正義の矛盾という,大きなテーマにも挑むことができるんですよ。
須田:
甲斐君も,今回矛盾した正義の渦中に入ってしまったわけじゃないですか。これ,そろそろ彼の正義も揺らぎ始めるんじゃないかと思うんですよ。それこそ,クールを貫いてきた前の相棒,神戸 尊(及川光博)ですら,特命係を卒業するときには完全にぐらついてましたからね。
正義がお互いに違うということでたもとを分かったわけですから。登場して3シーズンめ,いよいよ甲斐君の正義が試されるときかなと。
おなじみ新シーズン妄想トーク「俺の『相棒』」
須田:
その流れでいくとseason 13は,父・甲斐峰秋(石坂浩二)と息子・亨の和解っていうのが物語が主軸かなと。
関根:
ここからは完全に妄想トークであることをご了承ください。
須田:
初回スペシャルで享の婚約を機に不仲親子の関係があらためてクローズアップされた。
関根:
婚約者である悦子さんが仲良くさせようとするんですよね。
須田:
でもその結婚の前に事件は起こります。
関根:
ほほう。
須田:
峰秋は死にますね。
関根:
そうきますか。
須田:
僕はフラグが立ったと思いました。それで,親子最後の会話で和解。そう睨んでますね。それがおそらく劇場版の第四作だと思います。
関根:
官房長〜,ならぬ,お父さん〜,ですね。でも確かに,新しく特命係をうまく利用しようとするであろう女性が現れたし。
須田:
びっくりしました。仲間由紀恵さんは初回スペシャルゲストだと思ったんですけど,準レギュラーですよきっと。正月スペシャルにも登場決定です。
関根:
朝は駒込でDJやって,それから出勤だと思いますけどね……。
4Gamer:
事件を聞いちゃって。
須田:
あぁぁ,それ主演ドラマのほうでしょ。
関根:
あ,全然関係ないですけど,初回スペシャルで僕が盛り上がったのは羽場裕一さんですよ。
須田:
羽場さん(笑)。羽場さんって完全に出オチですよね。
関根:
もう出てきた瞬間に……。
須田:
そういうことね,みたいな。
関根:
今,羽場さんって悪役ベストテンの第1位じゃないですか。大浦龍宇一,デビット伊東を抜いてますよね。
須田:
ええ,羽場さんは元ジョビジョバの長谷川朝晴さんの真犯人率を完全に超えましたね。画面に登場したときの顔面力,ハンパない存在感がありますよ。大好きな俳優さんです。しかも長野県出身!
関根:
羽場さんがいい人を演じたのって,TBSの「ぽっかぽか」と土曜ワイド劇場の「温泉若おかみの殺人推理」くらいですよね。あ,相棒でも政治家の秘書役で,あれは犯人だったけど悪い人ではなかったか。
須田:
あと,あれですよ,湊かなえさんが脚本を書いたドラマ,高校入試にいい先生役で出演していましたよ。最後,やっぱり黒幕か? みたいのを匂わせるんですけど,あぁ,違ったって。
関根:
なるほど。なかなかうまい羽場さんの使い方ですね。話は尽きないですけど,今後の相棒に期待することって何かありますか?
須田:
やっぱりね,警視庁捜査一課9係の加納さん(渡瀬恒彦)に出てほしいですね。米沢さん(六角精児)が向こうに出たお返しにね。ほかにもたくさんの刑事や個性的なキャラクターがいるじゃないですか,テレビ朝日ドラマには。糸村くん(上川隆也)との共演も見たい。
関根:
21時台のドラマだけでもいっぱいいますからね。
須田:
そういうキャラ達がどんどん相棒世界に入ってきたら……。なんて想像するとワクワクしますね。
関根:
テレビ朝日オールスター夢の競演,観てみたいですね。「オーシャンズ11」みたいな。
オールスターズといえば
須田:
オールスターといえば,任天堂の人気キャラクター達が総登場して大乱闘する凄いゲームがあるんですよ。
関根:
……まさかそれが今回紹介するゲームですか?
須田:
そうなんです,みなさんご存じないかもしれませんが,「大乱闘スマッシュブラザーズ」というゲームがありましてね。
関根:
まさかの大ヒット作! 4Gamer読者ならまず知ってるし……。
須田:
あ,ご存じでしたか。
4Gamer:
でもまあ,最新作の「大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U」には,相棒みたいなものが出てきますからね。
須田:
そうですそうです。(小さい声で)なんですか? それ?
4Gamer:
アシストフィギュアですよ。
フィギュアといえば,NFCを内蔵したamiiboも面白い仕組みで。
須田:
あぁ,そうそう,amiiboね。ディレクターの桜井さんも相棒好きですし。amiiboの名称は,アイボウ→アイーボ→アミーボと,相棒をもじったって話です。
関根:
そうなんですか?
須田:
そうなんじゃないかなぁと思うんですよね。
4Gamer:
支配人,ソースのハッキリしない情報は載せられませんので。
須田:
あ,すいません,嘘です。
関根:
またですか……。。
須田:
ところでTeTさん,スマブラって任天堂のゲームのキャラクターだけじゃなくて,ほかのメーカーの人気キャラクターも登場しているじゃないですか。トラヴィスっていつ出るんでしょうかね,聞いてませんか?
4Gamer:
聞いてないですけど,登場することはないんじゃないかと思いますよ。
須田:
ホントですか? ダウンロードコンテンツとして追加されるという話もない?
4Gamer:
全く聞いてません。
須田:
僕,桜井さんに会うたびに10回くらい言ってるんですよ「トラヴィスをいつか出してください!」って。ずっと待ってるんですけどね。
関根:
いっそのこと,支配人が作っちゃえば良いんじゃないですか。
須田:
あー,そうか! そうしましょうか「大殺狂! スラッシュブラザーズ」ね。
関根:
いろんな人斬りキャラ集めてね。時代劇とかから。
須田:
世界各国からもいろんなアサシンを連れてきて。
4Gamer:
絶対にNGが出ると思いますけどね,名前で。
須田:
いやぁ,大丈夫でしょ。でもいつか,「駿河城御前試合」[3]のゲームは作りたいんですよ。ああいう生々しいのをやりたいんですよね。
4Gamer:
しばらくスマブラに登場できそうなキャラは,生まれなさそうですね。
須田:
グハハハハ。
関根:
ということで,今年も1年間ありがとうございました。
一同:
ありがとうございました。
関根:
また,来年もよろしくお願いします
須田:
じゃあ部長,カレンダー配りよろしく!
「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」公式サイト
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